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Your story 〜最弱最強のプレイヤー〜  作者: ゆずあめ
第7章 神界と夏休み
217/492

新月二咲ク幻ノ桜 参

思い出す

月の光は

暖かく

冷たくもあり

優しくもあり





「メル、ここら辺の雪を少し溶かせるか?」


「よゆ〜」


「じゃあ頼む」


「『インフェルノブレス』......どう?」



「「............」」



ニクス山の山頂にて、雪が無い場合のニクス山を確認しようと、メルに魔法を使ってもらった。


......のは良かったのだが、メルの奴、全力でブレスを使ったせいで、ここら一帯が溶岩の如く溶けてしまった。



「はい、撤収。ニクス山をリロードしま〜す」



俺はリルとメルを抱きかかえ、ディクトの方まで一気に飛んで行った。



「......パパ?どうしてはなれるの?あれじゃダメ?」


「ダメです。メル、まずは『手加減』というスキルを習得する事から始めようか。今のメルは、ちょっと過剰なパワーなんだ」


「どうして?強かったら、そのぶんいいじゃん」



おっと。このままではドッヂボールをした時に、あまりにも投げる力が強すぎて、外野にいる味方すら取れないボールを投げるパワープレイヤーになってしまう。



「メルはソルと料理をする時、いつも火加減はどうしてる?」


「え?......ママが『弱火から』っていってたから、よわびでりょうりしてる」


「じゃあさ、そのソルの教えを無視して、いきなり強火から料理を始めたら、どうなると思う?」


「こげちゃう。わたし、それでなんどもしっぱいしたもん」


「だろう?でも弱火から始めた時はどうだった?」


「きれいにできた!」


「そうだな。綺麗に美味しくできただろう?」


「うん!」



ここまで来ればあと少し。経験と意識、原因を結び付けるだけだ。



「それは戦闘も同じなんだ。例えば、メルは相手の動き方を知りたい時、いきなり全力で魔法を使ったら、相手を倒しちゃうだろ?それで相手を倒したら、相手の動き方を知る事は出来ないよな?」


「うん。だって死んじゃってるんだもん」


「だよな。でもさ、まずは弱い魔法で攻撃して、次に相手が死ななかった時、どうなるか分かるか?」


「......うごきが分かる?」


「そうだ。生き物というのは攻撃された時、『反射的に防御する』タイプと『反射的に攻撃する』タイプの、2種類に別れている」


「うん」


「その内のどちらかのタイプである事を、メルは理解出来るわけだ。そうする事で、相手の動き方を理解し、よりスムーズに戦闘が進められる事は分かったか?」


「うん!」


「それが分かったなら大丈夫だ。手加減の重要性というものを理解出来るだろう。だからさっきの場合は、いきなりインフェルノブレスを使うんじゃなくて、ファイアボールから使うべきだったと、反省出来たか?」


