新たなシステム・特殊技
第8章、スタートです!
『ピギーちゃん!刀出来たから取りに来てね!』
『......どちら様ですか?』
『あらあら、私の声をお忘れになりましたか?私ですよ、鏖殺天使のアルテミスたそですよっ』
『うん、ちょっと意味が分からない。あなたはルナ本人でおk?』
『おk』
『今から行く。1時間くらい......かからないわ。噴水ワープするから5分くらいで着く』
『早いなぁ。ってか噴水ワープ、俺1回も使ったことないわぁ』
『それでユアストプレイヤー名乗ってるとか恥でしょ。じゃあ、また後で』
『ほなな〜』
ピギーとのボイスチャットを切り、俺は庭に出た。
カラッとした暑さに照りつける太陽。庭の景色が歪んで見える、夏の風物詩の陽炎が立つ。
「夏......始まったな」
「ルナ?何してるの?」
庭で突っ立っていたら、セレナがやってきた。
「ん〜?夏だなぁって思ったんだ。セレナは涼しそうな格好してるし、そこまで暑くないか?」
「暑いわよ?ただ、マンゴーの為に気温0度を維持させてるからね。寧ろ寒いくらい?」
「どんだけ気に入ってんだよ......あ、桜の苗木はどうだ?」
宵斬桜との戦いが終わり、家に帰って刀作りを始めたのだが、本気的に刀を作る前にセレナに苗木を渡していたのだ。
「ダメだったわ。1度ルナにも見て欲しいのだけれど、今いいかしら?」
「はいはい。行きますよ......っと」
軽く伸びをしてから農場の、桜の苗木を植えている場所に向かった。
「おやおや。可愛い花が咲いてるじゃないか」
「そうなんだけど......私が触ると......ほら、弾かれるのよ」
小さな枝に咲いてる桜を、セレナが触ったと思ったら、雷の様なエフェクトが出てセレナの手を弾いた。
「ツンデレな桜か......?」
そう思って俺が触って見ると、普通に触れた......どころか、ピンク色に光った。
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『神月の桜の苗木』の主になりました。
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「「......え??」」
なんか......主になっちゃった。どうしよう、俺がお世話しないといけない雰囲気がプンプンしてきたぞ。
「が・ん・ば・れ、ルナ」
セレナがウィンクをして肩を叩き、地獄へ俺を突き落とした。
「......いいぜ、やってやるよ。宵斬桜を倒した男を舐めんなよ?お前ぐらい、最っ高に綺麗な桜に育てるなんてな、簡単なんだよ!」
ヤケになってるが、これでいい。何事も『始め』が肝心だ。
千里の道も一歩から......俺はこの苗木を、綺麗な桜に育てようと思う。
「セレナ、桜の育て方は知ってるか?」
「知らないわよ。フレイヤに聞くか、その桜本人に聞きなさい」
「......桜ちゃん、いや、『チェリ』ちゃん。君は何がお望みなのかな?」
どうせだし、名前を付けた方が愛着が湧くだろ。って事で、この子の名前は桜からチェリーを取り、名前は『チェリ』だ。
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『チェリ』は主の血を欲しています。
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「ん?......聞き間違えたようだ。チェリ、何が欲しい?」
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『チェリ』は主の血を欲しています。
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ちょっと言ってる意味が分からないんだよな。血を欲するって何?普通、水とか栄養じゃねぇの?何で血なの?
しかも、なんで『主の血』なの?毒だよ?
「ルナ、諦めなさい。本当に困ったらフレイヤに聞いて、それまではルナがチェリと向き合って考えなさい。いいわね?」
「......はい。何だかお母さんみたいだな、セレナ」
「私はルナのお母さんより、ルナのお姉ちゃんの方が良いわね」
「ルーナさんよりお姉ちゃんらしいよ。セレナは」
何だろう。ちゃんと面倒を見てくれてる感じがあって、お姉ちゃんらしさというか、暖かい優しさがあるよな。
まぁ俺、一人っ子なんだけど。
「よし。ステラ......はいチェリ。俺の血だ。ちゃんと飲めよ?」
俺はステラで腕を刺し、血をチェリに浴びせながら『癒しの光』で俺自身を回復させた。
キラッ!
「「あ、光った」」
こういう時に『植物鑑定』を使うのでは?
