新月二咲ク幻ノ桜 壱
和テイストな幻獣は如何?
桜散り
陽炎が立つ
夏の色
新月の時
溢れる花よ
「ほい、完成だ。それと神器化したぞ」
「「おぉ......凄い......」」
俺は2人の注文通り、真っ赤に燃えるような大剣と、長剣と見間違える様な外見の弓を作成した。
そしてそれぞれ、神器となって完成したのだ。
「壊れないし高火力。付与効果も2人が欲しいと思ってた物だし、顕現も出来るから出し入れが簡単。さらに、使い込めばお前らに適した付喪神が宿る」
「ありがとう。感謝しかないぜ、ルナ」
「僕も。FSで頑張ってくれて、その上こんな神器も貰っちゃって......本当にありがとう」
「気にすんな。それに1番の大仕事、ピギーの刀がまだだからな。まだ前座よ前座。こっからが本番だ」
まさか幻獣の素材を求められるとは思ってなかったからな。
それも今までに出会った事の、そもそも知らない幻獣だ。
これまで俺が作ってきた武器の中で、製作難易度がトップクラスに高いだろうな。
「まぁ、気長に待ってるから焦らなくていいよ?」
「いいや、仕事は先に終わらせておきたい。だから新月が待ち遠しいぜ、全く」
「何か用事でもあるの?正直、私のはもっと後回しでもいいよ?」
「用事ってか......ソルと遊んでる時に、刀の事がチラついたら嫌だろ?」
「「「......」」」
折角2人で過ごしている時に、やらなければいけない事を思い出した時の絶望感。あれは大っ嫌いだからな。
やるべき事は、早めに済ますに限るんだ。
「それにリアルでデートの予定とかあったら、その分ここじゃあ8倍の速度で遅れるからな。仕事は早めに終わらせたいんだ」
俺の実家に行くとか言ってたけど、本気なのかな?
まぁ、また聞いておこう。2人で楽しめるのが、1番いいからな。
「そういえばそうだったね......お2人さん、いつも一緒だもんね」
「まぁ、仲がいいのは良い事だ。それにルナはしっかりしてるし、ピギーも甘えるのがいいだろう」
「甘えるって言うか、ルナのポリシー的に後回しに出来ないだけだろうけどね」
「ま、そゆことだ。次の新月、楽しみにしときな」
「うん。じゃあ完成したらチャット頂戴。直ぐに行くから」
「ほいほい。じゃあ3人とも、ここまでご苦労なこったな。適当に帰りな」
「「「は〜い」」」
そうして3人は帰ったので、俺もリビングに戻った。
「あ!父様!お洋服を変えたんですね!」
「あぁ。ソルから貰ったやつだな。前までの真っ白天使から、普通の男になったぞ〜」
半袖のシャツに薄い素材の長ズボン、それに付けているアクセサリーのおかげで、見た目も性能もかなり良いだろう。
「よく似合ってますよ!」
「うんうん。でも1つ、私は気になるなぁ」
「ん?ソル?何が気になった?」
「それはズバリ!『髪の長さ』でしょう!!!」
「「あぁ〜」」
そう言えば俺、結構長い髪に設定したもんな。暑く感じる事は無いけど、印象的に暑そうだよな。
「本当は床屋さんに行った方が良いんだけど、今回は私が切ってあげたいのです!」
「ソルが?......まぁ、別にいいけど。ソルの好きなようにしていいぞ」
「え?ホントに?やったぁ!!じゃあ、お庭に来て!」
「はいよ。じゃあリルとメルも行くか?」
「行きます。髪でどれだけ印象が変わるのか、見たいです」
「みる〜」
そうして俺達は庭へ出て、ソルの取り出した椅子に座った。
「いや〜ルナ君の魔法、ホントに便利だね〜!」
「かなり涼しいですね。ありがたいです」
「ひんやりしてる!かいてき!」
「俺の事をエアコンと思ったら、その瞬間に解除するんで気を付けてくれ」
「「「っ......は〜い」」」
有罪。だけど今回は見逃してやろう。運が良かったな。
そうしてソルから布が掛けられ、準備が整った。
「じゃあチョキチョキタイムに入りま〜す。ルナ君、お覚悟!!!」
「殺さないでくれ。じゃあお願いします」
「は〜い」
そしてソルが俺の髪を持ち、ハサミで切ろうとした瞬間──
バキン!!!
「「「「えっ?」」」」
ハサミの刃が砕け散った。それはもう、ふわふわと飛ぶシャボン玉の様に散っていった。
「ん、ん〜?お姉さん、ちょっと理解出来ないなぁ」
「なんで切れなかったんだろうな。VITのせいか?」
「今幾つなの?」
「感情強化含めたら2万ちょっと」
今の服装は『感情強化:愛』があるので、元のステータスの3.375倍のステータスだ。だから大体、2万2000くらいのVITとなっている。
とても......高いです。
「い、いやいやいや!それでもでしょ!高々2万ちょっと、そんなのでハサミが壊れる訳が」
バキン!!!
