冬の温もり
ゆずあめです。ゴールデンデン・ウィーウィークにより、テンションが上がりながらゲームをしています。
お陰で皆伝の星が3になりました。やったぁ。
あ、本編はイチャイチャ回です。
「月斗君。私ゃ思うのです。『寒い』と」
「はい。まぁ、12月ですからね」
「そして思うのです。最近月斗君を抱いていないと」
「抱くの意味が違うが、確かにスキンシップが減ったな」
「ですから、こうして月斗君を抱くのです。この冬に1番温かいものは何かと考えた時、真っ先に月斗君の事が思い付いたからね」
「......」
「......」
「......」
「......嫌?」
「何を。大好きだよ」
ユアストで木こり作業に一段落ついた俺達は、一旦家に戻ってからログアウトした。
それから昼ご飯を作り、午後ののんびりタイムで陽菜さんが俺のもとにやって来たのだ。『寒い』と言って。
そして今現在、俺はソファと陽菜に挟まれている。
先程まで『ラフな格好の陽菜、可愛いなぁ』と思っていたのだが、それに勘づいたのか、俺を見るなり直ぐに抱きついてきた。
やはり陽菜の思考察知能力は凄い。考えてる事が筒抜けかもな。
「温かい。陽菜は寒くないか?」
「うん。ずっとこうしてたら寒くない」
「それなら今日は、ずっと抱きついているといい。最近はお出かけもしていないし、ストレス溜まってたろ」
「うん......」
俺が言った事が当たっていたのか、陽菜抱きしめる力が弱々しくなった。
それに対して俺は、陽菜を絶対に離さんと、強く抱きしめながら言った。
「よし、なら明日。日曜日だし出かけようか。適当にブラブラ〜っと散歩に行くだけでもいいから、陽菜と出かけたい」
「うん!」
そう答えて笑う陽菜は、いつもの太陽の様な笑顔だった。
やはり外が寒いからと言って、家に籠ってばかりではストレスが溜まる。
例えゲームでストレス発散が出来ていようと、本物の太陽光が齎す力には到底及ばない。
太陽には力がある。人を元気にする力。生物を育む力。その者の道を明るく照らす力。
これは人間の創った物では再現出来ない、自然の神秘といえる物だろう。
「なぁ、このタイミングで聞くのも何だが......『後で陽菜からもあげる』って、どういう意味だ?」
「あっふぁ〜ん! ええと、その......わすれてくださいぃ」
変な声を上げながら俺の胸に顔を埋めて来たが、今の俺にはあの言葉が何を示していたのかがとても気になる。
イブキやシリカに武器をあげた後にソルが言ったあの言葉......俺は何を貰うところだったのだろうか。
「教えて」
「だめ!」
「お〜し〜え〜ろ〜!」
「だ〜め〜だ〜め〜!」
ゆらゆらと体を動かしながら聞いて見ても、強く俺を抱きしめて答えてくれない。
あ〜、陽菜の持つ柔らかいお山をとても強く感じる。
ちょっと恥ずかしくなってきたな。
「う〜ん、なら質問を変えよう。あの言葉が指していたものは、いつか俺に渡るものなのか?」
「そ、それなら......まぁ」
ちょっぴり恥ずかしそうにしながら抱きつく力を弱め、顔を上げた陽菜とバッチリ目が合った。
長いまつ毛と綺麗な二重の瞼が魅せる、宝石の様な目に俺の視線は自然と吸い込まれていった。
「で? どっちなんだ?」
「いつかは絶対に月斗君のものになるよ。それも、一生ものに」
「一生ものか......うん、候補が多すぎて分からない。取り敢えず、『楽しみにしとけ』って解釈でいいか?」
「うん。それでいいよ」
そう言って微笑む陽菜は、どこか寂しそうで、でも嬉しそうな気持ちで溢れていた。
俺は一体、何を貰う事になったんだろうか。
◇翌日◇
「陽菜さんや。少しくっ付きすぎではありませんか?」
久しぶりのデートで手を繋いでいたら、次第に陽菜が腕を組んできた。これでは歩きづらい上に、通行人に見られている気がして落ち着かない。
「ふふっ、恥ずかしい? 恥ずかしいですかな〜?」
「恥ずかしいのもあるが、結構歩きづらい」
「え〜、じゃあ辞める? 辞めちゃう? 大好きな人に腕を組まれるの、遠慮しちゃう?」
イタズラをする小学生の様な顔で言われた。
う〜む。正直に言って辞めたくない。陽菜も言うように、大好きな人に腕を組まれているのに、わざわざ辞めさせるというのは自分に辟易する。
「いや、いい。続けてくれ。俺は陽菜だけを見てるから、大丈夫だ。それに、そもそも周りの評価を気にする必要は無いからな。このぐらいの行為なら喜んで受け入れよう」
