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Your story 〜最弱最強のプレイヤー〜  作者: ゆずあめ
第8章 夏の思い出
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空間魔法の心......え?お風呂?

ア゛ッ(9割イチャイチャを伝える断末魔)



◇ゲーム内時間2日後◇





「はぁ......一旦落ちますね。流石に疲れました」


「あぁ。あっちに小屋を作っておいたから、そこで寝るといい」


「あざ〜す」



俺はこの2日間、リアルの時間に置き換えて6時間もの間、ず〜っとフェニックスと戦った。


時には水をぶっかけてから首を折って倒したり、時にはファイアボールを使って火力勝負に持ち込んだり、とにかく属性魔法を使いまくった。


何故属性魔法を使ったのかと言うと、アルカナさんに『武器?そんなもの使った瞬間に叩き折るぞ』と言われたので、『闘王』のスキルレベルと属性魔法だけが、グングンと伸びて行った。



この人、神器でも破壊しそうなんだよなぁ。



それにしてもフェニックスは、プレイヤーレベルの経験値が極端に少ない。



この2日で数百体分倒したが、レベルが1も上がらなかった。



「はぁ〜、ログアウトしよ」




火山の中腹に作られた小屋で寝て、俺はログアウトした。






◇ ◆ ◇






「陽菜は......起きてるか」



現実時間で17時、もうそろそろ夕飯を作る時間だ。

そう思って俺は、キッチンの方へ向かった。



「あ、月斗君!お疲れ様」


「ありがとう陽菜。それは晩御飯をお作りになられてるので?」


「うん!今日は豚のしょうが焼きだよ!」


「おぉ......それなら俺は味噌汁でも作ろうか。お米は炊いたか?」


「うん、最初に。じゃあお味噌汁、おねげぇします」


「ほいほい」




俺は陽菜の隣へ行き、棚から小さめの鍋を取り出した。

それから鍋に水を入れ、昆布を投入して火にかけた。


時間が少し掛かるが、美味しいお味噌汁を作る為に、手間を惜しまずにいこう。


そして沸騰直前になったら昆布を取り出し、出汁用の鰹節を入れ、鰹節からも出汁を取った。



この時、鰹節が勝手に沈むまできちんと待ってから、濾し布でボウルに出汁を移し、再度鍋に戻した。



そして小皿に少し移し、陽菜に渡した。



「陽菜、味見」


「ん〜.....塩をほんの少しだけ入れたらもっと良いかも!」


「なるほど。ではひとつまみ」



そうして塩をひとつまみ入れたので、また陽菜に味見してもらう。



「美味しいですぜ、旦那ァ」


「それは良かった。では俺も......うん、出汁」



まだ味噌を溶かしてないからね。ザ・出汁なんですよ。


いやぁ、程よく昆布の旨みと鰹節の香りがマッチしている。これは塩でバランスを整えたからか?


陽菜の味覚のセンス......素ン晴らスィな。



「ではでは。ワカメ、豆腐、おネギをぶち込みまして......味噌溶いて、ほいっ完成」



ウマウマお味噌汁の完成だ。出汁から作ると、少し時間がかかるな。



「じゃあ他のおかずは完成してるから、お椀によそって持ってきてね」


「了解であります」



そして2人分のお味噌汁を持って行き、食卓に乗せてから椅子に座った。



「「いただきます」」



あ〜、今凄く幸せな気がする。陽菜と一緒にご飯を作って、一緒に食べて......まるで夢みたいな空間だ。



「あ、そうだ月斗君。転移させられた場所ってどんな場所?」


「ん?あぁ、森というか、火山だった。そこで幻獣だと思われる不死鳥とずっと戦ってる」


「火山......え?不死鳥?」


「そうそう。全身燃えてる火の鳥。何度倒しても生き返るから、スキルレベルを上げるのに丁度いいってアルカナさんがな」



今でこそ確実に倒せるが、フェニックスの行動パターンを覚えるまでは本当に苦労した。


翼のなぎ払いから繋げられる魔法のコンボなんて、後ろに避けた瞬間被弾確定だからな。酷いコンボだぜ、全く。



「う〜ん......早く会いたいね」


「そうだな。まさかあんな所に飛ばされるなんて、予想もしてなかった」


「うん。でもこうしてリアルで会えるから、私はラッキーガールだね」


「何言ってんだ。陽菜が自分の手で俺を落としたんじゃないか。ラッキーでもなく、陽菜の実力だよ」



とんでもない根回しで俺を引き付けたじゃないか、陽菜。

ここまで一緒に来れたのも、これから一緒に居れるのも、殆ど陽菜が自分から動いたからだろう?


