まぁ、楽しもうや
ぽりすめん
わたしはなにも
やっていない
ただそのひとが
わたしをよんだの
柑橘飴
「はいルナ君、85点です。ピーちゃんは70点」
「負けた......!勉強でもルナに負けた......!!!」
「ピギー、考え方を変えてみるんだ。『勉強でさえアイツは強いんだ』と......」
「クッソ腹立つぅぅ!!!」
「こらこら。煽らないの〜」
現在、3人で仲良くお勉強中だ。数学の点数で簡単な勝負をしたところ、10点差で勝った。
「にしても何でそんなレベルのゲーマーがちゃんと数学とか出来てるの?私の周りの高校生ゲーマーって、通信制の高校とか、全日制でも赤点ギリギリの子が殆どだったよ?」
「そりゃあ、今の学校に通い続けたいからな。FSを始める前からあの学校に行きたかったし、普通に勉強くらいしてるさ」
それに今は、陽菜と一緒にいる為にも頑張りたいのだ。
勉強が出来なくて実家に帰りました、なんて、俺はショックで病気になる気がするぞ。
「でもルナ君、勉強をちゃんとし始めたのは最近だよね?」
「そうだな。それまでは復習くらいか?授業をちゃんと聞いて覚えれば平均点は取れるし、テストだって事前に独自の覚え方で要点を押さえとけば、もう少し上は取れるからな」
「何それ〜ズルい〜!」
「砂使いが計算出来なくてどうすんだよ」
「私は直感タイプだから」
「その直感をより信じれるように勉強するんだよ。俺だって基本は感覚でやっている」
「正論パンチを喰らった私の気持ち、誰か理解者はいないのかね?」
「「「「いないね / いませんね」」」」
リビングに居る全員から否定されたな。
「くっ!やはりこの世界も私に厳しい!」
「でもルナ君、ピーちゃんのこの点数はもう少し上げれそうじゃない?」
「ソルちゃん......頼む!」
ソルじゃなくて俺に言えよ。
「ん?1つ案はあるぞ」
「本当ですか!?ルナ先生、是非ともワタクシにご教示を賜りたく......!!」
「まぁ、楽しもうや」
これだ。これが何事においても重要な事だ。
「あ、あの......案は?」
「だから『楽しめ』って。ゲームが楽しいのと同じように、勉強も楽しむんだよ。
知識が増えることを楽しむ。
本をめくる事を楽しむ。
紙に書くことを楽しむ。......何だっていい。
勉強に繋がる1つのアクションを楽しめばいい」
「楽しむ......か」
「あぁ。『好きこそ物の上手なれ』という諺があるように、この世界......俺達の人生は楽しんだ者が上に立つんだよ。大事なのは楽しむ心と向上心。それと少しの勇気だ」
『少しの勇気』これが1番大事だ。ピギーも分かっているだろう。
初めて配信する時にも勇気が必要だろう。
初めて戦うモンスターにも勇気が必要だろう。
初めて出会う人に話すのに、勇気が必要だろう。
何を成すにも、勇気が必要なんだ。
「......なるほど、世界6位はやっぱ違うね。ありがとうルナ。参考に......というより、まんま試してみるよ」
「好きにしな。これは飽くまで俺の考え方だからな」
「うん!改めてありがとね!」
これでいいかな?人に教えるのって得意じゃないから、ちゃんと伝えられてるか心配だ。
「むむぅ......ルナ君、私にも教えて?」
「今言った事が出来てる奴が何を言うんだか......ってかソルは成績どれくらいなんだ?」
「オール4」
「なら問題ないんじゃ「いや〜!私もルナ君に教えてもらうの〜!」......はいはい」
俺より賢いくせに、全く......可愛いな!好き!!
