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Your story 〜最弱最強のプレイヤー〜  作者: ゆずあめ
第10章 穏やかな日々
302/492

結局無意味な1時間

300話記念に番外編を更新しました。

生配信をしたルナ君 (アルテミス)のお話です。

めちゃくちゃ長いので、暇な時にどうぞ。

 



「みんなで魔法を作ろう計画第1弾! 『土を掘り起こす魔法』編の始まり始まり〜!」


「「「............」」」


「いぇ〜い!」



 俺の唐突な宣言に乗ってくれたのは、ソルだけだった。

 いつもはソルと一緒に乗ってくれるリル達でさえ、今回はキョトンとしていた。



「はい解散。それでは第2弾でお会いしましょう。まったね〜」


「まったね〜!」




 ソルが復唱した瞬間、俺達の間に2分もの空白が生まれた。普段はおしゃべりなリルも黙り、メルはこちらを見るだけで1歩も動かず、フーやシリカは『そろそろ木こりに戻っていい?』と言わんばかりの目を向けてくる。


 俺は何かを間違えたのだろうか。それだけが疑問だ。




 そして空白の時間を俺の色に変えるべく、口を開く。




「やってきました第2弾!『木こり作業を簡単に』編の始まり始まり〜!」


「いぇ〜い!」


「今回参加してくれない人間は強制的に戻します」


「「「いぇ〜い!!!」」」



 安心と信頼の恐怖政治。俺の国はもう終わりだ。さようなら。



「ま、簡単なアイディア募集だ。内容はさっきも言った通り、木こり作業を簡単にする為に、木の根っこから掘り出す魔法を作ろうってワケだ」


「つまり父様は、森全体の木を一時的に浮かし、根っこを分断する......と?」


「ごめんよく分かんない。今のリルの言葉だと、この森の木が空中浮遊してるぞ?」


「あっ......え〜、難しいですね」



 何だろう。システムの壁を感じるでもないが、何かしらの距離を感じたぞ。



 それはソルも同じなのか、少し顔を傾げている。





「ルナさん」


「何?」



 突然、フーが俺の顔を見ながら言ってきたんだ。俺に向かって言ってはいけない、最恐の禁句を。





「お1人で考えてみては?」





「あっ......えっ、あっ、スゥ......いや、ま............なんっ......はい。ひとりで......かんがえます」



 ここ20分くらいの、皆の時間を奪った罪悪感が一気に押し寄せてきた。



「ちょっとフーちゃん! それはルナ君に大ダメージだから!」


「今のは刺さったね〜。お兄さん、意外に精神弱いからさ。フー姉ちゃんのその言葉は中々に痛いと思うよ〜?」


「え〜! 私が悪いんですかこれ! というか、何故あれがそんなに大きな影響を......」



「それはね、フーちゃん。ルナ君が普段、1人で考えて動いてきたからだよ。誰に頼るでもない、誰に矯正されるでもない、ある意味孤独の状態だったからだよ?」



「そ、それが何かあの状態になる事に繋がるとは思えません」


「だって、フーちゃんがルナ君と出会ったのは最近の事だからね。ルナ君がルナ君になる前の、昔の彼を見てないと分からない事だからだよ」


「あ......じゃ、じゃあ私、もしかして昔のトラウマを掘り返したり......」



 何か3人が話しているが、別に俺は考えの否定にトラウマがある訳でも無いし、ただ突き放されたショックを受けただけだから大丈夫なんだよな。



 そして3人に立ち直っていることを伝えようとした瞬間、俺に天啓が舞い降りてきた。




「俺天才かもしれん!」


「うひゃあ! 急に何ですか! もう!」



 頭なの中で降って湧いた名案に心を弾けさせると、近くに居たフーを驚かせてしまった。



「あ、ごめんフー。1人で考えたら良い案が出たんだ」


「え? あ、はい。そう......ですか?」


「おうおう。聞いて驚け! 俺は今回、水属性と土属性、それから風属性を合わせた魔法を作るぞ!」



 俺は胸を張って先程思い付いたことを皆へ話す。



「──ってな感じで、スマートに木こり出来るとは思わんか?」


「良いかもね! 取り敢えず魔法作っちゃおう!」


「がんばれ〜おに〜さん」


「がんばる〜おに〜さん」



 一応皆にもこの、『スマート木こりプロセス』を説明したので、ここからは肝心な魔法を作る作業だ。


 今回の開拓作業、殆ど計画通りに行っていないのが素晴らしいな。俺は計画を狂わせるプロなのかもしれん。



 そして、ああでもないこうでもないと魔法の作成をする事10分。遂にスマート木こり魔法が完成した。



「皆〜! 出来たぞ〜!」



 斧での木こりを再開していた皆を集め、俺は魔法を使って見せた。



「いくぞ。『ディヴィジョン』」



 俺が魔法を唱えた瞬間、目の前にある木が根ごと土から押し出され、数秒後に出現した2つ目の魔法陣が水の刃で根を切り落としていき、最後にホースの様な勢いの水が土を洗い流して終了した。



