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Your story 〜最弱最強のプレイヤー〜  作者: ゆずあめ
第7章 神界と夏休み
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新月二咲ク幻ノ桜 伍

約束を

守るためなら

命さえ

賭けているなら

私はいない



王女の抜刀術を、片手に持った木刀で弾いた。



「んなっ!?......やりますね」


「減速、遅いですね。構えもブレていますし、王女......本当にそれで刀を?」



滅茶苦茶だ。体の芯がブレ、剣が真っ直ぐに振れていない。



「これは師匠から教わった物です」


「はぁ......その事をあなたの師匠が耳にすれば、さぞ悲しむでしょうね。あぁ、可哀想」


「ッ!......侮辱する気ですか?」


「まさか!その師匠を侮辱してるのは貴女でしょう?あぁ、いえ。もし貴女の師匠が『体を揺らし、剣をブレさせ、迷いのある一刀のもとに振りおろせ』などと言っていたなら、話は別ですが」



当然、俺はそんな事は言っていない。寧ろ『やってはダメだ』と何回も教えたからな。



「貴様!」



......カン!!......カカカン!!!!



納刀からの抜刀、さらに3連撃が来たが、全て弾いた。



「3連撃、遅いですよ。これならウチの子の方が、10倍は早く打てますね」


「何を!!」


「まぁ、そう感情的にならずに。『魔纏』......使わないんですか?」


「何故それを貴女が!?」


「秘密です。さぁ、使いなさい?コチラは木刀ですよ?」


「......死にますよ?」


「殺せるとお思いで?......笑わせんなよ」



ニコニコ笑顔から一気に冷めた顔にした。王女、本当に弱くなったな。稽古をつけたお兄さん、とても悲しんでるよ。



「ッ!......『魔纏』」


「うん。さぁ、先手はどうぞ」


「はぁ!!」



ガンッ!!ガガンッ!!!!



軽いなぁ。重いのは音だけだ。



「ダメですね。そもそも魔纏の仕方が悪すぎます」


「魔纏の......仕方?」


「えぇ。その刀、ルビーが使われているでしょう?それも、魔力を宿した物が」


「......えぇ」


「なら、魔纏には何通りも魔力の纏わせ方があるのを、貴方は理解しているはずです」


「魔力の通り方?」




これはフーに教えられたんだけどな、魔纏って何パターンも魔力の纏わし方があるんだ。


大きく分けて、3つだな。


まず、剣の柄から剣先までを、徐々に覆うパターン。

次に、剣先から柄までを覆うパターン。

最後に、大量の魔力を消費して、剣自体を一気に魔力で覆うパターン。



これらにはそれぞれ、メリットとデメリットがある。



1つ目のパターンは、『剣速は速くなるけど威力が落ちる』纏わせ方だな。

柄から魔力を纏わせるので、必然的に柄の方に魔力が集まる。

だから『剣を振る』事に対しての補正が大きく、『剣で斬る』事に対する補正が小さいのだ。


2つ目は、1つ目の全くの逆パターンだな。


3つ目は1番大事だ。『剣速も速く威力も上がるが、剣が重く、振りにくくなる』という物だ。


これは単に、刀身を覆う魔力の量が多いので、その分重く、振りにくくなる。

但し、STRの値によって強く、早く振れると、その分凄まじい威力が出るという事だな。




「おかしいですねぇ。貴女の師匠は『全体的に纏わせろ』と言うと思うのですが......どうして貴女は『柄から纏わせてる』んですかねぇ?」


「そ、それは!」


「節約......ですか?それならば、相手を選ぶべきでしたね。私は貴女が節約した攻撃で勝てるほど、甘くないですよ?」



燃費悪いからなぁ、3パターン目。俺はブリーシンガメンがあるから屁でもないけど、普通の人が使う分には『必殺技』とも言えるやり方だからなぁ。



「......そうですね。私は貴女を舐めていました」


「気付くのが遅いですよ?ほら、貴女の全力でかかってきなさい。王女道場......なんて呼ばれてるらしいですけど、これじゃあ道場を名乗るのも烏滸がましいですからね」


「えぇ......いざ!」



ガンッ!ガガガガガン!!!



抜刀からの5連撃、いいね。重いよ。



「まだ!」



ガゴン!......ミシミシ......



「あらあら。木刀ちゃんが限界を......『魔纏』」



流石に木刀も耐えきれなくなったらしいので、俺も魔纏を使う。


すると木刀は、淡い紫のオーラを纏った。



「綺麗......ですね」


「そうですか?まぁ、経験ですね。でもこの子、魔力を宿さずに作ったものですから微妙な感じですけどね」


「それで微妙ですか......」



多分、魔刀術使ったらぶっ壊れるんじゃないかな。諸刃の剣とはこの事か?



「ほら、早く来なさい。魔刀術でも何でも、使える手を全て使って私を殺しに来なさいな」



これは稽古中にもやった『全力で俺を殺しに来い』ってヤツと一緒だな。

まぁ、死にたくなかったから全部弾いたんだけど。



「師匠のような事を言いますね」


「きっと同じような考えなのでしょう。弱い者に教える時、1番勉強になるのは『強い者を殺す事』ですからね」



だってレベルが上がるもん。ステータス的にも、精神的にも。



「私は......強いです!!」


「いいえ、弱いです。強いと言っている内は、自分の力に酔えますからね。そう思いたくなるのも無理は無いでしょう」


「何をさっきから!!......『魔刀術:雷纏』......」


「お?では次で決めますか。勝者は最後に立っていた方、という事で」


「えぇ......」



いいね、ちゃんと集中してる。口から涎を仕舞い忘れてるぐらい、深い集中だ。



「ではこちらも。『魔刀術:雷纏』」



あ、戦神は使わないぞ。だって、使ったら確実に俺が『ルナ』である事がバレるだろうからな。

女装して来ている事がバレたら、黒歴史どころの話では無くなりそうだからさ。隠したいんだ。



「......『(いなずま)』」


「『(らい)』」



バギャァァァァン!!!!!



