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Your story 〜最弱最強のプレイヤー〜  作者: ゆずあめ
第10章 穏やかな日々
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初心に帰って

楽しんでくださいな( ;ω;)

 



「おぉ、出した剣、全部売れてんじゃん」



 建築学の勉強をした次の日、俺はユアスト内にて、売りに出した『ルナちゃん特製☆アイアン♪ソードっ!』が全て売れている事を確認した。



「よかったね、パパ」



 俺に引っ付いてきたメルが無表情でそう言った。



「あぁ。良かった良かった。でも相場がまだ理解出来て居ないから、これもまた勉強しなきゃだな」


「めんどくさそう」


「面倒臭いです。正直、この性能なら相場のちょい上くらいの値段でもポンポン売れると思うが、如何せん他人にアイテムを売る経験が無い」



 俺は基本的に対人戦ゲームをやってきたからな。アイテム売却機能があっても、それは設定された固定値の値段で売っていたんだ。


 こういう、MMOによくあるプレイヤー間のアイテム売買は一切の経験が無い。それ故に勉強しなければならない。



「ま、過度な値段で売ってたら暗殺して教えてくれるだろ。その時に安すぎたのか高すぎたのか聞こうじゃないか」


「そのかくにんほうほう、ママがおこるとおもうけど」


「......仕方ないじゃん。人と話すの、まだ怖いし」


「そうなの?」


「そうなんだよ。はぁ、昔みたいなコミュ力を取り戻したいなぁ」



 昔。それは俺がユアストを始めたての頃だ。フェルさんやレイナさんなど、様々な人に『友達になってください』と言っていた、伝説のルナちゃん期だ。



「これはあれか。初心に帰るべきか」


「それがいいよ。パパ、だらけるせいかくしてるし」


「それは言わないお約束だ。安定した環境が原因だからな」



 激しい戦闘を繰り返す生活の中で、ひと時の休憩としてソルとデロンデロンの生活を送るのも良いが、俺としてはず〜っとデロンデロンに甘えたくなる。


 このゲームは本当に自由だ。だからこそ、指標や過程など、全て1から自分で立てていかないといけない。



「あんてい? メルにはわかんない」


「ルナにもわかんない」


「ちょっと!」


「ちょっと!」


「まねしないで!」


「まねしてないも〜ん!」


「............」


「ごめん。飴ちゃんやるから許してくれ」


「......うん」



 プンスカと怒りながらも飴で許してくれる所は 凄く可愛いなぁと、そう思いましたね。えぇ。



「よし、帰ろうか。暖かい我が家へ」


「かたぐるまして」


「はいはい」



 両手を伸ばしておねだりする様子は本当に子供だな。

 実はメルが神龍である事、ついつい忘れそうになる。


 俺は念の為に糸を出して、メルが落ちないように肩車をしてから歩き出した。



「どうですか? お嬢様。肩車はえぇですか?」


「うむ。かぜがきもちいいなり」


「それは良かった。このまま適当に帰るべ帰るべ」



 ゆっくりとした足取りで家へ向かっていると、プレイヤーオークションの掲示板から1人の男が走ってきた。



「あ、あの!」


「はいなんでしょう」


「貴方、ルナさんですよね!」



 おっと、ここは華麗に『違います。人違いですよ』と言いたいところだが、あの町内掲示板みたいな所から来たのを見るに、もしかしたらアイアン♪ソードっ! の購入者かもしれない。


 流石に購入者に失礼な態度は取れないからな。ここはちゃんと対応しよう。



「そうですよ。俺に何かありましたか?」


「おぉ......あの、先日、魔剣を出品されましたよね?」



 待て、警戒しろ俺。この流れは強盗の可能性もある。


 幾らこの男が......失礼だが、弱そうなライトアーマーを着用し、いかにも『リアルそのまんま』感のある顔と黒髪をしているからと言って、100パーセント善良なプレイヤーではない可能性がある。