「ん? 周りの評価とは?」
「それはアレだ。自分を客観的に見た結果、三人称視点の自分の評価すら『他人の評価』と感じているから生じる思考だな。
例えば、そうだな......俺は陽菜ではない。これは分かるな?」
「うん。私は私だし、月斗君は月斗君だもん」
「そう。それは『一人称視点』だから出る答えなんだ。相手の思考も感情も分からない、だけどそこに居る存在。ハッキリ言えばそんなもん」
「ほうほう」
「そして俺の言う『他人の評価』は、ただの客観的視点だ。自分が何かの行動を起こし、その先にどんな未来が待っているかを考える......要は『通行人の気持ち』だ」
「なるほどね。今の私達を他の人が見た時に考える事を、月斗君も考えていると......見られてる側なのに」
「そうだ」
「へぇ〜、面白い考え方してるね。もっと好きになってきちゃった」
「ありがと」
周囲の目を俺の変な思考と陽菜との会話で遮って歩き、大体30分くらいで目的の場所に着いた。
「やっぱデート言えばデパートでしょ!」
「そうか? ......そうか。定番か」
「うん! それに12月だし、そろそろ新年の用意もしなきゃでしょ?」
「そうだな。師走と言うくらいだし、俺達も忙しくなるよな」
あの『師走』って言葉、語源とか由来が沢山あるんだよな。
一言に『師が慌ただしく走る』様子と言っても、そもそも『師』は何を指すのか、何故慌ただしく走るのか分からない。
ただ、今は『年末の大掃除や正月のおせちの準備で忙しい』と取れるから、そこまで気にする事じゃないのかもな。
そんな事を考えながら歩いていると、陽菜が腕を優しく叩きながら聞いてきた。
「ねぇ、クリスマスって何か予定ある?」
「ある」
「嘘ぉん!」
「陽菜と過ごすって言う、超重大イベントがある」
「おっほぉ......下げて上げるスタイルか〜」
「で? クリスマスの予定を聞くって事は、どこか遊びに行きたいのか?」
「ううん。月斗君が何か計画してるなら、私も一緒に考えたいな〜って思ったの。1人じゃ出来ない事ってあるでしょ?」
何だこの生き物は。優しさの塊で出来ているのではないか?
そんなに優しくされちゃったら俺、惚れちまうよ。
「惚れたわ。クリスマスは家でゆっくりするか」
「えへへ、分かった。お家デートだね!」
「そうだな。あ、俺さ、何個か絶対に1人でクリア出来ないゲームがあるから、それクリアしたい」
「お、いいねぇ。月斗君でもクリア出来ないゲームがある事にビックリだけど、やりたい!」
「あぁ。楽しみにしててくれ」
俺の未クリアゲーを陽菜とやるなら、アレが良さそうだ。
あのゲームは、見方を変えれば神ゲーなのだが、そのまま純粋に楽しもうとするとクソゲーに成り果てる。
そのゲームの名前は『プロ・ガン 〜至高の射手〜』
TPSに分類される、アクション要素のあるスナイパーゲームだ。
プロガンはVR技術が進歩してから作られたコンシューマーゲームなのだが、その中でもコイツは一際異様だった。
まず、発売してから1週間で100万本も売れたのだが、その1週間、インターネット上にラスボスのクリア報告が1件も出なかった。
流石におかしいと思い、色々と調べてみると原因が分かった。
それはこのゲームのコンセプトにある、とある単語だ。
『君の手で作り上げたライフルでターゲットを倒そう!
モンスターを倒して得られる部品を装着して、モンスターの親玉や、悪の組織を狙撃しよう!』
これの何がおかしいか。それは『モンスター』の要素だ。このゲームは製作陣の頭がおかしいのか、部品を『入手』するモンスターは弱いクセに、部品を『強化』するモンスターがアホほど強いのだ。
ま、そこら辺は実際にやる時に復讐......復習しよう。
「いや〜楽しみだ。2人なら絶対にアイツを倒せるはずだからな」
「月斗君、脳がゲームに侵食されてるよ」
「大丈夫大丈夫。俺の頭は5割ゲーム、5割陽菜だから。まぁ、最近は陽菜の方がよく考えるんだけど」
「そう? それなら嬉しいな」
よし。今日は陽菜とのデートに全ての力を入れよう。
来る大戦争に備えて、今日からクリスマスまでは心の準備期間だ。
開拓作業と並行して、あのゲームの攻略法を考えよう。
お家デート回をお楽しみに!
次回はリルとお話をする回です。降り積もった疑問の解消や、よりリルが好きになれたらなと思います。
次回も宜しくお願いします!