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Your story 〜最弱最強のプレイヤー〜  作者: ゆずあめ
第7章 神界と夏休み
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体育祭前日の衝撃

9展開

 



 俺がPKに殺られてから2週間ほどが経ち、6月に入った。



 イベント『姫の白騎士』は終了し、王女から依頼を受けることが出来なくなった。



 そして様々なプレイヤーがディクトへ進む中、俺は依然としてレベル1の状態をキープしている。




「ねぇ月斗君。そろそろレベル上げなくていいの? ずっと農作業かリルちゃんと遊んでるけど、そろそろ戦わない?」


「ん〜? 体育祭終わるまでは上げないからいいんだ。あの低ステータスでリルと遊ぶ......死の鬼ごっこは、中々に特訓になるからな」



 そう、この2週間、ずっと農作業か鬼ごっこをしていた。


 フレイヤさんとヘルメスから貰った種を植えて水を撒き、雑草を刈る。

 そしてそれが終われば、リルと一緒にフィールドに出て、立体的な動きを加えた鬼ごっこをする。


 鉱山内でゴーレムを撒きながらの鬼ごっこや、森林で木を使った鬼ごっこ。

 さらにはニクス山での極寒鬼ごっこだ。



「あれ、何がどうなってるか分からないんだよねぇ」


「陽菜もやってみるか? 動体視力と反射神経、空間把握能力にVR空間での体の動かし方を学べるぞ」


「私はいっかなぁ。2人が楽しそうにしてるのを、メルちゃんと眺めるのでいいや」


「そうか」



 最近はメルのメスガキ度合いがかなり落ち着き、リルとも仲良く遊んでいる時が多くなった。



「体育祭......俺はVRアスレに命を懸けて挑むんだ......!」


「急に何を......って思ったけど、このクラスじゃ私と月斗君だけだもんね。頑張らないと!」


「そっすよ陽菜さん。それに体育祭の後はテストもあるし、ちゃんと勉強しないといけないぞ?」



 赤点取ったら夏休みに遊べないからな。

 補習に再テストに返却に......とにかく日にちがかかるものだ。



「大丈夫! 最近はユアスト内で勉強してるから!」


「えぇ? そんなこと出来たっけ?」


「出来るよ。まずスマホで問題集と答えの写真を撮るでしょ?」


「うん」


「それをヘッドセットとスマホを同期させて読み込ませるでしょ?」


「うん」


「それからその写真を見て問題の答えをゲーム内の紙に書いて、それから答え合わせするの」


「......うん?」



 読み込んで問題を見る所までは理解出来た。でも紙?

 ユアストに紙なんて売ってたか?



「紙ってあったか?」


「あるよ。サラサラモフモフのがね」


「確かにな。あれにはいつも癒されて......じゃない! ペーパーの方だ!」


「ノリツッコミする所は関西人の血が出てるねぇ?......で、紙だけど、これは私が作ったの!」


「陽菜が? どうやって?」


「お野菜のゴミから裁縫スキルで作れるよ」



 オヤサイノ......ゴミ?



