修理・テスト・夏休み!中編
修理!終わ.....る?
ボス部屋に入ると、5メートル程の大きさの蝶が飛んでいた。
「キモイなぁ」
俺がそう呟くと巨大な蝶はこちらに気付き、鱗粉を振り撒いてきた。
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『フォラス鉱山』エリアボス
『モルフォスフォラス』との戦闘を開始します。
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「うっ......デバフかよ。『アウラ』吹きとばせ」
鱗粉を吸い込んだ瞬間、視力、聴力、平衡感覚までもが一瞬にして消え去った。
パチン!......ドサッ......
「ステラ、『癒しの光』を......いや、やっぱいいわ。『クリア』『クリア』『クリア』よし、これでOKだ」
一旦蝶を落とし、俺はデバフを解除した。
そしてちょっと汚い手段でレベルを上げるが、気にしない。
『斬る〜?』
「あぁ。『魔纏』『魔刀術:雷纏』『アクアスフィア』『戦神』......『斬』『雷』」
いつもの超火力抜刀術だ。これで殺れなかったら面倒だぞ。
ザンッ!!!!!
地に落ちた蝶を、縦に真っ二つに斬り裂いた。
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『フォラス鉱山』のエリアボス
『モルフォスフォラス』が
プレイヤー『ルナ』によって討伐されました。
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お、先にワールドアナウンスが出た。
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『モルフォスフォラスLv90』を討伐しました。
『麻痺劇毒の鱗粉』×5入手しました。
『燐蝶の魔翅』×1入手しました。
レベルが3上がりました。
『聖属性魔法』スキルレベルが72上がりました。
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「う〜ん、完璧☆」
毒物も手に入り、魔法のスキルレベリングも出来た。
早く毒武器の制作と、闇属性魔法のレベリングを、したいな。
「っし、戻るぞシリカ」
『あいあいさー!』
沢山の収穫を得た俺達は、ディクトに戻った。
「ジンさ〜ん、取ってきました〜」
「あっ......」
「あ、こんにちは」
ジンさんの鍛冶屋に行くと、女性のプレイヤーがジンさんと話していた。
「おうルナ、早かったな。アダチェウスの針は取れたか?」
「はい。というかそちらの方の接客を優先してください」
「おっと、すまねぇ嬢ちゃん。で、用はなんだ?」
うんうん。俺は後から入って来たんだし、順番を待たないとな。
例え店主の意向でも、前の客の事を考えると俺は容認できない。
「あの......剣を作って欲しいのです」
「いいぜ?どんな剣がいい?」
「アダチェウスの......針を使った剣です......」
どうしたんだろう。注文の勢いがどんどん落ちていったぞ、あの人。
「それだけか?特に形状とかの拘りは?」
「......レイピアの様な見た目で......でも......剣に......剣に近付けて......欲しい......んです......」
おいおい。今度は涙を流しながら注文したぞ。
蝶々不安定か?
『お兄さん、それは情緒不安定だよ』
「心の中のボケを読むなよ」
『ふっ......相棒パワーを舐めるな!!!』
「情緒不安定はお前か......」
クールキャラかと思ったら、一気にブチ切れたな、シリカ。
「う〜ん......取り敢えずそこで座って待ってな」
「......ぐすっ......はい......」
あのプレイヤーはジンさんが持ってきた椅子に座り、更に泣き始めた。
「ルナ、こんな状況でアレだが、見せてくれ」
「了解です」
ジンさんに手を招かれたので、店の奥に行くと、そこはかなり綺麗な鍛冶場だった。
「うん、良いですね。空気の重さ、完璧です」
「ははっ、そう言って貰えると嬉しいぜ!」
「じゃあ早速見せますね。今回はこの子の修理です」
「お、どれどれ〜?」
俺は小夜さんを取り出し、金床の上に置いた。
『おぉ、遂に修理の時なのじゃな......』
「そうだよ。それと一緒に、小春さんから離れないように、専用の強化もする」
『本当に、ありがとうなのじゃ。ルナに拾って貰えて、妾は幸せじゃ......』
「それは小春さんに言え」
『うむ!』
小夜さんを宿したのは小春さんだ。俺じゃなく、小春さんに感謝しなさいな。
「ル、ルナ......これって......神器か!?」
「違いますよ。彼女は小夜さんと言って、普通に愛情を注がれて育った武器の、付喪神です」
「そ、そうか......」
「それと、神器なら俺の腰に付いてますよ。シリカ、出てきな」
「はいは〜い!!」
俺はシリカを降臨させた。これで証明になるだろう。
「んなっ!?どっから出てきたこの子!?」
「お兄さんの刀から!だよ!」
「あ、シリカも付喪神ですよ。小夜さんは実体化してませんが、シリカは見ての通り、実体化出来ます」
「いぇい!」
小夜さん、きっと小春さんも小夜さんの為に神器を作るはずだ。
その時に降臨出来るといいな。
「こ、この嬢ちゃんが付喪神......信じられねぇ」
「戻りな、シリカ」
『りょ!』
「うわぁ!?刀になった!」
めちゃくちゃ驚くな、ジンさん。リアクション芸人にでもなるのか?