 プロセスとしては、大地魔法で根っこを含む周囲の土を盛り上げ、海魔法と暴風魔法を組み合わせた水の刃で、集める必要のある木と不要な根っこ分けたんだ。


 敢えて時間をかけて発動する魔法を作る事で、消費MPを抑えたんだ。


 デメリットの多い魔法はそれだけメリットもあるからな。



「これでインベントリに入れて......ほい、完了と。どや?」


「思ったよりも便利そうだけど、消費MPは大丈夫?」


「え〜っと、普通は1回で5000消費だな。大丈夫だろ」


「......2回使えば私は倒れるのですが、ルナ君はその辺をどうお考えで?」


「すみませんでした」



 ケリドウェンの効果とマナ効率化という、魔法使いが喉から手が出ちゃった結果クリーチャーになる程の効果を持っていることを前提に考えてしまっていた。



「でも父様。それなら私は使えるのでは?」


「んだな。箒に仕込むから貸しな」


「はい!」



 リルはケリドウェンの効果持ちだしな。これは俺とリルだけが使うしかないか。



「いいな〜、私も使いたいな〜」


「ソルさんやい。あなたは先程、消費MPが多すぎると言ったばかりではないですか」


「でも使いたいも〜ん。お願い、魔法陣見せて? 先っぽだけ。先っぽだけでいいから!」


「それちゃうヤツ......はぁ。分かった、あげるよ。これ、木こりにしか使えんから気を付けてな」


「うん! ありがとう!」



 ソルに魔法のレシピとも言える魔法陣のコピーを渡し、そこで気付いてしまったんだ。




「なぁ、それぞれの得意な魔法で切れば良くね?」



「「「あっ」」」




 はい。無駄な時間をありがとうございました。これにて開拓作業は終わりですお疲れ様でした。



「アルスは雷器を使えばいいし、リルはツクヨミさんで両断出来るし、フーも神度剣があるもんな。良い感じの武器が無いのって、シリカとイブキだけか?」


「パパ、わたしは?」


「メルには大剣をあげるよ。耐久値だけが取り柄の、ただの分厚い板だから好きに使ってくれ」


「わかった」



 神鍮鉄をミルフィーユの様に何層も重ねる事で完成した、耐久値が無限のクソザコ大剣をメルに渡し、シリカとイブキに残るように言ってから皆を持ち場に戻した。




 そして俺は、2人にあげられる物は無いかとインベントリを漁る。



「オートマタの部品だらけで腹立つな。非表示にするか」



 中身だけ集めて入れ物が無い、悲しいオートマタの部品を非表示にしてインベントリを漁ると、良い感じの剣と刀が発掘された。



「シリカ、イブキ。こんなんどう?」


「おっ、おっ......おぉ〜! 何これ〜!」


「これは......宜しいのですか?」


「あぁ。それは好きに使ってくれて構わない。別荘が完成したら2人の武器を作るから、その時に乗り換えるなり何なり、好きにしてくれ」


「ありがとうお兄さん! 大切にするね!」


「宝物にします」



 シリカにはオートマタのドロップ品である『鋼のインゴット』とアダマントの合金で作った、攻撃力が1,400もある剣を。


 イブキには試作品の宝石の刀を渡した。



「イブキ、その刀は驚く程脆いから気を付けてな。遊び半分で作ったやつだから、作りが甘いんだ」


「こんなにも美しいのに遊び半分とは......承知しました。扱いには十分、気を付けます」



 そりゃあ、性能を気にせずに見た目だけの宝石刀だからな。使う事を前提としてないんだ。




「うんうん。それじゃあ手作業で木こり、終わらせるか。一応数日かけるつもりだから、そこまで根詰めなくていいぞ〜」


「木だけに?」


「そうそう。木だけに......って何言わせとんじゃい!」



 いつの間にか俺の背後に回り込んでいたソルが茶々をいれてきた。



「ふふっ、後で私からもあげるね」


「え?」


「じゃあ私は戻りま〜す」



 ソルが意味深な言葉を残し、風の様に消えて行ってしまった。


『私からもあげる』とは何を指しているのか。そんな疑問に思考を引っ張られつつ、木こりの作業が再開された。


次回『冬の温もり』お楽しみに!




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