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Your story 〜最弱最強のプレイヤー〜  作者: ゆずあめ
第7章 神界と夏休み
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強い者と、上手い者

誤字報告に感謝を捧げ、私はビッグ〇ックを食べた。




「リル、鬼ごっこしに行くぞ」


「はい!今日はどちらへ?」


「今日はアルトム森林だ。もちろん、ペリクロ草原も走りながらだぞ?」


「ふっふっふ。もちろんです!」



胸を張って答えるリル、中々に可愛いな。



「じゃあソル、メル。行ってきます」


「行ってきます!」


「「行ってらっしゃい!」」



現実時間で今日しか鍛える時間がない。全力でやろう。



「......よし。王都の調査もしながら行くか」


「はい!ウィンドウショッピングです!」



流石に街中を走る訳にはいけないからな。王都を出るまでは、一緒に屋台を見て回るのが日課だ。



「にしてもトカゲの素材が増えてんな。皆ディクトに行っちゃったからか?」


「でしょうね。最近はここも、ちょっぴり人が少ないように感じます」


「俺のレベルが上がったら、ディクトに行ってみるか?」


「はい!沢山の種族がいる国のようですから、楽しみです!」


「だな。......じゃあリル、鬼ごっこやるか」


「えぇ、今日も勝ち逃げさせてもらいますよ?」


「あぁ、今日こそは捕まえてやる」



鬼を決める時、最初の方はジャンケンにしていたのだが、リルがステータス全開放の超反応をすることで100パーセント勝つので、諦めて俺が鬼をやることになった。



「くれぐれもスライムには気を付けてくださいね?......まぁ、死ぬ前に助けますけど」


「そん時は頼むよ。ほれ、走れ!3秒後に行く!」


「はい!では!!!」



ビュン!!!



草原の草が舞う程の速度でリルは走り出した。



「ふぅ......よし、ゴー!!!」



俺は全力の70パーセント程の速度で走り出した。

いつも草原では目視すら出来ないので、今回も森林で仕掛ける。



「お〜、リルが通ったとこの草、思いっきり禿げてんじゃん」



リルの小さな足跡が深く刻まれ、その周囲も軽く削れている。


一体どんな馬鹿力で踏み込めば、こんな深い足跡が出来るんだ?




そうして走っていると、サーチに反応があった。



「ワイバーンか。ん?違うな......人も乗ってる?」



ワイバーンの大きな反応の上に、人間の小さな反応があった。



「......テイムしたのか。なるほど、空の移動手段になるんだな、ワイバーンって」



それにしても、よくあの凶暴なワイバーンをテイムしたもんだ。

俺、とてもじゃないが、仲良く出来そうにない。



「......っと、もう森林か。リルの反応は......よし」



どうやら月の映る池の近くにいるようだ。



ここからは全力ダッシュだ。凸凹の地形、数歩歩けばぶつかる木、その全てを把握して進んで行く。




「はははっ!森はやっぱり楽しいなぁ!」



道場時代を思い出す。師匠の山で駆け回った記憶、陽菜と鬼ごっこをした記憶、師匠に全速力で追いかけられ、鼻水垂らしながら逃げた記憶。



「ははははは!!」



楽しくて楽しくて仕方がない。

『子どもみたいだ』と言われたっていい。これが俺だ。



「はははっ!......はぁ、ゴブリン2、オーク1、ピクシー1。死角はココォ!!」



木々の隙間を縫いながらサーチで索敵し、完璧な死角を突き進んで行く。



「オワタ式なんだ、速すぎるのも遅すぎるのもダメ。的確なタイミングを......突く!」



そうして何度もモンスターの塊をすり抜け、森に入って20分。月の映る池まで来た。



「お待たせ、待った?」


「はい、待ちました」



リルが花の冠を付けて三角座りしていた。

......まるで昔の俺だな。虐められていた時、一人で遊んでいた時の俺にそっくりだ。



「可愛いぞ。リルに良く似合ってる花だ」


「えへへ、ありがとうございます。では、始めますか」


「あぁ。『不死鳥化』」



俺は不死鳥化を発動し、リルと向き合う。



「強者の力を見せてあげます」


「弱者の這い上がりを見せてやろう」



ここからは鬼ごっこ兼、戦闘訓練だ。


俺は闘術オンリー、リルは使える手を全て使う、クソゲーだ。



ステータス差、は最低のVITで480倍、最高は1640倍のHPだ。



こんなクソゲー、他に無いだろう。

でも......やるしかないんだ。俺と、リルのために。



「すぅ......『サウンドエンハンス』......」



その手は知っている。耳を塞がせてもらおう。





「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」




リルが叫ぶと、そこから凄まじい衝撃波が生まれ、周辺の地面が抉れて吹き飛んでいった。


これ、耳を塞いでなかったら鼓膜が消滅するんじゃないのか?

地面が抉れる程のボリュームなんだし、鼓膜どころか体が消えるか?



