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Your story 〜最弱最強のプレイヤー〜  作者: ゆずあめ
第8章 夏の思い出
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執事の悩み 後編 下

サクッとコロッと




◇アルスside◇




主に入り、無事に東にある海に辿り着いた。



「じゃあアルス、やろうか」



主が我との戦闘......もとい『会話』を提案してくれた。

これを機に、主についての全てを知ろう。

はははっ、とても楽しみだ。


あの戦神、『アグニ』様が認める人間の戦闘が。



「御意に」



そして審判はフー様が担当して頂けるようだ。信頼の面も、全く問題の無い選択だ。主、ナイスチョイス。




「では、両者構えてくだすぁい」


「......」


「......」



ダメだ。笑ってしまってはダメだ。主とフー様の前だぞ?それも真剣勝負の前に笑ってみろ、この戦闘が始まる前に、主に殺される。


でも......厳しい。肩が震えてしまう。




「ごほん......では。始め!」




始まった。まずは(いかずち)を体に纏い、簡易的な鎧を作成した。

これは雷神として、全力の戦闘を行う時に使う『雷器』の技術の応用だ。これなら主でも、対象の痺れくらいは来るのではないだろうか。


本気でやろう。本気で殺しにいこう。我の主を。



「主よ......我は本気でいきます」


「あぁ。是非とも本気で来てくれ。じゃないと楽しめないからな」



楽......しむ?分からない。



「......主は本気で来てくれますか?」


「え?まぁ、本気だぞ?早くしないとリル達と遊ぶ時間が短くなっちゃうからな。本気で首を落としにいくぞ?多分」



我はからかわれているのだろうか。主は本当に、本当に我を殺す気なのか?分からない、分からないぞ。


本当に不思議な方だ。

ただ、何故か『知りたい』とは思えない。『あぁ、この人はこういう人なんだな』程度にしか思えない。


これは、執事としては最低の事なのだろう。

仕える主の事を知らず、知ろうともせず、ただ傍に居るだけ。


ただの話し相手なら、それこそソル様がいらっしゃるのだから我は不要だ。


我は......必要とされているのだろうか?



分からない。ここで主と戦うことで、知れると祈ろう。



「......多分、ですか」


「いやまぁ、本気で来る奴ってさ......もう殺しに来てるはずなんだよなぁ。『斬』」



バチィ!



「ッ!」



嘘、嘘だ。鎧の麻痺攻撃を地力で耐えた!?

幾ら主が雷神だろうと、これだけの魔力を込めた鎧......そう簡単に防げるものではないぞ!?


不味い、この一閃を避けなければ我は──




──我は、死ぬ。




「あらあら、肩から血が流れてるではないか。どうしたアルス。早く来い。雷神とはそんなものか?」



首に当たる直前に雷を足に集中させ、何とか肩を軽く切られる程度に抑えられた。


あの速度に耐久力、何よりもパワーが凄まじい。


比べるのは申し訳ないが、ヴリトラとは比にならない強さだ。、



「いえ......『雷器』......いきます」




我は雷器で直剣を作り出し、この一刀に全てを注ぐ。



足の裏に、爆発的なまでの魔力を注ぎ込んだ雷を纏わせ、一気に加速して『突きに見せかけた切り上げ』を行おう。



光の速さにまで達するであろう、不可視の斬撃。


主でも、流石に死ぬだろう。



いざ──




ブォン!




主は体を横にずらし、我の攻撃を完璧に避けた。



......は?



避けられた。避けられた。避けられた。避けられた!

何故?どうして?どうやって?何があって我の攻撃を避けた?


今のは視認できていないはずの攻撃。それをどうやって避け......待て、考えろアルス。主はどうやって避けた?避けるのに必要なことは?



まず避けた方法。これは単純、ただ体を横にずらされ、我の剣の軌道から離れただけだ。


では避けるのに必要なことは?


1、技術

圧倒的なまでの回避の技術。相手の剣の間合いを読み、絶対に自身に当たらない距離に移動する技術だ。


2、反射神経

ほぼ光と同等と言えるであろう攻撃、主はそれを『見て』から避けと言うのか?