「はい。売れたらいいな、程度で15本ほど出しました」


「やっぱりですか......あの、あの魔剣ってもしかして、錬金術で作りました......か?」


「そうですね。練習で作った剣のコピー品を売りましたからね。それが何か、問題だったりしましたか?」


「い、いえいえ! 他に売られていた剣の情報と比較して、全く同じ性能なんて錬金術かなぁと思いまして、それで気になったんです」


「なるほど」



 なるほど。こいつは何がしたい。


 目的も言わずに世間話をするだけなら帰りたいんだが。やりたい事もあるし、もう話を切り上げてもいいと思うんだ。



「で? ナントカさんはどうして俺に話しかけたんですか?」


「あ、俺、やっさんって言います! レベルは132、鍛冶師やってます!」



 やっさん......やっさんね。俺が初めて出会う、鍛冶師のプレイヤーだな。それも、結構レベルが高い。


 俺が言えた事じゃないが、レベル上げって大変だからな。



「じゃあ改めまして。俺はルナです。上に居るのは娘のメルです」


「ん」



 メルはそう返事をしただけで、ちゃんと挨拶をしなかった。



「こら、ちゃんと挨拶しな。メルの良さが半減するぞ?」


「......メル。よろしく」


「はい! よろしくお願いします!」



 ちょっと狡い言い方をしたが、挨拶は本当に大事だ。


 人と人との最初のコミュニケーションだからな。たった一言口にだすだけで、その人との関係はより深くなるだろう。



「それで、やっさんはどうして俺に話を?」


「あ、そうっす! ルナさん、魔剣の相場をご存知ないですよね?」


「存じ上げないですね。正直、どんな魔剣がどのくらいとか分かりません」


「やっぱり。本当はあの魔剣、相場で見たら35万はしますよ」


「え゛......うそん」



 待て、落ち着け。たかが100分の1の値段で売っただけだ。あの量産品が高値で売れる事より、あの性能で高値が付くこのゲームがダメなのではないか?


 そんな訳が無い。相場を知ろうとしなかった俺に全責任がある。


 さぁ、どうしたものか。あの剣、あれでも月鉄を使っているし、簡単にはコピー品は作られないだろう。


 なら──



「やっさん! 俺に相場を教えてください!」


「ひぁぁぁぁぁ!!」



 全力でやっさんに頭を下げたところ、肩車をしているメルの事を忘れていた。



「あ、ごめんメル」


「もう! しんじられないんだけど!」



 涙ながらに怒るメルに、俺の心はキューっと締め付けられていく。



「いやマジでごめん。怖かったよな......よしよし」


「もう!......こわかったぁ......はぁ」



 肩車から抱っこに変え、メルの頭を優しく撫でることしか出来ない。


 いやはや、本当に申し訳ない。何が申し訳ないって、こんな姿を見る羽目になったやっさんに申し訳ない。



「ごめんなさい、やっさん。メル」


「い、いえいえ! 珍しいものを見れたので俺は大丈夫ですよ!」


「......きょうはパパとくっついてねるもん」


「あぁ。ごめんなぁ」



 ってかいつもくっ付いて寝てるじゃん。


 あ、あれ? 最後に家のベッドで寝たの、いつだっけ? 記憶に無いんだけど......。



「やっさん。改めて、俺にアイテムの相場を教えてくれませんか? もちろん、対価も用意しますよ」


「え、え、え......ま、マジですか? マジで何か貰えちゃうんですか!?」


「はい。情報に見合った物を渡したいと思います。アイテムでも、お金でも、技術でも」


「お、教えます! 俺で良ければ、全アイテムの相場を完璧に教えますよ!!」



 やっさんの目の動き、体の動かし方を見て、完全に騙す気が無いことを確認した。


 そもそも、リアルと完全に同じキャラクターでやってるだろうし、その点から見ても十分に信用出来る......かな?


 割と五分五分だ。いつ裏切られてもいいように、それなりの心構えをしておこう。




「じゃ、フレンドになりましょうか。ここでの明日、時間ありますか?」


「もちろんです! それと明日、了解です! 例え何があっても行きますよ!」



 そうしてお互いにフレンドコードを入力し、俺はやっさんとフレンドになった。



「じゃあ明日、やっさんのタイミングでチャットをください。それから合流場所とか、細かく決めましょう」


「分かりました! で、では!」



 そうしてスキップの様な、跳ねる動きで走っていくやっさんを見送り、俺は家の方向に体を向けた。



「パパからだれかとかかわるなんて、めずらしいよね」


「まぁな。初心に帰って、色んな人と交流しようかなって思ったんだ」


「ふ〜ん......ちゃんとわたしともあそんでね?」


「勿論。どんな事よりも、俺は家族を優先するよ」


「ん」



 それからこの日はずっとメルと遊び、要望通りに一緒に寝た。


 何でもこの数日、ずっと寝つきが悪かったそうだ。


 俺がいない事が本当に心配だったのだろう。そう思い、優しく頭を撫でていたら一瞬で寝てしまった。


 改めて自分のポジションを確認し、俺も眠った。

やっさん誰だよ。って方、正常です。

彼は天の導きでルナ君の前に出てきた、天に愛されし男なのです。


次回は本格的な相場のお勉強をして、初心に帰れたらなと思います。


次回も楽しんで頂けると嬉しいです!

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