2つの刀がぶつかり、凄まじい破壊音を発生させた。




「はぁ......はぁ......やった............倒した!」


「あ〜あ。やっぱり木刀折れちゃった。調整ミスったなぁ」


「え?」



王女が這いつくばって勝利を噛み締めている所に、棒立ちの俺の独り言がこんにちはしてしまった。


危ない危ない。ちゃんとロールプレイしなきゃ。男口調を隠さないと!



「では、立っていたので勝利は私ですね......それと」



俺は王女に近づき、耳元で囁いた。



「俺の弟子なら、さっき言った事全て直せ。もし次会った時に治ってなかったら、また地獄のドラゴン狩りにするぞ」


「ル......ルナさ......ん?」


「『ボイスチェンジ』......では、また会いましょう。王女様?」


「は、はい!!!」




そうして、王女道場へのカチコミは無事に終了した。




そうして王女から離れると、プレイヤー達に質問攻めにされた。



「お前マジか!!」

「お姉さん、凄いよ!!初めて王女に勝った人だよ!!!」

「嬢さん、あんた本物か?」

「うおぉすげぇ!!なぁ、俺にも刀教えてくれよ!!」

「一緒に戦いましょ!!ね!!いいでしょ!!!」



「いえ、私は弓使いですので。後衛しか出来ないんです」



「「「「「嘘だ!!!!!」」」」」



「本当ですよ。私は対人戦なら刀は扱えますが、モンスターは怖くてですね......その......遠くからじゃないと、震えちゃうんです」




震えちゃうんです.....(殺したくて)



なんてな。流石に嘘がデカすぎたか?




「ならウチのパーティに来てくれ!頼む!!」

「私のとこに!是非!後衛が足りないの!!」

「俺のところにぃぃ!!お願いしますぅ!!」




ピュアだな、皆。


どうしようかな。野良パーティってのも、悪くない気もしてきたぞ。

いやでも、他の人といたら正体バレるよな?


あ〜もう!どうしよう!!




「はぁ......なら、ジャンケンで勝ったところに、今回だけ入りましょう。条件はアンバー渓谷のダンジョンに入れるならそれで」



「「「「「いよっしゃぁぁ!!やるぞぉぉ!!!」」」」」




コイツらどんだけ俺を誘いたいんだ。不思議でならないぞ。




そしてジャンケン大会が始まったので、訓練場の端っこに突っ立っていたら、ソルからボイスチャットが飛んできた。



『ねぇルナ君。今掲示板を見てたんだけどさ』


『うん』


『王女道場で初めて王女が負けたっていう書き込みを見たの』


『うん』


『それでね、写真もあったから見たんだ』


『......うん』


『これ、ルナ君だよね?』


『......そうだな』


『ルナ君、調合してるんじゃなかったの?』


『......これにはマリアナ海溝より深い訳があるんだけど、聞いてくれる?』


『うん。口調はそのままなら、ちゃんと聞くよ』



それから俺は、ソルに魔毒肉が足りない事を話した。



『あ〜......なるほどねぇ。じゃあ、お出かけはどうなるのかな?ねぇ、どうなっちゃうのかな?』


『......リアルの方で補填という形には『出来るけど出来ない』っすよねぇ......』



リル達が納得しないもんな。あ〜あ、やっちゃったね、俺。



『まぁ、桜との戦闘も控えてるし、リルちゃん達には何とか説得するよ』


『すんません......お願いします』


『次は無いよ?多分。私とはいつでも会えるけど、リルちゃん達はここでしか会えないんだから、そこは理解してあげてね』


『はい。お土産も持って帰るんで、何とかします』


『よろしい。じゃあ野良パーティでの攻略、頑張ってね。それとプライバシー設定で名前を変えるの、忘れちゃダメだよ?』


『何それ』


『パーティに表示される名前を変えられるの。これをしてなかったら、ルナ君がルナ君である事、バレちゃうよ?』


『設定した』


『早いね!?』


『名前は『ルミ』だ。アルテミスから取った』


『偶数番目の文字を取ったんだね。なるほど。じゃあ、頑張ってね!』


『あぁ。大好きだよ』


『私も!』




そうしてソルとのボイスチャットが終了した。





「お姉さん!私、勝ったよ!!!」



エメラルドグリーンの髪に紫の目の女の子が、ジャンケンで優勝したようだ。



「そうですか。では招待を送ってください」



そうして女性プレイヤーから招待が送られてきた。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

(みどり)』からパーティ招待が届きました。


承諾しますか?


『はい』『いいえ』

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



もちろん『はい』と。初めての野良パーティ、楽しみだ。



「よろしくお願いしますね、翠さん」


「よろしくね!ルミさん!」




こうして、俺は翠さんの臨時メンバーとなった。

ちゃんと女装バレを阻止するソルさんマジ女神。



次回は野良パーティでのお話です。楽しんでくださいね!

(^・ェ・^)/

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