初日から大暴れ 2
クラーケンとの戦い。
◇南に70km程先の海上にて◇
「ルナ君、アレがクラーケン?」
「......だな。帰らないか?」
「いや〜、予想以上に大きいね!頑張ろう!」
「......だな。帰らないか?」
「さ、魔法の準備は出来た?最初はサンダーからいこ!」
「......だな。帰らないか?」
「うるさぁぁぁい!黙って私に着いてきて!!!」
「......はい」
万が一、あんな展開やこんな展開になった時、俺のリアルがピンク色になってしまう。
その為に帰ろうと提案していたら......しつこすぎた。
仕方ない、頑張ろう。
「ソル、どっちから殺る?手前?奥?」
「手前から。奥は私がやるから、手前をルナ君がお願い」
「分担か、分かった。じゃあ、くれぐれも触手には気を付けて」
「襲われたら襲うからね」
「わぁ怖い。そういうのは大人になってからだゾ」
「ふふっ、それならルナ君の分は早く倒して、私を守ってね?」
「あぁ。じゃあ行ってくる」
「うん!」
良かろう。愛するソルを触手の手から守る為、このルナ、本気で挑もうじゃないか。
そうして俺は空から海へ飛び込み、不死鳥化を発動させた。
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『最弱無敗』が発動しました。
『死を恐れぬ者』が発動しました。
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「オケアノスありがとう。不死鳥化のお陰で水中で呼吸出来ちゃうぜ」
2回息を吸えばHPは0になるが、不死鳥状態なら死なないので、上手く効果が重なってくれた。
『ギュルルルル!!!』
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【イベントレイドボス】
【帝王クラーケンLv1500】との戦闘を開始します。
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「はぁ!?」
いくら何でもレベルが高すぎる。1500なんて、このゲームのプレイヤー全員で掛かっても勝てないだろう。
『ルナ君!こっちのクラーケンのレベル、600もあるんだけど!そっちは倒せそう?』
『悲報です。こっちのクラーケン、1500レベです』
『4桁!?』
『あぁ。って事で、帰らないか?』
『凄く賛成したいんだけど......攻撃が早すぎて逃げられない』
『へぇ、こっちのは何もしてこないぞ。ただ、目を離した瞬間に俺はフルボッコにされるだろうけど』
フルボッコというか、串刺しかな?
あのクラーケン、じっとこちらを見ているだけなんだ。
いや、『見て』いるのかな。俺の泳ぎの癖や、体の動かし方の小さな変化。多分、そういうのを見ているのだろう。
『ソル。連絡が取れそうならピギーとかルヴィさんを呼べ。俺には一切頼るな。それと、近付かないこと。こっちのクラーケンの射程圏内に入ったら、一瞬で死ぬぞ』
『分かった。それと私の予想を置いとくと、多分このクラーケンって、私達のレベルを3倍にしたんじゃないかな。多分、パーティの平均レベルの3倍?』
『なるほど。俺達 パーティを組んで無いから、それぞれのアホレベルになってるって訳か。その予想が合ってると信じて、ソルは皆を呼べ』
『うん!死なないでね』
『残念。死ねないんだ』
そう言ってボイスチャットを切り、俺はクラーケンを『見た』
イカ特有の2本の触腕は長く、先端が剣の様に鋭い。
あの触腕で攻撃されたら、ひとたまりもないだろう。
そして他の8本の触手を見て思った。......コイツ、万能タイプだ。
それぞれの触手の先端が『盾』『槍』『斧』『杖』となっている。
杖はメイスの様な、物理で殴るタイプの杖で、それぞれの装備は2本ずつ造られている。
あれはマズイ。戦っていて楽しいが、考える事が膨大に増えていくタイプだ。
きっと魔法も使うだろうし、水中というデバフが掛かっている中、俺は今までにない強敵と戦う事になってしまった。
「良し、クラーケッ......」
