どれだけイカれてるんですか?
はじまるぞ
おおきなてきが
でてくるぞ
たおせないなら
ひろってにげる
ゆずあみゃ。
「ハロー、娘(仮)達。パパ(仮)は帰ってきたぞ〜」
「「......遅い」」
ユアストの自室のオフトゥンから起きると、リルとメルが膨れっ面でオフトゥンに寝転がってた。
「すまんすまん。ソルと何やかんやあってな、ちょっと出張してた」
「出張?どこまで行かれてたんですか?」
「ちょっと別世界に......人を23人ほど殺してた」
「リルちゃん。パパは『どこまで行かれてたんですか?』じゃなて、『どれだけイカれてるんですか?』ってきかないとダメだよ?」
「......確かにそうですね。メルちゃんの言う通りです」
「えぇ......?反抗期?」
2人が冷たい......これは反抗期という奴なのではなかろうか。
分かるよ2人とも......親に、世界に反抗したくなるその気持ち、お兄さんはよ〜く分かるよ。
なんてったって、お兄さんも経験したからね!
ダッダッダッダッ!ガチャ!!
「ルナ君!!」
突然大きな足音が聞こえたかと思ったら、扉が開けられ、ソルが俺に向かって突撃してきた。
「ぶふぅ......飛び込むなよ。おはよう、ソル」
「うん!おはようルナ君!!」
まぁ、言うてゲーム内時間で午前11時頃なんで、こんにちはが正しいかな。
「でもどうした?急に飛び込んで来るなんて。そんなに会いたかったか?」
「会いたかった!好き!」
「それは俺もだ。大好きだよ、ソル」
ソルが頭をぐりぐりと押し付けて来た。う〜ん、モフモフ。
「母様、ようやく元気になりましたね」
「うんうん。さっきまでとは大ちがい」
「さっきまで?何かあったのか?」
元気になったって......もしかして病気?そんなシステムあるのか?それなら少し心配だな。調薬スキルのレベリングがてら、薬の研究でもするか?
「父様。母様は父様に嫌われたんじゃないかって、ここ最近はずっと落ち込んでたんですよ」
「うんうん。それはもう、すっごい落ちこんでたよ。だってママのりょうり、すっごくしょっぱかったもん」
「きっと気が動転して、お砂糖とお塩を間違えたんでしょうね。それほどまでに、母様は落ち込んでました」
「そうなのか......ってかなんで?なんでソルは落ち込んでたんだ?」
何故に俺がソルを、陽菜を嫌わなきゃならんのだ?
意味不明だ。
「だってあの時......急にチューしちゃったから......嫌われたかな、って......」
「そんな訳ないだろ?寧ろ嬉しかったぞ?嬉しすぎてFSで称号貰ったんだぞ?......俺はソルが大好きなんだから、嫌う事はないぞ。何だって受け入れるさ」
「ホント?......それと称号って何?」
「本当だ。それと称号についてはリビングで見せよう。ちゃんと同期してきたから見れるぞ」
「うん!見る!!」
それからフーとシリカも交えて公式生放送を見せ、お昼ご飯を食べた。
今日はオムライスだった。お米が手に入るようになって、かなり食生活が変わったな。フレイヤさん、ありがとう。ヘルメスもありがとう。
「いや〜凄いね。何が凄いって、ルナ君がリルちゃんになってるのが凄いね」
「あれは俺を美少女化したら、たまたまリルとそっくりになっただけだな」
「ふっふっふ。私は父様の娘ですからね!」
「そうだなぁ。あれでもし、狼の耳じゃなくて普通の人間だったら、今度はメルになってたかもな」
「でもパパ、しっぽないでしょ?」
「尻尾は確かに無いな......でも服装は似せれるぞ?ピギーに言われて、一応ゴスロリも買ったからな」
お陰で300万以上使ったけど。まぁ、別にいい。金は遊んでたら貯まるし、大丈夫だ。
そうしてのんびり雑談をしていると、フーがリビングに入って来た。
「ルナさん、お客様です。ニヒルの方々ですよ」
「お、来たか。鍛治小屋にぶち込んどいてくれ」
「分かりました。では、早めに来てくださいね?」
「了解。リルのブラッシングが終わったら行く」
「......遅くなりそうなんで、飲み物も出してきます」
「頼んだ」
そこまでは遅くならないぞ?ほんの5分程度だ。多分。
リルが甘えん坊モードに入らない限りは、遅れることは無いはずだ。そして甘えん坊モードの対策の為に、俺はちゃんと例のブツを用意している。
そして5分後──
「とうさまぁ......はなれたくないですぅ」
予想通り、リルは甘えん坊モードに入った。
「リル、アテナ達が来てるんだから退いてくれ」
「嫌ですぅ......離れません」
「ほほう。そんな悪い子にはこれはあげませんよ?」
そう言って俺は『ルナちゃん特製☆ミックスジュース』を取り出した。
「んっ!......スゥ......う〜ん......えぇ......いいでしょう」
「悩みすぎだろ。じゃあちょっと待っててくれ。ほら、いい子いい子してあげるから、な?」
「はい......」
リルの頭を撫で、俺はソファから立ち上がった。
「じゃあソル、行ってくる。もしかしたら出掛けるかもしれんが、そん時はまた連絡する」
「うん!......行ってらっしゃい!」
「あぁ、......行ってきます」