何にせよ、叫び終わった今が攻め時だ。



「ふっ!シッ!......はぁ!ッハ!」



右フック、左スレート、右ジャブ、回し蹴りだ。



「見切るのが容易です。速度をあと30倍は早くしましょう」



全て避けられた......速すぎなんだよ、リル。



一旦距離を取り、対策を練る。



「ではこちらから。『ファイアアロー』『ウォーターソード』『ウィンドブラスト』『アイスレイン』......ふふっ、全て20個です!」


「いいぜ?飛ばしてきな」



一見したらカラフルな魔法陣が80個浮いてるだけだが、賢いリルは魔法の生成タイミングをズラし、的確なタイミングで撃ってくるのだ。


この魔法陣の数、何も知らない人が前に立てば、2秒でこの世に絶望するだろうな。



一つ一つがバカみたいな威力を誇る魔法が80本。

それも完璧な操作で放たれるんだ。



それこそ、魔法が飛ぶルートが分からなければ、直ぐに諦めるだろうな。




「では」



リルはそう言って、全ての魔法を0.1秒感覚で飛ばしてきた。



あららら......1番有効な風属性を囮に使ったのか。



「すぅ......『魔拳』」



これは魔闘術のスキルレベルが90で開放される技だ。

ただ魔力を、1MPだけ拳に纏わせるのだが、これが大事なんだ。



「これ、違う。これ、これ、これ、違う」



魔法を一つ一つチェックし、自分に当たるルートの魔法だけを叩き落とした。


ただ殴るだけじゃ腕がやられるからな。ちゃんと受け流し、自分に当たらないようにするんだ。



「これとこれ、これ、違う。これ、後ろ」



氷の針が後ろから飛んできたが、全て『見て』いる。



「ほっ、ほい。ほいっ!違う。これ、それ、最後!」



そうして80発全ての魔法を捌き切ると、今度は更に魔法陣を増やして飛ばしてきた。


いいね。いつもはここで弓に切り替えてたけど、今回は魔法を続行か。



まぁ、弓って矢を掴めるから弱いんだけどな。

特に魔弓術の矢は魔拳で叩き落とし易い。


流石にリルも学習しているか。



「じゃあリル。勝負といこうか」


「勝負......?」


「あぁそうさ。いくぞ?『龍神魔法』」


「えっ!?『レジストエンハンス』『ディフェンスアップ』『ロックドーム』」



俺が龍神魔法の詠唱をしようとすると、急いで防御耐性を取り、ロックドームで完全に自身を覆った。



あ〜あ、引っかかった。これで王手だぞ?



俺はドームに急接近し、目の前で待った。



「解除......あ、あれ?魔法は?」


ドームが解除され、周りを見渡したリルが困惑していた。



そして俺は、後ろからリルの背中をタッチした。



「俺の勝ちだ」


「あ......あはは。負けちゃいました」



何とも簡単な手に引っかかってくれたもんだ。驚きだ。



「最後のは何があったので?」


「リルが勝手に自分の動きを制限したんだよ。考えてみろ?今の俺のMPは10、龍神魔法とかいう、最低5000MPは使う魔法が撃てると思うか?」


「あっ......確かにそうですね。という事は私......」


「あぁ。ちょっと足りなかったな。相手の手札が2枚で確定しているのに、幻の3枚目に踊らされたな」


「むぅぅ!!悔しいです!まさかそんな手で負けるなんて!」



ふくれっ面のリルの頬っぺを押し、空気をプシュ〜っと抜いて、頭を撫でた。



「ほれ、今日はもう帰るぞ。次はメルも巻き込んでやろうか」


「はい!メルちゃんにも鬼ごっこを教えてあげましょう!」


「これは大分特殊な鬼ごっこだけどな。......俺は命懸けだし」



今日は不死鳥化状態で帰れるし、ラッキーだ。

この鬼ごっこ、普段なら12時間は続けているからな。


死なずに帰れるのは嬉しい(5敗)


......俺はスライムを許さない。



「父様父様!今日はこれから何をして遊ぶのですか?」


「今日は勉強かな?テストに備えたい気持ちがある」


「そう......ですか......」



花の冠を付け直してまで露骨に落ち込まないでくれりゅ?

自制心が全力で俺を止めにかかってるんだからな?



「もう。ほら、肩車してやるから帰るぞ『戦神』」


「は〜い」



悲しいよな。戦神を使わないとリルを肩車する事すら出来ないステータスなんだぜ。

俺、本気で今からレベルを上げようか悩んでるぞ。




「「ただいま〜」」



庭にフーがいた。いつものように箒を持ってなかったし、何かあったのかな?



「あ!おかえりなさい。今お客様が来てますよ?」


「客?ランザとか王女か?」


「いえ、ピグレットさんです」



......マジか。まさかの家凸か。勇者だな、ピギー。



「分かった。ありがとう、フー」


「いえ!では私は戻ります。それと今はソルさんがリビングでお相手してますよ」


「了解じゃ〜」



玄関前でフーと別れ、リルを肩車したまんま家に入り、リビングの前まで来た。


そしてドアノブに手を乗せて俺は固まった。



「......なんか、入るのに緊張するぞ」


「では私が開けましょうか?」


「いや、いい。......いざ!!!」



意を決し、扉を開けた。



「た、ただいま〜」


「ただいまです!」


「「おかえり〜」」


「おかえりパパ。リルちゃん」



机の上でソルとピギーが勉強をしており、メルはソファーで寝転がって魔導書を読んでいた。



「えっと、これは何か言った方がいいか?」


「そうね。いつから私の事に気付いてたの?」



あ、そっち?もっと恐怖を感じる話題かと思ってたぞ。



「それは教室で顔を合わせた時だ。だから今日だな」


「え?」


「とりあえず俺も混ぜてくれ。今日は初めてリルに勝てたからな。あとの時間は勉強に使いたい」


「いいよ〜私の隣においで〜」


「はいよ」



リルを降ろし、ソルの隣に座った。




「ま、リアルが分かったからって特に何も変わらないさ。これからもよろしくな?ピギー」


「う、うん」


鬼ごっこの実態と、ピギーとの小話でしたね!

最初のピギーの言葉、普段の明るい感じから、少し警戒したような冷たい感じになってるのがこだわりです(^・ェ・^)


誤字報告、本当にありがとうございます!

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