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『守護者の加護』が発動しました。
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凄まじい勢いで触腕が俺を貫き、文字通り胃に穴が空いた。
......胃どころか、お腹に穴が空いてるけど。
「シリカ」
『はいは〜い......って、何あのクラーケン!?』
「殺るぞ」
『水中で刀を!?嘘でしょお兄さん!』
「魔法と魔刀術で地道にやる。ソルや増援部隊から遠ざけるようにするぞ」
『う、うん!』
水中で自在に動くとなると、フラカンで飛行するのが1番だろう。
下手に水属性の魔法を使うより、飛行魔法で自分の座標をコントロールした方が、多分効率が良い。
『ギュルル!!』
「『戦神』『フラカン』......ほらな」
触腕の突きを回避し、クトネシリカを抜刀する前にサーキュレーションで首から下に空気の層を作った。
これなら抜刀する時に、鞘に海水が入らない。
『ギュルルルルルル!』
クラーケンが剣と槍による突きを放つが、まだこの速度ならクトネシリカで弾けるので問題ない。
「こっちだクラーケン」
俺はソルの反対方向、つまり南に移動しながらクラーケンを誘導する。
この時、大きく距離を離すと誘導されている事がバレるので、ゆっくり、少しずつソルから距離を取っていく。
『ルナ君!ピーちゃん達が来てくれるって!』
『泳いでか?』
『うん!でも魔法を使うから直ぐに着くって言ってた!』
『それは良かった。ソル達は北上しながらクラーケンと戦ってくれ。俺の方は......最悪、海岸から何百キロと距離を取って封印する』
『分かった。それともし私の方が倒せたら、付喪神達はルナ君の手に戻してあげて。リルちゃん達とアルス君は私が見ておくから』
『ありがとう。よろしく頼む。じゃあな』
『うん。大好きだよ』
『あぁ。こっちの化け物が倒せたら、キスでもしようか』
『うん!頑張ってね!』
『頑張る』
これでソルの方は大丈夫だろう。レベル600ならまだ、トッププレイヤーが集まれば対処出来るはずだ。
ただ、こっちの1500レベの対処は無理だろう。
文字通り、格が違う。
俺は自分の強さを知っている。このゲームでの周りからの評価や、どのような目で見られているかも。
だから、俺が原因で出現した、99%倒せないモンスターは俺の手で何とかしよう。
プレイヤーの誰もが楽しめるように、プレイヤーである俺が頑張るんだ。
それに、頑張ったら頑張った分、ソルに癒してもらえる。俺にとっては、それが大きな大きなやる気となるのだ。
『ギュルッ!』
「斧か......『斬』」
『ギュルル』
斧の攻撃を避け、触手を斬ろうとしたら盾の触手で防いできた。
「くっ、硬い。取り敢えず鑑定!」
久しく使っていなかった『動物鑑定』を使った。
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名前:帝王クラーケン<Lv1500>
HP:149,852,147 / 150,000,000
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俺は後悔した。1億5000万ものHPを見て、俺は後悔した。
神龍の約2.5倍のHPだ。それを水中という慣れない環境で削りきれるだろうか。
......覚悟を決めろ。俺が撒いた種だ。俺が刈り取るんだ。
「『戦神』『雷霆』『雷霆』『雷霆』」
『お兄さん!?魔力がもう無いよ!?』
「静かにしてくれ」
『っ............うん』
MPの全てを使って雷霆を作った。
2重の魔法陣から作られる雷の槍。称号『雷神』が無ければ制御どころか、作成すら出来ない魔法。
それを全力で3つ作り、完璧に制御する。
バチィ!バチバチ!!!
毛糸の様に粗い雷の槍が、徐々に徐々に、細く、鋭く、金属の槍の様に美しくなる。
すると槍は、静かな光へと変貌した。
『すご......』
『ギュルルルル!!!』
「3」
ブチィィィ!!!