「って感じですね。じゃあ、小夜さんの修理に入ります」
「お、おう」
早く修理と補強をして、小春さんの元に変えなさないと。
そう思い、魔力を宿したアダマントとオリハルコンの合金である『神鍮鉄』と『ホープダイヤモンド』さらに装飾用の『神真鍮』を取り出した。
「おいおい......一級品ばかりじゃねぇか......」
「まだ......ここからです」
これらは言わば、強化素材だ。まず修理をしないとな。
アダチェウスの針を持ち、剣に乗せる。
「うん......足りんな。魔力打ちするか」
これがタダのメンテナンスなら楽なんだが......仕方ない。針1本1本に魔力打ちをしていく。
......いや待てよ?糸に魔力を宿すように、指で挟めば良いんじゃね?
試してみました。
「出来ちゃった☆」
『お兄さん頑張れ〜、シリカは寝る〜』
「はいはい」
それから数十本の長い針に魔力を宿し、剣に乗せて行った。
「良し、こんなもんか。じゃあ小夜さん、これ今からくっ付けるんで」
『分かったのじゃ』
そうして針を剣に埋め込んでいき、結果的に縦線模様の入ったダサい剣が出来た。
「ルナ......これは不味いんでねぇの?」
「当たり前ですよ。何のためにここに他の材料を置いてると思ってんですか」
「あぁ!なるほど。装飾用だと思ってたぜ」
「半分正解ですけどね」
神真鍮と宝石は装飾用の面が大きいからな。
そして炉にイグニスアローを置き、坩堝に神鍮鉄をぶち込んだ。
「うん、これは家でやるべきだな。今回は時短しよう」
このままだと日が暮れる。それは流石に嫌だ。
「どうやるんだ?」
「こうです。『戦神』『インフェルノブレス』『アウラ』......あっ、『サーキュレーション』」
危ねぇ〜、あと少しで大変な事になる所だった。
インフェルノブレス君、君は熱すぎて扱いに難しいぞ。
......心做しか寒いな。
「んだよそりゃあ......何の魔法だ?そんな熱量の魔法、俺は知らねぇぞ」
「秘密です。これは大切な魔法なので」
「そ、そうだよな!流石に教えてはもらえねぇか」
うちの子の魔法ですから。秘匿させてもらうぜ!
そして30秒ほどブレスを浴びせると、流石の神鍮鉄でも完全に液体になった。
「これに......よいしょっ!......うん!綺麗な金の剣だ」
柄の部分を青くしたら、エクスカリバーとか名乗れそうな見た目だ。
これだけで魔剣クラスの性能は出るだろう。
「こぉれぇにぃ?......装飾ターイム!!!」
「うおっ!ビックリした」
ごめんなさい。いつもこんなテンションでやってるもんですから......
それからは小さくカットしたホープダイヤモンドを散りばめたり、神真鍮の糸と極薄の板でハリネズミっぽい装飾を施した。
「......完成だ。小夜さん、どうですか?」
『ち、力が凄まじいのじゃ......一体どうなっておるのか、皆目見当もつかない』
そんなアダチェウスソードの修理結果はこんな感じ。
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『聖魔剣:アダチェストソード』Rare:21 製作者:小春&ルナ
攻撃力:1,250
耐久値:∞
付与効果:『不壊』『魔纏』『生命力増強:500』『魔力増強:500』『刺突補正:大』『剣術補正:特大』『STR補正:特大』『顕現』
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本当は『専用装備』も欲しかったが、俺が小春さんを知らないせいか、付与する事は出来なかった。
「これが神匠か......バケモンだな」
「えぇどうも。じゃあこれにて帰ります。俺はこの剣の、元の主の手に返さないといけないので」
「そうか。ありがとうな、ルナ。見せてくれて感謝する」
「気にしないでください。では」
そう言って俺は小夜さんを仕舞い、鍛冶場を出た。
するとあの女の人は、まだ座って泣いていた。
『お兄さん、流石に声掛けたら?』
「......厄介事の臭いがするが、しょうがないか」
何か押し付けられたら直ぐに逃げよう。
「あの、大丈夫ですか?どうして泣いているんですか?」
「うっ......私の剣......盗られたの......」
ん?......まさかな。
「......ぐすっ、それで、色んな街を探したの......イニティも、ロークスも、ディクトも......でも、見つからなかった......」
「あらあら......それで?」
「それで、仲の良い友達が、『流石に新しいのにしな』って......あれは、私が初めて作った剣で、凄く思い入れがあったのに......それを諦めろって......」
『お兄さん、もしかしてこの人──』
「いや待て。ピギーに続いてそんなら偶然がある訳ないだろう」
いやね?確かにこの人が『小春』さんである可能性はあるのよ。
でもね?ここで出会う事はないと思うんだ。知らんけど。
「あの、貴方の名前を教えて貰って良いですか?」
さぁ、運命の分かれ道だ。どっちに進む?