そうして暫く勉強し、ピギーも一緒にお昼ご飯を食べ、午後に入った。
「ん〜!!私、休憩がてらにスローターしてこよっかな」
「行ってら」
「ルナとソルちゃんはどうする?一緒に行く?」
「私も行く!ルナ君はどうする?」
「俺は行かない......というより行けない」
「行けない?なんでまた?」
「ステータス的に、2人に追いつけんからな」
「はい?あれだけ空飛んでポンポン魔法撃ってんのにステータスが足りないの?それに、別にそんなに難しいとこには行かないよ?」
ちゃうねん。
「今の俺、文字通り最弱だから。全ステータス10しかないぞ?」
「は?」
「あ〜、そういえば言ってなかったね」
伝え忘れていたな。ミスミス。
「ど、どいうこと!?今までそんなステータスで戦ってたの!?」
「違ぇよ。2度目の限界突破したらステータスが落ちたんだよ。それにまだレベル1だからな」
「じゃ、じゃあ貯めてた分のSPとか無いの?それ使って上げたら......」
「SP使うのも手だけど、それは何か嫌だ。今の種族はSPを一切振らずにやるか、振ったとしても全ステータスに満遍なく振りたいから、暫くは無振りのままだな」
これは俺の流儀だ。相当な緊急時でない限り、SPは振らない。
リルとの出会いのような、完全に未知のエンカウントなら使うが......神龍のような、いつでも会える奴との戦闘では振らない。
それに、低ステータスは自分を『上手く』するのに持ってこいなんだ。
力に頼らず、頭で戦う事になるからな。
まぁ、オワタ式っていう致命的な弱点もあるけど。
「ま、体育祭が終わるまでだから、それまで待ってな?直ぐにお前のステータスまで追いついてやる」
「ほほぉん?レベル98のプレイヤーに追いつくと?」
「ピーちゃん。ルナ君は直ぐに追いつくよ?」
「え?マジ?そんなに?」
「ルナ君のレベリングって、正直に言って常人じゃ出来ないレベルで戦うからね。多分、最初の10レベルくらいスライムで上げて、後は裏鉱山でやるんじゃないかな」
「せやで〜」
さっすがソル!ララバジの存在を覚えていて偉い!
「そ、そんな直ぐに上がるの?」
「もう......ガッポガッポだよ」
ソルが胸の前で手を上下させて表現しているが......なんかエロいぞ。
「くらえ!乳アタック!!」
あ、ピギーがソルのお胸にタッチした。
ドゴンッ!!!
「ぶへっ......」
「この胸はルナ君の物だよ!!誰にも触らせない!!!」
あら〜......あら〜?ピギーが動かないぞ。
「ピ、ピギー?生きてるか〜?」
「し、しぬ......えいちぴーが......1しか............」
わぁお......ソルの顔面パンチ、怖いぞ。
ってかちゃんと手加減されてるんだな。優しい。
「ほれ、『癒しの光』だ」
ステラを取り出し、癒しの光を使った。
はぁ.......ステラでさえ、両手で持たないと重いな。
今の俺が持てるの、愛剣と初期の弓くらいか。
ちくせう。
「た、助かり申した!」
「全く......これに懲りたら私の胸は触っちゃダメだよ?」
「は、はい!ルナしか触っちゃいけないんですよね!」
「うん!......って、あ......あぁ!!言っちゃったぁぁ!!!」
えぇ?今更?気付くの遅すぎっすよソルさん。
「うぅ......恥ずかしい......」
「大丈夫だぞ。俺としては死ぬほど嬉しい言葉だったから」
「で、でもぉ......」
「甘ったるいよね、2人とも。もう結婚したら?」
「年齢が足りないだろ!!」
「まだ学生だもん!これから!!!」
「あ、あれ?冗談のつもりだったんだけど......割とガチ?」
「「あっ」」
こみゅちからが高い奴ってのは、恐ろしいな。
「ま、まぁ。楽しんでね?私は何も言わないから」
「......スーッ......」
陰キャ特有の『スーッ』がこんにちはした。
ヤバいよ。俺の心がハリケーンだよ。テンペストだよ。カタストロフだよ。
「って、てかさ。左手の薬指に指輪してるんだし、いいんじゃ?」
「「......」」
やめて......それはソルにクリティカルヒットするから......
