新月二咲ク幻ノ桜 漆
月の神
1人寂しく
待ち続け
出会えた君を
忘れはしない
「へぇ、こんな所にダンジョンがあるんですね」
「......ボスをスルーした事はツッコむべき?」
「いいえ、スルーしてください」
「......分かった」
現在、カラーズの皆さんとアンバー渓谷にあるダンジョンの入口まで来た。
このダンジョンの入口はなんと、滝の裏にあったのだ。
ゲーマー心を擽る滝の裏に設置するとは、運営も分かってらっしゃる。俺、このゲーム大好き!!!
「中にはね、トカゲが沢山いるんだよ!」
「そっすね。しかも殆どの奴が魔毒肉持ちなんで、食べられないんすよねぇ」
「でも、それが目当てなんですよね?ルミさんは」
「はい。魔毒肉を食べてみたいというのと、毒抜きが出来るのか、その検証の為に沢山集めたいんです」
嘘です本当は毒物の研究の為です。
「「「「なるほど」」」」
.....ごめん。
そうしてダンジョンに入ると、どうやら洞窟型階層式ダンジョンとなっているようだ。
内部はかなり広く、サーチが無ければ永遠に迷いそうだ。
「そっちにバジキっす!ルミさん!」
「はい」
ドパン!!!
「......ルミ、あそこワジキ」
「はい」
ドパン!!!
「ルミさん!あれは虹色蜥蜴です!倒しちゃってください!」
「はい」
ドパン!!!
ダンジョンの15階層にて、俺は砲台と化していた。
「あ、階段っすね。16階層行きますっすよ!」
「「は〜い」」
「......うん」
「分かりました。あ、その前に弓を変えますね」
「......分かった」
そうして俺は初期弓からアルテに持ち替え、皆と進んだ。
15階層までに倒した敵は数百体。弓の愛着度も999どころか、1500近くまで高まり、そこで矢が切れてしまった。
だから、ここからは魔力矢の使えるアルテで行く。
「ルミさん、その弓はどんな性能なんですか?」
「......気になる。百発百中なのはさっきと変わらないけど、矢の軌道が明らかに変」
カラーズのギルマスとサブマスに問われた。
「これは必中の弓です。魔力から作られる矢を放ち、放つ矢には必中の効果が付いているんです」
「「「「何それ!!!!」」」」
「でもこれ、まだ完成していないんですよね」
「......どういうこと?」
「さっきの弓と合成させて、初めてちゃんとした武器になるんです。これはまだ......武器の子供のような物です」
「......そんな武器、聞いた事もない」
「でしょうね。神器未満、聖魔武器以上の武器なんて、私はこの『アルテ』以外に知りませんし」
「ど、どういう事っすか!?聖魔武器以上って!」
「ですから、まだ子供なんです。神器の子供。さっきまで使っていた弓と合わせて、初めて大人に......神器になるんです」
アルテについては情報を出してもいいと思っている。
何故なら、今のアルテと同等の性能であるミルトルティンが有名になってしまっているからだ。
ソルの持つ、確殺必中の弓。そんな風に言われているらしい。
「じゃあ、ここで進化させるんですか?」
「え?いいんですか?」
俺、てっきり『帰ってからやれよクソニート』って言われるのかと思ってた。
「......寧ろ見たい」
「ですね」
「早く!」
「見せるんだよ!」
「......分かりました。では」
俺は初期弓を取り出し、アルテに重ねた。
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『半神器:アルテミスの弓』に『弓』を合成しますか?
合成する場合、『弓』は消滅します。宜しいですか?
『はい』『いいえ』
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俺は『はい』を押した。
するとアルテは真っ白な光に包まれ、銀色の弓に変化した。
「「「「「綺麗......」」」」」
その弓は美しく、見る者を魅了する力を持っていた。
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『神月弓:ルナライト・アルテミス』
Rare:──
製作者:ルナ
攻撃力:5,000(固定)
耐久値:∞
付与効果:【形状変化:弓】【魔力矢生成】
【必中】【月光超強化】【弓術補正:特大】
『魔力増強:2,000』【全ステータス補正:特大】
【アルテミスの寵愛】【感情超強化:愛】
【感情超強化:喜】『顕現』
『専用装備:ルナ』【降臨】
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【アルテミスの寵愛】
・【必中】の効果を付与する。
・【月光超強化】を付与する。
・女神『アルテミス』に可愛がられる。
【月光超強化】
・月の光を浴びている時、全ステータスが1.8倍になる。
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「やったぁ!やっと会えたね!!!」
詳細をチェックしていたら、ピンクのロングツインテールに、透き通るような真っ青な目をした女の人に抱きつかれた。
「「「「誰?」」」」
「アルテミス......ですか?」
「そうだよルn「あー!あー!」
嫌だ!こんな所でバレたくない!社会的に死にたくない!!