「再生紙的な?」


「そうそう! 神匠になれば出来るようになったの。お陰でレベルがグングン上がるよ!」


「ほぇ〜......俺、裁縫と料理は神匠じゃないからなぁ」


「ね! でも、手伝ってくれてるから経験値は入ってるんでしょ?」


「一応な。でも前よりレベルが上がりにくく感じる」



 なんでだろうな。向上心も持って、『最弱無敗』も指輪達も付けてるのに。



「あれじゃない? DEXが低いからじゃない?」


「あっ......その発送は無かった」


「何処に送るの?」


「陽菜の心」


「きゃ〜! 嬉しい〜!」


「何言うとんねん」



 でも、DEXが低いのは考えもしなかったな。

 目からウロコというか、目からウロボロスというか。



「そういえば今までに振ったSPも消されてるんだよね?」


「そうだな。400くらいだっけか? 全部貫通して消されたな」


「それってさ、SPをちゃんと振る人ほど不利にならない?」


「......なるな。これ、炎上案件では?」


「かもね〜。温存する人かしない人かで、ステータスに生まれる差がどんどん開くからね。ちなみに今どれくらい余ってるの?」


「1540だな。特化させたら1万5000いくぞ」


「......え? ちょっと何言ってるか分からない」



 ん? 何かおかしかっただろうか。



「いま、1540って言った?」


「あぁ。せんごひゃくよんじゅうって言った」


「......なんでそんなにあるの?」


「そりゃあ使わなければ貯まるだろう。ソシャゲの石と一緒だよ。使わなければ、地道に集まるんだよ」



 ソシャゲのガチャは計画的に。



「そ、それっていつから貯めてたの?」


「いつだろ?......記憶にあるのは最初のフェンリル戦かな」


「えぇ!? そんなに前から!?」


「し〜っ、静かに」


「あ、うん」



 いきなり大声を出すもんだから、クラスメイトからの視線が飛んできている。



「って事はメルちゃんとの戦いの時も......?」


「あぁ。SPは振ってないな」


「なんで振らずにあんなに火力が......」


「装備とスキルと称号任せだ。正直言って、称号の効果がバカでかいんだ。あれだけで素の10倍以上ダメージ出てるからな」


「......そんなにダメージアップの称号あったっけ?」


「ある。それにステータスの上がる称号もあるから、それでだな。だから俺は最弱と言ってたんだよ......今は文字通りの最弱だが」



 どうも〜! ユアスト始めたての人よりステータスの低い、正真正銘の最弱で〜す!



「とりあえず、体育祭まではレベル上げはしないから、活動するのは体育祭が終わってからだな」


「どれだけ体育祭に力を入れてるの?」


「そりゃあ、陽菜と同じ種目に出るんだぞ? 全力でやるために鍛えるに決まってんだろ」


「えへ、えへへ〜そっか〜。なら私も鍛えようかな」


「あぁ。2人で優勝をもぎ取ればいい。......赤組と白組で分かれなければな」


「ちょ、ちょっと! フラグ建てるのやめてよ!」



 う〜ん......これはやらかした?






 そして1週間後の体育祭前日──






「ほい、運命の組み分けだ。名前の裏に書いてあるから、名前を表にして後ろに回せ〜」



 そうして回ってきた紙を見ると......?



「あ......あぁ......あの時、月斗君がフラグ建てるからぁ......」


「すまんな。マジで分かれるとは思ってなかった」



 俺は白組で、陽菜は赤組だった。

 悲しい事に、それぞれの名前に近い色になってしまった。



「月斗ぉ! 俺も白組だぞぉ!」


「そうか」



 遠くから正樹の声が聞こえた。ってか正樹以外の声も聞こえる。



「私白組だった〜!」

「私赤組〜!」

「あ、僕赤組だ」

「ウチも赤〜!」



 すると陽菜の前の席の子が、陽菜に話しかけていた。



「ねぇねぇ陽菜ちゃん。陽菜ちゃんは何組?」


「ん〜? 私は赤組だよ〜」


「そうなの!? 私も赤なの! 一緒に頑張ろうね!」


「うん! 頑張ろうね! 雫ちゃん!」



 おかしいな、俺の記憶じゃ陽菜が俺か正樹以外の話してるの、見たことないぞ。



「俺......クラスメイト正樹以外知らない」


「え? 嘘でしょ?」


「どうしたの〜?」



 俺が独り言を呟くと、陽菜と雫と呼ばれていた子が聞いてきた。



「いや、俺友達少ないなぁ〜って」


「月見里君って友達少ないの?」


「あ、うん。そうなんだ」



 ヤバい、人が怖くて目を合わせて会話できない。



「こ〜ら。月斗君、顔を見て話しなさい」



 陽菜が俺の顔を持ち上げてきた。



「うぅ......ん?」


「どうしたの? 髪に何か付いてた?」


「いや、何でもない。えっと、月見里月斗です」


「うんうん。私は早川雫だよ! よろしくね!」


「あ、うん。よろしく」



 この人の顔、既視感がある気がする。どっかで会った事がある?

 ......いや、思い出せんな。

 思い出せないという事は、どうでもいい事だったんだろうか。



「お前ら〜席に戻れ〜。明日の当日はこの組み分けで行くから、間違えんなよ〜」



「「「「「はい!」」」」」



「はい、以上だ。今日はホームルーム無しだ。明日の為に体調整えろよ? じゃあ、解散!」



 おぉマジか。直ぐに帰れるパティーンか。



「じゃあ帰るか。今日も鬼ごっこするかね」


「また〜? 飽きないね〜?」


「なになに〜? 何の話?」



 早川さんが話に入ってきた。コミュ力高いなぁ、この人。



「ゲームの話だよ」


「そうそう。月斗君が鬼ごっこばっかりやってるの」


「鬼ごっこ? なんのゲームやってるの? 私も知りたい!」



 ピピピ!

