人に好かれても動物には好かれない
貫通弓と貫通ライト、両方とも作って思ったのですが、護石を持ってませんでした。
そもそも弱特の護石すら持っていないので、色々と論外でした。つらい。
「......なんで......俺の何が悪かったと言うんだ」
ドゥルム鉱山にてアースモール君を探す事3時間。殲滅とリポップを繰り返し、何とか出会えたアースモールに今、逃げられた。
「主。流石に出会い頭に四肢を落とし、『テイムされてくれ』はないかと。相手の知性を考えるに、ただの恐怖の対象です。ですから死んだのです」
「いや、ちゃんと『手加減』したから! アイツ生きてるからな!? 『服従か死か、好きな方を選べ』って言っただけじゃん!」
「確かに、肉体は生きていましたね。ただ、第3の選択肢である『逃亡』を選びましたが......アレでは精神は死んでいるかと」
アルスが然もありなんと言った表情で頷き、アースモールの居た場所を見つめた。
「はぁぁぁもうやだ。次のエリアにしない? ここ無理〜!」
「そうですね。季節柄日没も早いですし、明日にしますか?」
「いや、帰らん。夜行性のモンスターもいるだろうし、第一ここで帰ったら俺のやる気が虚しく感じる」
「承知しました。お供します」
「ん。ありがと」
そうして1度ペリクロ草原を経由し、次の目的地であるニクス山へ転移した。
環境適応魔法(仮)のサーキュレーションを使って体温を保ち、俺とアルスは雪山を歩く。
「なぁ、何かモンスター少なくね?」
「今宵は満月ですから、モンスターも凶暴化するはずですが......」
「なぁ、ここの満月って宵斬桜が出るって事と同義じゃね?」
「あぁ、確かに。盲点でしたね」
「それ気に入ってんなぁ」
最悪だ。折角モスマンモスを狙って来たのに、み〜んな桜にビビって出てこなくなってやがる。
俺、世界に嫌われているのかもしれん。いや、俺が世界に適応出来ていないのかもしれん。
本来『こうあるべき』動きに、俺は自由気ままな猫の如く、フラフラと歩いているのだろう。それ故に得た物もあるが、失った物......見付けられなかった物が多い。
「アルス。桜斬り倒すぞ」
「御意に」
「ま、他の語り人が居なければ、だがな」
「はっ」
突発的な思い付きで俺達は山頂を目指し、日が落ちてから宵斬桜の出現を待った。
「──お、一番乗りィ!......ってあれ、人いる」
2人で適当に作ったかまくらでお茶を飲んでいると、他のプレイヤーの声がした。
今回は色々とダメそうだ。宵斬桜も諦めようかな。
「あの〜、すんません。桜待ってましたか?」
かまくらの外から6人の足音が聞こえ、その内の1人が中にいる俺達に声をかけてきた。
「いえ、そちらに譲りますよ。俺達は誰も来なければ斬り倒す予定でしたので」
「あ、そっすか〜。では遠慮なくもら......ってアンタ、もしかしてルナ!?」
声をかけてきた茶髪の男が、俺の顔をしっかり見るなり叫び出した。
「はい。ルナです」
「マジ......え、嘘......あ、初めまして。俺はユウキっていいます。よろしくお願いします!」
「あ、はい。別に偉い人間でもないので、さっきと同じように喋ってください」
急にペコペコとしだすユウキ君に何事かと他のプレイヤーが集まると、皆ユウキ君と同じような対応をしてきた。
「主。主は語り人から好かれているのですね」
「これを見て好かれていると思うか? 明らかに畏怖の念だろ」
アルスの突拍子もない発言に答えると、ユウキ君が首をブンブンと横に振った。
「そんな事ないですよ! 俺達は皆、ルナさんに憧れてこのゲームを始めたんですから! ですから俺達、ルナさんの事が大好きっすよ!」
「お、おう。それはどうも。でも俺、婚約者いるから......」
「そういう意味じゃないです! 天然ですか!?」
「いや? 全部理解した上でボケてる」
「えぇ......タチ悪ぅ......」
ごめんユウキ君。初めましてなのにエンジン全開で。本当にごめんね。
「ステラ、『鼓舞の光』。さぁ、宵斬桜戦頑張ってくれ。あと数分で出るからバフ掛けといた」
「ありがとうございます!」
「じゃあ俺達は行くよ。ユウキ君達の勝利を祈ってる。『転移』」
そうして今回は親エリアを経由せず、ディクトを経由してからフォラス鉱山へ転移した。
「いや〜、まさか俺に憧れた語り人とは。嬉しい限りだねぇ」
「それをあの語り人達に言えば良かったのでは?」
「正論あざす。でもな、俺、あんまり知らない人間に心の内を話したくないんだ。それが語り人なら尚更な」
「何故ですか?」
「そりゃあ、アイツら心の内で何考えてるか分かんねぇもん。アルスは経験ない......いや、出来ないと思うんだけどさ、『貴方のファンです!』って言われて、喜んで仲間にした奴に後ろから殺された時、どんな感情になるか分かるか?」
