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Your story 〜最弱最強のプレイヤー〜  作者: ゆずあめ
第7章 神界と夏休み
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新月二咲ク幻ノ桜 肆

伸びた鼻

叩き折るのも

役目なり

腐る木の音

芽生える心



宵斬桜戦、前日──



「じゃじゃ〜ん!全員分の浴衣、完成で〜す!!」



「「「「おぉ〜!!!!」」」」



ソルにリビングに呼ばれたかと思ったら、浴衣の完成報告だったようだ。



「はい、このオレンジの浴衣はリルちゃんの。で、紫のがメルちゃんね。それと水色のやつがフーちゃんで、赤いのがシリカちゃん!」



「「ありがとうございます!!」」


「「ありがと〜!!」」



「いいえ〜!じゃあ早速、着てみてもらおうかな?」



そうしてソルが皆に浴衣を渡すと、直ぐに着替え始めた。



「......あ!ルナさん、見ちゃダメですよ!」


「......ん?......あぁ、そういえばそうだったな。じゃあ後ろ向いておこうか」


「......何故でしょうか。何故か私の心にグサッとくる反応でした......」


「知らんがな。じゃあの」



着替えを見たところで何も思わないけど、そういうのはちゃんと配慮すべきだからな。後ろを向いておこう。


そうして俺は、強制ツインテールにされた髪の毛を弄りながら、皆が着替えるのを待った。




「父様!見てください!......どうですか?」



リルに呼ばれて振り向くと、オレンジの可愛い着物を来た、ツインテールのリルがくるっと回った。



「おぉ、似合ってるぞ。しかも俺とお揃いのツインテールか」


「はい!可愛いですからね!」


「だな。ま、可愛いのはツインテールじゃなくて、元々のリルが可愛いからだぞ」



俺はそう言ってリルの頭を撫でた。



「「「うわぁぁ!言ってほしぃぃ!!」」」



何故か付喪神ズとソルが叫んでいるが、気にせずにリルの頭を撫でた。うん、モフモフサラサラ。最高ですな。



「パパ〜、メルは〜?」


「メルも似合ってるぞ〜。いつもの黒のゴスロリから紫の浴衣に変わるだけで、一気に大人びてみえるぞ」


「ほんと〜?やった〜!」


「ほれほれ。撫で回してやろう」



メルはそのまま、長い髪を下ろしているみたいだな。俺はてっきり、お団子的な感じで、結びあげるのかと思っていた。



「ル、ルナさん!私はどうですか!!」



2人の頭を撫でていたら、フーが突撃してきた。



「......普通?いや、巫女服と同じくらい可愛いか。似合ってると思うぞ?」


「......ホントですか?」


「本当だ。巫女服といい勝負をしてるぞ、今のフーは」


「それ......褒められてます?」



失礼な。めちゃくちゃ褒めてるぞ。



「褒められてるよ、フーちゃん。ルナ君の巫女服の好き度合いって、結構な物だよ?だから、それと同じくらいってのは、『かなり似合ってるぞ〜』って事だよ!」



どうやらソルには伝わっていたらしい。俺は巫女服が本当に好きだからな。って言うか、和服がそもそも大好きだからな。


メイド服じゃない、巫女服の時のフーも、結構お気に入りだったりする。



「へへ......そうですか......ふへへ」


「その笑い声が無ければ良かったのにな。勿体ない」


「んなっ!何を〜!?」


「ってかこれ、流れ的にシリカも来るか?」


「う〜ん?別に良いよ〜?お兄さんも疲れるでしょ?」


「まぁ、それなりに」


「じゃあいいよ!でも、似合ってるかどうかは知りたい!」



シリカをよく見てみると、浴衣に入っている炎の刺繍や、赤く綺麗に咲いている薔薇の刺繍など、シリカとマッチしている絵柄だった。



「似合ってる。ソルの刺繍のお陰で、元のシリカの魅力が更に引き出されてるんじゃないか?」


