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Your story 〜最弱最強のプレイヤー〜  作者: ゆずあめ
第8章 夏の思い出
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執事の悩み 前編

今回は完全アルス視点のお話です。

この『執事の悩み』でのメインキャラです。


楽しんで頂けると嬉しいです!




◇アルスside◇



我はアルス。旧名、インドラ。


神界にて雷神として、戦神として生きていた神だ。

だがある日、我は下界に堕ちたのだ。魔物として。


理由としては、良き相棒であり、良き好敵手(ライバル)であるヴリトラが下界へ降りて行ったのが原因だ。

ヴリトラとは何万年も共に戦い、共に技術を磨き、共に研鑽を積んで来たのだ。そんな相棒がある日、我から逃げるように下界へ行った。



それに我は激怒し、狂い、魔に堕ちた。



憎悪に身を焦がしたのだ。当然の報いだろう。



今まで共に居た者が、我から離れていったのだ。

これまでも喧嘩や言い争いなど、見るに堪えない様な事は何度も経験したが、離れる事は無かったのだ。


自分達の何が悪かったのかを最終的に認め合い、受け入れ、共に成長していたから。


そんな相手が、ある日、完全に我から離れた。


我の心は深く、大きく揺らぎ、心には怒りと恨みの薪をくべてしまった。



それ故だろう。我が虎として下界に堕ちたのは。






◆◆◆






「フー様。少々よろしいでしょうか」


「どうしましたか?」


「我に、主の事を教えて欲しいのです。我はここに来てから1番日が浅い上に、それほど主の事を知らない......そう思い、1番最初に主に仕えたという、フー様に主の事を教えて頂きたいのです」


「ルナさんについて、ですか?」


「はい」


「そうですねぇ......ルナさんは何と言いますか、不思議な人ですね」


「不思議......」


「はい。戦闘に関しては凄まじい速度で思考をするんですけど、それ以外に関しては鈍感なところが多いんですよ。例えば料理。ルナさんってば時々、買い物を忘れちゃうんです。以前に自分から『○○を買おう』って言っていたのに、10秒後には忘れていますからね」


「それは、まぁ」


「そんなルナさんですけど、戦闘に関しては、アグニさんも認める程強いです」


「アグニ様!?あの戦神の最高神にもなった!?」


「えぇ。ノリで因子も渡していましたし、相当気に入られてますよ?ルナさんは」


「それ程まで......やはり、我と戦った時は全力では無かったと......」


「当たり前ですよ!あの人、アルスさんとの戦いの時、手を抜くにも程がある戦闘をしていましたよ?魔法で遊ぶわ弓で遊ぶわ、余計な事考えて攻撃は食らうわ......中々に酷かったです」


「あれで......遊び」


「まぁ、私が見ているのは......後は人柄でしょうかね」


「人柄、と」


「はい。ルナさんは語り人より付喪神を大切にしてくれるんです。以前、付喪神の宿った武器を、ルナさんが強盗犯から取り上げたんですよ。それも、ボロボロの武器を」


「ほう」


「それをルナさんは......どうしたと思います?」


「そうですね......主なら、自身の武器に移させた、とか?」


「うわぁ、最悪の回答ですね。正解は『修理し、補強し、持ち主に返した』のですよ。その際、付喪神の方には優しく接して、武器のために、わざわざ自分で素材を取りに行きましたからね」


