空間魔法の心得 後編
◇ ◆ ◇
「お、起きたか。飯はこれを食え」
ユアストにログインすると、アルカナさんに出待ちされていた。
「何ですか?コレ」
笹の葉に包まれた、団子状の何かを手渡された。
「兵糧丸だ。それがあれば2日は食わずとも大丈夫だろう」
鬼だな、この人。
最初の2日では『食事?戦闘中にしろ』とか、『水?魔法で使うやつを飲め』とか言うから、酷いな〜って思うくらいだったが......
遂に食事をしない手を出してきたか。鬼だ。
そして俺は、小さな覚悟を決めて兵糧丸を食べた。
「あれ?......意外と美味しい?」
「当たり前だ。不味い兵糧丸を作る奴は、そもそも生きる糧を作る才能が無い。確かにコイツは美味く作るのにコツがいるが......私にかかれば、これくらいは当然だな」
あぁ、この人、褒められ慣れてないんだな。アニメでよく見るツンデレキャラみたいな答え方をしたぞ。
「ごちそうさまでした。では早速、フェニックスと遊んできます」
「あぁ、行ってこい。早くソルの元へ帰る為にな」
「えぇ、ソウデスネ」
お前が連れて来たんだろ!と言いたいが、ギリギリで飲み込んでから小屋を出た。
「『フラカン』」
今回はどうやってフェニックスを倒そうか。闘王のスキルレベル上げは疲れるから、おニューの魔法でチマチマと削ろうか。
『ピィィィィィ!!!!!!』
「ハロー、フェニちゃん」
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『不死鳥:フェニックス』との戦闘を開始します。
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フェニックスと何度も戦うと分かるが、コイツは初期行動が3パターンに分かれている。
1つ目は炎の塊を吐いた瞬間、長い尾羽から熱光線を放つコンボ。
2つ目は翼でなぎ払いをした後、爆発する魔法を使うコンボ。
3つ目は単純、1度空へ飛び、翼から発せられる炎でエリア全体を火で覆うコンボだ。
『ピィ!』
今回は1つ目のコンボだ。1番対処しやすい攻撃だな。
「『ウィンドブラスト』『クロノスクラビス』」
ウィンドブラストはウィンドボムを強化した魔法で、コイツで炎の塊を弾き飛ばした後、クラクラで熱光線を消滅させる。
さぁ、次は2つのコンボに繋がる。どっちだ?
『ピィッピィ!!!』
「うんち個体だな。消火するぞ?テメェ」
2回ピィと鳴いたら、1番面倒な攻撃が来る。これ、9割方回避が出来ないんだよな。
『ピィ!』
フェニちゃんが炎の剣を作り、大きな足で掴んでから空高く飛んだ。
次に炎を全身に大きく纏い、急降下してくる。
この時、絶対にジャンプして避けてはいけない。ジャンプして避けると、掴んでいる炎の剣で体が真っ二つにされるからな。
フェニちゃん、文字通り火力が化け物なせいで、一撃でも貰えば小屋スタートなんだ。
『ピィィィ』
「俺の必殺技、発動......『遅炎』」
フェニちゃんが突っ込んでくるであろう位置に、闇属性魔法が進化した『黒魔法』と、火属性魔法の進化系である『炎熱魔法』から作られた、AGIを大幅に下げる炎の魔法陣を設置した。
『ピィッ!?』
「すまんな。本来は盾で受けるんだろうが......生憎俺は盾を持っとらん。許せ、フェニ太郎」
魔法陣を潜ったフェニちゃんは飛行制御を失い、溶岩の海に浮かぶ僅かな地面へダイブした。
さぁ、ここまでは割と安定した立ち回りだ。ここからは俺も攻めないと、防戦一方になってしまう。
「『戦神』『ダイヤモンドダスト』『アイスランス』『サンダーチャージ』」
バフを2つ掛け、アイスランスでフェニちゃんの目を貫く。
だけどフェニちゃんは驚異的な回復速度を有し、20秒もあれば部位欠損は修復する。
俺はこの間に、バチバチとサンダーをチャージするぞ。
『ピィ!』
「ん。『サンダー』」
フェニ助が回復し、空を飛ぶ寸前にサンダーを喰らわせて地面に叩かき落とした。
『ピィィィ!!!』
撃墜確認、ヨシっ!
