神なる龍は、龍を嫌う。
「俺にテイムされないか?」
この子にはちょ〜っと良い思いをして欲しいと思ったからな。
過去の俺と同じように、ひねくれようが、悪意を向けられようが、真っ直ぐに生きて欲しい。そう思った。
『......断る。殺してくれ』
「嫌だね。『テイム』」
『......辞めろ』
「無理ぽ。『テイム』」
『辞めろ!!!』
「ノンノン。『テイム』」
『だから断るの言っているだろう!!!』
なんかアレだな。〇回話しかけないと進まないイベント、みたいになってるな。
「ほら、今なら3食おやつに昼寝付き。さらに個室も仕事も自由だぞ?『テイム』」
『いらん!!』
頑固な奴だ。
強さで負けたなら、テイムの一つや二つに三つくらい良いだろう?
「ほらほら〜『テイム』〜だぞ〜っ! みんっなだ〜い好〜き『テイム』だぞ〜」
『もう辞めてくれ......殺してくれ。頼む』
「嫌だ。テイム後の戦闘訓練で死ぬまでってんなら別に良いけど、テイム前に殺したらお前、死ぬじゃん」
『あぁ、そうだ。だから殺してくれと言っている』
超☆めんどくさい
「おい、折角の人間と同じような見た目になって、人間と一緒に暮らして、人間の暖かさに触れられるチャンスを棒に振るのか?」
『......は?』
「だ! か! ら! ここでテイムされてくれたら、お前が好きなことが出来るんだって。お前は好きな事が出来るし、俺からしたら今後の人手と戦力が増えて、ウィン・ウィンだろ?」
神龍、もしかしてテイムを知らないのでは?
......いや、最初に出会った時にテイムについて話した気がする......あれ? リルの時だっけ?
まぁいいや。
「はぁ......とりあえずテイムされてくんない? 後から逃げる事も出来るんだしさ、その時に殺してやるから」
そう、テイムモンスターはテイム主から逃げる事が出来る。
少し前、ソファでゴロゴロしていたら、ソルから掲示板で『テイムモンスターに嫌われたんだが』ってスレッドの話を聞いた。
「ほら......こっちに来い」
ぐったりとしている神龍が、首をこちらへ伸ばした。
「お前がこれからどうするかは自由だ。俺のテイムを断り、次の挑戦者に殺される未来を望むも良い。だがな、俺のテイムを受け入れれば、その1万倍は楽しい未来にしてやろう。約束する」
『......本当、か?』
「あぁ。全てお前次第だ。『テイム』」
これで断られたらどうしよ。もうこれ以上良い言葉が思いつかないから諦めるしかないんだよな。
ぎぶみー語彙力。ぎぶみーコミュ力。
『私は......私は! テイムを受け入れる!』
来たァァ!!!
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『神龍:ノビリスドラゴン』をテイムしました。
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勝った...計画どおr「ねぇ」......ん?
テイム完了のウィンドウを見ていたら、誰かに話しかけられた。
「あ〜ね。うん、分かるよ。君、神龍っしょ?」
「そうだけど......」
俺の目の前に、黒いゴスロリに身を包んだ、銀髪に金色の眼をした少女が立っていた。
身長はリルと同じか、ほんの少し小さいくらいか?
何なの? テイムされたモンスターって皆幼女になりたがるの?
この世界、終わってんな。
そう思っていると、審判の人が闘技場に入ってきて、手を挙げた。
『勝者、語り人『ルナ』!!!』
『おおおぉぉぉぉぉ!!!!!!!!』
何故か満席になっている観戦席から、怒涛の雄叫びが聞こえた。
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プレイヤー『ルナ』(ソル)によって、
『神龍:ノビリスドラゴン』が倒されました。
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あ、ワールドアナウンス来た。
「えぇっと......とりあえず行くか。着いて来い」
「う、うん!」
ゴスロリ神龍の手を引いて闘技場を出た。
「やぁ、ルナ君! おめでとう!」
通路を歩き、控え室を通り過ぎてエントランスまで来ると、色々な神がスタンバっていた。
「オケアノスか。あの観客の数はなんだ?」
「ヘルメスが神界全てに伝達したらね、いっぱい来ちゃった!」
「正直僕、ルナの知名度に驚いたぞ」
会話にヘルメスも参戦してきた。
「知名度に関しては全く知らないな。どれくらい有名なんだ? 俺って」
「う〜ん......どれくらいだろ?」
オケアノスが唸っていると、真っ白な人がでてきた。ルーナさんだ。
「ふっふっふ! お姉ちゃんが答えてあげよう!」
「あ、いいです」
「ルナ君の知名度はねぇ、神界にいる神の9割は知ってるはずだよ」
強引に答えやがった。この傲慢さは『姉らしい』のかな? 知らんけど。
「そうなんですね。教えて下さり、ありがとうございます」
「えぇ......? 凄まじい距離を感じる......」
「そういえばソルちゃんは? 語り人なんだから、どこかで復活してるんでしょ?」
オケアノスがソルについて聞いてきた。
「え?......あ、チャット来てた。どうやらお稲荷さんの所で復活したらしい」
「うわぁ、遠いねぇ」
「今こっちに飛んで来てるらしいし、どこかで待つか」
「なら良い喫茶店があるし、そこで待とうよ! 10人くらいなら余裕なはずだし、行こ行こ!」
オケアノスはそう言うと、直ぐに他の神の所へ伝えに行った。
「ねぇ、あの......」
「どうした?」
ゴスロリドラゴンに話しかけられた。
「わたしにあたらしいなまえをつけて?」
「......まぁ、だろうな。でも俺一人で決めていいものか「いいの!」......どうしてだ?」
ソルと一緒に考えちゃダメなのかな?