「私......ですか?ぐすん......私は『小春』です......」
これは幸運か、はたまた悪運か。とてつもない確率を引いてしまった。
「じゃあ小春さん。あなたにコレを」
俺はそう言って、小夜さんを......『アダチェストソード』を出した。
「なに?......これ」
『妾じゃ!小春、妾じゃよ!小夜じゃ!』
「え?......」
「あなたから小夜さんを盗んだ男から奪いました。そしてその男は俺が決闘で負かし、ついでに小夜さんの修理と強化をしておきました。勝手な事をした事を謝ります。ごめんなさい」
怒......られるかな......怒られるよな。寧ろ殺されるよな。
仕方ない、その時は潔く首を差し出そう。
「な、名前......ルナ......ほ、本物、本人ですか!?」
すると小夜さんのチェックを終えたのか、俺に確認を取ってきた。
「何の本物かは知りませんが、ワールドアナウンスを流しまくってるルナは俺ですね」
『小春、この方は紛れもなく本人じゃよ。お主の憧れのルナじゃ』
小夜さん、ナイスアシスト。ここで俺から『本物です!』なんて言えないからな。本当に助かる。
「う、嘘......うぇぇぇぇん!!!」
思いっ切り号泣しだした。どうすればいいの?これ。
「帰りてぇ......」
『それは流石に不味いよ?ってか鍛冶屋の人、全然戻って来ないね』
「どうせ鍛錬でもしてんだろ。鍛冶屋なんだし」
『確かにそうかも!!』
はぁ、どうしたものか。小春さんが見つかったのはいいが、号泣して話す事も出来なくるとは。
「小春さん、俺、もう帰っていいですか?」
「だめぇ!!行かないでぇぇ!!!」
「そんな別れる前のカップルみたいな事は言わないでください。ってか俺、どうしたらいいんです?」
「待ってぇ!............」
あぁもう。面倒な予感しかしない。逃げるか。
「あの!フレンドに「じゃあ、これにて」......ま!待って!」
嫌です。もう帰ります。ソル達が待ってるので。
「くっ、足速いな小春さん......『戦神』」
鍛冶屋を出て走ったが、小春さんが追いかけてきた。
『お兄さん、ガチで逃げるね』
「当たり前だ。女は怖いからな」
別に女の人にトラウマがある訳じゃないけど。
強いて言うなら小学校の頃に虐めてきたくらい?
......トラウマじゃん。
『じゃあ狐ちゃんも怖いの?』
「『フラカン』......な訳ないだろ?ソルだけは特別だ。あんなに可愛くて優しくて家事が出来て周りも見れて、自分の事も客観的に見える子が怖い訳ないだろ?」
『シリカはそんだけスラスラと言葉が出てくるお兄さんに恐怖心を抱いたね』
「嘘つけ。微塵も思ってない癖に」
『もちろん!狐ちゃんの事が大好きなの、 シリカ知ってるもん!』
騒がしいな、シリカは。いや、明るいと言うべきか。
「じゃ、家までぶっ飛ぶぞ〜!!」
『お〜!!!!』
そうして俺は、全速力で家に帰った。
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名前:ルナ
レベル:132→135
所持金:80,845,590L
種族:人間
職業:『ヴェルテクスギルドマスター』
称号:『スライムキラー』
所属ギルド:魔法士・Cランク冒険者(94/200)
Pギルド:『ヴェルテクス』
所持因子:『稲荷』他6柱
HP:6,560→6,710
MP:6,560→6,710
STR:6,560→6,710
INT:6,560→6,710
VIT:6,560→6,710
DEX:6,560→6,710
AGI:6,560→6,710
LUC:3,275→3,350
CRT:100(上限値)
SP:1,540
『取得スキル』
戦闘系
『剣王』Lv100
『魔剣術』Lv100
『王弓』Lv100
『魔弓術』Lv100
『武闘術』Lv100
『魔闘術』Lv100
『刀王』Lv100
『魔刀術』Lv100
『操王』Lv100
『魔糸術』Lv100
『走法』Lv0
『手加減』Lv0
『戦神』Lv100
魔法
『火属性魔法』Lv100
『海魔法』Lv30
『風属性魔法』Lv100
『土属性魔法』Lv100
『雷属性魔法』Lv100
『氷属性魔法』Lv100
『聖属性魔法』Lv28→100
『闇属性魔法』Lv19
『自然魔法』Lv100
『龍魔法』Lv100→『龍神魔法』Lv1
『古代魔法』Lv1
『音魔法』Lv100
『妖術』Lv1
生産系
『神匠:鍛冶』Lv100
『神匠:金細工』Lv100
『裁縫』Lv99
『調薬』Lv82
『神匠:付与』Lv100
『木工』Lv1
『料理』Lv83
『神匠:錬金術』Lv61
その他
『テイム』Lv3
『不死鳥化』Lv100
『マナ効率化』Lv0
『植物鑑定』Lv0
『毒物鑑定』Lv0
『動物鑑定』Lv0
<>内アクセサリーの固定増加値
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修理終わり!
ベージュの剣は、エクスカリバーとも呼べそうな程の、美しい金色の剣に変貌しました。
しかも装飾入り。高そうですね。いや、高い(確信)
では次回は後編です。一気にテストと夏休みになります!
お楽しみに!