「おニュー魔法を召し上がれ?『ネヴァンレイン』」
効果は文字通り、猛毒のデバフが掛る、赤い雨を降らす魔法だ。
『ピェェェ!!』
「綺麗な赤い雨だろう?たっぷり飲んでくれ」
この子は難産だった。
水蒸気からイメージしたので、炎熱魔法、海魔法、気体魔法、黒魔法、自然魔法の複合魔法なんだ。
フェニ次郎が復活するまでの間、何度も何度も試行錯誤のした末、ようやく完成した魔法だ。
故にこの子は、難産とも言えるだろう。
『ピィ......ピィ......』
「おいおい、めちゃくちゃ効いてんじゃん。これは予想以上に良い魔法かもしれんな」
本来なら立ち上がって空を飛んでいるであろうフェニ子が、苦しみのあまり飛ぶことが出来なくなっている。
「んじゃ、また来世で会おう、おフェニ。『魔闘術:魔雹』」
氷属性の魔闘術で頭を殴る。これでフェニ三郎はエターナルスリープに入る。
『ピ......』
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『不死鳥:フェニックス』を討伐しました。
『不滅の火種』×2入手しました。
『スキル書:獄炎魔法』×1入手しました。
『気体魔法』スキルレベルが1上がりました。
『黒魔法』スキルレベルが2上がりました。
『氷結魔法』スキルレベルが5上がりました。
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「んなっ!?超レアドロップ引いた!」
まさかのスキル書ドロップ来た!これは美味しい!
「ありがとう、フェニ太。大切に使わせて貰うよ」
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『スキル書:獄炎魔法』を使用しました。
『炎熱魔法』が『獄炎魔法』に進化しました。
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なんて幸先の良い事か。フェニックス狩りのモチベーションが爆上がりだな。
そうして丸2日ほど戦闘し、全ての属性魔法が超級魔法に進化した。
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条件を満たした為、『空間魔法』を習得しました。
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「アルカナさん!空間魔法、覚えましたよ」
俺は小屋で本を書いてるアルカナさんに、空間魔法を習得した事を伝えた。
するとアルカナさんはニヤッと笑い、俺に数枚の紙を渡してきた。
「......魔法陣?」
「あぁ。これには私が愛用している魔法を記してある。取り敢えず使ってみろ」
「はい!」
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『空間魔法:転移』を習得しました。
【消費MP:5,000】
『空間魔法:テレポート』を習得しました。
【消費MP:20,000】
『空間魔法:クロノスタシス』を習得しました。
【消費MP:10,000】
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うわぁ、ギリギリ使えるようなレベルの魔法だな。
「覚えたな。では説明するぞ。まず『転移』は、お前も知っての通り、任意の場所に瞬間移動が出来る。但し、条件もあるぞ」
「条件ですか」
「あぁ。1つ、『1度来た場所である事』2つ、『転移する人数によって倍に消費魔力が増える事』3つ、『モンスターは転移出来ない』といった感じだ」
「なるほど。理解しました」
ゲームがつまらなくならないように、ちゃんと条件があって良かった。
特にモンスターの転移なんて、罠を張ってそこに転移させれば、どんなモンスターでも倒せてしまうもんな。
そんなヌルゲー、楽しくないだろう。きっと。
「次に『テレポート』だが、これは2つ使って初めて効果を発揮する。簡単に言えば、転移を設置型にした魔法だ」
な〜るほど?これはアレか、ワープゲートと言った方が、しっくりくるヤツか。
「最後、『クロノスタシス』だが......これは時間を止める魔法だ」
「えっ!?止めれちゃうんですか!?」
「あぁ。だが1秒止めるのに魔力が1万、2秒止めるのに10万と、1秒ごとに桁が増えていくんだ」
