最強のプレイヤーとの戦い
アテナsideのお話death
◇アテナside◇
ペリグロ草原にて──
「皆、まずは集まってくれてありがとう。ルナも、お前を倒そうとしてんのに来てくれてありがとう」
「気にすんな。俺の格好にツッコまないから来たんだ」
あの掲示板での発言から一日が経ち、ルナを合法的に倒そうと集まってくれたプレイヤーの合計は、530人。
その会合にルナも参加し、一緒にルールを考えてくれると言うので、有難く参加を受け入れた次第だ。
「俺達が求めるのはお前の外見じゃなく、中身の強さだからな。誰もツッコミなんて入れる余裕がない」
「......そうか」
なんだその反応は。ツインテールである事を気にして欲しいのか?
「ではまず、これからルールを決めようと思う。これを守れない奴は味方から殺されると思って、良く聞いてくれ」
「「「はい!!!」」」
「うぃ〜」
肝心な対戦相手が、娘を膝の上に乗っけて宙に浮いてるの......シュールだな。
「まず1つ目、戦闘エリアに関してだ。これはペリクロ草原でやろうと思うんだが、異議はあるか?」
「「「異議なし!!」」」
「いぎな〜し!」
「そうだな、メル。ここなら大丈夫だな.....ほれ、マンゴー」
「あ〜ん......おいしい!」
「そうかそうか。セレナに感謝だな」
おい、本人の代わりに答えてるけどいいのか?とんでもなく不利なルールにしてしまうぞ?
っていうかその白いマンゴー、白銀マンゴーじゃね?
「じゃあ次に、ルナが魔法を使う事を禁止する。異議はあるか?」
「「「異議なし!!」」」
「いぎな〜し!」
「そうだな。別に魔法が使えなくても大丈夫だからな」
は?嘘だろお前。それは流石に舐めすぎだろ。
「ルナ......マジでいいのか?」
「いいよ。サーチと攻撃、飛行が出来ないだけだしな。なんなら魔刀術とか魔剣術も縛るか?ってかそうしないと、開幕で200人は一撃で死ぬぞ?」
「しぬぞ〜!」
コイツ......マジか。ルナの自信的に、本当に縛っても勝つ気でいるのだろう。
一体どこからそんな自信が湧くんだ?
「じゃ、じゃあ魔刀術と魔剣術、魔弓術と魔闘術も頼む」
「はいはい。魔何とかシリーズ全封印ね。おkおk」
「おけおけ!」
あ、そうか。確かルナの娘はフェンリルと神龍......これも禁止にできたりするか?
「ルナ、その子達の戦闘も禁止していいか?」
「ん?リルとメルか?それなら最初から出さないから安心してくれ。戦うのは俺一人だ。ソルも出ないし.....俺の殺し時だぞ?」
「......感謝する」
何なんだアイツは。FPSゲーのナイファーの気分なのか?
そんなフッ軽精神でこの人数と戦う気なのか?
「で、他に縛るものあるか?俺としては特殊技は使ってみたいから、それを縛られるのはキツイんだが......」
「流石に武器までは縛らないから大丈夫だ」
──俺達はこの時の選択を、後悔することになる──
「そうか。なら後は制限時間と、俺が勝利した時の報酬か?」
「そうだな。500人もいるんだし、時間は多めがいいか?」
「いや?30分から1時間でいいぞ」
「は?お前それ、1人1分以内で殺る気なのか?」
「当たり前じゃん。逆に3時間とかやられたら、リル達と遊ぶ時間が減るだろ?」
はぁ?530人と戦うことより、遊びの為に時間を使いたいから制限時間を短くする?
......不味いな。俺、ニヒルの中では1番ルナを、アルを知っている気になっていたが、本当に『気』だったみたいだ。
俺は今、ルナが何を言っているのか理解に苦しんでいる。
「私達は長引いても大丈夫ですよ?」
「うんうん。パパがたたかってるのを見るの、たのしいし」
「そうか?でもまぁ、俺の毒の研究時間が減るから早めにしたいな。リルも注射するか?腕に針を刺して、血を採るんだけど。あと、毒を注入したり」
「い......嫌です」
「ははっ、そういう所は子供だなぁ。可愛いぞ」
「えへへ〜」
待て。情報量が多すぎる。毒の研究?注射?採血?お前は何をする気なんだ?
「じゃあアテナ。30分か1時間か、お前が決めてくれ」
「......1時間で。いいな!皆、1時間だぞ!!!」
「「「おぉぉぉ!!!」」」
「元気だなぁ。こんな蒸し暑い中、よくやるぜ。ほら、『ダイヤモンドダスト』」
「「すずしい〜」」
ルナが魔法を使うと、皆がいる場所全てに細氷が舞った。
確かに涼しい。魔法が縛られてる事だし、MPの回復を気にする必要が無いから使ったのか?それともただ単に暑かったから?