「ほんと〜?やった〜!ありがとね!狐ちゃん!」


「ふっふっふ。こんなもんですよ!」



にしても、よくこんな短時間で仕上げた物だ。凄いな。



「じゃあちょっとやりたい事あるし、調合室(仮名)に行ってきていいかな?」


「別に仮名じゃなくて良くない?」


「じゃあそうする。調合室行ってきます」


「皆浴衣に着替えたのに?」


「......宵斬桜に備えたいのですが」


「皆浴衣に着替えたのに?」


「『ボイスチェンジ』............ダメ?」



ソルに精一杯の可愛い声でお願いしてみた。



「う〜む......じゃあ、やりたい事が終わったら、皆でお出かけしよう?」


「それならいいぞ。ミスりまくれば夕方か夜になるが、上手くいけば直ぐに終わるからな。それだけ頭に入れといてくれれば、お出かけなら出来るぞ」


「分かった。あとその声でその口調だと、すっごく気の強いお姉さんみたいだよ?」



おっと、それはミスったな。



「じゃあ、また後でね!」


「は〜い。調合がんばってね〜!」




柔らかい感じで声をかけ、俺は調合室へ向かった。




-------------------------------------------------------

ソルside



(みな)の者、集合」



「「「はっ!」」」



「今のルナ君の言葉、どのような判定で?」


「ソル王妃!私は90点だと思います!!」


「ほう。その心は?」


「声、口調は完璧に女の子でしたが、部屋を出る時の足運びがいつものルナさんだからです!」


「......なるほど」


「ソル王妃!シリカも同じ意見です!」


「分かった」


「お母様!私は完璧であると、そう判断しました!」


「どうしてかな?」


「何故なら、父様が完璧であるからです!」


「......ルナ君は完璧では無いけど、100点という扱いだね。分かった。ではメルちゃん、あなたの意見は?」


「え?う〜ん......わかんない」


「何故だ?もしや先程のルナ君を、メルちゃんは見ていなかったと?」


「ううん。みてたよ?でもさ、パパにてんすうつけて、それはたのしいの?」



「「「「うっ......」」」」



「みんな、パパがだいすきなんでしょ?ママは人としてすき。フーちゃんとシリカちゃんは『あるじ』としてすき。リルちゃんはかぞくとしてすき......それなのに、パパを下げるようないいかたをするの?」



「「「「......何も言い返せない」」」」



「なら、こういうのはもうやめてね。メルもパパがすきなんだから、わるく言うのはやめてね」



「「「「はい......肝に銘じます」」」」




ごめんなさい、ルナ君。メルちゃんに怒られちゃったので、もう会議はしません。




-------------------------------------------------------

ルナside




「う〜ん......全然分からん」



強い毒を作ろうとしているのだが、全然上手くいかない。



「熱するからダメなのか?液体と混ぜるからダメなのか?それともシステムの限界なのか?......全く分からん」



瘴気の毒牙、毒肉、魔毒肉、老鷲獅子の腐肉、バジリスクモドキの劇毒液、魔鋼鼠の毒肉、麻痺劇毒の鱗粉。


俺はコイツらを使って、どうにか強い毒を作ろうとしているのだ。



「単体では猛毒でも、腐肉と合わせるとバフアイテムになるバジリスクの劇毒液。逆に、単体で毒になる毒肉に、瘴気の毒牙から抽出した液体を垂らせば、劇毒に変わるこの現象......何なんだ?」



多分、毒に相性があるのだろう。


『毒×毒=猛毒』に変わる物と、『毒×毒=薬』に変わる物。


これらの相性を研究しないと、俺の求める毒を作るのは難しいだろうな。



「あぁもう!魔毒肉が1個しかないのがダメだろ!」



魔毒肉はダンジョンのボスの......イビルオークだっけ?