ソルに行ってらっしゃいのハグをされたので、俺もそうした。なんと言うか、凄く幸せな気分ですな。ずっとこうしていたい。
そして城を出て、鍛治小屋へ向かって庭を歩くと、妙に暑い気がした。
「そうか、もう夏か。今まで春だったから何も感じなかったけど、ちゃんとゲーム内でも気温が上がるんだな」
ムワッとした熱気、照りつける太陽、視界を歪める陽炎......正に夏だ。
「後でソルから貰った夏服に着替えよ」
そう独りごちりながら、鍛治小屋に入った。
「待たせたなぁ!って、大丈夫か?お前ら」
「「「暑い......」」」
3人が机の上で、溶けるように突っ伏していた。
「確かに暑いな。ほい、『サーキュレーション』『ダイヤモンドダスト』......完璧」
「「「涼しい!!!」」」
外からの熱気を遮断し、ダイヤモンドダストを少しだけ使う事で、室温を少しずつ下げてやった。
「じゃあ作るか。動画については何も言わんから、お前らの使いたい武器を教えてくれ」
「俺は大剣がいい。グローブ的な奴も考えたが、この前打撃に強い奴にやられたからな。大剣で頼む」
「私は刀!ピンク色の刀がいい!!」
「僕は弓かな。種族もエルフにしたし、DEX特化だから」
「了解だ。取り敢えず足りない物を挙げると、ピンク色の染料になる物だけだな」
刀だけなら直ぐに作れるが、ピンク色となると難しい。
草原で花を摘んで調薬スキルで液体に変えるか、そもそもピンク色の鉱石と玉鋼を合金にするしか、方法が無いからな。
「ルナ、それなら最近出来たアレがいいぞ」
「アレ?なんだそれ」
「アレはアレだ。『新月の桜』だ。新月の時にだけ咲く、ニクス山の山頂に生えてるヤツだ」
「なんだそれ。まぁ、ならそれを使うか。ピギーだけ時間がかかるが、それでもいいか?」
アテナの情報なら信頼出来るし、それを集めるとしようか。
多分桜の花びらを集めて、それを調薬スキルか何かで、染料にすればいいのだろう。
にしても桜か。もう夏なのに、変な感じだな。
「それは良いんだけど......集められるの?」
「ん?どゆこと?普通に新月の時に山頂に行けばいいんじゃねぇのか?」
「アル、多分その考えじゃ確実に無理。僕もこの前挑戦したんだけど、見事に広場送りにされたよ」
「おい、情報を出せよ。何にやられたんだ?翔は」
なんだろう。ニクス山なら、アイスワイバーン、若しくはブリザードドラゴンと言ったところか?
それなら倒せるから問題ないんだけど......
「単純さ。桜に殺られたんだよ、僕は」
「はぁ?なんだそりゃ。つまりは何だ?その桜はトレントよろしく、モンスターになってるって事か?」
「正解。新月の桜......正式名称『神月穿樹:宵斬桜』は、新しく発見された幻獣なんだよ」
「えぇ......俺、もしかして幻獣倒せって言われてる?」
なんか、フェンリルと対になってる出現条件だな。
満月の時に現れるフェンリルに対し、新月の時に現れる桜。
面倒臭いったらありゃりしない。
「別に倒さなくていいんだぞ。ヤツの花びらさえ取れれば、後は生きて下山するだけだ」
「桜の攻撃を誘発させて、花びらが散った所をキャッチ!......これで行けるよ!」
「まぁ、それすらも難しいんだけどね。けれどこれまで、結構な成功報告はあるんだよ。なんてったって、その桜を使ったアイテムは、どれもとんでもない性能だからね。皆躍起になって頑張ってる」
「......そっすか」
トレント的なモンスターか......殺れそうじゃね?
「おいルナ。お前今『殺れそう』って思ったろ?」
「あぁ。燃やすか斬るか折るかしたら、花びらも沢山ドロップしそうだからな」
「「「甘いね^^」」」
「うっっっざ!!」
クソほど腹の立つ顔でバカにされた。でも甘いって事は、何度もチャレンジャーがいたんだろう。
「一応言っておくが、ヤツは不死身だ」
「何度切っても、何度燃やしても、何度折っても、5秒もあれば直ぐに全快するよ」
「多分、根っこが原因だと言われてるけど、あの桜の大きさからして、山の上から1割の高さは根っこがありそうなんだよね」
「はぁ?あの雪山の1割!?そりゃ不死身に近いわな」
流石幻獣、やりおるな。
何とかして引っこ抜きたいという、謎の対抗心が芽生えてきたぞ。
「ま、推測だから。取り敢えず新月の時に行ってみなよ。倒せないと判断したら、潔く花びらを集めて撤収したらいい」
「それと他のプレイヤーと取り合いにならないように気を付けてね。PKしてまでも奪う奴が増えてるから」
「俺も何度も狙われた事か......俺、花びら持ってねぇのに......」
「「「うわぁ......ドンマイ」」」
可哀想だな、アテナ。流石に同情する。
「まぁ、分かったよ。新月になったら山まで飛んで行くわ。取り敢えずアテナと翔の武器、作るわ」
「「お願いしま〜っす」」
「あいよ。任せな」
そうして俺は、2人の武器作りを開始した。
いや〜、これまでの幻獣的に、幻獣が何のモチーフで創れられたのかが少し分かりますね。
そしてそれが分かれば、どうして新たな幻獣が発見されたのかも分かりますね。
では次回のタイトルは、敢えて告知しません!
何故なら!!とても!!!気に入っているから!!!です!
楽しんで頂けたら、私は泣いて喜びます。