消しちゃうぞ☆
ぱきゅ〜ん☆
「遅かったな。お前が来るまでに2回はウィンナー取れたな」
「ホントにね!エイム練習がどれだけ出来たことか......」
「僕はあやとりしてから別にそこまで〜」
FSにログインしたら3人に出待ちされてた。
「やぁ!まともな思考が出来ていないアルテミスちゃんの降臨☆だぞっ!」
「「「うわぁ......マジで狂ってる」」」
「酷いなぁ。そんな事言うなら、マジで女装してやろうか?吸血鬼スタイルから、戦場の天使スタイルに変えようか?」
「「「是非!!!」」」
「じゃあちょっと待ってな......あ、その間に招待して」
「おk」
FSのウィンドウを開き、アバターの容姿を変更する。
すると色々な項目が出てきた。
◇-----------------------------◇
『性別』▼
『髪』
『顔』
『身長』
『体重』
『声』
『その他』
◇-----------------------------◇
「んにゃ?俺の知らん内にUI変わった?」
「招待したぞ。それとUIの変更は一昨日のアプデで、だな。容姿変更の項目がバカみたいに増えたらしいぞ」
「受諾なのじゃ!!......まぁ確かに、声とか変えられるようになってるな」
今までは性別、髪、顔くらいだったからな。身長とか体重はリアルのまんまだったはずだ。多分。
「どんなのにしようかな。取り敢えず女、ロン毛、ロリ顔、120センチってところか?」
「いやいやアル。髪も短い方がロリ感増すよ?」
「だな」
「だね。僕もそう思う」
ピギーはまだ女だから分かるとして、アテナと翔は遊んでるだろ。
見てろ?完璧な天使になって、殺戮の限りを尽くしてやるからな。
「え、ちょっと待って。その他の項目にケモ耳があるんやが!?」
「へぇ〜、凄いね。可愛いんじゃない?」
「当たり判定どうなってんだろうな」
「ワイヤー引っかかりそうだよね」
おい男ども。何ガチ目線で会話してんだ。ここは『え〜マジで!?モフモフとか最高じゃん!!』じゃないのか?
モット.....モットタノシモウゼェ....!
「良し、ユアストに寄せて銀髪金眼、あとはロリボイスのランダム耳にした」
「っていうか変更料はあるの?」
そう、容姿の変更にはゲーム内クレジットが必要だ。
これは単純にこのゲームで試合をこなせば手に入る。
無課金でも容姿の変更が出来るの、優しくて好きよ。
「680万ある。使うのは10万ってとこか。安いな」
「「「は?」」」
「ん?」
決定ボタンを押そうとしたら、皆が凄い顔で見てきた。
「嘘だろお前......なんでそんなに金あんだよ」
「オシャレしたりとかしないの!?」
「射撃場借りてワイヤーの練習とかしないの?アル」
「え?しない。この服だって最初のガチャでたまたま手に入ったから着てるし、練習するより実戦で覚えた方が早いから、金は使わん」
チュートリアルをクリアする事でお洋服が貰えるのだ。
俺はずっと同じ衣装でプレイしているな。
「......俺でも見た目は変えるけどな」
「ゴリラがサルに変わるってか?」
「よし、殺すか」
「お?やるか?幼女化した俺と殺し合いするか?お?お?」
「......なんか嫌な予感がするな。やっぱ辞めとく」
「賢明な判断、ご苦労じゃった。じゃあ、決定ボタンぽちー!」
アテナをイジり、俺は容姿の変更を決定した。
◇-----------------------------------------◇
容姿の変更が完了しました。
◇-----------------------------------------◇
青い光に包まれ、再び目を開けると、以前の3分の2の高さからの視界が広がった。
「おぉ!ちゃんと低くなってる!ってか声高っ!小学生の時より高いんだけど!!あはは!!」
「「「............」」」
「どうしたお前ら?黙りこくって。なになに?俺、めっちゃ可愛くなった?」
天使になれたかな?気になるぞ。
「......アル。ちょっとこっち来て」
「ん〜?分かった。どこまで行くんだ?」
「いや、あそこの店まで。鏡あるからさ、見たいでしょ?」
「見たい!超見たい!!!」
テンションを上げて言うと、頭の上に違和感を感じた。
取り敢えずピギーの後を着いて行きながら、俺は、頭の上を触った。
「おっ、ケモ耳だ。ユアストとは違った感覚だろうけど、ソルもこんな感じなのかな」
フワフワのモフモフな感覚をキャッチした。
いや〜これ、かなり上手くキャラメイク出来たんじゃないか?自信あるぞ。
そしてピギーと一緒に、街にある服屋まで来た。
「いらっしゃいませ〜!あら、可愛いですね〜!」
「......どうも」
「ん?ピギー、褒められてんだからもっと喜べば?俺、陽菜のイメージ的に、女の子は褒められたら喜ぶと思うんだけど」
今はピギーしかいないからな。多少のリアルが持ち込める。
「......あの鏡を見て、本当に私が褒められたかどうか確認しな」
「ん?分かった」
指をさされた方を見ると、姿見が置いてあった。
俺は近付き、自分を鏡に映してみた。
「あれ?リル?なんでここに居るんだ?」
鏡にはリルが映っていた。おかしいなぁ?
