修理・テスト・夏休み!後編
念の為。『これはフィクションです』
例えテストの科目数が変だったり、そもそも科目が変でも、これはフィクションです。
あぁ、いい響きです。何度だって言いましょう。
これは、フィクションです。
「陽菜、勉強はしてきたか?」
「モチモチのわらび餅!バッチリモッチリだよ!」
「可愛い......じゃなかった。俺もだ。赤点回避どころか、もしかしたら上位に行ける可能性すらある」
今日は中間テストとかいうやつが行われる日だ。
これが終われば、俺達学生は夏休みに入る。
「まぁ、あれだけゲーム内で勉強したし、多分大丈夫」
「急に弱気になるなよ。下じゃなく前を見ろ。下を見るのは、問題用紙を読む時と解答用紙に記入する時だけだ」
「うん!」
心の中に、1本の芯をぶっ刺す。
これだけで全ての物事の成功率がグンと上がる。
疲れた時に、寄りかかれる芯を立てるんだ。
戦う時に、武器になれる芯を立てるんだ。
何だっていい。1つの芯を立てろ。
俺の芯は────
「ほい、席に着け。今日はテストだ。そこまで難しくないし、ちゃんと授業を聞いてたら出来る難易度だからな」
そう言って先生は、テスト用紙を一人一人の机の上に置いていった。
「あの時計が9時になったら開始だ。終了は9時50分だ」
「頑張ろうね、月斗君」
「そうだな。頑張ろう、陽菜」
そして9時になり、俺達はペンを片手に、問題という強大な敵と戦った。
「今期のテスト......思ったより簡単だったね......」
「せやな」
「私、全部埋めれた上に、自己採点で90点はあったよ」
「わかる」
「月斗君はどうだった?」
「まんてん」
「嘘でしょ!?本当に?」
「ほんと」
「......喋り方、聞いた方がいい?」
「きいて」
「どうしたの?」
「頭使いすぎた......しんどい......」
「えぇ?そんなに?」
「......うん」
正直に言おう。『頑張りすぎた』と。ゲーム内で8倍に伸びた時間、遊びではなく勉強に注ぎ込んだ。
リルやメルを膝に乗せながら、死ぬほど勉強した。
ちょっと、頑張りたかったんだ。
ちょっと、やる気を出したんだ。
ちょっと、先の事を考えたんだ。
俺はゲームはゲームと割り切れる人間だ。
だからこそ、リアルに本気になる時もある。
たまたまそれが、テストだっただけだ。
「もう......じゃあ今日、あっちで膝枕してあげよっか?」
「まぁ、こっちがいいけどな」
ならお願いしようかな。普段はする側だけど、今日はされる側がいいな。
「え?」
「え?......やべ、考えてる事と言ってる事が......」
入れ違い、でしたね。
周りに聞こえる声量じゃなかったのが、不幸中の幸いと言ったところか。
まぁでも、早川さんや俺の前の席の人には聞こえてるだろうけど。
「ふふ......いいよ。今日は月斗君の家に向かうね」
「あ、マジで?なら晩ごはんの材料買って帰るか」
「うん。ご馳走になろうかな」
丁度父さんも実家の方に帰り、晩ごはん時が寂しかったところだ。
ここで陽菜と一緒に食べられるのは、かなり嬉しいな。
「──って訳で、夏休みは楽に過ごせ。髪を染めても、ピアスを開けても、ウチは校則違反じゃないからな。但し、節度を持ってするように。以上、解散!!」
「「「おぉぉぉ!夏休みだぁぁぁ!!」」」
ホームルームが終わり、教卓に近い席の男子達が騒ぎ始めた。
まだテスト結果も送られてきてないのに、よく騒げるもんだ。
......嘘です僕もめちゃくちゃ騒ぎたい気分ですすみません。
「じゃあ月斗君、帰ろっか?」
「そうだな」
「......ねぇ陽菜ちゃん、月見里君」
陽菜と一緒に帰ろうとしたら、早川さんに止められた。
「「何?」」
「あんまりこういうのは言わない方がいいと思うんだけどさ......その......大丈夫なの?」
「「何が?」」
「え?......その、ほら......ね?」
「「??」」
言ってる意味が分からないぞ。大丈夫って......ご飯の量か?それならこれから買いに行くけど......
