修理・テスト・夏休み! 前編
修理編!
あ、天城さんを狙って大型建造をぶん回したら、なんと天城さんが来てくれました。
これで土佐さんと天城さんが揃ったので、私の重桜主力艦が大分潤いましたね。( 'ω' و)و"♪
家の鍛冶小屋にて──
「なぁにぃぃぃ!?やっちまったなぁ!!!」
「どうしたの?パパ」
「小夜さんの修理に、アダチェウスの素材が必要なみたいだ」
テンションとは、ジェットコースターである。 by ルナ
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さて、ここで1つ。俺はアダチェウスというモンスターと戦ったことも無ければ、見た事も無い。
正樹から聞いた情報だと、アダマント製の針を持つハリネズミ、という情報しか知らないのだ。
『すみません......ご迷惑をおかけします......』
「気にしないでください。っていうか、修理した上に補強とかしたら、俺は小春さんに怒られますかね?」
これは気になっていたのだ。
小夜さん......『アダチェストソード』は、無属性の一般的な剣の中では、かなり高い耐久値を誇るのだが、それでもまだ足りないと感じる。
だから、少し俺が手を加えて、耐久値や攻撃力、付与効果なんかも追加したいと思ったのだが......それは製作者である、小春さんがなんて言うか分からない。
自身が沢山の思いを込めた剣を、他人に手を加えられたら.....俺だったら泣いてしまうからな。
『それは寧ろ、小春は喜ぶと思いますよ?何せ小春は、鍛冶師としてルナ様に憧れていましたから......』
「......そうすか。ってか小夜さん、口調戻していいですよ?正直に言って、様付けされるのは嫌いだ」
様付けされても許せるの、愛剣のおじさんくらいだ。
あの人の声といい言葉遣いといい、様付けされても違和感を感じないのだ。
『で、では......口調は戻させてもらうのじゃ』
のじゃ口調、いいっすね。俺、そういうキャラ好きよ?
「うんうん。それがいい。小夜さん本来の個性を出すといい。......そんでもって、これからアダチェウスを狩って来るわ」
「じゃあメルも〜!」
「いや、メルは留守番だ。シリカと行ってくる」
「え〜!!」
今回はスピード重視なんでな。ソロで行かせてもらう。
......いや、スピード重視だからこそ、メルに殲滅してもらうか?
でもそれじゃあ、小夜さんに申し訳ない気がするんだよな。
俺の手でアダチェストソードを修理したい......だから、修理素材も俺の手で集めるべきだろう。
「じゃあメル、ソルにお願いして、一緒に外で狩りをしてくるといい。それなら暇じゃないだろ?」
「......わかった。引きずってでも、ママとおでかけする」
「ダメだ。ちゃんとお願いしろ。自分のやりたい事に人を巻き込むなら、ちゃんと自分からお願いしろ」
「うん!じゃあ、ママにきいてくる!!」
「あぁ。行ってこい」
そうしてメルは、城の方へ走って行った。
『元気な子じゃなぁ』
「だろ?メルはあれでも、元々は神龍だからな」
元気なのは良い事だ。外に出て走り回るのは、体力も尽くし体幹も鍛えられるし、外の地形を把握する能力も鍛えられるからな。
『神......龍?......妾は今、冗談を聞いておるのかの?』
「いや?冗談じゃないさ。メルは元神龍『ノビリスドラゴン』だったんだよ。俺と戦い、テイムされ、俺の娘になった」
『......ちょっと理解が追いつかないのじゃ』
「まぁ、それは小春さんや有名な語り人に聞けば真偽が分かるさ。俺、一応有名人らしいし」
あの男は知らなかったけどな、俺とソルの事。
......はぁ、思い出しただけで腹が立つ。落ち着こう。
「じゃあ素材集めて来るんで、待っててくれ」
『うむ!待ってるのじゃ!』
俺はアダチェストソードをインベントリに仕舞い、シリカを顕現させた。
『どうしたの〜?お兄さん』
「ちょっとハリネズミ狩るぞ」
『おっけ〜!!まっかせて!!』
いいね、詳細を語らずとも理解してくれる......正に相棒だ。
そうして俺はディクトまで全力で飛んで行き、街の人にアダチェウスの居場所を聞くことにした。
「すみません、ちょっといいですか?」
「ん?......あ!お前さん、昨日の奴か!」
俺はドワーフのおじさんに話しかけたのだが、どうやら昨日の事件を知っていたらしい。
「はい。ルナと申します。少しお聞きしたい事があるのですが、アダチェウスなるモンスターの居場所を知りませんか?」
こういう時『お時間いいですか?』より、先に要件を聞くのが俺のスタイルだ。知らんけど。
だって、時間あるか聞くより、手っ取り早く要件を言った方が時間がかからないんだもん。
「あぁ、それなら着いてきな。プロフェッショナルの元に連れてってやる」
「いいんですか!?お願いします!」
プロフェッショナル......この街の強い冒険者か、或いは鍛冶師の事かな。
そうして連れてこられた先は、この街でも珍しい、石造りの家だった。
鍛冶屋だろうな。
「ジン!いるか〜?」
おじさんはドアを開け、ジンという名前を呼んだ。
「なんだよ朝から......まだ開店しねぇぞボケがぁ!......ってスタークじゃねぇか。誰だ?そいつ」
「この男にアダチェウスについて教えてやってくれ」
「なんで急にそんな事を......まぁいいけどよ。報酬は?」
「ん?」
「だから、そのガキにアダチェウスについて教える事についての報酬は?」
どうやらこのおじさん......スタークさんは、ジンさんへの報酬を考えてなかったらしい。
「うん、忘れてたわ。ルナ、お前さん鍛冶は出来るか?」
「え?えぇ、まぁ。それなりには」
「具体的なスキルレベルは?あと階級を教えてくれ」
「階級?......は多分、神匠の事ですかね?それなら、『神匠:鍛冶』のレベル100ですよ」
「「はぁぁぁ!?!?」」
あ、神匠である事って言わない方がいいんだっけ?
