寂しがり屋な月の兎
次回まで、リアルでのお話です( 'ω')
「今更だけど陽菜ちゃん、今日は泊まってくの?それとも実家に?」
「泊まらせてもらいます!実家には明日向かおうかな、と」
「そっかそっか!なら部屋はどうする?月斗と同じ部屋に......はダメか。う〜ん」
「別に一緒でいいですよ?よく一緒に寝てるので」
「月斗、話しなさい」
おかしいなぁ。風呂上がりに縁側で、麦茶を飲んで涼んでいたら、背中から火矢が飛んできたぞ〜?
「最初は陽菜が俺のベッドに潜り込んだ。以上」
完全☆勝利
「あれ?そうだっけ。でも最近、毎日寝てるから変わらなくない?」
「月斗、話しなさい」
「最近は1人で寝るのが寂しくなったからな。一緒に寝てもいいや、って思った。しかもそれ、ゲームの話だぞ?母よ。リアルじゃ1人寂しく......じゃない事もあったけど、基本は1人だ」
父さんが来た時とか、リアルで一緒に寝たっけ?
あと、膝枕の時は『寝た』に入れるのか悩む。
アレは......そう、『寝落ちした』というものだろうからな。
「寂しがり屋になっちゃったもんね、月斗君」
「兎ね」
「誰が月の兎や!別に寂しくても、俺は死なないからな?」
「本当?もし陽菜ちゃんが居なくなっても大丈夫?」
ヒッ!
「ごめんそれは無理かも。ちょっと人生諦めるわ」
陽菜が居なくなるって、俺の生きる意味が8割方消える事を意味してるからな。
「うへへ〜、月斗君の生殺与奪の権を握っているのだ〜」
陽菜が後ろから抱きつきながらそう言った。
アレですね。お胸がヒットなアタックでスーパーなウルトラボンバーしてますね。
でも大丈夫。師匠から習った心の落ち着かせ方その1、『動かない物を見る』という方法で落ち着こう。
ここから見える、動かない物......月か!
「......月が綺麗だ」
「......ありがと」
そう言って陽菜は、後ろから頬にキスをしてきた。
はい、完全に俺の選択ミスですありがとうございました。
何故俺は、寄りによって月を選んだ?
何故俺は、素直に感想を口に出した?
何故俺は、陽菜が抱きついている事を忘れかけた?
いや、抱きつかれてるからこそ、忘れようとしたんだろ?
いやダメだ。今この瞬間を全力で楽しむんだ。こうやって抱きついてくれるのも、今だけかもしれないんだぞ?そうなった時、絶対に後悔するだろう。
「もっと抱きしめて欲しかった」と。
「いいよ?はい。ぎゅ〜!」
「ん?......あっ、口に出てた?」
「うん。思いっ切り。素直だな〜って思ったよ?」
「俺はいつも素直だぞ?ほれほれ、その頬っぺたをムニムニしてやろう」
「うひぇ〜」
おぉ、陽菜の頬っぺた、めちゃくちゃ柔らかい。
「はははっ、可愛いな陽......菜............ッ!」
ハロー地獄。グッバイ天国。俺は今、後ろで母さんが見ている事を思い出したぞっ☆
「あ、続けていいのよ?母さんはもう寝るから」
「待って。今見た事全て忘れてくれ」
「いいよ?ただ携帯には保存してるから、いつか思い出すけど」
「......」
絶句した。この人、本当に魔王じゃないか。
「あ、一緒に寝るのはいいけど、する時は静かにねっ!じゃあ、おやすみ月斗、陽菜ちゃん!また明日!!」
「逃げんなぁ!!お願いだから消してくれぇぇ!!!」
「あははははは!!!」
鬼だ。悪魔だ。魔王だ。人の恥ずかしい所を保存した上に、笑いながら走って逃げて行ったぞ。
「月斗君。するの?」
「しないよ。結婚するまではしないからな」
「それって......1年半くらい後?」
「さぁな。2年後かもしれんし、10年後かもしれない」
「えっ............うぅ」
陽菜がぽろぽろと涙を流し始めた。
流石に今の発言は酷いな。これまで散々話してきたのに、いざ聞いてみたら何年も後だなんて......
「ごめん。嘘だ。3年以内にすると、約束しようか」
「......ほんと?」
「本当だ。ただ、どのタイミングでするかは分からないから、楽しみにしてな?」
「うん......待ってる......いや、私からもやる」
「え?」
これはまさか......早い者勝ちになってしまうのか!?
「私、いつも月斗君に前を歩かれてばかりだから、私は隣を歩きたいの」
「だから、私は待たないよ?あの公園の時みたいに、私が後からぶちまける......そんな事、もうしないからね?」
「お、おう」
決意に満ち溢れている表情で、陽菜はそう言った。
「月斗君......少しでも辛いと感じたら、隣を見てね?私が居るから。寄りかかってね」
「.....あぁ、そうさせてもらうよ。それと、そろそろ離れてくれ。部屋に行けないぞ?」
「えぇ〜!このまま運んで〜!」
ワガママだな。でも、そんな陽菜もとても可愛い。出来ることなら、何だって叶えたくなるくらいには。
あぁ、好きすぎて辛い。
「しょうがないなぁ。隣を歩くんじゃなく、俺に背負わせるのが、陽菜の流儀なんだな?」
「うっ......で、でもぉ!」
俺は後ろから抱きついている陽菜を背負い、陽菜の手に麦茶の無くなったコップを持たせてから移動を始めた。
......あれ?麦茶って、こんなに早く蒸発するっけ?
