神界を繋ぐ神社
近いうちに全話改稿します。270話以上の改稿、何時間掛かるのでしょうか.....。
それと新しい難易度33の曲。マスターの解放すら出来ませんでした。
◆◆
「よし、最後に参拝してから家に帰ろうか」
「神様に挨拶を、ですね!」
「そうだね。数日の間だったけど、お世話になった場所だもんね。挨拶しよう」
マサキとの約束までに時間を貰っているので、今日いっぱいは自由に出来る。そんな理由から、最後は気になっていた神社に行ってから帰ろうと思う。
リアルの方では、学校帰りに晩ご飯の買い物をしたり、お風呂を沸かしたりと、やるべき事はちゃんとやった。
だから、ゲーム内では今日と明日は完全に自由だ。それに加えてリアルでは金曜日なので、晩ご飯を食べた後は結構な時間が出来る。
陽菜と遊ぶ時間も考えて、時間の管理をしよう。
「父様、狐国ではどんな神様が居らっしゃるのですか?」
「分からん。大方予想はつくが、確信は無い」
「そうですか〜」
肩車をしているリルから質問が飛んで来たが、確実な答えを俺は持っていない。
だが、予想はつくのだ。だって......俺達が過去に会っているあの神の場所に行くのって、狐国からが正規ルートのはずだからな。
「ルナ君、あの神社が目的地?」
「だな。リル、降ろすぞ」
「は〜い」
街から少し離れた場所にある神社に着いた。
立派な鳥居が立っており、砂利道の先で待つ拝殿には、既に何人ものプレイヤーが参拝していた。
「はい、まずは鳥居をくぐる前に一礼」
「どうして一礼をするのですか?」
「鳥居の先は神様の領域だからだ。リルは誰かの店や家とかの......誰かの領域に入る時、『お邪魔します』というだろう? それと同じさ」
「なるほど。では一礼を」
そうして3人で鳥居の前で一礼し、鳥居をくぐった。
「真ん中は歩いちゃいけないぞ。そこは神様が通る道だからな。横切る時も、一礼すると良いだろう」
「分かりました」
「ふふっ、本当のお父さんと娘みたいだね」
「「何を。リル / 父様 は本当の親子でしょうに」」
この完璧なシンクロを前に、ソルはリルをウチの子じゃないと言うのか?
そんなの、お兄さんは認めませんからね。例え500人中1,000人が『違う』と言っても、リルはウチの子だ。
「うん。リルちゃんは私達の娘だよ......あ、手水舎で清めないと」
「清め......」
ソルが手水舎で清めているので、リルにやり方を説明する。
「ほらリル。右手で柄杓を持って」
「はい」
「水を汲んで、左手を洗うんだ。俺を見てからやると良い」
「分かりました」
俺はリルが分かりやすいように、見て教える事にした。
細かい注意点などは、やりながら教えるとしよう。
「リル、使う水は3分の1くらいにな。この後に右手と口を洗うから」
「分かりました」
そうして順調にお清めは進み、柄杓の柄を洗って元に戻した所でソルからタオルを貰った。
「ありがとうソル」
「ありがとうございます、母様」
「どういたしまして。ちゃんと出来て偉いよ、リルちゃん」
「はい! 父様に教えてもらいましたから!」
2人が話をしている間、俺はこのタオルが全部1から作られていることに驚いた。
アイテムの詳細を見たら分かったのだが、これは糸から全部、ソルの手作りだ。素材を集めて、それを自分で撚りあわせたのだろう。
この小さなタオルひとつ作るのに、一体どれ程の労力ご必要なのか......想像するだけで気が遠くなる。
「......ありがとう」
「どういたしまして?......さっきも言ってたけど」
「何でもない。参拝の続きをしよう」
俺は2人の手を繋ぎ、御神前へ進もうとすると、横から話しかけられた。
「参拝ですか?」
「狐だ」
「狐です」
「可愛い!」
巫女服姿の狐獣人......昔のソルを彷彿とさせる巫女さんが現れた。手には古くなった箒を持っており、境内を掃除していたのだろう。
「ふふっ、ありがとうございます。それと、正しく参拝して下さって、重ねてありがとうございます」
少し引っかかる言い方をする人だ。気になるぞ。
「いえいえ......と言うより、正しく参拝しない人が多いのですか?」
俺がそう聞くと、巫女さんは顔を暗くして答えてくれた。
「はい。数ヶ月前からよくいらっしゃる語り人の方は、特にですね。正中を歩いたり、手水舎で清めなかったりと、挙句の果てには境内を散らかす方も来るのです」
「「「酷い......」」」
「そんな中、初めてきちんと参拝しているあなた達を見かけて、つい声を掛けてしまいました。すみません」
最後は茶目っ気のある口調で、話しかけた理由まで教えてくれた。
かなり可愛い。
やはり狐獣人の巫女さんは正義だ。あの時、ソルの為に頑張った甲斐があるというもの。今の俺は、2度目の達成感に包まれている!
「ルナ君?」
「はいはい?」
「私も後で巫女服着るもん!」
「あ、うん。別に巫女さんに対抗しなくて良いんだぞ?」
「や。対抗するもん」
あらあら。ソルさんが拗ねてしまった。尻尾も少しピンとしていて、とても可愛らしい。
「すみません。うちの母様が......」
「いえいえ! こちらこそ、要らぬ迷惑を掛けてしまい、申し訳ありません」
不味いぞ。このままでは日本人特有の『無限の謝罪』が始まってしまう。
「気にしないでください。では、俺達は神様に挨拶をして来ますね」
「あ、はい。それと......いえ、何でもありません」
何かあるセリフをありがとうございます!
