新月二咲ク幻ノ桜 陸
色を知り
一人を連れて
稲妻へ
着いた雪山
新たな果実
「紹介するよ!こっちの白い髪の子が『真白』だよ!
それで、青い髪の子が『蒼』、最後に赤い髪の子が『茜』だよ!」
「「どうも〜」」
「よろしくっす!ルミさん!」
「よ、よろしくお願いします」
どうしてこうなった。俺は翠さんに着いて行ったはずだ。それがどうして、茜さん達のパーティに入っているんだ?
「ルミさんは見ての通り、弓使いなんだって!3人とも、頼んだよ!」
「うん。......ルミさん。私は真白。剣と魔法、弓も使う」
「はい、よろしくお願いします。ルミです。弓だけ使います」
「あれ?......刀は?」
「対人戦、若しくは人型の敵の時だけしか使えません」
適当に設定を追加しちゃったけど、多分大丈夫だろ。
インフィル草原のダンジョンと同じような感じなら、基本的にノーダメージでボスまで行けるだろうからな。
「そうなのね。じゃあ、魔法は使えないの?」
「雷属性メインで使いますよ」
「そう。なるほど......遠距離タイプか」
そうなんです。ルミちゃんは遠距離からペチペチ攻撃する子なんです。
か弱い女の子なので、守ってくださいね?
「ルミさん!私は蒼です。一応、『カラーズ』のサブマスターをしています!」
「カラーズ?」
「はい。私達のギルドの事です。私達、皆名前に色が入っているので『カラーズ』という名前に。ちなみにギルドマスターは真白です」
「ども」
「あ、はい。よろしくお願いします」
どうも、『ヴェルテクス』ギルドマスターのルナ君です。
ギルドメンバーは2人ですが、2人の合計レベルが450を超えてます。
「はいはい!私は茜っす!大会の刀術部門で2位だったっす!」
「大会なんてあるんですね。しかも2位だなんて、凄いじゃないですか!よろしくお願いしますね、茜さん!」
「はい!よろしくっす!」
あの時は刀を斬ってごめんよ?まさかあんなに綺麗に斬れるとは、思ってなかったんだ。
「じゃあ最後に、私は翠だよ!回復とかバフとか、あと魔法で援護するんだよ!」
「おぉ、それは有難いですね。よろしくお願いします」
「ん......翠、MP回復の装備付けてるから、時間さえあればHPは回復できる。だから、ポーションとか無くても大丈夫だよ」
「そんな装備があるんですね」
ブリーシンガメン以外のMP回復系装備か。気になる。
「翠の腕輪は特別製なんだよ!特殊クエストの報酬で貰ったんだよ!」
「特殊クエスト......」
「あ〜、あの私には合わない、クッソ面倒なクエストっすか」
「クソとか言わないの!......ルミさん、ルミさんはご存知無いと思いますけど、ディクトという街にいる『ジン』という鍛冶師の方がいるんですけど、その方からの特殊クエストで貰えるんですよ」
やべぇ、めちゃくちゃ知ってるぞ。あのドワーフのおっちゃんだろ?
「そうなんですね。ちなみに、内容は?」
「ジンさんに『奇抜な武器を見せる』というのが内容ですね。私達3人は普通の武器しか持っていませんけど、翠だけは特殊な武器を持っているんですよ」
「特殊な武器?」
なんだろう。暗器とか?
「これだよ!......じゃじゃ〜ん!連接剣!!」
そう言って翠さんは、鞭のように撓る、蛇腹の剣を取り出した。
「おぉ......確かに奇抜、特殊ですね」
「これは翠の持つ『錬金鍛冶』という技術でしか作れない、貴重品なんですよ」
「錬金鍛冶......難しそうですね」
多分、刃を一つ一つ合金化させて繋げたんだろうな。
面倒くさそうだけど、完成したら楽しそうだな。
「とまぁ、そんな感じで回復には翠を頼ってください」
「分かりました」
「では早速、ニクス山へ向かいましょうか。アンバー渓谷はその先にあります」
「はい!頑張りましょう!」
そしてこの時の俺は、気付いていなかった。
空を飛んで移動出来るのは、ウチの身内しかいない事に──
ガタガタ......ガタガタ......
「馬車......暇ですね」
「ルミさん......面倒だし、呼び捨てでいい?」
「いいですよ」
「......じゃあ。ルミは馬車、初めて?」
「数回だけですね。でも、ここまで長い距離を乗るのは初めてです」
「......そう。やっぱり、この移動って面倒だよね」
「そうですね......走った方が早いですし、荷物もありませんしね」
「「「「え?」」」」
「え?」
俺、なにか間違った事を言ったかな。荷物か?