「報酬はどうするんだ?人数的には530人で、トッププレイヤーもチラホラ見えるし、そこそこの物は期待するぞ?」
「そこそこって......う〜ん、何が欲しい?ルナ」
「金。この前散財したから80万しかない」
「じゃあ、ルナが勝ったら1人10万Lを渡すってのはどうだ?合計5300万Lだ。お前らもそれでいいか?」
「「「はい!!!」」」
「えっ、マジ?やった〜!」
「良かったですね、父様。お金稼ぎのチャンスです」
「あぁ。武術大会で8000万稼ぎ、今は80万......ここで稼げるのはかなりデカイな」
は、8000万......このゲーム、金稼ぎが大変なのに、そんなに稼いでいたのか。
俺がチマチマと翡翠を売って稼いでいる金より、ルナみたいに一気に稼ぐ方が良さそうだな。
いや、それにしても本当に『勝つ気』でいるのに俺は驚きだが。
「あそうだ。ポーションとか自由にしてもらっていいぞ。他にも何か、バフとかデバフがしたかったら自由にしてくれ」
えっ......俺、今からポーション禁止にしようと思ってんだけど......いいのか?
「なら有難くそうさせてもらう。後悔するなよ?」
「あぁ。じゃあいつ始める?今?」
「待て待て。10分後だ。それまでに1対530に別れ、一気に始めよう。合戦スタイルだ」
「分かった。じゃあ先にあっち行っとくわ。じゃあの」
「あぁ」
そうしてルナが娘2人と共に離れ、600メートル程先で娘と遊び始めた。
「アテナさん、どうするんですか?魔法で決めますか?」
「それを今から話す。誰かこの中で、魔法が得意な奴は手を挙げてくれ!」
すると以外にも、80人ほどが手を挙げてくれた。俺、もっと少ないと思っていたんだが......感謝だな。
『あ、俺が負けたらお前らに1つ、アドバイスをやるよ』
ルナからVCが飛んできた。
『了解だ。楽しみにしている』
『おうおう。楽しみにしときな〜』
そうしてVCが切れた。
「俺達が勝ったら、ルナからアドバイスが貰えるらしいぞ!」
「「「アドバイス???」」」
「現状最強のプレイヤーからのアドバイスだぞ?欲しくないのか?」
「「「欲しい!!!」」」
アドバイス......これは本当に大事な事だ。自分を客観的な視点で見て、足りない部分を教えてくれる......それがどれほど大事なことか。
現に、元々ランキング3000位だった俺を8位まで引き上げてくれたのは、ルナが沢山アドバイスをくれたからだ。
上を行き、前を走りながらも、俺に手を差し伸べてくれた。
俺もいつか、あんなプレイヤーになりたいものだ。
「そして作戦だが、魔法使いは接近して魔法を撃ってくれ」
「え?接近するんですか?」
「あぁ。そこら辺はお前が得意だろ?翔」
俺は気付いている。俺の後ろに翔が潜んでいる事を。
「そうだね。遠くから魔法が飛んできても、ルナなら避けるか斬るかするだろうし、接近して一気に撃ち込んだ方が確実だね」
「な〜るほど!ショットガン的な?」
「そうだよ豚」
「殺すよ?」
「コントは他所でやれ、2人とも」
「「コントじゃない!!」」
どこからどう見てもコントですありがとうございました。
「それで魔法使いが接近する訳だが、この中に神器持ちはいるか?」
「「「は〜い」」」
30人くらいの手が上がった。
「ならお前達は魔法使いに紛れて、ルナをシバいてこい。木を隠すなら森の中作戦だ」
「「「了解!!!」」」
「いいね。ルナの意表を付けるならそれもアリだね」
「それと、剣と弓、槍や盾使いが残っていると思うが、お前達は待機してからの出陣だ。魔法使いと神器隊が全滅した時、残りの350人くらいで仕留めに行く。異論はあるか?」
「はいは〜い!ジョーカー君、ありま〜す」
「言ってみてくれ」
「罠を張ろう。糸術使いの子、ちょっとおいで!僕が見えない罠の張り方を教えるから、地雷的に仕掛けて欲しい!」
「「「分かりました!!!」」」
「あ、アテナ。ちゃんと死んだら解除されるから、今後の被害は無いよ」
「そうか。ならいい。俺はそれを今から言おうとしてたからな」
この草原は言わば『借りてる』状態だからな。元に戻しておかないと、ただの害悪プレイヤーになってしまう。
「じゃあそろそろ時間になる。魔法部隊、神器部隊、頑張ってくれ!」
「「「はい!!!」」」
「「「了解!!!」」」
「じゃあ翔、後の作戦は任せた。魔法部隊はピグレットが、神器部隊は俺が指揮する」
「分かった。にしても楽しみだね。あのルナが敗れる瞬間を見るのは」
「......だな。俺、アルが負けてるのは見ても、ルナが負けてるところは見たことないしな」
さて、ジャイアントキリングに、ルナはなるのかな?
強気なルナ君、いいですねぇ。それにしてもルナ君、プレイヤーとモンスターの違いが分かっていないのではないでしょうか?
大丈夫なんですかね?
では次回、『1vs530』お楽しみに!
あと、3月に入りましたね。花粉症の方はお気を付けください。
( 'ω')