「ちょ......ちょっと席を外しますね」
そう言って俺はカラーズの皆から離れ、ボイスチェンジを切り、音魔法を使った。
「『サウンドカーテン』......お前、アルテミスだよな」
「そうだよ?それよりどうして女装してるの?......似合ってるけど。それもめちゃくちゃ」
「どうも。これは黒歴史だ。ソルにツインテールで固定されて、浴衣を作ってもらったから着ただけだがな」
「......声まで変えて?」
「......声まで変えて」
俺がそう言うと、アルテミスは凄まじい速度で抱きついてきた。
「んまぁ可愛い!!最高だよルナ!!!」
お、初めての呼び捨てタイプだ。これは接しやすいぞ。
「離れろ!......それと、この姿では『ルミ』だ」
「え〜?なになに?私から名前を取ったの?」
「あぁ」
「きゃ〜!最高に可愛いじゃん!!いいねぇ!!」
頑張って引き剥がしたのに、また抱きついてきてしまった。
「はぁ......取り敢えず、名前をあげるよ」
「うん!ちょ〜だい」
「お前は『セレナ』だ。『穏やかな』という意味を持つ『セレナーデ』から取った。少しは落ち着いて欲しいという、願いを込めてこの名前にするぞ」
「......この一瞬でそこまで考えたの?」
「あぁ」
「おぉ......お姉さん、ちょっとビックリだね。ルナの事を甘く見てたかも」
「別に甘く見られようが問題はない。好きにしてくれ」
「分かった。これからよろしくね?ルナ」
「お、おう。よろしく、セレナ」
一気に真剣な表情になったな。テンションに急ブレーキをかけられるとか、この人は自制心がとても強いのかもしれない。
「じゃあ、見た目を変えるね」
「見た目?」
「うん......ほら!!」
そう言ってセレナは、ピンクの髪から金髪へ、しかも毛先に掛けて銀髪のロングヘアになった。
それに、身長も160cmから175cmくらいにまで伸びた。
「どうよ!可愛くなったでしょ?」
「まぁ。一気に大人びて見えるようになったな」
「これならルナを可愛がる事ができるでしょ?」
「可愛がらないでくれ。ソルにされるならまだしも、セレナは嫌だな」
「酷い!!神界からあんなに見てたのに......私を捨てるのね......!!」
「ん?捨てられたいのか?いいぞ?」
「嘘ですごめんなさい捨てないでください」
「捨てないから安心しろ。取り敢えず家に着くか、カラーズと別れるまで、俺のことはルミと呼べ。それが出来ないなら出番は無いからな」
「分かったわ、ルミ」
「よし。『ボイスチェンジ』サウンドカーテン、解除」
俺、この人のテンションについていけてるのって、絶対にルーナさんやオケアノス達と仲良くなったからだよなぁ。
こんな所でなんだが......俺、変わったなぁ。
「お待たせしました。攻略に戻りましょうか」
「もっどろ〜!!」
「「「「えぇ......?」」」」
「敵だ。セレナ、戻って。『魔力矢生成』......そいっ!」
『ヂッ......』
遠くからやって来た巨大なトカゲを、一撃でポリゴンに変えた。
「「「「えぇ!?」」」」
「取り敢えず進みましょうか。話は道中で」
さぁ、新キャラのセレナさんが出ちまいましたね!
セレナさんは美少女と言うより、美人といった感じです。
ルナ君を可愛がるのが目的のようですけど、ルナ君はソルさん一筋ですからね.....セレナさん、ドンマイです。
これからのセレナさんとフーの絡みに、期待したいですね!
では、次回もお楽しみに!