それを運と言ってしまっては、あまりにも勿体ないと思う。



「んふふ、ありがと」


「気にするな」


「や〜だね〜、気にするも〜ん。月斗君を恋に落としたのは私......めちゃくちゃ気にするも〜ん」


「そこに関しては存分に気にしてくれ。俺にダダ甘生活を送らせてくれ」


「もっちろん!私無しじゃ生きていけないようにしてあげる」



気付いてないのか?もう既に、陽菜無しじゃ生きていけないことに......

まぁその前に、陽菜が居なければ死んでいるからな、俺。




「「ごちそうさまでした」」




「さ、俺が食器を片付けよう。後でお風呂入れるから、ゆっくりしていてくれ」


「分かった〜」




陽菜がソファに座ったのを確認してから、俺は食器洗いを始めた。


洗っている最中、陽菜にガン見されていた事以外は特に変わりなく食器を洗いは進んだ。



本当に恐ろしい眼光だった。殺されるかと思ったね。




「じゃあ、お風呂入れてきます」


「ありがとう」



......凄く見られてる。こう、よくある『自然と目で追う』なんてものではなく、『相手を縛り付けるように見る』と言った感じで、とても緊張する。



そうして無事にお風呂を洗い、お湯をため終わるまで待つ為にリビングに戻ると、またしてもガン見されてしまった。



「あ、あの〜......陽菜さん?」


「ん〜?どうしたの?」


「すっごい見られてる気がするのですが......」


「見てるからね。ちょ〜っと考え事をしててね」


「左様な理由でござったか」



俺をガン見して考える事?......なんだろうか。フェニックスについてかな?



「まぁ、お風呂が沸くまでは私の膝枕でもどう?」


「有難く」




俺はソファに寝転がり、陽菜の太ももに頭を置いた。




「よしよし。月斗君は今日も頑張りました」


「陽菜?」



陽菜が突然、そんな事を言いながら頭を撫でてきた。


その小さな手で撫でられる感触は、俺の心に大きな影響を与えてくれる。心からの安らぎと、最高級の癒しをくれる。



「ねぇ、月斗君」


「どうした?」


「月斗君は結婚したら......その............ぃ?」


「え?なんて?もう1回言ってもらっていいか?」



俺は鈍感系ではないはずだ。流石に今のは陽菜の声が小さすぎた。


相当な悩み事なのだろう。ここはゆっくり聞いてあげよう。



「えっと、その......」


「ゆっくりでいいぞ?落ち着いて、呼吸を整えて」


「う、うん......ヒッヒッフー、ヒッヒッフー」


「それは違うぞ。いや、確かに弛緩するという意味では正解だが、この場合はちと違うな」


「い、いや?あ、合ってるもん!」



お、おう。何が合ってるのかは分からないが、陽菜としてはラマーズ法が合っているようだ。



「そうか。じゃあ俺に聞きたい事はなんだ?」


「えっと......あのね、うぅ......」



めっちゃ苦しんでる。一体何を聞こうとしているんだ?性癖?