2丁目のハサミも、綺麗に砕け散っていった。
「そ、そんな......この時の為に用意した、アダマント製のハサミが......嘘でしょ......?」
「う〜ん、流石に髪は諦めないか?別に切らなくても、結ぶ事は出来るんだしさ」
「う、うん......分かった。ならルナ君の髪、結んであげるね」
「あぁ。ありがとう。お願いするよ」
床屋とかあれば、髪を切れるんだろうけど、今回ばかりは仕方ない。ソルの気が済む解決策でいこう。
「おぉ、ルナ君の髪、すっごくサラサラだね」
「返り血を浴びまくった美しい髪だろ?」
「今すぐ切り落としたくなっちゃった」
「嘘だから安心してくれ」
まぁ、返り血は本当なんだけどな。
魔刀術とかで斬ると、モンスターの血のポリゴンが噴水かと思えるくらい飛ぶからな。
頑張れば血シャワーも実現できるぞ。このゲームは。
「はい!出来たよ!」
「どれどれ?......って、見れないな。リル、メル。どんな感じだ?」
「プフっ......え、えぇと、に、似合ってますよ?」
「さっきのパパみたいで、バッチリきまってるね!」
「やべぇ全く分かんねぇ」
どんな結び方をされたんだろうか。気になるぞ。
「あ、フー!シリカ!こっちに来てくれ!!」
「「は〜い!!」」
農場の方にいる2人を呼び、感想を聞いてみよう。
「どうしまぶふぅ!!ははははっ!!!」
「あはは!お兄さん、ははは!いや......おねえさん?あはは!!」
盛大にフーが吹き出した。今の俺、どんな髪型なんだ?
「あ、カメラ機能で見るか」
このゲームで唯一、三人称視点で見る方法だ。これならチェック出来るだろう。
「えっ......あ、あの。ソルさん?」
「ん〜?どうしたの〜?」
「あの、なんで俺、ツインテールになってんですか?」
「可愛いから!!」
「ノォォン!!!」
そう、今の俺は、完全にツインテールになっていた。それもロングツインテールだ。可愛いね。
「ちなみにその髪留め、呪具だから。このゲームで1週間経つまで外せないよ」
「嘘だろ......俺、桜もツインテールでやらなきゃならんのか......」
「あ、桜に挑戦するんだね!じゃあ、浴衣も着ちゃう?」
「俺に女装させようとするな!!」
「えぇ〜良いのに〜!絶対似合うよ?」
似合わん。だって俺、完全に男だぞ?FSならまだしも、ユアストじゃ100パーセント男なんだぞ?
「まぁ、ルナさんは男性の中でも、それなりに女性よりの顔ですから似合うと思いますよ?」
「そうだね!今の状態も、初めて会う人ならお姉さんだと思うよ?」
「えぇ......?嫌だなぁ」
「大丈夫です、父様。私と一緒に着れば大丈夫です!」
「たしかに!リルちゃんといっしょに着たら、お姉ちゃんといもうとに見えるかも!」
「その援護射撃は要らなかったなぁ......」
はぁ......まぁ、1つくらいの黒歴史、作っておくか?
何年か後に、『こんな事あったよなぁ』って話せる為にも、ちょっと挑戦してみようかな。
「どうする?本当に浴衣着てみる?」
「......まぁ、リルと一緒なら......」
「うん!それじゃあ、材料はあるから、ちゃちゃっと作っちゃうね!明日の朝には出来てると思うから、その時に渡すね!」
「......あぁ......頼むよ......ソル......」
つらい。1週間強制ツインテールに、女装まで......つらい。
「父様。こうなれば楽しみましょう!いつも父様は言ってるじゃありませんか。『まず楽しめ。楽しめなきゃ何も出来ない』って!ですから楽しみましょう?」
リル、逞しくなったな。俺はもうダメかもしれないよ。
「そう......だな。そうだ。こうなったら、1週間外では女性ロールプレイをしよう。それにリルやメルと居たら、外だって歩けるはずだ」
もう引き返せないんだ。突っ切るしかない!