俺を貫かんと飛ばしてきた2本の槍は、龍の雷によって、その根から引き千切られた。
『ギュルルッ!?ギュルルルル!!!』
「2」
海に居る全て者を引き裂く斧も、龍の雷によって無惨にも散った。
『ギュルルルルルルルルル!!!!!』
「1」
帝王の剣と杖は、雷神の雷に打ち勝てず、その武器を手放した。
『ギュルル......』
「『戦神』『ストレングスエンハンス』『魔刀術:雷纏』」
紡ぐ言葉は簡潔に。入れる力は最大限。
例えここで仕留め切れずとも、大きな時間は稼げる。
俺の目的は人からクラーケンを離す事。そして海底に隠された謎の構造物を探す事。
砂浜でクラーケンを見つける前に察知した、このイベントの目玉であろう場所。
『ギュルルルル!!!』
「化け物......遊ぼう。『雷』」
刹那、海に凄まじい衝撃が走った。
稲光が発生した場所から東西に海が割れ、南北に波が伝わっていく。
「『サーキュレーション』」
『ギュルルル』
『生き......てる......』
「鑑定」
◇━━━━━━━━━━━━━━━◇
名前:帝王クラーケン<Lv1500>
HP:96,863,124 / 150,000,000
◇━━━━━━━━━━━━━━━◇
6000万ダメージといった所らしい。あと2回、魔刀術を使えばコイツは消え去る。
いや、雷霆も必要か。
「エリュシオン、『魔槍術:雷閃』」
俺はエリュシオンに魔槍術を発動させ、クラーケンに向けて全力でぶん投げた。
ブシュゥゥ!!!
クラーケンの目と目の間に槍が刺さり、尋常ではない量の血のポリゴンが海に溢れ出した。
『ギュルルルルルルル!!!!!!!!』
残った2本の触手を振り回し、クラーケンは大きく暴れだした。
◇━━━━━━━━━━━━━━━◇
名前:帝王クラーケン<Lv1500>
HP:12,475,632 / 150,000,000
◇━━━━━━━━━━━━━━━◇
どうやら目と目の間が弱点みたいだ。俺の持つ武器の中では、そこそこ弱い部類に入るエリュシオンでさえ、ここまでHPが削れた。
「最後だ......イブキ」
『はっ』
「仕事だ。シリカ、短剣に」
『は〜い......って切るの!?』
俺は自分の腕を切り、血をイブキに吸わせた。
『おぉ......力が漲りますぞ。ルナ様、やりましょう』
「あぁ」
俺は【夜桜ノ舞】を発動させ、イブキを構えた。
「すぅ............はっ!」
サーキュレーションによって生まれた海の中の陸地。
そこに立つ、一体の化け物と一人の化け物。
そんな化け物同士の戦いは、決着が着いた。
『ギュル?』
「毒だ......じゃあな」
『ギュルル......ギュル......ギュルルルル......』
イブキによって注入された毒で、クラーケンは苦しみながらポリゴンとなって散った。
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プレイヤー『ルナ』が、
【帝王クラーケンLv1500】を討伐しました。
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「勝った......ソル達よりも早く」
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プレイヤー『ソル』『ピグレット』『アテナ』『ジョーカー』『マサキ』『ルヴィ』『ガーディ』『イリス』により、【クラーケンLv600】が討伐されました。
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「あっちも終わった」
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【帝王クラーケンLv1500】を討伐しました。
『帝王イカの剣脚』×15入手しました。
『帝王イカの槍脚』×15入手しました。
『帝王イカの盾脚』×5入手しました。
『帝王イカの斧脚』×15入手しました。
『帝王イカの杖脚』×15入手しました。
『海底神殿の鍵』×1入手しました。
『シェルフラグメント』×1500入手しました。
『帝剣:海閃』×1入手しました。
『帝衣:海の衣』×1入手しました。
『スキル書:海魔法』×3入手しました。
『覚書:東の島国の貿易者』×1入手しました。