アイツから入手した物だから、再入手にはダンジョンに行かなければならない。



「はぁ、取りに行くか。武器は......初期弓でいいや。アルテを進化させたいし」



初期に買った弓の愛着度を上げてアルテと合成する。それでアルテが『半神器』から『神器』へ進化する。



「顕現......待ってろよアルテミスさん。急で悪いが、今日中に降臨させるからな」



俺はアルテにそう話しかけると、アルテが光ったような気がした。



「愛剣の爺さんは......宵斬桜の後に解決したいな。一体どんな人なのか、アルテミスさんも爺さんも、楽しみだな」



話した事のないアルテミスさんと、話した事はあるけど見た事のない爺さん。

そんな2人がどんな人なのかを楽しみにしながら、俺は弓を持って城を出た。



「あ......この格好で出ちまった。まぁいいや」



皆、気付くだろ。俺が何故か女装して歩いている事に。



「そうだ、ギルドにダンジョンの依頼があるか見てみるか」



魔毒肉集めに加え、冒険者ランクも上げる、正に一石二鳥を体現すべく、俺はギルドへ向かった。




「すみませ〜ん」



ジロ......



受付嬢さんがカウンターにいなかったので呼ぶと、周りのプレイヤー全員から視線を集めた。



何これ、クッソ目立ってるやん。最悪なんだけど。



「は〜い!対応遅れてすみません。どうされましたか?」


「えっと、その、ダンジョンの依頼ってありますか?」


「ダンジョン......ですか?すみません、冒険者ランクを教えてください」


「Cです。前に上げて、そのまま依頼を受けてなくて......ごめんなさい」



俺は頭を下げた。流石に数週間も依頼を受けてないのは申し訳ないからな、ごめんなさいの気持ちでいっぱいだ。



「いえ、お気になさらないでください!それでダンジョンの依頼ですけど、今のところインフィル草原にあるダンジョンと、アンバー渓谷にあるダンジョンの2つがありますけど、どうされますか?」


「......アンバー渓谷の方って、『魔毒肉』がドロップするモンスターは出ますか?」


「はい。それはもう、うじゃうじゃと」


「じゃあそちらで」


「あの......失礼ながらお聞きしますが、何の目的で魔毒肉を?」


「え?そりゃあ食べる為ですよ。1度は食べてみたい物だし、毒を抜けるのかも試したいですからね」




「「「「「ダメ!!!!!」」」」」




「うわっ......えっ、なに?」



受付嬢さんに説明していたら、周りのプレイヤーに止められてしまった。



「君、絶対に魔毒肉は食べちゃダメだよ!!」

「あれ、美味いけど100パー死ぬからな!?」

「可愛い見た目してとんでもない事をするな!やめろ!」



俺を止めるのに必死すぎだろ。


別に俺、太陽光を浴びてればデバフは解除されるし、ステラにも充電していくからダンジョン内でも問題ないし、何より不死鳥化すれば死ななくなるからな。



う〜ん、でもこんなに心配してくれてるのは有難いな。

優しいプレイヤーが沢山いるのは、嬉しい事だ。



だから精一杯、不安にさせないように元気な顔で言った。




「いえ、お気になさらず。こう見えても頑丈なので!」



「「「「「それは無理がある!!!!!!」」」」」



「えぇ......困ったなぁ」



またもや止められてしまった。そんなに心配か?