「......走った方が早いって......この速度で?」
真白さんが馬車の後ろを見ると、そこそこの速度で景色が進んでいる事を指さしてきた。
「えぇ。全力で走るか魔刀術を使えば、あの雪山までなら直ぐに着きますからね」
魔法 is 秘匿。空飛んだら1発K.O.貰うぞ。
「ルミ......本気?」
「はい。なんだったら、試して見ますか?」
「......た、試す?」
「はい。私がどなたか1人を背負い、魔刀術で進みます。それで移動してみますか?」
「ちょ、ちょっと......相談する」
「はい!」
初めての試みだし、怖いよな。分かるよ。
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真白side
魔刀術で移動?そんな事、私は聞いた事もない。
「蒼、どうする?私、やってみたい気もする」
「......勇者かな?」
「勇者っすね」
「勇者だよ!でも、面白そうだよね!」
うん。ちょっとしたアトラクション気分もある。
「じゃあちょっと、お願いしてくる。死んだら......その時はごめん」
「大丈夫。私が責任持って渓谷までルミさんを連れてくから」
「うん。蒼に任せる。じゃ」
「「「ファイト!!!」」」
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ルミ(ルナ)side
「ルミ......お願い」
「分かりました。ではまず、馬車から降りるので私の背中に掴まってください」
「うん」
真白さんがちゃんと捕まったのを確認したら、後は飛び降りるだけだ。
......ちょっと怖いな。頑張ろ。
「......あ、そうだ。『サンダー』」
「......え?何を?」
「まぁまぁ」
「え?......きゃあああ!!!」
俺は靴を脱いで足の裏にサンダーを出し、一気に飛び降りた。
「......成功ですね」
ペリクロ草原に降り立ち、馬車が去っていくのを確認した。
「え?何をしたの?」
「魔法に乗りました。じゃあ、山まで行きますよ?」
「え?」
(顕現、シリカ)
俺はシリカを顕現させ、太刀の状態にした。
「ちゃんと掴まっててくださいね......『魔刀術:雷纏』」
「う、うん」
俺は足の裏に付けてるサンダーをニクス山まで伸ばし、雷の線路を作った。
「......凄い」
これは『雷神』だからこそ出来る芸当だ。この上を光の速さで進むぞ。
リニアモーターカー?ノンノン。時代は魔刀術だ。
「行きます......『雷』」
バヂイ!!!
足元のサンダーとクトネシリカが光り、俺と真白さんはニクス山の中腹に到着した。
「着きました」
「............」
真白さんは無言のまま俺にしがみついている。
「あ、寒いですか?」
「............」
「あ、あの〜......大丈夫ですか?」
流石に無言は辛いので振り返って見ると、真白さんが痙攣していた。
「あ、不味い。『クリア』大丈夫ですか!?」
「.....う、うん。まさか痺れるとは思ってなかった」
「あはは、私も初めて移動に使ったので、まさか魔刀術で触れている人が痺れるとは思いませんでした。すみません」
「......ううん。気にしないで。私から望んだことだから」
「そう言ってくれると助かります......それでは、これからどうしましょうか?」
1人ずつ運ぶのもいいが、それは毎回痺れさせる事と同義だからな。流石に申し訳ないぞ。
「......採取でもして待と」
「分かりました。私は採取を全然した事がないので、良ければ教えてくださいませんか?」
「......いいよ。こっち来て」
真白さんはモコモコの上着を着ると、俺を雪の積もった低木のもとへ連れて来た。
「......これは『モスベリー』マンモスが好きなベリー」
「そうなんですか」
真白さんが雪を払うと、オレンジ色の小さな実を採ってくれた。
「......食べてみて」
「ありがとうございます。いただきます」
渡されたので食べてみると、めちゃくちゃ酸っぱかった。
けれど、酸味の中で感じる優しい甘さがとても美味しかった。
「これ、美味しいですね!」
「でしょ?この実、葉っぱも乾燥させたら茶葉になる」
「そうなんですね!それは良いですね!」
俺と真白さんは、モスベリーの実と葉を摘み、次の場所へ移動した。
「......これ、『過冷草』箱に入れたら冷蔵庫になる」
「なるほど。でも冷蔵庫は間に合ってますね」
「......家、あるの?」
