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Your story 〜最弱最強のプレイヤー〜  作者: ゆずあめ
第8章 夏の思い出
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魔王の息子は白雪王子?

う〜ん、好き。




屋敷となった実家の和室にて──




「久しぶりね、陽菜ちゃん。いらっしゃい」


「お邪魔してます!」


「うん!ゆっくりしてってね〜」



俺は今、魔王に監禁されている。そしてそんな俺を面白そうな顔で見る父さんは、龍王とも言えるだろう。


月見里月斗、ピンチである。


存在もしない地雷を踏み、その爆風が魔王の領域まで届いてしまった。そして、それに気付いた魔王は俺の元へやって来て、こう言った。



「ねぇ、陽菜ちゃんとどうなったの?」



と。



「......お付き合い......させて頂いてます」



瞬間、魔王の目の色が変わった。あれはそう、魔眼だ。


一睨みするだけで人は死に、植物は枯れ、朽ち果てる。

二度睨まれれば海は乾き、大地は燃え盛る。

三度睨まれれば、その存在は消滅する。



「どこで、いつ、どっちが告白したの!?」



一睨みされてしまった。



「......東京の、公園で......春に、俺から......」


「月斗君が告白した後に、私も告白しましたよ!」


「あらまぁ!で、で?どこまで進んだの?チューした?」



二度、睨まれてしまった。喉が乾いてきた。



「......しました」


「しょっちゅうしてます!」


「んまぁ!良いわね!それで、月斗はどこまで考えてるの?」



三度睨まれた。これに答え、俺は消滅するのだ。



「......俺は......俺は......俺.........は......」


「何も考えてない、何て事はないんでしょう?言ってみなさい」



四度睨まれた。鼬の最後っ屁だ。全部ぶちまけよう。




「結婚まで考えています!大丈夫!!金はある!!!!」



「「おぉ......」」


「月斗君......」



さらば、世界。もし俺が死んだら、来世は孤島の民族に産まれさせてください。誰にも見つかる事ない、寂しい人生を歩ませてください。



「最後のが無ければ、中々に良かったのにねぇ」


「でも、事実金はあるかるなぁ。後は陽菜ちゃん次第だろう。後、陽菜ちゃんのご両親」



あぁ、勇者よ。どうかあの魔王を斬って参れ。褒美はない。

クソみたいな正義心、尽きることのない承認欲求を満たすため、なんでも良い。あの魔王を斬っておくれ。



「私も結婚まで考えてますね!寧ろそうじゃなかったら、どうして東京まで行ったんだ?ってなりますし」



勇者はここにいた。ただ1つの溢れんばかりの愛情を持って。



「おっとぉ月斗選手、人生ハッピーエンドまで後1歩だが、どうする!?」


「あらあら、お父さん。そんなに急かさなくてもいいでしょ?月斗と陽菜ちゃんの人生なんだから、私達は見守っていよう?」


「だな。月斗、マイペースに頑張れよ!陽菜ちゃんも、何か困った事があったら遠慮なく言ってくれ」


「はい!」


「......うん」



俺は勇者の背中に隠れてこう言った。



「勇者よ。俺はもう、ダメみたいだ......」


「ひゃう!......って、えぇ!?ここで寝ちゃうの!?」


「これは寝るんじゃない。親の顔を見ずに、意識をシャットダウンするんだ。その時に、ちょっと陽菜を枕にするだけ」



もう、今日は朝から大変だったから疲れたんだ。ちょっとくらい、癒しが欲しい。



「いや、それにしても背中を枕にする人はいないでしょ!ほら、お膝の上で寝かせてあげよう」


「......ん、そうする」



そうして両親の顔を見ないように陽菜の膝の上に頭を乗せると、直ぐに俺の意識はフラカンで飛んで行った。



「ふふっ、いつもと逆になっちゃった」




◆◆




「凄いな月斗。両親の前でイチャついておきながら、そのまま膝枕で寝るとは......魔王をも恐れぬ所業だな」


「陽菜ちゃん、しんどいでしょ?枕持ってこよっか?」


「いえ。時々私も膝枕をしているので、慣れてます」



「「おぉ....」」



「普段は私がしてもらっているんですけどね。今日は私が大阪に行こうって言ったので、これぐらいはしてあげたいです」


「後半は分かるけど、普段から?」



陽菜は月斗の頭を撫でながら答えた。



「はい。いつも一緒にゲームをやっているんですけど、そこでですね。ゲーム内の作業の空き時間とか、ちょっとした休憩の時に膝枕をしてくれるんです」



「「へぇ、月斗が?」」



「そうですよ。普段は月斗君の方から、『耳触らせて〜』って来るので。まぁ、最終的には私の要望に全部答えちゃってるので、全部が全部、月斗から、という訳ではないですけどね」