ここはユアストじゃないからリルはいないはずだ。
なのにどうしてリルが映っているんだ?
髪、顔、身長やケモ耳、声までもがリルにそっくり......いや、リル本人だ。
「アルがね、思いっきりリルちゃんになってんのよ」
「いやいやまさか。そんな訳ないだろ?」
「鏡を見なよ。現実が分かるからさ」
現実?と思い、鏡の前で右手を上げてみた。
すると鏡のリルの右手が上がった。
「いや、たまたまここにリルがいて、たまたまリルが真似している可能性がある」
今度はジャンプ、ケモ耳いじり、くるっと一回転など、様々なアクションをしてみたが、完全に俺と動きが同期していた。
「嘘......だろ......」
「分かった?じゃあまたキャラメイクし直す?」
究極の選択だ。このままリルの姿でやるか、またキャラメイクをやり直すか。
普通に考えたら、キャラメイクをし直す方を取るだろう。
でもな、今回のキャラメイクの目的は『戦場の天使になる』事だ。
ここでキャラメイクをし直したら、ウチのリルは天使じゃないと認める事に繋がってしまう。
なら──
「このままやる。なんてったって、リルは天使と言える程可愛いからな。ほら、見てろ?」
モノマネタイムだ。
「う゛ぅん......ぱきゅ〜ん!消しちゃうぞ☆」
右手の人差し指と親指を伸ばし、銃のポーズを取って言ってみた。
「ほら、完全に天使だろうが」
流石リルだ。ウルトラスーパー可愛いな。帰ったら一緒に遊ぼう。
「アル......よくそんな事して耐えられるね......心、痛くない?」
「え?痛くない。単純に『あぁ、リル可愛いなぁ』って気持ちでやってるからな」
「勇者じゃん......いや、愚者かな......?」
「何言ってんだ?ほら、取り敢えず戻るぞ。殺戮の限りを尽くしたい」
いつもより下の視点での戦闘、楽しみだ。
「ちょっと待って!アル、その前にお洋服を買おう」
「え?何で?このままでも可愛いじゃん」
「それ......リルちゃんにも言える?リルちゃんの服、1着だけじゃないでしょ?」
「ッ!......なるほど。これは時間がかかりそうだ」
「でしょ?ほら、選ぶよ!」
それからピギー指導のもと、リルに似合う服を選ぶ事になった。
流石に時間がかかりそうなので、アテナ達に少し待つようにチャットを送っておいた。
そして30分後──
「以上、312万クレジットとなります」
「はい。ポン、と」
「では100万クレジット以上のお買い上げですので、3回分のアクセサリーガチャを回してください!」
「はい。イヤリング、髪留め、指輪でした」
「ありがとうございました!では、またのお越しをお待ちしております!」
会計が終わり、ガチャで出たアクセサリーも着けてから店を出た。
「水色のイヤリングにSRの形の髪留め、更には金のドクロの指輪か......いいな、似合ってる」
「その指輪、一応最高レアのアクセだよ」
「そマ?神引きじゃん。ラッキー」
ピギーの反応的に、今まで何回ガチャを回したのかは聞かないでおこう。
ガチャへの心というのは、とても繊細なものだ。
他人が土足でズカズカと入ってはいけない領域だ。
「おいっす、お待た。お前らに詫びドリンクあるからやるよ。抹茶チョココーヒーレモンとブラストメロンソーダだ。嫌でも飲めよ?詫びなんだから」
広場に戻ると2人が話していたので、詫びドリンクを投げ渡した。
「「......」」
「ちょっと。女の子がオシャレしたんだから、男は褒めるべきでしょ?ほら、何か言わないの?」
「いや、俺男なんだけど」
「あっ......いや、確認するまでは女の子だから」
「何を!?」
「ナニを!」
「下ネタかよ!?」
そうか。......いやでも俺、性別を女にしたぞ!?
「俺、女の子だった☆」
「......取り敢えず行くか。バトロワか?」
「あぁ。ぶっ殺しまくるぜ!」
「......その見た目でそれは、言っちゃいけない気がする......」
「リルだって怒ったら言うぞ?『ぶっ殺します!』ってな。ちなみにめちゃくちゃ可愛い」
「「......だろう な / ね」」
天使の怒りだぞ?可愛いに決まってんだろ。
......まぁ、ステータスは悪魔なんだけど。
「じゃ、レッツゴー!!!」
「「「お、お〜.....」」」
そうして試合のマッチングが完了し、エリアへ転送された。
俺っ娘リルちゃんの完成だッ!
次回もお楽しみに!
あ、『ウィンナー取れたな』と『おいっす、お待た』は脱字じゃないです。