「うん。ごめんなさい、パパ」


「謝らなくていいさ。誰も嫌な目には遭ってないからな。今回の失敗を反省し、理解し、次に繋げる事が大事だ」


「じゃあ、どうやって『てかげん』スキルをおぼえるの?」


「それはニクス山のリロードが終われば始めよう。その間にリルは、ニクス山の本来の形を覚えるんだ」


「分かりました。任せてください」


「あぁ。じゃあリロードも終わっただろうし、戻るぞ」



「「は〜い!!」」




そうしてメルに手加減の重要性を教え、溶けたニクス山をリロードして復活させた。




「うん、綺麗に元通りになってるな。ありがとう、運営さん。そしてごめんなさい、運営さん」



これからも何かの拍子にエリアがめちゃくちゃになるだろうけど、元通りに戻してくれると嬉しいです。



「じゃあメル。手加減スキルの取り方を教えるぞ」


「は〜い!おねがいします!」


「うん。お願いします。それじゃぁまずは──」




それからメルに手加減スキルを取らせ、その後は3人で『雪のないニクス山』の地形と、『雪の積もったニクス山』の2パターンの地形を把握した。




「う〜ん......本当にここに桜が現れるんですかね?というか、桜って何なんでしょうかね?」


「現れるんだろうな。それと桜は木のことだ」


「きのこ?」


「違うぞメル。『木』だ。白とピンクの5枚の花びらから出来ている花を咲かす、めちゃくちゃ綺麗な木のことなんだ」



「「へぇ〜」」



「そして桜はな、今俺の着てる浴衣......もとい和服ととても相性が良くてな。日本で昔から親しまれてるんだ」



「「にほん?」」



「あ〜......アレだ。東の島国、ってやつだ。そこに桜があるはずだから、行けるようになったら皆で見に行こうな」


「うん!たのしみ!」


「楽しみですね!」



現在、夜中の4時に入った頃だ。

下弦の月が倒れていく姿を眺めながら、俺達はお茶を飲んでいる。



「お星様がとても綺麗ですね。ここに居ると、お星様に触れそうです」


「そうだな......星か......懐かしいなぁ」


「どうしたの?パパ」



星を見て、ちょっと昔を思い出していると、メルに聞かれてしまった。



「う〜ん?昔、ソルと遊んでいた時を思い出したんだ」


「母様と、ですか?気になります」


「わたしも!」


「そうか?......じゃあ、話すか」



満点の星空を見ると思い出す、俺と陽菜の思い出。








◇◇8年前◇◇








「あ〜あ......これ、迷子やな」


「うん......」


「どうした?そんなに怖いか?」


「怖い......だって、しらない場所だよ?」


「たしかにそうだな。でもさ、しらない場所って、ワクワクしないか?」


「しない!怖いだけだもん!」


「はははっ、そうか。陽菜はしらない場所は怖いか」


「うん......」



俺と陽菜が外に遊びに行き、適当に道をほっつき歩いていたら、夕方になり、気付いた時にはここがどこだか全く分からない場所まで歩いて来ていたのだ。



「陽菜、だいじょうぶ。ししょうも言ってただろ?『未知はチャンス。自分の知らない事を知れる、これ以上ない機会だ』ってさ」


「でも、それと迷子はちがうじゃん」


「そうか?同じだとおもうけど。でもまぁ、あぶないよな」


「でしょ?......はぁ、はやく帰りたい......」


「そうだなぁ。こういう時、どうしたらいいんだろうな?」


「知らない......はじめてだもん」


「俺もだ。ワクワクするけど、そこそこ怖い」


「でしょ?......もう、私たちは帰れないのかなぁ」


「それはないだろ。俺の父さんや母さん、陽菜の父さんや母さんも探すだろうしな。さいごには帰れるはずだよ」




この時、するべき事は適当な人に交番の場所について聞き、家に電話してもらう事だったなぁ。


当時小3の俺達じゃあ、迷子になった時の対処法なんて、何にも思いつかなかったもんだ。




「ほら、陽菜。とりあえずあの公園にいこう」


「......なんで?家さがした方がはやいじゃん」


「全くしらない場所で?そんなことより、公園にいた方が父さんも母さんも探しやすいだろ?」


「......なんで?」


「そりゃあ、あそんでいて、夕方になったけど帰る道をわすれて、そのまま公園であそんでいるって、父さんたちはかんがえると思うからな」


「あぁ!なるほど!月斗くん、あたまいい!」


「ありがとう。でも、ほんとはもっといいのがあるはずなんだよね。俺の頭じゃ、もうこれがげんかいだよ」


「そんなことないもん!公園にいたら、ぜったいに見つけてくれるよ!」


「......うん。まぁ、ブランコにでもすわっていよう」


「うん!」




それから、名も知れぬ公園のブランコに座って、一緒に話したっけ。


確か、将来の夢とか、帰ったらどうする?とか、師匠の倒し方とか、色々な事を話していたら太陽が沈んで、すっかり夜になったんだ。




「うぅ......ぜんぜんこないじゃん......」


「泣くなよ......こっちまで泣きたくなるだろ?」


「だって......だってぇ!!うわぁぁぁん!!」


「......泣くな。たえろ。俺だけは泣いちゃダメだ」