「はははっ!面白いなお2人さん!早川が言いてぇのは、お前らが不純な異性の交友をしてんじゃねぇかって話だろ?」
俺の前の席の男子が会話に入ってきた。足から首まで筋肉でピッチピチの男だ。
それとごめん、名前知らないわ。
そしてお兄さん、今の発言には言いたい事があるな。
「んな事する前にまずは結婚だろ?責任も取れないのに、する意味あるのか?」
「うんうん、月斗君の言う通りだよ。学生のうちにそういう事をするのは、社会的にも危なくなっちゃうからね。ちゃんと後の事を考えてから、そういう行為をすべきだと思うな」
「「......しっかりしてる......」」
「な、なら大丈夫かな?じゃあ、2人とも、呼び止めてごめんね?お幸せに」
「後ろでイチャつかれると気が散るけど、そこまで考えてんなら俺も見方が変わるわ。お幸せに」
「「あ、ありがとう??」」
何故『お幸せに』なのかは知らんが、もう帰ってもいいようだ。
「じゃあ行くか。今日の晩御飯何がいい?」
「う〜ん、アヒージョ?」
「また片付けが面倒臭いやつを......まぁいいか。まずマッシュルームとか買わないとな」
「うん!」
そうして中間テストが終わり、俺達の夏休みが始まった。
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早川 雫side
「ねぇちょっと、今のってさ......」
私は2人の会話を聞き、あまりにも思う事があったので、さっき会話に入ってきた『山本 守』君に話しかけた。
「あぁ、ありゃ夫婦だな」
「だっ!よっ!ねっ!!!」
晩御飯どうする?とか、片付け面倒臭い......とか!
この前、私の父さんと母さんが話してた内容と殆ど一緒なんだよ!!!
「月見里と鈴原は、何と言うか......綺麗だよな」
「あ〜確かに。ピュアというか、一途?」
「あぁ、そんな感じだな!お互いに思いやっているから、綺麗に見えるんだろうな」
うんうん。会話の内容も綺麗だし、こう言ったらなんだけど、高校生らしくないんだ。あの2人は。
「う〜む、でも本当に夫婦の様な会話だったよな。実はもう婚約してるとか?」
「えぇ?それは流石に......」
いや待てよ?考えろ雫......じゃない、ピグレット。
お前の記憶の中のルナとソルちゃん、何かそれらしい物を付けてなかったか?
......してる。左手の薬指に、2人とも指輪を嵌めてる!
「ありそうだね」
「だよな!」
あの2人......まさか?いやでも、まだ高2だよ?......でもルナなら......アルなら有り得る。
アイツは作戦を立てる時、責任を持ってカバーをしていた。
自分で立てた作戦の穴を、自分で塞ぎに行くくらいには責任を持っていた。
.....それで時々死んでたけど。
そこまで考えて、かつ動ける人が、女の子の左手の薬指に指輪を嵌めるか?
......絶対にあの2人は何かの一線を超えている。
特にルナ......じゃない、月見里君。あの人はどこまで考えているんだろう。
私はただ、それだけが疑問に思った。
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月斗side
陽菜と手を繋いでスーパーに向かっている最中──
「へくちっ!」
「どうしたの?また風邪引いた?っていうか可愛いくしゃみだね」
「あ゛ぁ゛、多分誰かが俺の噂をしたんだろう。どうせ早川さんか俺の前の席の男子だ」
「凄いね。原因と犯人の特定早すぎでしょ。風邪は疑わないの?」
「(疑わ)ないね。月のはじめになったばかりだし、体調管理はしっかりしてるからな」
ちゃんと野菜も果物も食べるようにしてるからな。
ビタミンをきちんと摂取しているぞ。
「そっか......でも、この前みたいにキスしちゃったら?」
「......風邪どころか死ぬわ」
「ふふっ、私も!」
そう言って陽菜はピョンピョン跳ねた。可愛いな。
「えへへ〜......じゃあ、ちょっと」
「ん?」
ちゅ
頬っぺにキスされた。リアルで。外で。スーパーへ向かう道で。
すると陽菜はニヤっと笑い、こう言った。
「ふふ、これでさっきのくしゃみは、風邪が原因だとは思わない?」
「......風邪、かもな」
夏休み、これから大丈夫か?俺は。心配だな。
お前の芯は何なんだよォ!と、ツッコミたくなりました。
っていうかラスト!んまぁぁぁぁ!!!(断末魔)(尊死)
ングググゥ.....ズィ回、『テストの結果と大きな進展』お゛た゛の゛み゛に゛!!!!