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個体名:チェリ
種族名:宵斬桜
成長段階:1/6
生命力:900,000/900,000
魔力:12,107/500,000
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「お?魔力が増えたのか?」
「多分そうね。ルナの血から魔力を摂取したんじゃないかしら?ほら、この土の魔力って、私の白銀マンゴーに吸われやすいからさ」
そう、この農場の、実に半分は白銀マンゴーの木で埋めつくされている。いつの間にか木がとんでもない数に増え、1つの木から実る白銀マンゴーの数も、とてつもない数になっているのだ。
「......チェリ。お姉ちゃんは怖いな」
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『チェリ』は同意しています。
『チェリ』は主の血を欲しています。
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「そうかそうか。ならピギーが来るまで俺の血をあげよう。ほれ、新鮮な血のポリゴンだぞ〜」
そうしてチェリを相手に5分ほど血をあげていたら、ピギーがやって来た。
「......ルナ?いや、違うか」
「いや、俺であってる。ようこそ、ウチの農場へ」
俺はピギーに体を向けて挨拶し、チェリに血をあげてるのを再開した。
「え?......ツインテールにしたの?」
「これは呪いだ。もうそろそろ解けるから安心してくれ」
「ってかアンタ、話題になってた『ルミ』じゃないの?」
「......呪いだ。少し黙っていてくれ」
「ってかなんで植物に血をあげてるの?」
「......呪いだ」
「言葉のレパートリー無さすぎでしょ、鏖殺天使ちゃん?」
「呪うぞ?」
「怖っ」
そう言うと流石に引いたので、俺もこのタイミングで血を止めた。
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『チェリ』はとても満足しています。
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「そうかそうか。魔力も全快したし、また少ししたら見に来るよ」
「ルナ、農場でも作るの?」
「俺は作ってねぇよ。ウチの奴が勝手にやってる」
「ソルちゃんが?」
「違う。付喪神だ。ソルは最近、冒険者稼業に精を出しているぞ」
「うわ、ニートだ!」
「俺、ソルに8000万Lあげたんだよね......」
「おぉ、ATMだ......」
「ちなみに8000万は、倍以上の価値になって帰ってきたけどな」
「へぇ〜」
皆の浴衣姿はとても綺麗だったからな。1度の武術大会での賞金程度なら、また出そうとも思える。
「あぁそうだ。ほれ、これがお前の刀だ」
俺はピギーに、桜の描かれた鞘に入った刀を渡した。
「おぉ......刀もピンク色だ!!ありがとう、ルナ!」
「どういたしまして。あ、花びらが余ってたから鞘もピンクにしたが、良かったか?嫌なら普通のに変えるんだけど」
「ううん!寧ろこっちの方が好き!ありがとね!」
「そうか。なら良かったよ」
因みに刀の性能はこんな感じ。
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『刀華:桜の戯れ』
Rare:21
製作者:ルナ
攻撃力:1,250
耐久値:500,000/500,000
特殊技:〖抜刀5連〗
付与効果:『幻耐久』『麻痺付与』
『魔力刃』『月光強化』
『生命力増強:500』『魔力増強:500』
『刀術補正:大』『感情強化:喜』
『顕現』
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「なぁ、この『特殊技』って何なんだ?作った後に気付いたんだけどさ、意味が分からないんだ」
「あれ?んじゃあアプデ内容見てないの?そこに思いっ切り書いてあるけど」
「見てない......取り敢えず、アプデ内容に全部書いてあるんだな?」
「そだよ〜」
後でチェックしようと思ってて、そのまま忘れていたな。
宵斬桜との戦いが楽しかったのがダメだ。俺を戦闘に夢中にさせて、他の事を頭から引き抜いてしまったから。
「そうか、ありがとさん。じゃあ今日はこれで。宵斬桜戦の映像見て、復習しなきゃならんからな。その時にでもチェックするよ」
「......見せて」
「ん?」
「その戦闘シーン、見せて!」
ピギーが物凄い気迫で迫ってきた。怖いぞ。
「え、えぇと、まぁ、いいぞ?但し、そこで見た事は外部に漏らすなよ?」
「分かった。だから見せて!」
「はいはい。じゃあリビングに行くか。本来はソルに見せるものだったからな」
そうして農場からリビングに戻り、ソルやリル達を呼んで、宵斬桜戦の鑑賞会が始まった。
「確かにこれはリズムゲーだね。まぁ、それにしてもルナ君の対応速度にビックリするけど」
「......おかしい。宵斬桜の攻撃って、どれもこんな簡単に弾けるものじゃない......」
「ピーちゃん。あのルナ君だよ?ほら、今もアップデート内容に頭を傾げているあのルナ君を。あのルナ君なら、宵斬桜なんて楽勝だよ」
「下げて上げるスタイルなの?ソルちゃん」
「ううん。上げて上げるスタイルだよ」
「いや、今のは下げてる気がするけどなぁ......」
「そう?でも見てよ、超カッコイイよ、あのルナ君」
「顔は良いよね。顔は」
「全部良いのです......あげないからね!」
「いらないよ」
「ルナ君がいらないと言うのかピーちゃん!戦争、戦争が始まるよ!!」
「チームとしては欲しいね。でも彼氏としては、いらないかな」
「なら良し。戦争は始まりません」
コイツら、戦闘シーンを見てるんじゃなかったのかよ。何で俺の話になってんだ?