......違うか、神について言わない方がいいのか。
これ、フェルさんに聞いとけば良かったな。
「し、しししし神匠っておま、マジか!?」
「はい。認めた神については話せませんが、神匠ですよ」
「な、ならガキ......じゃねぇ、ルナ!お前、フェルという男を知っているか!?」
「知っているも何も、その人に鍛冶を習いましたよ」
「やべぇ......スターク、やべぇよ......」
「だな......俺もまさか、あんな強え奴が神匠だとは......」
テンプレ展開みたいになってるのはいいんだけど、早くアダチェウスについて教えてくんないかな。
「あの、アダチェウスについては?」
「あ、あぁ!アダチェウスだな!いいぞ、なんでも聞いてくれ!それと、出来ればなんだが......」
「はい。報酬は俺が払いますよ」
「なら!お前さんの鍛冶を見せてくれないか?」
「いいですよ」
「っしゃぁぁぁ!!!!!!」
「やったなジン!!お前、一生に一度の思い出になるんじゃねぇか?」
「当たり前だろ!」
なんかすっごい喜んでる。フェルさん、あんたすげぇよ。
『しかもお兄さん、5人の神のお墨付きでしょ?』
「そうだな。有難い限りだよ」
『ならこの人達、神の鍛冶より貴重な物を見れるんだね!』
「そこまでか?......まぁ、いいや」
話が長くなる気がしたので、ここで切った。
「じゃあジンさん、アダチェウスについて教えてください」
「おうよ!まずアダチェウスは──」
そうしてジンさんからアダチェウスについて聞き、俺はディクトの東にある、『フォラス鉱山』まで飛んで来た。
「名前的に、リンが採れるのかな?」
リンはラテン語でフォスフォラス。元素名にもなっているな。
「んな事ァどうでもいいや。行くか」
『レッツゴー!!!』
俺はクトネシリカを何時でも抜刀できるように、左手で持ちながら鉱山を進んだ。
「うわぁ......臭ぇ」
鉱山内は、動物のフンの臭いで充満していた。
「でも効かない。なぜならコレがあるから!『サーキュレーション』」
俺の周囲だけ綺麗な空気を取り込み、臭いは完全に消えた。
「おぅ......便利ィ......流石だァ......」
環境適応魔法(仮)は、とても便利である。
『チュチュ!!』
「お、反応にもあったネズミか。確かこのネズミ、ジンさん情報によるとレアモンスターのはずなんだが......運がいいな」
この小さなネズミは『ラッキーラット』と言って、テイムする事で永続バフがかかるモンスターらしい。
なんでも、LUCが常に2倍になるそうな......
『チュ!』
「まぁ、逃げるわな。次来たプレイヤーにでもテイムされときな」
『良いの?逃がしちゃって』
「いい。それにウチにネズミが居るとしったら、リルが食べそうじゃないか?」
『......確かに「んな訳ねぇよ!」......えっ』
タダのジョークだよ。真に受けないでくれ。
「ん、敵だ......人型?あぁ、『オートマタ』か」
鉱山を進むと、やけに綺麗な魔力反応があり、その魔力の持ち主は『オートマタ』と言う、ゴーレムの強化版モンスターとの事だ。
『ハ、ハイジョ......ハイジョ!ハイジョ!ハイジョ!』
『「怖っ!」』
首をカクカク揺らしながら排除を連呼するなよ!
ホラー映画のワンシーンにしか見えないぞ!
「おらよ、『戦神』『インフェルノブレス』」
ボァァァァァ!!!!