「はい!その意気です!頑張りましょう、父様!!」
「あぁ!......じゃなかった。うん!!」
「「「順応早いなぁ......」」」
「パパらしいね。がんばれ」
そうして、1週間ルナちゃん状態がスタートした。
「はい、ルナちゃん生活初日は、『声』を何とかしたいと思います」
「声、ですか?父様」
「あぁ。ツインテールの人間の声が低かったら、少し違和感があるだろう?だからまず、音魔法で声を変える」
「なるほど。父様が本気なのは伝わりました」
顔は大丈夫と皆が言ってたから、声を変えたい。どうせやるなら、1から10まで頑張りたいからな。本気も本気だ。
「って言っても、もう魔法のイメージは出来てるからな。直ぐに作ろうか」
「作りました。じゃあリル、いいか?」
「はい!父様の新しい声を聞かせてください!」
「よし。じゃあ......『ボイスチェンジ』」
今回作った音魔法は『ボイスチェンジ』だ。名前の通り、使用者の声を変更する魔法だ。この魔法はそこそこ便利で、パターン登録をする事も出来るようになっている。
つまり、『パターン1:俺本来の声』という項目と『パターン2:女性の声』という風に、簡単に入れ替えが出来る。
では、女性の声にしますかね。
「あ〜、あ、あ〜......どうだ?じゃなくて、どう?」
「か......完全に女の人の声です......」
「だね!さぁ行こう!ソルに聞かせてあげようよ、リルちゃん!」
「......これは私が、元々は父様という事を認識してるから、違和感を感じるんでしょうね。今の父様にちゃん付けされると、何だかムズムズしますね」
「そう?じゃあ行こう、リル」
下手にちゃん付けをせず、普段の口調を柔らかくして話そうか。それなら違和感を最小限に抑え、リルも接しやすくなるだろう。
......というか、1つ気付いたぞ。
「ねぇリル、俺の今の状態ってさ......」
「そうですね。オケアノスさんと同じ状態ですね」
「っすよねぇ......はぁ。まぁいいや。それじゃ、倒そうか」
「はい!」
今更だが、俺とリルは裏ドゥルム鉱山に来ている。少し、いや、かなり大量に欲しい物を集めるついでに、レベルを上げに来たのだ。
『グギ、ギギギ!ガガガ!』
『ギャ!ギャガガ!』
イビルゴブリンがやって来た。今回の目当てはコイツだ。
「リル、分けっ子する?」
「いえ。父様が倒しちゃってください」
「分かった。『インフェルノブレス』」
『『『ガギャ......』』』
6体のイビルゴブリンがポリゴンとなって散った。
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『イビルゴブリン』×6討伐しました。
『オリハルコンの剣』×2入手しました。
『瘴気の毒牙』×6入手しました。
『龍神魔法』スキルレベルが2上がりました。
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「美味い......けど不味い......」
瘴気の毒牙、コイツを集めに来たんだよな。俺の新しい武器と、調薬の実験に使いたいのだ。
「どうしましたか?拾い食いでもしましたか?」
「それはリルじゃないの?俺のは龍神魔法のレベルの上がりにくさを『不味い』と言ったんだよ」
「んなっ!?私は拾い食いなんてしませんよ!!」
「え〜?......本当は?」
「......まぁ、倒した敵のお肉なら......」
「......」
絶句した。冗談のつもりで聞いてみたんだが、マジで拾い食い......いや、殺し食いをしてるとは......
「もしかして俺がいない間、夜に抜け出してたのって......」
「......うぅ」
「大丈夫だ。これからはご飯の量を増やせばいい」
「はい......」
そう言って優しくリルを抱き締めた。うんうん。成長期なんだね。
「大丈夫、大丈夫だから。俺にもあったよ、沢山食べる時期が......」
実は家を出る前に、ソルに言われたんだ。
『ルナ君が戻ってくるまで、リルちゃんとメルちゃんと一緒に寝てたんだけどね?リルちゃんが時々、夜中に部屋を出てってるの。だから、もしタイミングが合ったら、何してたか聞いてくれない?』
ってな。
まさかお腹が空いていたとは。驚きですわよ?
「よしよし。それじゃあゴブリン倒して、しばらくしたら帰ろうか」
「はい!!」
そうして俺とリルは、裏ドゥルム鉱山で狩りをした。
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名前:ルナ
レベル:135→142
所持金:80,845,590L
種族:人間
職業:『ヴェルテクスギルドマスター』
称号:『スライムキラー』
所属ギルド:魔法士・Cランク冒険者(94/200)
Pギルド:『ヴェルテクス』
所持因子:『稲荷』他6柱
HP:6,710→7,060
MP:6,710→7,060
STR:6,710→7,060
INT:6,710→7,060
VIT:6,710→7,060
DEX:6,710→7,060
AGI:6,710→7,060
LUC:3,350→3,525
CRT:100(上限値)
SP:1,540
『取得スキル』
戦闘系:非表示
魔法
『火属性魔法』Lv100
『海魔法』Lv30
『風属性魔法』Lv100
『土属性魔法』Lv100
『雷属性魔法』Lv100
『氷属性魔法』Lv100
『聖属性魔法』Lv100
『闇属性魔法』Lv19→58
『自然魔法』Lv100
『龍神魔法』Lv1→23
『古代魔法』Lv1
『音魔法』Lv100
『妖術』Lv1
生産系:非表示
その他
『テイム』Lv3
『不死鳥化』Lv100
『マナ効率化』Lv0
『植物鑑定』Lv0
『毒物鑑定』Lv0
『動物鑑定』Lv0
<>内アクセサリーの固定増加値
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この、新月二咲ク幻ノ桜編では、前書きの短歌にこだわりたいです。
拙い詩ですが、楽しんでくれたら嬉しいです。