それならば主は、人間ではない、それこそ神をも超える、『化け物』であるぞ。


3、経験

恐らくこれと技術だ。

主の膨大な戦闘経験による『先読み』と『回避力』。これが今の回避に必要なことだろう。

ただ、今の速度での突きに見せかけた切り上げを予測するなど、一体主は、どのような化け物と戦っていたのだ?


そして4。ステータス

知能の値が高ければ高いほど、反射神経、および思考速度や魔法に関する影響が出る。

主がもし、我と......いや、我以上の、神と同等の知能を持っていた場合、見てから避ける事もできるだろう。



よし、ならば次手は......「アクアスフィ「させませ......」


パチン!




何だ?何が起きた?主の詠唱を食い止めたと思ったら、我の体が一切動かなくなった。



何か引き金のようなことは......今の指鳴らしが発動条件か?



では、何の魔法だ?雷神の動きさえも完全に止める魔法など、我は知らない。

そのような強力な魔法があるなんて......知りたい。


一体この人は、どれ程の魔法を持っているのだ?




「『斬』」



まて、諦めるな。まだ口は動くんだ。我も詠唱しろ。



「『雷盾』!」



我の残りの魔力全てを注ぎ、主の攻撃を耐え忍んだ。



「『魔糸術:停糸』『戦神』『魔刀術:炎纏』」



あれは闇属性の魔糸術!?それに戦神?さらに魔刀術?

焦るな。まだ焦るな。如何に主と言えど、さらに追撃は──



「『蔦よ』〖鏡花水月〗......王手だ」



終わった......詰みだ。

蔦に体を拘束され、眼前の主は刀を振り上げている。

これはもう、負けを認めるしかないだろう。




「『不死鳥化』『(ほむら)』」




嗚呼、主は不死鳥でもあったのか。その美しい炎の翼......え?主が......2人?




そして我は『後ろから』心臓を貫かれ、生命力が0になった。



「負......けま......した..........」



完敗だ。この方は例え戦神であっても、雷神であっても......勝つ事は厳しい存在だろう。

咄嗟の判断、瞬間的な次手、更に次手の構築の精度。

そして経験から推測される相手の攻撃......我程度じゃ、一撃も与える事が出来なかった。




「うん。俺の勝ちだ。再戦はいつでも受け付けよう。ソルをモフっている時以外、だけどな」




成程。我はそもそも、この方に対する認識を間違えていた。


神器の力に溺れ、己を過信した人物だと、最初は思った。

次に、フー様達付喪神に頼り、人任せな人物だと思った。

そして最後、ただの考え無しの人だと思った。


その全てが、間違いだった。それも、最悪の間違いだった。


今なら分かる。シリカ様が我に怒りを見せたその意味が。



この人は、凄まじい経験の上に立ち、それに相応しい武器も持ち、環境までを手に入れて尚、まだ高みを目指しているのだ。



自分を過信する事無く進み続け、例え周りに人が居なくなろうとも上を目指す、ある種の馬鹿。


究極の馬鹿だ。


真っ直ぐに1つの事しか考えない......故に、その考えが向かう方向次第では、どんな分野に於いても頂点に立ち、上に登り続ける。



今はただの愛妻家に見えるが、それは馬鹿故に、ソル様を愛しているからだ。



我は......こんな人に仕えていたのか。


何でもっと早く知ろうとしなかったのか。


もっと早く、この人の真意に触れられていれば......あぁ、悔やんでも悔やみきれない。



これからはこの人に仕えよう。






旧名インドラ、現在の名はアルス。


主であるルナ様に仕える執事だ。

雷神であり、戦神である、魔に落ちた雷の虎である。



我は今、新たな目標が出来た。



それは、『主のようになる事』だ。

主のように考え、主のように強く、そして......主の代わりになれるような、そんな者に。




『アルス。おい、アルス!聞こえるか!』




おっと、早速主からの命が来た。我はこの命を遂行しなければならない。



より、主に近付く為に──




『ここでソルから離れるか抱き続けるか、どっちがいいと思う!?』




我はアルス。主のような男にはならないと、そう誓った。

次回なんですが、1度休憩回を挟んでからアレが始まります。


休憩のヒントは、神界に行く前に行っていた事です。



では、次回もお楽しみに!

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