「......特殊技、ねぇ......?フー、ちょっと来い」
アプデ内容に特殊技の項目を見付けたので、まずはフーを直接確認しよう。
『呼ばれて飛び出ないフーちゃん、降臨です!』
「ちょっと武器見るぞ」
『いやん、丸裸!』
「うるさいから捨てるか」
『すみませんでした』
布都御魂剣を顕現させて、その効果を見てみた。
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『霊剣:布都御魂剣』
Rare:──
製作者:ルナ
愛着度:231,981
攻撃力:3,000
耐久値:∞
特殊技:【霊剣】
付与効果:【不壊】『斬』『魔力刃』
【透明化】『生命力増強:1000』
『魔力増強:1500』『全ステータス補正:大』
【全戦闘系スキル補正:特大】【刀術補正:特大】
『STR補正:大』『顕現』【降臨】
『専用装備:ルナ』
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【霊剣】
・MPを任意の量消費し、刀の霊体を作成する。
・霊体は所持している魔法の属性が付与出来る。
・霊体の攻撃力は本体の攻撃力に依存する。
・霊体が損傷により破壊された場合、本体の
所有者のHPが、消費したMPの分、消費される。
・霊体の魔刀術の威力に1.2倍の補正が入る。
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「わぁお。フーさん強すぎ」
『えへへ、でも私を作ったのはルナさんですよ?ふへへ』
それにしても、どうして刀華とは違って、特殊技の名前の枠が黒なんだ?刀華は紫だったぞ?
「ヘルプさん。特殊技の名前の枠の色について教えてくれ」
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特殊技はそれぞれ、ランクがあります。
下から『白』《青》〖紫〗⦅金⦆【黒】
となっております。
ランクが高いほど強力ですが、何かの
対価が必要になる事が多いです。
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「ありがとうヘルプさん......にしても、ランクか......」
「自分で内容見ずにヘルプに頼るんだね、ルナ」
「俺の数少ないヘルプさんとの交流だからな。大切にしたいんだ。それで、ピギーの奴は紫の特殊技だったけど、効果は名前の通りか?」
「そうだよ〜、抜刀攻撃から5連続の斬撃が放てるようになるらしい」
え?それってさ......
「「めちゃくちゃ弱い......」」
「え?強いじゃん。だって5連続攻撃だよ?これって、フォレストウルフくらいならこの技だけで倒せるよ?」
「えぇ?だって......なぁ?ソル」
「うん......だって」
「「プレイヤースキルで出来るじゃん」」
「出来ねぇからシステムに頼ってんだよバァァカ!!」
怒られてしまった。
ごめんな、〖抜刀5連〗君。俺とソルには完全に無意味な特殊技になってしまって......ピギーを支えてやってくれ。
「で?ルナの刀の特殊技はどんなやつなの?」
「【霊剣】だな。ランクは黒だぞ」
「へぇ、凄いねルナ君」
「く、黒ぉぉ!?!?」
ピギーが急に叫び出した。耳が驚いてしまったぞ。全く。
「うるさ。神器なんだから黒でも良いだろ?それにフーだぞ?ウチの『つよつよ刀』を舐めちゃいけんぞ?」
フー曰く、現存する刀で2番目に強いらしいからな。
そして1番強いらしい、シリカの特殊技も後で見ないと。
お兄さん、製作者として気になりますよ?
「そんなバカ天使、鏖殺君に情報があります」
「鏖殺君に失礼だろ」
「なんと今まで発見された神器の特殊技......最高でも金ランクなんですよねぇ......」
「へぇ〜」
どうせ他のやつの神器なんて、ダンジョンで拾った奴だろ?
自分で作り、自分で育て上げた神器の方が、愛着度的にも成長するだろう?
「因みにどんな効果?」
「MPとHPによる刀の複製。コピーが壊れると俺が死ぬ」
「ピーキー過ぎるでしょ。最早ピギーだよ」
「は?」
「......」
「えっ何この空間。まるで私が滑ったみたいじゃん」
思いっ切りスベってるんだよなぁ。
ウィンドウで語るチェリ、これからどうなるのでしょうか?
次回は掲示板回です。楽しんで頂けると嬉しいです!