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Your story 〜最弱最強のプレイヤー〜  作者: ゆずあめ
第10章 穏やかな日々
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ルナは激怒した

メロs

 



『やっさん。家を建てたいんですけど誰か紹介して貰うことって出来ませんか?』


『と、突然ですね! え〜と、少し待ってください......あ、1人だけ暇な人が居ますけど、どうしますか? 性格は何にでも正直な人です。故に、時々やっちゃうんですが......』


『是非お願いします。待ち合わせとかどこにしましょう』


『分かりました。それならウチのギルドに来てください。今からミニマップで送るので、お待ちしております』


『ありがとうございます。直ぐに行きますね』




「ふぅぅぅ......緊張するぅ! フゥ! ファァ!」



 やっさんに木工職人を紹介して貰うことにしたので、俺は早速ボイスチャットを繋いだ。


 そして会話が終わると、これから出会う職人さんとどう会話をするか考え、テンションが変に上がっていた。



「全くそうは見えませんけどね」



 俺の座っている椅子の後ろに立つフーからジト目で言われてしまった。



「何言ってんだ。俺の人見知り力は53億だぞ。それくらいメイドやってたら分かんないものか?」


「分かりませんし分かりたくありません。大体、友達1人に話しかけるのに私が近くにいる必要、あります?」


「ありますね。誰かが居るだけで俺は無敵になれるから」


「ではどうしてその枠を私に? ソルさんが適任でしょう?」



 ダメです。ソルに『近くに誰かいないと話せない』とか言ったら鼻で笑われちゃうので。


 ここは体のいい話で切り抜けよう。



「もしソルだったらさ、俺はやっさんと話しながらソルをモフり始めるぞ?」


「ではリルさんやメルさんは?」


「同じくモフる」


「自制心をどこに置いてきましたか? 私、取りに行ってきますよ」


「残念ながら自制心はココ、マイハートにある」



 親指で心臓を突きながら言うと、フーの目から光が消えた。



「よし、抉りますね。神度剣よ」


「待て待て待て! 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!」



 静かに左足を引き、腰に神度剣を取り出したフーから全力で離れた。



「チッ......では私は戻りますね。1階の掃除がまだ終わってないので」


「え〜、着いてきてよ〜」


「『魔刀術:雷「ごめん1人で行くからやめて」......はぁ」



 ジョ、ジョークじゃないですかヤダー。俺がそこまで小心者だと思うなよ?


 目的の人に会うくらい、ドラゴンを素手で倒すより簡単だ。




 ん? 