「なんと!」


「いやぁ、中々に格好良かったですよ。私も刃こぼれとかするなら、是非ともルナさんに治してもらいたいですね。えぇ」


「......?」


「あ、今のは気にしないで下さい。創造神に怒られるのは、もう懲り懲りなので」


「そう、ですか」


「とまぁ、そんな感じで、ルナさんは優しい人ですよ?アルスさんを含め、私達を大切にしてくれますから」


「大切に......ですか。我は主に仕える、唯一の男ですけど、大丈夫なのでしょうか......嫌われませんかね?」


「何言ってんですか。ルナさんはソルさん一筋なので、私達すら女として見てないんですよ?中々に傷つきましたけど、あの愛の深さなら仕方がないと、そう思いましたよ」


「成程。では今度、主と話してみようと思います」


「えぇ、それが良いでしょう。頑張って下さいね!」


「はい。ありがとうございました、フー様」


「いえいえ〜!」






◆◆






フー様に主の事を聞いてみたが、イマイチ良く分からなかった。


ただ分かったのは『最高の戦神も認める強さ』と『付喪神に対する優しさ』だ。


後は『忘れっぽい』という事らしいが、我はそうは思えない。

いや、そう思うほど、主と共に過ごしていない。



こうなれば、次に過ごした時間の長い、シリカ様に聞いてみよう。

我と同じ戦神であり、上級神でもあったシリカ様なら、何か分かるかもしれない。






◆◆






「シリカ様、聞きたい事があるのですが、よろしいでしょうか」


「アルス君?なになに〜?どしたの?」


「主の事について、聞きたいのです。シリカ様は主を、どのようなお方だと認識していらっしゃいますか?」


「ん〜とね〜、優しいお兄ちゃん、かな?あと強いし上手い!」


「上手い、とは?会話ですか?」




「は?何言ってんだ?お前。文字通りの意味で、戦闘の上手さだよ。アルス、お前は経験した事があるか?お兄さんの上手さを。人間が神獣を殺す戦闘を」




「ッ!?......無い......です」


「だろうな。じゃないと『会話ですか?』なんて最悪な事、言わないだろうからね」


「すみ......ません......」


「ううん!じゃあ、お兄さんの戦闘の上手さについて話そっか!」


「は、はい。よろしくお願いします」


「うん!まずね、刀の扱いの上手さかな?アルス君、君は刀を使うなら、納刀している時の刀の向きは、どうしてる?」


「刀の向き、ですか?......すみません、分かりません」


「はぁ......まぁいいや。えっとね、刀は基本、刃を上に向けて装備するんだよ。これは抜刀の速度の問題なんだけど、お兄さんは抜刀術をメインに使うからね。速度重視なんだ!」


「そう、なのですね」


「それで、この前あった桜の幻獣との戦いで、お兄さんは基本的に抜刀した状態で戦っていたんだ!フー姉ちゃんは刃を上に、私は下に向けて、ね」


「シリカ様のみを下に向けて?」


「そう。お兄さんは自分の癖を分かっている。お兄さんはフー姉ちゃんを基本的に使うんだけど、私は防御や魔刀術でよく使われるの。この違い、分かるかな?」


「......攻撃速度の違い、ですか?」


「半分正解かな。1つはさっきアルス君が言ったように、攻撃速度の違い。正確には抜刀の速度ね。お兄さんはね、攻撃に関しての速度は『最速』を狙うけど、防御に関してはそうじゃないの」


「何故ですか?」


「多分、フェイント対策だと思うよ。お兄さんは自分の癖で、つい早めに防御しがちになる事を理解しているの。だから.....っていうかアルス君。早めの防御を敵に悟られていたら、どうなると思う?」


「相手がタイミングをずらし、防御の隙を突く.....ですかね」


「そ。それを理解しているから、私は敢えて『ゆっくり抜刀される』の。相手の攻撃に完璧に合わせて弾き、続く二の太刀で相手を斬る......もうね、見ていて最っ高に楽しいの!」


「なるほど。では、もう片方は?」


「それは単純。『攻撃力の違い』だよ!私、クトネシリカは布都御魂剣より強い。だから、お兄さんは『確実に決める』時は、私を使うの。魔刀術の補正や強さだけを見たら、実はフー姉ちゃんの『神度剣』の方が強いんだけどね」


「そうなのですか?具体的にどれ程かを聞いても?」


「最高の状態で、私の6倍は強いよ。フー姉ちゃんの気が乗らなかったら、私より弱くなるけどね!」


「それ程ですか!?今までにその剣を抜いた時は、どのような敵だったので?」


「ヴリトラだよ。あと神龍もかな?まぁ、神に近い者を斬る時に、お兄さんは神度剣を抜いたね!あと、あの刀は不安定だからね。ここぞと言う時しか使わないんだ!」


「ヴリ......トラ......!!」


「あの子はもう助からないよ。ダンジョンボス......不死の呪縛とも言うべきかな?もうあの子は、この世が果てる時まで、外に出ることは無いよ」


「......そうですか」


「じゃ、それぐらいかな!」


「ありがとうございました」






◆◆






恐ろしい。やはりシリカ様はアレス様そのものだ。姿形は変わろうと、その根源は紛れもなく『戦神アレス』だった。


我が誤った回答をした時のあの威圧感、正に我の知る戦神だった。

そんな方がメイドをしているなんて、主は一体、何者なのだろうか。



我はまともに主と戦っていない故、主の強さも上手さも分からない。




(われ)が主を理解する日は、来るのだろうか。

ブチ切れシリカ、怖い( º言º )


次回はログインしたルナ君も出てくるので、お楽しみに!


ゆずあめ二世のTwitterアカウント


@yuzuame_narou_2

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