(本当に。リルちゃん達がいない時は、キスまで許してくれるもん。大好き)



「耳......耳かぁ。陽菜ちゃんのは月斗も好きそうだしなぁ」


「耳は特殊ねぇ。私、息子の性癖に驚いちゃった」


「おばさん、ゲーム内での私は狐の耳が生えてるので、それを目当てに月斗君は触りに来るんですよ」


「あ、そうなの?てっきり普通の耳を触るのかと思ってた」


「普通の耳もめちゃくちゃ触りますけどね」



ルナがソルをモフる時、獣耳と尻尾の間くらいで、普通の人間の耳を触る事が結構な頻度で行われる。




「それだけ陽菜ちゃん自身が、大好きなんだろうなぁ」


「そうね!陽菜ちゃん、これからも月斗をよろしくね?」


「もちろんです!ずっと傍で支えてあげるつもりですから!」



「「ええ子や......」」



「月斗は多分、陽菜ちゃんと出会うってことに、人生の全ての運を使ったんじゃないか?」


「ホントにね。息子に対し、彼女が良すぎないかしら?」


「いえ、そんな事はありませんよ?私も月斗君と出会う事に全ての運を使ったので、フェアなんですよ。こうして月斗君が私の膝枕で寝てるのも、全部、2人で進めたからなんです。どっちか片方じゃなくて、2人で」


(今まで何気なくやってきたけど、月斗君はそれを考慮して一緒に歩いて来てくれた。それでも、私は半歩ほど後ろに下がっていた......だから、もう少し、もう半歩踏み込んで、私は月斗君と同じラインで歩きたい)



陽菜の言葉に身を傾けていた2人は納得し、改めて月斗の寝顔を見た。



「ウチの魔王は幸せ者ね。勇者に助けられて」


「あぁ。陽菜ちゃん無しじゃ、もう生きていけない魔王だな」


「ふふふっ、でも月斗君は魔王っていうより、白雪姫ですよ?」



「「白雪姫?」」



「はい。月斗君は時々、凄く深く考え込む事があるんですよ。道場で師匠から技を教えて貰っている時とか、師匠と打ち合いをする時とか」


「ふむふむ」


「その時の月斗君って、言わば『思考の沼』に足を踏み込んでいるんです。どっぷりと」


「沼......ねぇ」


「思考の沼にはまりこんでいる月斗君って、基本的に何をしても起きないんです。美味しい料理を目の前に出そうと、お客さんを目の前に連れてこようと、膝の上に子どもが乗っていようと......」



「子ども!?陽菜ちゃん、子どもいるの!?」



「待て待て母さん。それについては俺が知っているから、後で話すよ」


「ほ、本当に?大丈夫なんだよね?」



「ゲームでの話だからな」



「あぁ、そういう......ごめんね、話を遮っちゃって」



「いえいえ。それで、何もしても起きない月斗君ですけど、一つだけ、すぐに起きる方法があるんです」



「......なるほど」


「そういう事ね」



「はい!私がキスをすれば、パッと起きるんです。それはもう、毎回面白い反応をしてくれるんですよ?驚いたり、微笑んだり、謝ってきたりと......1回だけ、物凄い反応の時がありましたが」



「「物凄い反応?」」



「そうです。クイズにしてみましょうか。なんだと思います?」



「う〜ん......月斗の事だし、反射的に魔法を使ったとか?」


「なら私は、反射的に陽菜ちゃんを殴ったとか?」


「何故暴力に走っているのか凄く疑問ですけど......間違いですね。寧ろ、優しいですよ?」



「「あちゃ〜」」



(あ、この2人わざと外しにいってる。こういう所を月斗君は受け継いだんだなぁ。面白い!)



