神月二咲キ誇ル幻ノ桜 下
咲ききった!
桜は舞った!
ただ少し
届かなかった
桜の木
私は蕾
君は花
共に咲く日の
満月を
私はずっと
待ち続けます
『消えろ......人間!!』
宵斬桜が何十本もの枝を伸ばしてきたが、全てリズムとなっているので容易に弾けた。
『くっ......『木魔法:咲キ誇ル桜』......え?』
「......ほい、『魔纏』と」
初めて敵がちゃんとした木魔法を使ってきたが、肝心な魔法の中身が『月魔法』の『月華』と同じだったので、舞う桜をシバいて落とすだけでいいのだ。
「ほれリル、ぶった斬りな」
「はい!『魔刀術:炎纏』......はぁ!」
ありゃ、それは多分効かないぞ?アイツに魔刀術は、ほぼほぼ無意味だからな。
『ふんっ!甘い......『散れ、桜よ』
バァァァァァン!!!!!
宵斬桜がそう唱えると、これから舞い落ちるはずだった、まだ空中に待機していた桜が爆発した。
「やばっ」
「父様!」
流石に爆発するとは思ってなかったので、桜の欠片が何十個か刺さり、HPが消えた......4割ほど。
「あれ?意外と痛くないじゃん。『リジェネレーション』うん、これで良し」
「え?」
『え?』
意外にもダメージが少なかったので、HPが継続回復する魔法を掛け、後はブリーシンガメンに回復を任せた。
『お主......何故耐えておる?』
「なにゆえって、高すぎるVITのお陰だよ。僕ちん、そこそこレベルが高い語り人でさ、多分。そのせいで耐えちゃったんだよ」
2度目の人間の、レベル343だ。全ステータス1万7000の、つよつよ人間なんだよな。
今の俺はリルよりも強いからな......ステータスは。
『恐ろしいな、お主。やはり殺さねば』
「やはりって何だよやはりって。最初から最後まで殺意たっぷりだろう?」
ガガガン!!!カン!
「あみゃい。とってもあみゃいよ。俺を殺したいならリズムゲーを辞めてくれ」
『ぬかせ!『花魔法:蝶ノ舞』
「俺の必殺技......発動。『不死鳥化』ァ!」
リズムゲーを辞め、ピンク色の蝶が数千頭も出てきたので、すかさず不死鳥化し、死ぬ事だけは避けた。
......俺はな。
「うっ......」
「リル!?」
ほぼ全ての蝶が俺を避け、リルに攻撃しに行った。
不味い、考えろ。リルのHPの削れ方を考えて、持って5秒だ。
5秒あれば何が出来る?
俺が身代わりになる?
......ダメだ。無意味だ。またリルに向かって飛ぶだろう。
リルを上に飛ばす?
......ダメだ。身代わりと同じだ。
宵斬桜を倒す?
......出来るならやってる。出来ないからこうなったんだ。
じゃあ、倒す事を諦める?
「思考の趣旨をズラすなよ、俺......リル!戻れ!!」
「ッ!はい!!」
リルのHPが完全に0になる直前、リルは光となって俺に入った。
『獣を戻したか......』
「あぁ。人間より可愛くて、人間より強い、最愛の娘なんでな。死ぬ前に戻すくらい、良いだろ?」
誰だってウチの子が1番と言うが、俺もその1人だ。俺にとって、ソルを除けば、リルとメルが1番大切だからな。
命を懸けて守りたいが、今は不死なもんでな。すまん。
『獣を最愛の娘と称すか......それも、私と同格、更には神にも届く獣を......お主の方こそ、化け物よのぉ?』
「それは昔から言われてる。相手の理解出来ない行動を『化け物』と呼び、相手の理解できない強さを『化け物』と呼び、相手の目指す頂きすらも、『化け物』と呼ぶ......お前もそういう、つまらない相手になるのかな?」
『お主が最初に、私を化け物と呼んだぞ?』
「そりゃあ『ルミ』が言ったことだ。俺として......『ルナ』としてはそうだな。お前はただの『トレント』だな。森林にいる、木の怪物だ」
『面白い事を言うが......あの木屑と同格と称すか?』
お?これはブチ切れチャンスか?
「あぁ。動き、攻撃する木なら、それはトレントだろ?」
『......やはりな。私もそう、思い始めていたのよ......』
え?怒って攻撃してくるんじゃないのか?
