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Your story 〜最弱最強のプレイヤー〜  作者: ゆずあめ
第10章 穏やかな日々
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なるほど。ここが地獄か

ラージャン出ないじゃん!って思っていたら、まだ私のハンターランクは6でした。


緊急クエストやり忘れていた.....クッ!

 


 やっさん達と出会ってからリアルで2週間が経ち、11月も終わりに近付いてきた。



 俺はこの2週間で南へ東へ海を飛び、別荘を建てるに良さそうな土地をずっと探していた。


 途中でMPが切れて海に落ち、苦しくない溺死を数度経験したり、ドラゴン15体の群れに撃墜されたりと色々とあったが、めげずに空を飛び回っていた。



 そして今日、土曜日の朝。遂に発見したのだ。



 別荘を建てるに良さそうな島を。






 だが──






『グォォォォ!!!!』

『ガァァァァァァァァ!!』

『キュィィィ!!!』



「なるほど。ここが地獄か」



 そこは、魔境とも言える地獄の島だった。



 そこに現れるモンスターは全てレベル500越え。複合属性魔法で攻撃するのは勿論、罠や巨大な巣を作っているモンスターで溢れていた。


 ドラゴンですら恐れるような巨大な芋虫。そしてその成虫であろう、黒すぎてぼやけて見える蝶。

 更には全身に氷の羽が生えている美しい巨大な鳥など、どれも化け物が勢揃いだ。



「リル、メル、アルス。来い」



 俺はテイム組3人衆を呼び、それぞれに武器をプレゼントした。



「リルはツクヨミさん・改二を。アルスは俺の武器の試作品の全てを。メルには龍核を」


「「ありがとうございます」」


「パパ、いいの?」


「あぁ。ちょっとこの島のモンスターを全て蹴散らすだけだ。俺の力よりお前達の力の方が大きいからな。遠慮せずに使え」


「うん」


「じゃあ皆。散開!」



 俺が指示を出すとリルとアルスは左右に分かれ、メルは俺の傍で龍核を持っていた。



「いただきます」



 メルがそう呟いてから龍核を齧ると、メルの髪が銀色から雷を纏った金色に。左右の目は変色し、右目が金、左目が緑色になっていた。


 そして最後にドラゴンの角が頭から生えると、こちらにくるりと回ってからはにかんだ。



「じゃ、じゃあ行ってきます。待っててね?」


「おう。気を付けてな〜」


「うん!」



 いつもの子供っぽい喋り方からしっかりとした喋り方に変わり、背中から厳つい翼を生やして飛んで行った。



「目には目を。歯には歯を。地獄には地獄をぶつけてやろう......クックック」



 化け物みたいなモンスターが揃う場所に、化け物を歯牙にもかけない人物を送り込む。


 些か敵が弱い気もするが、リルの安全を考慮すれば丁度良いくらいだろう。



『グギャァァァァ!!!!』



 3人の撃ち漏らしたであろう芋虫が、俺に向かって吠えてきた。



「キッッッモ。取り敢えず君達を根絶やしにしないと島が取れないんでねぇ。悪いけど消えておくれ」



 俺はそっとイグニスアローを行動詠唱で連発し、250本ほど撃ち込んだあたりでポリゴンとなって散っていった。


 人差し指を指揮者の様に振るだけで魔法を飛ばせるのは、非常に気持ちが良い。何せ、1度振っただけで2本のイグニスアローが出るので爽快感があるのだ。



「つ〜か硬すぎだろ。こんなの普通のプレイヤーはどうやって倒すんだよ」



 戦神を使っても80本は撃ち込まなければならないし、更に不死鳥化を使っても40本は確定だ。


 HPがバカみたいに高いのか防御力がぶっ壊れてるのかは知らんが、これだと掃討に時間がかかるだろう。


 そうなってはダメだ。モンスターを根絶やしにするには速度が重要なのだ。何故か?



 それは、島を手に入れる為だ。



 俺は今回、土地探しをするに当たってフレンドの全員に聞いたんだ。『自分の土地ってどうやってゲットするん?』ってな。


 すると皆は口を揃えてこう言ったんだ。


『島なら制圧。陸なら買う』と。



 陸に関してだが、イニティなどの街にも空き地があり、その土地をリテで買えるらしい。だけど値段が馬鹿にならないらしく、ヴェルテクスの敷地と同じだけの大きさを買うとなれば、軽く億は必要になるんだとか......