「ふぅ......私が聞きたいのは『お風呂が沸きました』......んにゃぁぁぁ!!!」



絶妙なタイミングでお風呂が沸いてしまった。これには陽菜もお冠だ。



「もう!月斗君、一緒にお風呂入るよ!」


「え?」


「ほら、立って!早く!」


「は、はい!」






◇◇





2人で湯船に入り、思った。



「「............」」



((どうしてこうなった)) と。



いやね、ツッコミたい所は幾つかあるんだよ。まず1つ、『何故裸なのか』という所。


こういうのって、普通は水着を着るものではないだろうか。

お互いの大切な所を隠すために、せめて水着を着用して一緒に入るものではないのだろうか。


2つ目、『何故途中で引き返さなかったのか』


普通に考えて高校生のカップルが一緒にお風呂に入る......それは中々にハードルが高いと思うんだ。

それをどうして簡単に乗り越えてみせたのか、よく分からない。


3つ目。『何故陽菜は俺の上に居る?』


僕は男の子ですからね〜、ハローしてしまえば、それはちょっと世間は許してくrえゃすぇんよ。


もし月の欠片がハローしてしまえば陽菜に襲われる。

故に自制心を全力で働かせなければならない......のだが、『陽菜のアクション次第で運命が変わる』という事は頭に入れておかねばならん。



「......あの「何も言うな俺が死ぬ」......うん」



陽菜、耳まで真っ赤にしているが、陽菜がやった事だぞ?


フッハッハ!自分が犯した罪をよ〜く味わうといい!



まぁ、絶賛俺も罪を犯しかけているんですけどね。



「お、お湯......ぬるいね」


「それは多分、陽菜が熱いんじゃないか?」


「え、えぇ?そうかなぁ」


「顔、真っ赤だぞ?のぼせる前に上がれよ?」



心頭滅却心頭滅却。心頭滅却すれば火もまた涼し。


今の俺は無だ。陽菜と一緒にお風呂に入った事も、裸で陽菜がくっ付いている事も何も感じない、無の存在だ。


いや待てよ?これは忘れてはならない時間なのでは?



『そうだ。絶対に忘れない明るい思い出になる。このまま一線を越えようぜ?』


『待つんだ魔天使の俺!そんな事をすれば最悪、2人の関係が悪化するんだぞ!』


『何を言う聖天使。陽菜と一緒に風呂に入っている時点で、何も起きないと思っているのか?全く、これだからお子ちゃまは......』


『違う!適切なステップを踏めと俺は言っている!

確かに陽菜と一緒に風呂に入った......だが、まだ耐えるんだ!結婚してからでないと、お互いに大変な未来が待っているだけだぞ!?』


『くっ......でも、あちらは覚悟出来ているんじゃないか?そう出ないと、月斗を風呂に誘うなんて、普通はしないだろう?』


『確かにそうだ。体も心も成長する高校生という時期に、男女で風呂に入るなんて普通はしないだろう。

でも今回は違うんじゃないか?よく考えてみろ、魔天使。さっきの陽菜は、どう考えてもまともな思考じゃなかっただろ?』


『......まぁな。だが誘ったのは事実だ。現実を見ろ』


『現実を見て、未来を考えているから俺は言っている。ここで一線を越えるべきではないと』


『.....』


『ここで本能に身を任せるより、ちゃんと段階を踏んで、2人が『大丈夫』だと思った時に、好きなだけすればいいじゃないか』


『そう......だな。陽菜と結婚した後なら、幾らでも堕ちる事は出来るもんな......すまない。俺が間違っていた』


『いいや、魔天使の意見も、本能としては正しい。

好きな人一緒にいれば、それも裸でいれば、そう思うのが普通だろう。俺の意見を呑んでくれてありがとう』



俺の中の聖天使と魔天使の話し合いが終わった。



「陽菜、そろそろ上がろうか。陽菜は少しゆっくりすべきだ」


「う、うん......でも、ごめん。立てないや」



困るなぁ。立てないのは別に大丈夫だが、少しでも下にズレたら運命が変わってしまうんだよなぁ。


俺は意見を折った魔天使の為にも、聖天使パワーで陽菜を風呂から上がらせるぞ!