「お前も木屑になりたいのか?桜の木屑なら、チーズを燻製するのに使えるから、是非とも持ち帰りたいのだが......」
『はっ、私は燻しても食い物は美味くはならぬぞ?』
「どうだか......ねっ!」
ズバッ!と音を立てて宵斬桜を切り、続けて枝も数本切り落とした。
『はぁ......そろそろ話は終わりにするか。このままでは日が昇り、私はまた、次の新月まで出てこれぬからな。『花魔法:咲キ誇レ』......『宵斬桜よ』』
宵斬桜は、な〜んか嫌な予感がプンプンする言葉を放つと、月の光を浴びてピンク色に輝いた。
「どうしたものか......よし、糸と『蔦よ』『茨よ』」
俺は右手にオリハルコンの糸を出し、蔦ちゃんと茨ちゃんで織り込むと、1本のロープを作った。
「『戦神』......折れ」
戦神でバフを掛け、強くなった糸を『操王』スキルで操り、桜の枝を纏めて折りにかかった。
『甘いのぉ?『咲キ誇レ』『宵斬桜よ』......ほれ』
ギシギシと音を立てて枝を纏めていた糸が、宵斬桜によって細切れにされてしまった。
っていうか、何なんだあの魔法......魔法?は。何をしているか全く分からない。
取り敢えず、全力でやろうか。
「『戦神』セレナ、『魔弓術:雷槍』シリカ、『魔刀術:雷纏』『魔纏』ステラ、『鼓舞の光』フー、制御はするな......よし、『斬』............『雷』」
スパァァァン!!!!
出来ること全てをやりながら、光り輝く宵斬桜を斬った。
断ち切った宵斬桜は倒れ、ポリゴンとなって散った....が、
「......だよな。あるよなぁ?......第2形態がよぉ!!」
消えたはずの宵斬桜の場所には、1人の女性が立っていた。
着物を着て、長い黒髪を風に靡かせ、刀を持った1人の女性が。
『お主の魔力、実に美味であった。この『桜』......久方ぶりにこの姿になれたからのぉ?感謝しておるぞ、人間......そして、散るといい、人間。『桜纏』......』
宵斬桜らしき女性が刀を抜いてから唱えると、刀身は桜色の光を纏い、周囲に桜の花びらを散らした。
「刀か......いいね。『魔纏』......」
俺は近接戦でも立ち回りやすいように、クトネシリカを納刀し、布都御魂剣を両手で構え、魔纏を使った。
布都御魂剣は水色の光を纏い、周囲を優しく照らした。
『お主の刀の腕は知っておる。故に言おう......私の方が強いと』
「トレントなのか人間なのか分からない宵斬桜はさっき知った。故に言おう......君、なんで分身してんの?」
そう、俺の目には、桜色の刀を構えた女性が『3人見える』のだ。
『ルナさん。あれは幻影ではないですからね』
「あっマジぃ?本体は一体だけとか、そんなんじゃないのね?」
『お兄さん、あれは全部本体だよ?』
『ルナ?あの子が使った魔法......『宵斬桜』だっけ?あれはあの子の体を増やす魔法よ?気付いてなかったの?』
「あぁ、全く。俺の魔法には引っかからなかったからな」
『もう......お茶目ね!可愛いわぁ......!!』
セレナは騒がしいので、インベントリに仕舞い......はせずに、長弓にして背負った。
流石に装備した時の恩恵が大きいからな。仕舞いたくはない。
「仕方ない。宵斬桜、本気で殺ろうか」
『『『早う構え。私は楽しみたいぞ???』』』
初めての刀でのガチ戦闘だ。俺もちょっと......いや、結構楽しみだ。
「すぅ......ふぅ............あぁ」
深く呼吸をし、相手を見据える。
すると、思考がどんどんクリアになり、相手がどう動くのか、俺の動きにどう対処するのか、たくさんのイメージが頭に浮かぶ。
『『『いざ......参る』』』
「......『斬』」
カァァァン!!!と、玉鋼を打つ時のような音と共に、宵斬桜の1体目の刀が斬れた。
『はぁ!』
『......ふっ!』
「......」
刀が斬られた個体を宵斬桜Aとし、残りをBとCとすると、Bが突きを放つ2秒前にAが下段に蹴りを入れようとしてきた。
が、サーチでBの速度は分かっているので、落ち着いて後ろに下がり、Aの蹴りを回避した後にBの突きを横に歩いて避けた。
『そこっ!』
カン!!!
避けた先にCの上段からの振り下ろしが来たが、布都御魂剣で容易に弾けた。そしてこのCの攻撃はいやに軽いので、これはブラフだろう。
『はぁっ!』
予想通り、Bからの『突き』が来た。
コイツ、桜の花そのもので刀を作っている......俺には、とても既視感がある光景だ。
『血神』の専用魔法『血魔術』で武器を作る時と同じだろうな。
パチン!