レベルが51上がりました。
『槍王』スキルレベルが99上がりました。
『魔槍術』スキルレベルが99上がりました。
『龍神魔法』スキルレベルが8上がりました。
称号【海の帝王単独討伐者】を獲得しました。
称号『冷酷』を獲得しました。
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「長いなぁ......ソルを連れて、帰ろうか」
『そうしよう!』
『御意に』
俺はイブキを納刀し、海上に飛行してからサーキュレーションを解除し、海を元に戻した。
「あ!ルナ君!」
「ソル......陸に着いたら癒してくれ」
「......うん。ゆっくり休んでね」
少し、集中力を使いすぎた。魔力切れになっても強引に動いていたし、頭痛がする。
マサキとアテナが海面を滑って来た。
「おいルナ!お前4桁って......大丈夫か?」
「ルナ、お前休めよ?」
「あぁ」
俺は短く返事をして、ソルの箒に相乗りした。
ちょっと......飛ぶのもしんどい。
「ちゃんと掴まっててね。ピーちゃん達、ありがとね!後で場所送るから、色々話そうね!」
「うん!また後でね〜!」
「ばいばいピギー」
「子供みたいだね、ルナ。まぁ、またね」
そうして北へ進み、リル達の待つ場所へと帰った。
◇帰路にて◇
「ルナ君、お疲れ様」
「あぁ......ありがとう」
「ふふっ、弱ってるね。凄い衝撃だったし、全力でやった?」
「うん」
「もう。その集中力は長く使わないと、短く使ったら頭に負担が掛かるよ?」
「......今味わっている」
「だよね。頭痛なら直ぐに治まるだろうし、着いたら膝枕してあげる」
「ありがとう......ソル。俺はソルが好きだ」
「えへへ。取り敢えず、今はゆっくりしてて。ちゃんと私がみんなの所に送るから」
「あぁ......」
◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇
名前:ルナ
レベル:344→395
所持金:53,845,290L
種族:人間
職業:『ヴェルテクスギルドマスター』
称号:『スライムキラー』
所属ギルド:魔法士・Bランク冒険者(0/300)
Pギルド:『ヴェルテクス』
所持因子:『稲荷』他6柱
所持技術:『魔力打ち』他多数
HP:17,160→19,710
MP:17,160→19,710
STR:17,160→19,710
INT:17,160→19,710
VIT:17,160→19,710
DEX:17,160→19,710
AGI:17,160→19,710
LUC:8,575→9,850
CRT:100(上限値)
SP:1,540
『取得スキル』
戦闘系
『剣王』Lv100
『魔剣術』Lv100
『王弓』Lv100
『魔弓術』Lv100
『槍王』Lv1→100
『魔槍術』Lv1→100
『武闘術』Lv100
『魔闘術』Lv100
『刀王』Lv100
『魔刀術』Lv100
『操王』Lv100
『魔糸術』Lv100
『走法』Lv0
『手加減』Lv0
『戦神』Lv100
魔法
『火属性魔法』Lv100
『海魔法』Lv30
『風属性魔法』Lv100
『土属性魔法』Lv100
『雷属性魔法』Lv100
『氷属性魔法』Lv100
『聖属性魔法』Lv100
『闇属性魔法』Lv58
『自然魔法』Lv100
『龍神魔法』Lv81→89
『古代魔法』Lv1
『音魔法』Lv100
『妖術』Lv1
生産系
『神匠:鍛冶』Lv100
『神匠:金細工』Lv100
『裁縫』Lv99
『調薬』Lv82
『神匠:付与』Lv100
『木工』Lv1
『料理』Lv83
『神匠:錬金術』Lv61
その他
『テイム』Lv4
『不死鳥化』Lv100
『マナ効率化』Lv0
『植物鑑定』Lv0
『毒物鑑定』Lv0
『動物鑑定』Lv0
◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇
水中を飛行するプレイヤーは、後にも先にもルナ君1人でしょう。
それと、帝王になるにはレベル1000以上が条件です。
次回はお遊び回です!癒されていってくださいね!
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