「いえ。分かりません」
「それで良かった。経験して欲しくないしな。ちなみに答えは『無』だ。全ての人間が信じられなくなるぞ〜」
「そう、ですか」
FSの地獄のエピソードランキングで7位くらいの話だな。
当時はニヒル以外の人間とも遊んでいたから、俺の事を知っている人間も知らない人間も混じって、良い経験になったもんだ。
ファン裏切りはビビったけど。
「人間、あまり有名になりすぎるもんじゃない。ある意味で人の闇に深く触れるからな............さぁ、こんな話は辞めて、とっととオートマタやらゴーレムやらテイムするぞ!」
「御意に」
自分語りはそこそこに、今はテイムに没頭しよう。
『ヂュヂュヂュ!』
「アダチェウスか。要らないな」
「では我が。『雷』」
『ヂュ......』
アルスの無慈悲な雷撃により、ハリネズミ君ことアダチェウスはポリゴンとなって散った。
「素材のストックあるし、経験値もショボイ。出会うだけ時間を取られるな、これ」
「はい。ドゥルム鉱山とモンスターの出方が違います故、効率もガクンと落ちるでしょう」
「せやな。ま、のんびり行こうや」
「はっ!」
綺麗にお辞儀をするアルスを横目に、俺はマサキやコキュートス君に開拓向けのモンスターを聞くべく、チャットを送る。
『2人に聞きたい。島の開拓向けのモンスターを』
『ルナ、島取ったのか?』
『どこの島を取ったんですか? 行ってみたいです』
『いや、まだ取れてない。でもソルに一任したから問題ない。それと来ない方が良いぞ。全モンスレベル500超えの化け物がウジャウジャいるから』
『『怖っ!』』
だよな。俺も怖い。しかも見た目も気持ち悪い虫だらけだし、SAN値もゴリゴリと削られていくからな。
『んで、ソルが取った島の開拓に必要なモンスターをテイムしようと思うんだけど、プレイヤー視点で何かオススメない?』
『ソルが取れる事を信じてやまないのな。モンスターに関しては土属性使う奴なら何でもイけるだろ』
『俺も同意です。細かい分類とかは分かりませんが、前に犬子さんが『オートマタ、農業も戦闘も掃除も出来て便利で良いよ』って言ってましたよ』
『ありがとう。やっぱオートマタかぁ。今、オートマタとゴーレムをテイムしようとフォラス鉱山に来てるんだよね』
『草。とっととテイムしろよ』
『マサキくぅぅぅん? そう簡単にテイム出来ないのがこの世の理だよぉぉぉ? 君、理解出来るぅぅぅ???』
『ウザすぎて草枯れました』
『砂漠化ですね』
『俺の心は潤ってるけどな。取り敢えず、2人ともありがとう。俺はオートマタをテイムするよ』
そうしてウィンドウを閉じようとすると、新たにマサキから書き込まれた。
『あ、オートマタはテイムじゃないぞ』
『ん? どゆこと?』
『オートマタは倒した部品を組み立ててテイムするんですよ。オートマタ側からはデベロッパーと言われるので、そのまんま開発者ですね』
『なるほど。なら殲滅してくるわ。改めてありがとう』
『ガンバ!』
『頑張ってください!』
いや〜、まさかの情報だった。オートマタはテイムじゃなくて組み立てなのか。
確かに以前倒した時も、歯車か何かがドロップしてたが、それを使うんだろうな。
「アルス。嫌な予感がする」
「どうされましたか?」
「オートマタの組み立てに必要な部品。軽く数千個は必要な気がしてきた」
「......盲点でしたね」
流石に今回の気付きは面倒だと知ったのか、少し引き気味の『盲点でしたね』だった。
ここは1度、オートマタの組み立てについて調べるべきか。
流石に数千数万と素材が必要になれば、年内にオートマタの開発すら終わらない、悲しい結果になってしまう。
でも調べたくないんだよな。こういうコンテンツって、最初から調べずに、初見で壁にぶち当たるのも醍醐味だから。
う〜ん、どうしたものか。
「取り敢えず実行してから考えよう。オートマタも一応テイムを試して、無理そうなら部品集めだ」
「御意に」
「あ、それと実験もしたいから、オートマタを見付けたら倒す前に俺に渡してくれ」
「何を実験するので?」
「生きてる状態で部品を取り外す」
「............」
ちょっと色々とグロテスクに思えるが、相手は機械的な人形だ。お人形さんだ。
ちょっと中の部品を頂いて、最後に首チョンパする、悪逆非道プレイをするだけだ。
「じゃ、行くぞ〜」
「......はい」
少し引き気味のアルスを連れて、俺はフォラス鉱山の奥へと足を運んだ。
300話まで完成しているので、予告しておきます。
次回『シテ.....コロ...シテ.....』お楽しみに(?)
???<あらあら、これは楽しみに出来ませんこと。