『んなっ!?』
魔法で出来ているという事は、クロノスクラビスで消すことが出来るという事だ。その魔法、俺に対してはあまり意味が無いな。
「......『魔力刃』」
『ふんっ!当たらぬ!』
俺は近くにいたAに向かって魔力刃を飛ばし、1度後ろに下がった。
『ルナさん、次は「うるさい」......はい』
今、最高に考えて動いているんだ。邪魔をしないでくれ。
「......ははっ」
あぁ、考えて戦うのって楽しいな。自然と笑いが出ちまうよ。
『何を笑っている?』
「A。後方不注意だ」
『は?......ぐふっ!』
俺に話しかけたAは後ろから何かで刺され、血のポリゴンを口から吐き、倒れた。
「B、C。来い」
『『はぁぁ!!!』』
2人からの2連撃だ。よく見て弾き、クトネシリカで反撃しよう。
キン!ザクッ!!
「ぶっ......」
俺は血のポリゴンを口から吐き出した。
あぁ、忘れてた。魔法で作る武器は何にでも変えられるんだった。
Bは俺を斬る直前、刀を槍に変えて突きを放ってきた。
『そこっ!』
「......よし」
Cによる斬撃を弾かずに受け流し、Cの体勢を崩した瞬間にBに近付き、思いっ切り回し蹴りを喰らわせた。
『ごふぅっ!!!』
『くっ!『蝶ノ舞』『咲キ誇ル桜』
「『魔拳』......」
パチン!
布都御魂剣を捨て、蝶を叩き落としながらクロノスクラビスを使って魔法を消すと、布都御魂剣を捨てた瞬間にCが下段から斬ってきた。
「顕現」
カン!!!
『何っ!?』
「じゃあな。『斬』」
俺は布都御魂剣を顕現させて下段の攻撃を弾き、体勢が崩れた瞬間に首を切り落とした。
ただ......コイツもAと同様、ポリゴンにはならなかった。
『うぅ、やるな、お主......』
「セレナ、『魔力矢生成』......フー、顕現。『魔纏』『魔刀術:雷纏』」
『ふんっ!』
パァン!!
セレナによる魔力矢は斬られたが、フーに再度、魔纏を施す事が出来た。
『はぁぁ!『桜弓術:一矢』!!』
Bは桜で弓と矢を作り、俺に矢を放ってきた。
俺は矢を斬ろうと思ったが、斬ったと思った瞬間にズブッと腹に矢が刺さった。
『はぁ!!』
Bは弓を薙刀に変え、下からの切り上げを放つ。
ガンッ!!
俺は布都御魂剣を思いっ切り薙刀に叩き付け、Bの手から薙刀を、俺の手から布都御魂剣を、地面に落とす結果となった。
『ふっ、甘『雷』......』
俺は魔刀術を使った状態で待機していたクトネシリカを技を使って放ち、Bの首を刺した。
『おみ......ご......と............』
そして3人の女性の死体が、ポリゴンとなって散った。
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プレイヤー『ルナ』によって、
『神月穿樹:宵斬桜』が討伐されました。
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「ふぅ......サブミッション、クリアだ」
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『神月穿樹:宵斬桜』を討伐しました。
『神月の桜の枝』×50入手しました。
『神月の桜の花弁』×350入手しました。
『神月の桜の苗木』×1入手しました。
『指南書:桜器』×1入手しました。
レベルが1上がりました。
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「またUI変わってんな。指南書とか知らない物もあるし、ちゃんとアプデ内容を確認しないとな」
俺がそう呟くと、朝日が昇り、俺の体を暖めた。
「......帰るか。またな、宵斬桜」
そう言葉を残し、俺は家に向かって飛んで行った。
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名前:ルナ
レベル:343→344
所持金:845,290L
種族:人間
職業:『ヴェルテクスギルドマスター』
称号:『スライムキラー』
所属ギルド:魔法士・Cランク冒険者(94/200)
Pギルド:『ヴェルテクス』
所持因子:『稲荷』他6柱
所持技術:『魔力打ち』他多数
HP:17,110→17,160
MP:17,110→17,160
STR:17,110→17,160
INT:17,110→17,160
VIT:17,110→17,160
DEX:17,110→17,160
AGI:17,110→17,160
LUC:8,550→8,575
CRT:100(上限値)
SP:1,540
所持スキル:省略
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戦闘シーン、どうでしたかね?私としてはかなり良く出来たと思います。
では、次回から8章が始まります。
これからも楽しんでいただけると嬉しいです!
感想等あれば、是非、気軽に書いてください!( 'ω')
それではまた8章でお会いしましょう!では!