「......1秒が限界ですね」
「私は2秒だな。ここに来てすぐ、お前がボヤいた時に糸と剣を出したのを覚えてるか?」
「はい。アルカナさんのステータスがとんでもなく高いと思ってましたけど......この魔法ですか?」
「そうだ。せいぜい練習して、使いこなせるようにしておくと良い」
「ありがとうございます」
いや〜、最初はとんでもなく面倒な特殊クエストかと思っていたが、終わってみれば良い特殊クエストだった。
同じ相手との反復練習で、属性魔法の組み合わせや、デバフの重要さを知れた。
「アルカナさん。ありがとうございました」
「ふっ、私の『ゆる弟子』として、これからも励むといい」
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『特殊クエスト:最強への弟子入り』を達成しました。
称号『アルカナのゆる弟子』を獲得しました。
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ゆる弟子......気の抜けるような称号を貰ってしまった。
「では、私は海で遊んでからギルドへ戻るとしよう。お前はソルの元へ帰ってやれ。ではな」
「はい。お疲れ様でした」
俺はアルカナさんが転移して帰ったのを確認してから、称号の詳細を見た。
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『アルカナのゆる弟子』
・『空間魔法』で得られる経験値が2倍。
・アルカナの好感度上昇。
アルカナにゆる弟子と認められる事で獲得。
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「微妙だな。もっと熱心にあの人に聞けば、ゆる弟子じゃなかったのかな?」
ま、過ぎた事だ。気にしても仕方ないよな。
「フェニ君、また会ったらテイムしよ。『転移』」
いつか出会えると信じて、俺は家の自分の部屋に転移した。
「......ソル?何してんだ?」
部屋に転移すると、ソルがベッドでゴロゴロしていた。
「ル、ルルルルナ君!?え、えっと、その......えへ☆」
「あら可愛い......ただいま」
詮索しても可哀想なので、敢えて何も聞かないようにしよう。
「おかえり」
ソルからおかえりのキスを貰い、俺は帰ってきた事に実感を得た。
「よし、明日から遊ぼう。今日はゆっくりしたい」
「うん!そうしよ!」
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名前:ルナ
レベル:395
所持金:53,845,290L
種族:人間
職業:『ヴェルテクスギルドマスター』
称号:『スライムキラー』
所属ギルド:魔法士・Bランク冒険者(0/300)
Pギルド:『ヴェルテクス』
所持因子:『稲荷』他6柱
所持技術:『魔力打ち』他多数
HP:19,710
MP:19,710
STR:19,710
INT:19,710
VIT:19,710
DEX:19,710
AGI:19,710
LUC:9,850
CRT:100(上限値)
SP:1,540
『取得スキル』
戦闘系
『剣帝』Lv1
『魔剣術』Lv100
『弓帝』Lv1
『魔弓術』Lv100
『槍帝』Lv1
『魔槍術』Lv100
『闘王』Lv1→83
『魔闘術』Lv100
『刀将』Lv1
『魔刀術』Lv100
『操帝』Lv1
『魔糸術』Lv100
『走法』Lv0
『手加減』Lv0
『戦神』Lv100
魔法
『炎熱魔法』Lv1→『獄炎魔法』Lv3
『海魔法』Lv30→41
『気体魔法』Lv1→『暴風魔法』Lv2
『岩石魔法』Lv1→『大地魔法』Lv1
『雷電魔法』Lv1→『電磁魔法』Lv5
『氷結魔法』Lv1→『極氷魔法』Lv2
『神聖魔法』Lv1→『光明魔法』Lv1
『闇属性魔法』Lv58→『黒魔法』→『暗黒魔法』Lv1
new『空間魔法』Lv1
『自然魔法』Lv100
『龍神魔法』Lv89→90
『古代魔法』Lv1
『音魔法』Lv100
『妖術』Lv1
生産系:非表示
その他:非表示
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閑話で遊んだ後、第9章へ進みます。
それでは、次回もお楽しみください(o^∀^o)