 そして島の方はめちゃくちゃ単純だった。


 その島に巣食っているモンスターを全滅させることで所有出来るとの事。

 だけどこれは運ゲーと言われているらしく、弱いモンスターが大量に居るパターンの島は当たりで、強いモンスターが大量に居るパターンが大ハズレらしい。



「俺は世界で最も不運な男と言えるだろう......化け物しかいない島に来ちまったもん。ちくせう」



 ちなみに、マサキ情報によると今までに発見されている島で1番難易度の高いと言われている敵のレベルが、確か350だったはずだ。


 マサキ......最高難易度更新したぞ。後で素材を分けるからな。



『父様。ボスらしきモンスターと遭遇しました。現在はアルスさんと共に交戦中です』


『パパ。島の周りは全部倒したよ。後は真ん中にいるデッカイのだけ』



 おや、娘ズから連絡が来た。俺も急いで向かおう。



『お疲れさん。メルも真ん中のヤツに向かってくれ。俺も直ぐに行くから』


『分かりました。では戦闘に参加します』


『行っくよ〜』



 マサキ情報にはボスがいるなんて事は無かったが......高難易度故だろう。頑張って倒そう。



「『不死鳥化』『フラカン』『戦神』『ストレングスエンハンス』『インテリジェンスエンハンス』『ブラストボム』」



 俺は大量のスキルと魔法を使い、『最初からクライマックス戦法』で島の真ん中に向かって飛んだ。


 木々の上空を飛び、凄まじい速度で流れていく景色はとても爽快だ。風が体を刻む感覚でさえも、心地よく思える。




「──ほいっ、到着」



 3人が交戦している場所は丁度島のど真ん中で、この部分だけ木が生えてなく、少し広い草原になっていた。



「パパ、そっち行った!」



『ギュキキキ!!!』



 金属を打ち合わせた様な音と濁った声を出すモンスターの見た目は、一瞬で逃げ出したくなるような巨大なムカデだった。


 無数の足をパタパタと動かしながら移動する姿は、ホラーとグロを掛け算で合わせた様な、地獄をその身に写した存在だ。



「うひぃぃぃぃ! キモイキモイキモイキモイ!!『イグニスアロー』『イグニスアロー』『イグニスアロー』ぉぉぉぉ!!!」



 嫌だ。無理。マジで無理。生理的に無理。帰りたい。




『ギュキ?』




 俺のへなちょこイグニスアローをものともしないムカデは、その気持ち悪い頭部を傾けて俺に目線を向けてきた。



「うぅぅぅぅ......」


「主、1度退避を」



 いつの間にか後ろに来ていたアルスが俺を抱え、大きく後ろへ下がってくれた。



「パパ、大丈夫?」


「大丈夫ですか?」


「無理......ムカデはマジで無理......3人に任せていい?」


「それは難しいです。せめてソル様がいらっしゃれば倒せるかと。我達にあのモンスターは強すぎます」


「えっ、人数増やしたら最初からやり直しなんだけど......仕方ない。すまんが1回帰るぞ」



 苦渋の決断だ。殲滅中の島に別のプレイヤーが来ると、また1からモンスターがスポーンするシステムなのだが今回ばかりは仕方ない。


 ソルと指輪に託したい。俺にはアイツが倒せない。



『ギュキキキキキ!!』


「キモイ......『テレポート』」




 最後に一撃加えようとしてきたムカデの前で空間魔法を使い、俺達は家の庭に帰ってきた。




「はぁぁぁァァッフゥ」



 まさかの出来事に大きな溜息をつき、芝生に仰向けで寝転がった。


 式神達とメイド達が手入れしている芝は、ベッドにも負けず劣らずのやわからさと寝心地だ。



「主、我はソル様を呼んで参ります」


「頼む......あ、ムカデって事も伝えてあげてくれ」


「御意に」



 アルスが城の方へ向かうと、リルとメルも俺の横で寝転がった。


 今のメルは龍核覚醒状態を解いており、いつもの銀髪金眼スタイルだ。



「にしても、父様に苦手なものがあるとは思いませんでした」


「うんうん。パパ、なんでもいけるとおもってた」



「残念。俺はそこそこ虫が嫌いだ。正直、あの芋虫が限界だった」



「むしなんてこわくないのに」


「ですねぇ。意外な一面を見れました」



 嗚呼、悲しきかな。俺は虫に対しては無力極まりない。

 昔は虫を素手で触っていたけれど、中学生くらいから拒絶するようになったんだ。


 戦闘でハイになっている時ならまだしも、島を入手するという重大な任務をこなしている時は絶対に無理だ。




「ル〜ナ君。ムカデに負けたって聞いたけど、大丈夫?」




 アルスに呼ばれたソルが、寝転がっている俺を覗き込みながら声をかけてきた。


 嬉しい。ソルが心配してくれるのはとても嬉しい。だがな、1つだけ間違いがある。



「負けてない! この翼を見てみろよ、死にたくても死ねないんだよぉ! だから負けてない!」


「おっと、それは失礼しました。それで、そのムカデを私が倒せばいいの?」


「......お恥ずかしながら俺には倒せそうにないので、討伐の程、よろしくお願いします」



 直ぐに正座し、ソルに向かって頭を下げた。最早土下座に近い。




「フッ、よかろう。夫を支えるのは妻の役目。私が相手しようじゃないカッ!」




 これは何も言わずにお願いしよう。ツッコんだら負けだ。こういう時のテンションはそのままにしておくのが正解だって、じっちゃんが言ってた。



「リル、メル。ソルのサポートをしてやってくれ。メルはこれ、雷龍と風龍の龍核。同時に使う時は考えて使えよ」


「うん。ありがと、パパ」


「分かりました。母様をお手伝いします!」



「じゃあルナ君。帰ってくるまでゆっくりしてて。絶対に島、取ってくるから」




 何故だろう。ソルが言うと『島』と言うより『シマ』に聞こえる。

 まぁ、暴力で勝ち取り、守る場所だからあながち間違っていないんだが......う〜ん。




「3人とも、行ってらっしゃい」



「「「行ってきます!」」」



「『テレポート』」



 3人を地獄の島に送ると、俺は再度、庭の芝生に寝転んだ。




「のんびりさせてもらおう。頑張れ、3人とも」




 まぁ、のんびりしないんですけどね。ハハハッ!

メル回で龍核覚醒について深掘り出来たらな、と思います。


折角『穏やかな日々』と銘打っているのですから、ゆっくりハイペースに休みなく激動の日々にして行こうと思います。


では、次回も楽しんでください!

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