「ほれ、持ち上げるぞ。ちゃんと出ろよ?」


「分かった......ひぅっ!」



手に柔らかい感覚が伝わるが、俺は無なので気にしない。後で陽菜に殴られる分には別にいいので、とにかく陽菜を風呂から上がらせよう。


だって、真っ赤というか、危ない赤さの肌になっているもん。



「あ、あにょ......」


「ハセヨ?ほら、出たまえ」



俺がそう言うと、陽菜は何度も頷いてから立ち上がり、ゆっくりと浴室を出た。



『危なかったな。最後の乳揉み、アレは普通に危なかったな』


『それは魔天使に同感だな。最後の最後でアレは......月斗もよく耐えたもんだ』


『全くだ。コイツは本当に男か?』



男だ。ただ我慢してるだけの、狼さんだぞ。



「はぁぁぁ......何もなくて良かったぁ」



『『最後にやってんだよなぁ』』



第2、第3の思考がうるさい。俺を客観的に見るんじゃねぇ。



「あ......最後......もしかして見」



いや、辞めよう。これは口に出すのも考えるのもイケナイ。

陽菜は最後に、俺を見ていない事を祈ろう。



「......上がろ。今日はもう、寝よう」



空間魔法どころじゃないので、今日はもう寝る事にしよう。



そうして風呂から上がって、寝巻きに着替え、リビングに行くと陽菜がソファーでぽやぽやとした雰囲気を放っていた。



「陽菜〜、寝るぞ〜?」


「......」



返事がない。ただの陽菜のようだ。


流石にあのままだと風邪を引かれそうなので、俺は陽菜に近付いた。



「お〜い、陽菜ッ......」



陽菜の顔を覗き込んだ瞬間、唇と唇がごっつんこした。


それどころか、マイマウスの中に柔らかい感覚がインしてきた。



「ん!?」



陽菜さん!それは大人すぎます!本当にそれは大変な展開になりますって!


前にゲーム内でやられた時とは段違いの感覚。陽菜の温もりや気持ちなど、全てが(じか)に感じる。



そしてたっぷり俺の口内を貪られること30秒、ようやく陽菜がマイマウスを返してくれた。



「はぁ、はぁ......陽菜次郎、お主......!」


「ん〜!もっとギューってして!」


「おっほほぉ......ワガママ甘えん坊モードか」



何があったのかは分からんが、急に大人から子供にジョブチェンジした。


これは又とないチャンスなので、陽菜をお姫様抱っこしてベッドに運んだ。



あ〜、可愛いなぁ。甘えん坊な陽菜も、とても素敵だ。



「つきとくんも!」


「はいはい、電気消すから待っとれ」



陽菜がさっさとベッドに来いと言うので、直ぐに電気を消してベッドに入った。



「んふ〜......ぎゅ〜」


「あの、当たってますよ?」


「いいの〜。月斗君になら、全部あげるもん」



あのさぁ、陽菜。その言葉の破壊力を考えてくれよ。


それを言われたら俺がどれだけ、嬉しいと思うか、幸せだと思うか、よく考えてくれ。

......容易にそんな事を言われたら、本当に結婚まで待てなくなっちゃうぞ?



「ははっ、おやすみ。陽菜」


「うん。おやすみ月斗君」




もっと強く抱き締めたい気持ちを抑え、まだ早い時間だが、睡眠という沼に体を預けた。






◇◇






まだ太陽の光が入る前、朝5時頃に目が覚めた。



目を開けると陽菜が俺に抱きついており、首に腕が巻かれていた。

どうやら、体を起こす事は絶対に許してくれないようだ。



「かわいい」



すぅすぅと寝息を立てる陽菜の寝顔は、とても可愛いと感じた。

例えるなら、そう。普段は鋭い目付きをしている猫が、目尻を丸めて寝ているような、そんな印象だな。



別に陽菜は鋭い目付きの猫ではないけれど。



「でも、かわいい」



さぁ、今日中には空間魔法を習得出来るだろうか。



フェニックスの経験値から考えて、ゲーム内で3日ほどぶっ続けで戦闘すればゴール......かな?



何故あの特殊クエストが出たのか、何故アルカナさんなのか、何故空間魔法なのかは分からないが、頑張るとしよう。




「大好きだよ、陽菜」



俺は優しく陽菜の頬にキスをして、陽菜が起きるのを楽しみに待った。

ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛(2人の飲んだ味噌汁になりたい欲)



次回.....『空間魔法の心得 後編』お楽し...み.....に...ッ(吐血)

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