こういう時のセリフって、100パーセント何かあるからな。フラグなんだよ。精度的には『やったか!?』と同じくらいの回収率だな。
「──リル、お賽銭を入れるんだ。お礼を言うだけならお賽銭は要らなかったはずだが、丁度良い機会だから、お祈りしておこう」
「分かりました」
リルに金貨1枚。つまりは1リテを渡し、入れるように言った。
するとソルが隣でうんうん唸っていた。
「どうしよう。本来なら『ご縁がありますように』って5円を入れたりするけど、ここなら単位がリテだし、なんなら穴が空いてないから色々と不安だね」
「......いい縁、欲しいのか?」
「好きな人の縁はもうあるから、私が望むのはこれから先、仕事をする時の縁だよ」
ソルが素早く俺の意図を察知し、即答してくれた。
分かりきっている事だが、何故か聴きたくなる。やっぱり、ちゃんとした繋がりが無いと不安に感じてしまうな。
......指輪、近いうちに見ておこう。
「ありがとう。にしても、仕事かぁ......ここでそれについてのお祈りをするかどうかは悩み物だが、簡単に『良いアイテムが作れますように』って祈っとこうかな」
「確かに......狐獣人の巫女さんから連想するに、DEX関連が良いね」
そうして1人置いてけぼりなリルを拾い、俺とソルはお賽銭を入れた。
3人とも1リテだけだが、お賽銭の金額は特に関係ないらしいからな。大切なのは、お賽銭を入れるという、『清める』事だ。
これは前に、テレビが何かで見た。詳しくは忘れたが。
「さ、リル。次は『2礼2拍手1礼』だ。神様に2回お辞儀をして、柏手を2回打ち、心を込めてお祈りし、最後に一礼だ」
「分かりました。やってみます」
そして拝礼が終わったタイミングで、前方から小さな鈴の音が聞こえた。
「久しぶりやなぁ、ルナはん」
うわぁ、凄く聞き覚えのある声だ。それに、こうなる予感はしていたんだ。この神社と巫女さんからして、な。
「久しぶり、お稲荷さん」
「せやなぁ。ルナはん『だけ』は全然顔を見せてくれへんかったなぁ。ソルはんは来てくれたで?」
「え、俺への対応冷たくない? っていうか、機会がなかったんだよ......」
ソルは確か、白狐になった時に行ったんだっけ?
でも『俺だけ』っておかしいよな。リルはいつの間に......あぁ、ソルに着いて行ったのか。
「えっと......すんません」
「ええんよ。こうして顔を見れたから、ウチも満足やで?」
「それなら良く......は無いけど、良かった」
それから少し、本物の神様であるお稲荷さんと話していると、掃除が終わったのであろう巫女さんが近付いてきた。
「い、い、稲荷様ぁぁぁぁぁ!?」
「あ、ウチの神社を掃除してくれとる子やん。いつもありがとうな〜?」
「さい!」
「いやぁ、ほんまにありがとう。あんたが綺麗にしてくれとるから、ウチも来やすいし、参拝客もようさん来るやろ?」
「さい!」
おいおい。巫女さん、まともに返事すら出来ていないじゃん。
「お稲荷さん、辞めとけ。その人、まともに喋れてないから」
「あっ......ごめんなぁ?」
「うぃえ! 全く全然問題ありますぇん!」
「ほら」
巫女さんの尻尾がエビフライみたいになっているが、ツッコまない方が良いだろなぁ。余計な事を言って、ソルが尻尾をエビフライにしかねん。
「お稲荷さんって、そんなに凄い方なのですか?」
「この人、これでも神様だからな?」
「そうだよ。確かにマシンガントークをするから親近感が湧くけど、これでも神様なんだよ?」
「これ......でも......ウチ、そんな神様らしくないんか?」
やべ、今度はお稲荷さんの尻尾がサザエみたいに渦巻いてる。
そんなに凹む事だとは思わなかった。
「いや、結構神様してる。本当だから」
「ほんま?」
「ホンマホンマ。だって、ウチらがお参りした後に来たやろ? それがお稲荷さんを神様だっていう証拠やん。確かに転移魔法とかあるけど、さっきのは俺のサーチに引っかからんかったで?
やからこれは魔法じゃない、また別のなんかやろ?」
「ルナ君、関西弁出ちゃってる」
「おっと」
頭からフィルターを介さずに口出すと、出ちまうんだよな。
「まぁ、そこまで言うんやったら信じるわ。あ、もう時間やね」
「早くね?」
「いや、神が下界に居れる事自体難しいんやで? 今回は3人分のお祈りやから、これでも長い事居った方やで?」
「そうか......じゃあ、また今度会おう。その時は俺から行くよ」
「うん。楽しみにしてるな〜? ほなな〜!」
最後に軽く挨拶をすると、お稲荷さんが消えていた。
「......一礼、しておきましょうか」
リルが機転を効かせて場を締めてくれた。やはりリルは良い子だ。
そうして巫女さんが復活したのを確認すると、俺達は王都にある我が家へと転移した。
狐国でやり残した事は、多分無い!
「「「ただいま!」」」
これにて狐国編を終了.....にします。
次回は少し日数が空くと思います。理由は前書きにもある通り、改稿をするからですね。
いや、先に書いてから改稿しましょうか。平行して進めるように頑張りましょう。
そして肝心の第10章ですが、『穏やかな日々』と称して、激動の日々にしていけたらな、と思います。
勿論、穏やかな部分もありますからね!
最後に、ここまで読んでくれてありがとうございます。では!