この時、一緒に泣かなかったのはファインプレーだな。

そのお陰で、俺はとんでもない光景を目にするんだから。




「そうだ、上をみよう。向上心、向上心。父さんも、ししょうも言っていたんだ。だから上を向い......うわぁ」




泣かないように、涙を必死に堪えながら顔を上げると、そこには満点の星が広がっていた。


街灯も無く、田舎の中の都会って感じの場所だったから、空気を綺麗で、夜には星が沢山見えたんだ。




「す、すげぇ......」




もう、どの星が何の星座なのか。どの星とどの星を結べば星座になるのか、それすらも分からないような、明るく、優しく、キラキラと光る空が広がっていた。



「うぅぅ.......かえりたいぃ......」


「陽菜、陽菜。おい!上をみてみろ!」


「うぅ......なに?うえ?」


「あぁ。ほら、かおを上げて......ほら、見ろ!!!」




俺が言っても全然顔を上げなかったから、陽菜の横まで行って、強引に俺の手で顔を上げさせたんだ。




「うわぁ......きれい......」


「だろ?」


「うん。月がきれい」


「え、そっち?俺は星の方がきれいだとおもうけど......」


「ううん。星よりも月のほうがきれい。だってさ、月斗くんのなまえにもあるんだもん......そんなの、そっちの方がきれいにきまってるもん」


「そうか?『強く、優しく人を照らすように』って由来らしいけど、俺、まだまだだし......そこまできれいじゃないよ」


「ちがうよ。もう照らしてるんだから、きれいなの」


「う〜ん?......わかんないな」




おい待て。思い出していて感じたけど、この時には既に、陽菜は俺の事が好きだったのか?


......いや、言ってたな。初めて会った時からって......



......はぁ。こんな所にヒントがあるなんて、誰も思わねぇよ。




「まぁ、人には人のかんがえがあるし、陽菜は月がきれいだと思ったんだな」


「うん!月斗くんが見つけてくれたから!」


「また分からん。けど......そうか」


「うん!」


「じゃ、あとは星を見てまとう。さむかったら言えよ?服貸すからさ」


「......わかった」




それから30分くらいだっけな。陽菜と星空を見て、見つけてくれるのを待ったのは。


ブランコからベンチに移動して、一緒に見ていたんだっけ。




「あれじゃないか!?......おい!月斗か!?」


「うん?あ、父さん!」


「良かった......見つかった......陽菜ちゃんも一緒だな?」


「うん。ほら......」




この時の陽菜は、俺の肩を枕に思いっきり寝ていた。




「はぁぁぁ良かったぁぁ......とりあえず連絡しないとな」


「父さん......ごめん。めいわくかけちゃったよね」


「なぁに、気にすんな。子供は親に迷惑をかけるのが仕事だ。そして父さん達は、月斗達がかける迷惑を、迷惑と思わずに対処するのが仕事なんだよ」


「でも......ごめん」


「だから気にすんなって。まぁ、それでも謝りたいなら、月斗の好きにすればいい。今回の間違えた事を反省し、理解し、次に繋げる事が大事なんだ」


「うん。これからは道を覚えて行くようにする」


「あぁ。そうするといい。じゃあ、帰るぞ」


「あ、陽菜は俺がせおうよ」


「お?......どうした?......じゃなかった。どうしてだ?」


「それは俺が陽菜をここまでつれて来たから、その反省。重くてもがまんして、これからの経験にしたい」


「......そうか。言ってる意味は分からんが、お前が責任をもって背負うと言う事だな?」


「うん」


「なら分かった。ほら、行くぞ。ゆっくりでいいからな」


「うん」




そうして陽菜を背負って、ちゃんと陽菜の家まで連れて帰ったんだ。

途中、重くて危ないかな〜っても思ったけど、意外にもそんな事はなかった。


多分、師匠に鍛えられたからだろうな。陽菜を背負って歩くくらいなら、別にどうって事なかった。








◇◇現在◇◇







「──っと、こんな感じだな」


「すぅ......すぅ......」


「この...時から......母...様は......父......さ......」




現在、朝の6時頃。そろそろ太陽が昇ってくる時間だ。




「ゆっくり寝るといい。この感じだったら新月は明後日だし、今は休め」



「「すぅ......すぅ......」」



「『フラカン』『サーキュレーション』......よし。それじゃあ帰ろう。まさかキャンプモドキになるとは、予想してなかったな」



しかも俺、寝てないんだよな。



「ユアストで寝なかったのって、いつぶりかな......ま、いいや。とりあえず帰ろ」






俺はリルとメルを起こさないように、歩くのと同じペースで空を飛んで帰った。


前書きの短歌を2秒で思いついて、私は自分の事が天才かと思いました、まる


今回はマネーレトレント戦以来の月斗君の昔話でした。


話の内容は.....短歌通りですね。はい。



では次回も楽しんでください!それでは!

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