「仕方ない。リルを連れてくか」


「......正気?」


「わ〜ったよ! 本当に1人で行くよ! だからタメ口だけはやめて? 怖いから!」


「はいはい」


「あ、でもシリカは連れて行くぞ。万が一戦闘になったら危ないからな。護身用だ」



 戦闘にならない事を祈るが、人間ってのは考えてる事が分からないからな。最低限身を守らないと。



「本当に護身用ですか? 貴方なら素手で十分でしょうに」



 フーが言ったその言葉には、素手でも相手を倒せるという信頼と、俺の言葉を一切信じていない黒い感情が見えた。



「うへぇ......俺、もしかして信用されてない?」


「えぇ、信用してません。信頼してるので」


「あっそ。じゃあ行ってくるわ。留守番よろ」


「ここまで腹を立てたのは初めてです。1度殺りましょうか」



 またもや綺麗な構えで刀を出したフーだが、今回の俺は逃げないぞ。



「まぁ待て。お前の後ろに居る人物の事を思えば、ここで戦闘なんてしないだろ?」


「後ろ?......ヒッ!」


「フーさん。貴女はルナ様に仕える自覚はありますか?」



 フーの後ろに居たのは、使用人組で1番偉いであろうイブキだ。


 俺が全力でフーから離れた時に、スっと後ろへやって来ていた。



「じゃ、俺はおサラバするぜ!」


「行ってらっしゃいませ、ルナ様」


「い、嫌だぁ! お説教だけは嫌だぁぁ!! あ、そうだ! ルナさん、是非とも私を「シリカ、おいで〜」「はいは〜い!」......終わった」



 フーが俺に助けを求めた瞬間にシリカを顕現させ、刀にしてから提げた。


 そうして俺はリビングを出る前に、イブキにお説教はしないようにアイコンタクトを送った。



『お兄さん、フー姉ちゃんの扱いが大分変わったよね〜』


「まぁ、ちょっと思う所があるからな。アイツの記憶が消されてる以上、何も考えない訳じゃない」


『記憶?』


「あ〜......気にすんな」



 俺が真に言いたいのは、せめてフーとは近しい関係で居たいと言うことだ。


 フーの内心を知った以上、それを蔑ろにせず、出来る限りの幸せをフーには感じてもらいたい。

 逆に、それが枷となっているのなら相応の対応をしないといけない。


 話す時間を減らしたり、必ず3人以上で行動をしたりと、めんどっちい事をしないといけない。



「まぁ、皆仲良く楽しもう。それがこの世界の生き方だろう?」


『そうだね!』


「じゃ、改めてしゅっぱーつ!」


『しゅっぱーつ!』






 ◇◇






「帰ります。もう来ません」


「そんな! 待ってください! ルナさん!」


「嫌です。プレイヤーと関わるのは......やっぱり向いていないと思ったので。では」





 ◇◇






『お兄さんお兄さん、あんな対応しちゃって良かったの?』


「良い訳無いだろ。危うくアイツを殺しかけたんだぞ」


『まぁね〜。でも今回、どっちかって言えば相手の方が悪かったよね』


「当たり前だ。初対面で罵る奴に、別荘建築なんて任せられるかよ」




 俺は激しく怒っていた。もし俺が物に当たる人間ならば、やっさんのギルドごと魔法で木っ端微塵にしていたぐらいだ。




「はぁ......やっぱ人間ってクソだなぁ。どいつもこいつもゴミばかりだ」


『黒いねぇ。まぁ、今回に限っちゃお兄さんは被害者だし、シリカは何とも言えないね』


「あぁ。これから森林で狩りをしてストレス発散するぞ。それからイニティに行く」


『そういう本来の目的を諦めないの、シリカ好きだな〜』


「俺も俺が好きだわ〜」



 そうして胸の黒い部分を外に出すと、俺はクトネシリカを手で持って、アルトム森林へ歩いていった。





 さて、何故俺がここまで怒っているのか。それはやっさんのギルドへ行ったのが始まりだ。




 ◆◆




「失礼します」



 やっさんから送られたマップのマークに向かうと、そこは大きな木造のギルドハウスだった。


 木の味が見る者を魅了し、1度前を通り過ぎれば5秒は目に入れたくなる、素敵な家がギルドハウスだった。



「ルナさん! よく来てくれました! ささ、早速案内しますね!」


「ありがとうございます」



 ギルドハウスの中には、数人のプレイヤーが机を囲んで話し合いをしており、その奥からやっさんが出てきた。



「今日紹介するプレイヤーなんですが、名前は『グレア』。ルナさんより少し身長が低い、男性の方です」


「そうなんですか。頼りにしても大丈夫そうですか?」


「はい! ウチのギルドでも屈指の職人ですから、腕は確かです! ただ......正直すぎるのが少し問題ですかねぇ」


「まぁ、正直故に出来る、素直な物が完成するんでしょう」


「そう言って頂けると助かります」



 そうしてやっさんと話しながら案内され、やっさんの後に続いて入るとガッツリ目が合った。


 緑の髪に赤い眼をした、少しやんちゃそうな男がソファに座っていた。



「ルナさん、こちらがグレアさんです」


「初めまして。ルナです」




「ハッ、有名人からの依頼だからって楽しみにしてたが、最近はめっきり見なくなった奴からじゃないですかぁ」




 落ち着け。落ち着くんだ。幾ら神経を逆撫でするような口調で言われたとしても、ここで怒ってはいけない。



「......今回はルナさんの家の建築にグレアさんを紹介したいのですが、グレアさん。請け負ってくれますか?」


「え? 嫌だ。ヤス、コイツの掲示板での噂知ってっか?」


「知る気も無いですし知りたくもありません」


「じゃあ教えてあげよう。『サイコパス』だよ『サイコパス』。人もモンスターも笑顔で斬る、超サイコ野郎って話さ」


「グレアさん!」



 あれ? 俺の評判、意外に優しい?


 正直もっと嫌われてると思っていたが、サイコパス認定だけならかなり優しい方だ。FSとは比べ物にならんな。




「あとコイツの彼女もメンヘラでクソみたいな性格「『グレイシア』」......」




 グレアが何かを言った瞬間、無意識に魔法を使って部屋全体を凍らしてしまった。



『お兄さん! それはマズイ!』


「ル......ルナさん?」



 部屋全体が凍ったとは言え、標的はグレア1人だったのでやっさんには軽い被害しか出ていない。



「............はぁ」



 呼吸が少し苦しい。胸の内にある物が気道を塞いでいる様な感覚だ。



『お兄さん、お兄さん!』


「あ、あ......あぁ。大丈夫。ちゃんと殺す」


「『ダメ!』」


「え?......え?」



 一瞬、2人が言っている意味が分からなかった。


 何故こんなゴミを殺しちゃいけないんだろう。そこらのモンスターより程度の低い人間を、何故放置するんだろうと、頭の中に『?』マークが何個も出てきた。



「ルナさん、1度落ち着いてください」


「大丈夫、落ち着いてる。落ち着いた上で俺は怒っている」


「ですから、その怒りを鎮めて欲しいのです!」


「やっさん......貴方は婚約者や恋人、又は奥さんは居ますか?」


「い、いえ」


「なら分からないでしょう。この怒りがどれ程の物か。自分が愛している人間を、どこのゴミだか分からない人間がその人をクソと言い張った時のこの気持ち......簡単に沈められる訳無いでしょう?」


「......す、すみません」



  別にやっさんは悪くない。腕の良い職人を紹介してくれただけだ。


 あぁ、俺も学んでしまったな。もうプレイヤーと関わるのは辞めようか。

 人と関わることでストレスになるなら、もう関わらないのも良いと思う。



「やっさんは謝らなくていいですよ。取り敢えず帰ります。それともう来ませんから」


「そんな! 待ってくださいルナさん!」


「嫌です。プレイヤーと関わるのは......やっぱり向いていないと思ったので。では」



 俺は部屋全体を凍らした魔法を解除すると、HPが激しく減ったであろう男を一瞥してからドアを開けた。


 そして1歩足を前に出すと、先程行った行為の無意味さを痛感した。




「はぁ......何やってんだろ、俺」




 ◆◆




「やっぱ人間、信じるもんじゃねぇわ」

書いてた時のゆずあめ→( ˆᴘˆ )

書いた後に読んだゆずあめ→( ˆᴘˆ )???


さて、次回こそ忘れられた木工職人という予告をしたかったのですが、しっくり来なかったので変更です。


次回『爺ちゃんしか勝たん』お楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[一言] そりゃ激怒するでしょ。 正直な性格と暴言癖は違うもの。 まして本人に対する暴言ではなく 恋人、友人、親、子供。 自分以外の誰かに対する暴言なら 激怒するのは仕方ないと思う。
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