「いいよ。今日くらいは好きにしてくれ。明日から、一緒に歩いていこうか」
「......うん。大好き」
「ははっ、そこはいつも陽菜が最初に言うよな」
俺から『好き』って言うの、あんまりない気がする。普段は陽菜が言ったのに同意する、完全に後手にまわって言っている感じだよな。
「──ほら、コップそこに置いて」
そうして部屋に着くと、2枚の布団が置いてあった。
一応、実家に残していた私物も置かれていたので、ちゃんと俺の部屋になっているみたいだ。
「もうちょっと下げて。手が届かない」
「はいよ」
「置いた」
「それじゃあ布団にぶん投げられるかお姫様抱っこで降ろされるか、選ぶといい」
「ぶん投げたら本能に身を任せるよ?」
「......分かったよ、お姫様」
怖い。怖いよこのお姫様。ちょっとでも乱暴に扱った瞬間、野生の獣と化すと、宣言してしまったよ。
「えへへ〜、カッコイイね、月斗君」
「陽菜の方が可愛いぞ?......よいしょ、っと」
陽菜を布団の上に降ろし、俺はもう片方の布団に入った。
「おやすみ、陽菜」
「うん。おやすみ月斗君」
布団から布団へ手を繋ぎながら、俺達は眠った。
◇◇
「ぅ......」
脳が太陽光をキャッチし、その刺激で脳が覚醒を始めた。
「......ん?............ん!?」
目を開けると、目の前に陽菜がいた。
おかしい、俺達は昨日、別々の布団で寝たはずだ。
それなのにどうして陽菜が俺の目の前にいる?
いや、違うか。潜り込まれたな、これは。
「んぅ......おはよ......月斗君」
「おはよう陽菜。昨日も潜り込んだのか?」
「いや?......昨日は月斗君の方から来たよ......?お陰で私、3時間くらいしか寝てない......」
ん?聞き捨てならないな。俺の方から来た?それはつまり、どういう事だってばよ!?
「昨日ね、完全に寝たあと、月斗君がごろごろ〜ってやってきたの」
「ほ、ほう?」
「それでね、月斗君だけ布団の上にいたら風邪引いちゃうから、私の布団の中に入れたの」
「ほう」
「そしたらね、ぎゅ〜って、ずっと抱きしめてくれたの」
「......」
「お陰で私は興奮して、寝るのに困りましたよ。全く......したいなら言ってよね!」
なるほど。理解した。完全に無意識で陽菜の所へ行っていたようだ。
そして俺は、それを記憶には残せていないようだ。
つらい。
「......すまん。寝相が悪すぎた」
「全く......したいなら言ってよね!」
「野性味溢れてるなぁ、陽菜」
「全く......したいなら言ってよね!」
「おい、NPC化すんな。とりあえず起きよう」
俺のせいで睡眠不足になっているだろうけど、許してくれ。
「や!このまま寝る!二度寝する!!」
「......俺に抱きついたまま?」
「......抱きついたまま」
どうやら俺は抱き枕になるようだ。やったね!
「分かった。なら昨日のコップとか片付けて来るから、少し待っててくれ。それと、昼までには起きるぞ?」
「うん。なら待ってる......いや、私から行くべき?」
「そこでその精神を持ってくるな!ここは大人しく待ってろ。戦いに『待ち』は必要だろう?攻めるだけじゃ、自分の望む物は手に入らんぞ?」
「そうだった......じゃあ、待ってます」
「はいはい」
そうして俺はキッチンにコップを持っていくと、朝ごはんを作ろうとしている母さんに出会った。
「おはよう」
「おはよう月斗。昨日はしたの?」
「コップぶん投げるぞ?してないよ」
「わぁ、本当に凄い精神力ね。自慢の息子だわ〜!」
「そうかい。それと二度寝するんで、朝ごはんはいらねぇす」
「......したの?」
「してねぇわ!何で女はそんなにするするするする言うんだ!?動物か!?」
「失礼ね。人間だって動物よ?」
「かぁ!朝からしんどいなぁ!?もう寝る!」
コップも片付けたので、部屋に戻るとしよう。
「静かにね〜」
「......今のは反論しなくて正解だ。きっと『何を言ってるの?』って言われるだろうからな」
「......チッ」
「聞こえてんぞマイマザー」
「早く寝なさい」
「全く......」
そうしてトイレに行ってから部屋に戻り、陽菜の抱き枕として二度寝をサポートした。
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.....というのは冗談でして、次回は結構大きなお話となります。
それが終われば、またユアストに帰ってきますので、その時をお楽しみにて頂けると嬉しいです。
では!