 ここで俺の第六感が『ゲーム名を言うな』と全力で警報音を出している!


 こういう時の直感には信じよう。



「そこら辺のゲームだよ」


「ユアストだよ。知ってる?」


「あ〜知ってる! 私もやってるもん!」



 ひ、ひひひ陽菜さん!?......いや、俺の直感が外れた事を祈ろう。



「へ〜そうなんだ! 名前は?」


「『ピグレット』って名前でやってるよ!」


「「え?」」



 クソがァ! 直感め! こんな時に働きやがってぇ!!



「は、はははは早川さん、子豚が好きなの?」


「うん! 昔にテレビで見て、そっから大好きなんだ!」



 いや待てよ。たまたまピグレットと言う名前なだけであって、俺の知っている『Piggy』では無い可能性がある。


 寧ろ、その可能性しかない。



「ソ、ソウナノカー」


「陽菜ちゃん達はどんな名前でやってるの?」


「わ、私は......言えない、かなぁ」


「え〜どうして? あ、ネタネームにしちゃったとか?」


「う、うん。そんな感じ......」



 上手く切り抜けんなよ。俺に降り掛かる謎のプレッシャーが凄いんだぞ!



「じゃあ月見里君は?」


「え、俺? 俺は『アルティメットスーパーヒーロー』って名前でやってる」


「「ぶほっ!!」」



 全国のアルティメットスーパーヒーローさん、ごめんなさい。名前を借ります。



「いやな、人助けをするのが好きで、よく街中で犯罪者と鬼ごっこをしているんだ」



 この完璧な話題の繋ぎ方、誇れそう。



「な、何それぇ! すっごく面白いじゃん! 通り名とかあるの?」


「え? それは知らないな。俺、他の人と話したりしないし、周りからの呼ばれ方とか1つしか知らない」



 待って。やらかした! 今のなし!



「1つだけ? どんなの?」


「い......言えない。凄く心にくる名前だから、言いたくないんだ」


「あ、そっか......ロールプレイしてたら、それを嫌う人もいるもんね......ごめん」


「いや、いいんだ。気にしないでくれ」



 すまん、ピギー(仮)さん。俺は君を騙した事を反省している。



「月斗君、そろそろ帰ろ? 鬼ごっこするんでしょ?」


「そうだったな」


「じゃあまた明日、雫ちゃん!」


「うん! 陽菜ちゃん! 月見里君! 頑張ろうね!」



 そうして俺と陽菜は帰ることにした。


 だけど、ここで少しカマをかけてみよう。



「じゃあな、ピギー」


「ッ!?」



 当たっていたようだ。ちくせう。

 それから何事も無く教室を出て廊下を歩く。



「ねぇ、雫ちゃんって......」


「あぁ。まさかの同い年な上、同じ学校の同じクラスだったな」


「そんな事ある?」


「知らん。でも最後の反応的に、あいつはピギーだ」



 どこかで見た事ある顔って、ピギーなら当たり前の事だ。



「って事は月斗君、結構長い付き合いなんじゃ?」


「3年か4年か? それなりに?」


「むむむ! これは月斗君が取られないようにしないと!」


「何言ってんだか。取られるも何も、もう取ってるじゃん」



 俺の右手が掴まれてるのがその証拠だな。



「でも心配になるのが女の子なんだよ?」


「そうなのか。俺は陽菜を信じてるから、心配にはならんけどな」


「本当に? 私が他の男子といたらどう思う?」


「その男子を殴り殺したくは思う」


「おぉ......過激......ふへへ」


「照れんな」



 ユアストでピギーから何か連絡来るかな?

 少しだけ楽しみだ。






「ほら、帰るぞ。今日も今日とて、明日の為の鬼ごっこだ」


「うん!」

マジかよピギー.....あなたそんなに近くに.....


あ、早川さんは至って普通の明るい女の子ですよ。

特にこれといった事は.....コミュ力くらいですかね?

この出会いがどう響くのか、楽しみですね〜


では次回『鬼ごっこ』お楽しみに!

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