「し、しかもルナのはシルバーリングだし、もうそれって夫婦じゃ「「や〜め〜て〜!!!」」......おぉ」
「やめてくれぇぇ!!もう俺のHPは0なんだよぉぉぉ!!!!」
「私もぉぉぉ!!!恥ずかしくて死ぬ!死んじゃうよぉぉ!!!」
2人で床をゴロゴロ転がりまくっている。
「全く、うるさいですねぇ。静かに本が読めないではないですか」
「ホントにね。パパもママも、もう少ししずかにして?」
「「い〜〜や〜〜!!!!」」
まだゴロゴロは止まらない。その程度のブレーキじゃ止めることは出来ないぜッ!!
「......はぁ。メルちゃんは父様を抑えてください。私は母様を」
「わかったわ」
ガシッ!!!メリメリ......
「い、痛い痛い!めり込んでる!めり込んでるから!!」
メルに頭と腕を掴まれた。
「こちらも拘束しました。では行きますよ?」
「うん」
すると仰向けに固定された俺に、上からソルをゆっくり降ろしてきた。
「ちょ、ちょっとリルちゃん!?」
「ま、待って!メル、離してくれ!」
「「ダメです / ダメよ」」
「「ちょっと待......んむっ!」」
ソルが降ろされた事により、口と口が繋がった。
ファーストキスは、VRゲームで娘(仮)の手によって上からゆっくりと降ろされてきた彼女でした。
「「んんんん!!!!」」
ちょっと待って。いつまで続ければいいの?嬉しさと恥ずかしさで死にそう、ってか心拍数ヤバくない?強制ログアウトされそうじゃない?
「「んん!!!......」」
はい。ログアウトされました。安全装置よ、よくやった!
「し、しちゃった......キス......」
極度の緊張で頭に血が上り、ぽやぽやしてきた。
「あぁ......もう寝よ......体育祭もあるし......」
そうして俺は、夕方から思いっ切り寝た。
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ピグレット(ピギー)side
2人が異様なシチュエーションでキスをしたと思ったら、強制ログアウトされてった。
「な......何この状況」
肝心の2人を強制ログアウトさせた娘2人は、あたかも『やりきった......!!』みたいな顔をして突っ立っている。
「あ、ピグレットさん。今日はもうお帰りください」
「パパとママもいないしね。わたしたちだけで外に出たら、ふたりに心ぱいかけちゃうもん」
「あ、うん。分かった。じゃ、じゃあね!」
「はい!また来てくださいね!」
「また色んなはなしをきかせてね?」
「うん!」
そうしてお城を出て、私はお庭にいるメイドのフーさんのところへ向かった。
「あの〜」
「はい!どうされましたか?」
「2人がなんやかんやあってログアウトしちゃったので、私は帰ります。ので、それを伝えに......」
「分かりました!......全く、ルナさんは......」
なんかアレだねこの子。世話焼き系幼馴染みたいな事言ってるね。
「じゃあ、お邪魔しました!」
「はい!また来てください!お気を付けて!」
そうして私はルナの城を出て、王都を歩く。
「だ、大丈夫かな?明日に響いたりしたら、どうしよ」
もし寝込みでもしたら、代打は私が出るか。
あの状況に持って行ってしまった原因でもあるし、私が尻拭いしないと。
「大丈夫な事を祈ろう」
それが今、私に出来ることだ。
「......ぃよし!アンバー渓谷の殲滅、いっちょ配信しますか!」
それから私は、アンバー渓谷でトカゲの殲滅放送をして、レベルを100まで上げた。
まさかのキス回でした.....いいぞ、もっとやれ。
にしても、本当に異様なシチュエーションでしたね。ムードもクソもない。
でも幸せなら、OKです!