龍神魔法であるインフェルノブレスを使ったら、俺の前方の地面、壁、そして天井までもが赤熱し、溶けてしまった。
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『オートマタLv80』を破壊しました。
『鋼のインゴット』×1入手しました。
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「......」
『......』
うん......やりすぎたね。これじゃあ歩いて進めないぞ。
そして俺は1級のバカであり、1級の変人である為、ここで更なる愚行に出るとしよう。
「『戦神』『グレイシア』」
バキバキバキバキバキ!!!!
俺の目の前が氷の洞窟になってしまった。
「......」
『......』
これにはシリカも何もツッコまない。キャパオーバーだろうか。
コツ、コツ、コツ......
俺は無言で歩き始めた。もう、何も言える事が無いんだ。
そして10分ほど歩くと、氷の洞窟ゾーンを抜け、普通の岩肌の洞窟に戻ったのである。
「シリカ。今日起きた事は誰にも言うなよ」
『......言いふらしてやる』
「やめろ!一体のモンスターを倒すために『洞窟の表面を溶かした後に、氷の洞窟に変えちゃった☆』なんて事がバレたら、ソルに呆れられるだろ!?」
『呆れられるのも無理ないよ!なんで戦神を使ったの!?なんで氷に変えちゃったの!?なんで平然と無言で歩いてるの!?』
今になって全てのツッコミがやって来た。
「これが......俺流の洞窟攻略だ......」
『そんな流派滅んでしまえ!一代限りでね!!』
「だいじょぶだいじょぶ。真似できるのはメルだけだから」
『真似できるのがおかしいのぉぉ!!!!』
騒がしいな、今日は。
「お、目当てのモンスターの反応かな?」
サーチ君に、何やらトゲトゲした魔力反応が引っかかった。
「さ、どんな見た目かな?イガグリ?ウニ?」
『ハリネズミでしょ!?』
「全く......ここは『いやぁ、ここは敢えてアルマジロですかねぇ!』とか言うところだろ?」
『知るかそんなもん!!!』
荒れてるなぁ、シリカ。どうした?嫌な事でもあったか?
『ガルルルル......』
『「あ、ハリネズミだ」』
ドスドスドス!!!!
2メートルくらいある、巨大なハリネズミが現れたと思ったら、いきなり背中の針を飛ばして来た。
「『フラカン』......おっほ!これ最強じゃん!」
『うわぁ......可哀想に......』
俺は飛んできた数千本の針を、全て魔法でキャッチした。
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『魔鋼鼠の針』×99入手しました。
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「もう用済みだね、君」
そう、ジンさんに言われたのだ。
『アダチェウスの針が欲しいなら、敢えて針を撃たせろ。そんで盾や壁に隠れてやり過ごし、直ぐに針を拾って逃げるんだ。これがアダチェウスの針の集め方だ』
ってな。
「まぁでも、殺すんだけどね。『魔刀術:雷纏』『雷』」
バチィン!!!ザンッ!
アダチェウスは咄嗟の判断で丸まったが、シリカの切れ味に負け、その鋼鉄の針ごと胴体が抉られてしまった。
『ガ......ガウ......』
そして出血が続き、アダチェウスはポリゴンとなって散った。
「外はガチガチ、中はプニプニだったな」
『中も硬かったら、流石に一撃では無理だったね!』
「だな。ありがとう、シリカ」
『いいよ〜!』
刀身に付いた血のポリゴンを振り払い、納刀した。
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『アダチェウスLv85』を討伐しました。
『魔鋼鼠の針』×99入手しました。
『魔鋼鼠の毒肉』×5入手しました。
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「クソだ......肉も毒になってんのかよ......」
『ありゃりゃ、残念だね』
「プニプニのお肉、美味しそうなのになぁ」
『死を覚悟で食べる?』
「な訳。コイツは武器にするから取っておく」
『......武器に?』
「あぁ。でも作り始めるのは夏休みに入ってからだ」
『うん!お兄さんの新しい武器、ワクワクするよ!』
凄いよな。『私の出番が無くなる!』って心配するんじゃなくて、『使ってもらえるという絶対の信頼』を置き、かつ『新しい武器が楽しみ』と言ってくれる......
感謝してもしきれないよ。ありがとう、シリカ。
「だな。じゃあ、このままボスも殺るか!」
『お〜!......トマタ』
「グレイシア使うなよ......寒いだろ?」
『......』
そんな雑談をしながら、俺はフォラス鉱山のボス部屋前まで来た。
今回はシリカとのギャグ回(?)でした。
アダチェウスは針がアダマント製なので硬く、その分、本体はプニップニのモッチモチとなっております。
ちなみに、弱点属性があり、雷属性にめっぽう弱いです。
では次回!中編でお会いしましょう。ではでは!