「答えはですね......反射的に私に思いっきりキスをしてきましたね。10秒くらい、抱きついて」



「男だな、月斗」


「やるわね。チャンスに猛攻撃って感じかしら?」



「えへへ......まぁ、そんな感じで、月斗君は魔王というより、白雪姫......白雪姫王子?って感じなんです」



「「なるほどぉ......フヒヒ」」



(あ、月斗君、ごめんね。もしかしたらおじさんとおばさんに、白雪王子で弄られるかもしれなくなっちゃった)



陽菜は申し訳無さそうに月斗の頭を撫で、そっと唇を指でなぞった。



それを見ていた月斗の母は立ち上がり、優しく言った。



「さ、そろそろご飯にしましょうか。陽菜ちゃん、月斗を起こしといてもらっていい?」


「いいですよ!任せてください!」


「いいぞ陽菜ちゃん。ガッツリいっちゃえ!」


「はい!」




そうして2人が去ったのを見ると、陽菜は月斗の頭を撫で始めた。




「ふへへ......ご両親から許可もらったじぇ......!」


(ご両親公認だし、もう何があっても許されるんじゃないかな?いや、ダメか。流石に節度は持たないと。もし何かあった時に月斗君を困らせたら、私の人生バッドエンドを迎えてしまう)


「......月斗君、一緒に幸せになろうね」


(待ってばかりじゃいられない。私からも前に出て、一緒に歩いていきたい。だから、高校を卒業したら言おう。今度は、私から)



そうして陽菜はゆっくりと膝枕を辞めて、月斗の顔に自分の顔を近付けた。




ちゅ




「お目覚めですかな?月斗くんむっ!!!」



月斗は陽菜に抱きつき、キスを続行した。



(待って!ここでまさかの2回目の反射キス!?)



そして15秒後──



(え?長くない?呼吸が出来ないんですけど?月斗君、お〜い月斗君!起きて!お願い!このままじゃ幸せ過ぎて死ぬ!!)



「ん......あれ?陽菜?」


「ぷはぁ......し、死ぬかと思った......」


「......なんか陽菜、近くない?」


「そりゃそうでしょ!20秒近くキスしてたんだよ!?」



「え?」




◆◆




う〜ん、ちょっと言っている意味が分からない。寝すぎたのだろうか。いや、そこまで時間は経っていないし、寝すぎとは言えないだろう。



「ふむ。20秒とな?何があったんだ?」



まずはそこからだ。何があったか、改めて状況、原因の整理といこう。



「おばさん達がご飯作るから月斗君を起こしといて、って言うから、キスで起こしたの。そしたら月斗君の方からたっぷりしてきました」


「ふむ......記憶にござらんな。ちくせう、何で覚えないんだ俺ェ......!!」



貴重な記憶は陽菜だけのものになってしまった。ズルい。

俺にもその記憶を共有させてくれ。



「もう!あんな寝惚け方、人類で月斗君だけだよ!?」


「まぁ待て。これは陽菜がキスで起こそうとした事に原因があると、私はそう思います」


「仕方ないじゃん!月斗君を起こす前に、白雪王子の話が出たんだから!」



ん?......おかしいな。それって、とてつもなく恥ずかしい話をされた、という事じゃないか?



「ど、どこまで話した?」


「全部」


「俺、死んだ。もう一生両親の顔が見れない」



絶対弄られる。あの魔王達なら絶対に弄ってくる。


もうダメだ......彼女にキスして起こしてもらう?そんな事があの2人にバレたら終わりだ。




「考えてもみてよ。意識がある時点で、私の背中を枕に寝ようとしてたんだよ?別にもう、今更って感じでしょ?」




そう言えばそうだった。


そうだ、開き直ろう。『家族の前でも陽菜とイチャイチャします』と、そういう精神でいこう。それならもう、気にする必要はないじゃないか。



「ごめん。これからは陽菜にベタベタするようにする」


「ふっ......良かろう。ほれ、今度は起きた状態で膝枕をするかえ?」


「あざ〜っす!!」




そうして、父さんと母さんが料理を持ってくるまで......いや、持ってきてからも膝枕を堪能した。




「「大丈夫かな、うちの息子」」

前回、今回、次回、次次回はリアルでのお話となっているので、ゲーム要素はありません。( 'ω')


ただ、今は夏です。夏です(大事なry)つまりは、アレがあるのです。


では、お楽しみに(^・ェ・^)/

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