「それにお姉さん、その弓!それで渓谷は危ないよ!」

「そうそう!私達のパーティに入らない?一緒に攻略もするよ?」

「いや、ウチに入りな!盾役もいるし、弓も最大限に輝くぞ!」

「あぁ!俺が精一杯護衛しよう!!」



今度はパーティ招待か。みんな優しいな。




「いえ、自分はずっとソロでやってるので大丈夫です!」



「「「「「そりゃここまで来るのはソロで大丈夫だからな!!!!」」」」」



「えぇ?......どういう事?」



ここまで来るって、その言葉の意味が分からない。



「嬢さん、インフィル草原とアルトム森林は簡単だからソロでもいけるだろう。でもな、この先のニクス山とか、ドゥルム鉱山とか、そういった所はソロでは厳しいんだ」

「そうそう。私も苦戦して、結局パーティを組んだわ。特にドゥルムのゴーレムなんて、貴女の弓じゃ一瞬で弾かれるわよ?」

「だよなぁ。俺も弓使いだったけど、ゴーレムは無理だった。それにお姉さん?お姉さんのレベルは幾つなんだ?」



なんかレベルを聞かれた。これは......下2桁だけでいっか。



「42です」



「なら無理だ。おとなしくパーティに入って、前衛の火力が出せる人に助けてもらうんだ」

「うん、42はキツいね。DEX極振りでも厳しいし、大体そんな事したら弓が壊れるからね」

「やっぱりウチに来な?渓谷なら護衛するからさ」



「いえ、別に大丈夫です。ゴーレムなら拳でやれますし、いざとなれば刀があるので。そこまで心配をかけなくとも、自分はそこそこ強いですよ?」



事実だ。あの程度のゴーレムなら心臓を殴れば粉々になるし、本当にピンチになればフー達を顕現させるからな。



「刀?お姉さん、刀を扱えるのか?」

「凄いねぇ。和服に刀とか、カッコイイね!」

「刀か!それなら嬢さんの強さが分かるかもしれんな。嬢さん、一旦自分の強さを確認して、それから挑んだらどうだ?」



「強さが分かる?ステータスですか?」



また意味の分からないことを言われてしまった。俺は世間知らずなのかもしれない。



「違う。王女道場だ。丁度訓練場にいるし、そこで相手してもらえ」

「うんうん。それに刀も扱えるなら、是非ともウチのパーティに欲しいしね!お姉さんの腕前見せてよ!」

「まぁ、確定で負けるから、そこだけは気を負うなよ」



「......確定で負ける?」



俺の弟子は、負けイベの敵になったのか?



「そうだ。あの王女に勝ったやつが誰もいねぇんだ。だからだな」

今日犬子(こんにちわんこ)っていう、プロゲーマーの人でも勝てなかったんだよ!」

「マサキさんも勝てないって嘆いてたなぁ」



「そうですか。では1度、行ってみましょうかね」



負けを知らない王女に再教育だな。きっと、鼻が伸びている事だろう。

ここらで1度、その鼻を叩き折ってやる。




「おうよ!俺達も応援するぜ!」

「私も!後ろから応援する!」

「お姉さん、頑張れよ!」



「そうですか。まぁ、王女の方を応援してあげてください」



「強気だな。そんなに自信があるのか。楽しみだな」

「ま、負けないでね!」

「勝てると信じてるぜ!」



「では、行きますか。受付嬢さん、少し席を外します」



「はい。その......頑張ってくださいね!」



「大丈夫です。では」




そうして俺は、20人ほどのプレイヤーを連れて訓練場へ来た。




「おや、貴女が次の挑戦者ですか」




あ、そうだ。女の子ロールプレイしなきゃ。




「はい。私が貴女の相手です。王女様の武器は?」


「私は刀を。これが1番得意なので」


「じゃあ私は......木刀で」



俺は稽古用に作った木刀を取り出した。


これは『上質木材』から作った奴で、魔纏なんかも使える、超高性能木刀なのだ。




「嬢さん!流石に木刀は舐めすぎだ!」

「そうよ!そんなんじゃ死ぬわよ!!」



「貴女......本気ですか?」



王女に本気かどうか尋ねられてしまった。



「えぇ。王女様のような『ぺーぺー』には、コレで十分です」


「......良いでしょう。では先手は譲ります」


「はい?舐めてるのですか?」


「それはそちらでは?......では、先手は貰っても?」


「お好きに。ただ1つ言うなら......」



王女が抜刀術で攻撃してきた。




カン!!!!




俺は片手の木刀で弾いてからこう言った。



「実戦なら、もう死んでるよ」

あくまで稽古。実戦のためのしたづみですからね。

最後のセリフは、ちょっと的外れです。


でも────────ね。



では、次回もお楽しみに!


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