あ、やっちまった!!......ここは追加設定、『ルナの妹』を出すか。
「はい!兄が何かで優勝して、お城を貰ってまして......その中に冷蔵庫のような、冷たい状態にする貯蔵庫があるんですよ」
アレは電子レンジの逆バージョンだな。箱の中に食べ物や飲み物を入れて魔力を流すと、その中の物が冷える仕組みだ。
「......もしかしてお兄さん、ルナ?」
「兄をご存知で?」
「うん......一緒に戦ったり、私と戦った人」
やべ、いつ真白さんと戦ったか覚えてねぇ。フォレストウルフの時は記憶にあるけど、武術大会は記憶にねぇ。
「そうなんですね!兄がご迷惑をお掛けします......」
「ううん。ルナは凄い。誰よりも強くて、誰よりも上手いプレイヤーで......それに、結構カッコイイ人」
「カッコイイ......ですかね?あんなのを好きな人って、ソルさんくらいだと思いますが」
「ううん。結構色んな人に好かれてる。掲示板じゃ、ファンクラブとかもあるよ?」
「は?......ごほん。そう......なんですね」
危ない危ない。素が出ちゃうところだったぜ。
「まぁ、あの人はソルさんしか見てませんからね......」
「うん。ソルちゃん、いつもルナの事を楽しそうに話してる。私、ソルちゃんとフレンドで、時々一緒に遊んでる......」
「そうなんですね!......まぁ、あんな兄ですが、ソルさんを楽しませられてるなら、大丈夫そうですね」
「......うん。あの2人は早く結婚すべき」
「え!?......そ、そうですか?」
やべぇ。聞きたいけど聞きたくない。俺がルナ本人って、絶対にバラせなくなっちゃうからさ。
「......だってあの2人、傍から見たら完全に夫婦だもん。仲良く手を繋いで歩いて買い物して、2人で遊んで、しかも同じ家に住んでる......あ、これはルミの方が知ってるか」
「えぇ、まぁ。でも私もお城にいるのは時々ですからね」
「そうなの?......まぁ、それで、あれだけ幸せそうにいるのにまだ恋人って、ちょっと違和感すら感じる」
「.......そうですか?」
「うん......あれで結婚してなかったら、どっちかが他に好きな人ができた時、別れるでしょ?......それは、見てる私達が絶望するルート」
なぁ、俺とソルのデートを目撃されすぎでは?
いや、デートっていうか、ただの買い物の時も含めて、めちゃくちゃ見られてるよな?
「じゃあ、兄に言っておきます。『ソルさんを幸せにしろ〜!』って」
まぁ、もう決めてるんだけどな。
「......うん。お願い」
そう言えば俺、身長高いけど怪しまれてないのかな。
まぁ、ルナの血筋は身長が高いって思われとけばいいか。
「......それで、これ。レア植物」
「レア?」
「......うん。『白銀マンゴー』」
真白さんが指をさした木には、真っ白な実を大量に付けた、大きな木がそびえ立っていた。
「......私は弓で撃ち落とすけど、ルミもそうする?」
「う〜ん......私は魔法で取りましょうかね」
「......魔法で?」
「はい。『ヘルバハーベスト』」
俺は木に魔法を使い、50個ほどの白銀マンゴーを採取した。
「何それ!!......ねぇ、もし良ければ私のも......」
「勿論ですよ。『ヘルバハーベスト』」
まるで雪玉の様に白く、冷たい実を沢山採取し、真白さんと半分こした。
「ありがとう......皆の分も採ってくれて」
「いえいえ。弓でやったら傷がつきそうですし、効率も悪いですからね。こういうのは、専用の魔法を作るのが1番良いんですよ」
「採取しないのに......採取用の魔法を作ったの?」
「はい。魔法のスキルレベルを上げるのにも使えますから。それに、こうやって輝く場所を見つけられるのは、いい事じゃないですか」
「......そうだね。私も、作ろうかな」
「それがいいですよ。想像力の強化にスキルレベルの上昇、正に一石二鳥です」
「......うん」
この魔法、お米の収穫くらいでしか使ってなかったからな。
ちゃんと使ってあげれて嬉しいよ。
「お〜い!真白ちゃ〜ん!ルミさ〜ん!!」
「あ、茜だ。行こ、ルミ」
「はい!」
馬車でやってきたカラーズと合流し、俺達はアンバー渓谷へと向かった。
いいですねぇ、私もマンゴーが食べたくなってきました。
アップルマンゴーやドラゴンフルーツとか、南国のフルーツが私は好きです。
では次回、いよいよダンジョン攻略です。
お楽しみに!