「わたしにかったのはあなただもの。わたしにまけたやつのなまえはいや!」
なんだコイツ。多段ヒットの即死攻撃を連発したり、一撃貰えばほぼ確定で死ぬブレスを吐いてきやがった癖に、自分より弱いやつだと?
「......はぁ。お前、後でソルに怒られるぞ」
「いいもん。それよりなまえ!」
「はいはい。ちょっと待て、考えるから」
このゴスロリメスガキドラゴンめ......ソルの怖さをたっぷりと味わうといい。
とりあえず今は名前を考えるか。
う〜ん、俺たちに共通した文字である、『ル』を入れるかどうか......悩むなぁ。
ルーシー? いや、なんかビシッとこない。
メルシー? 違う、ありがとうでもない。
メル? メルは良いのでは? ロリ感があってイメージ通りだ......よし、1つ目の候補だ。
次は『ル』が無いバージョンで考えよう。
フランとか?......う〜ん、違うな。もっと歯切れのいい音がいい。
レイナ? レイナも良さそうだ。黒いゴスロリに合う、暗く、冷たい雰囲気の名前だ。でも同じ名前の人がもう既に居るんだよなぁ。
まぁ、その人から頂いて、常に冷静でいるように、っていう願いを込めるなら、圧倒的に『レイナ』だな。
「ちょっと失礼」
俺はしゃがみ、ゴスロリメスガキドラゴンの顔をじっと見つめた。
「な、なに......? ねぇ、ねぇってば!」
この子、似てるなぁ、俺に。
何でリルやこの子は俺と同じ髪色かつ、俺と同じ目の色なんだ?
このゲームの謎だな、これは。
「よし、決めた。お前は『メル』だ」
メルには色々な意味がある。
ラテン語でメルは『蜂蜜』を意味する。これはゴスロリメスガキドラゴンの可愛さを表現出来ているだろう。多分。
そしてフランス語で『海』という意味もある。
海のように広い心を持って欲しいという願いを込めた。
例え誰かに嫌われようと、それを受け入れる広い心を。
万人に好かれなくていい、一部の人間に好かれる子になって欲しいと。そういう願いを込めて。
「わかった。きょうからわたしは『メル』だね!」
「あぁ。よろしくな」
「うん! パパ!」
「うん、違うね」
残念ながら君のパパはエレボス君だ。
「違わないもん。だって、あのしんりゅうは死んだから......」
「ちょっと何言ってるか分かんないね。神龍は君だし、君は生きてるね」
「ううん。だってパパは受けたでしょ? 龍神魔法の神髄、『終焉』を。アレをたえられたら、『神龍』として死んだのといっしょだもん」
えぇ......? いきなり何言い出してんの? メルさん。
あの魔法、神龍の全てが掛かった魔法なの? 諸刃の剣じゃん。
「だから、いまのいのちはパパがつくってくれたもの。いいでしょ? パパってよんでも」
「じゃあエレボスはどうなるんだ?」
「しらない! こどもを操るようなやつなんて、しらない!」
なんか......幼くなったなぁ。知能指数落ちてない?
「俺としては、呼び名は別に何でも良いけどさぁ......俺をパパと呼ぶなら、ソルはママって呼ばないとダメかもしれんぞ?......かもじゃないわ、確実に」
「いや! ママはいない!」
「え?」
どうしよう、手を付けられないぞ、メル。
「ルナ君! 行くよ〜!」
あぁ、タイミングが悪い事に、もう移動するようだ。
「ま、後で考えるか。行くぞ、メル」
「うん!」
そう言ってメルは手を繋いできた。
「......リル......お姉ちゃんとして、頑張れよ......」
「どうしたの?」
「何でもない。アイツらに着いてくぞ」
そして喫茶店に入り、オケアノス達にメルの紹介をしたりして時間を潰した。
「ん、ソルの反応だ」
サーチを常に展開するようにしたので、ソルの反応をキャッチした。
「こんにちは〜......って、えぇぇぇ!!!」
「ソル、こっちゃ来い来い」
俺は手を招き、ソルは近寄ってきた。
「リ、リルちゃんがイメチェンしてる〜!!!」
え?
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名前:メル
性別:メス
レベル:300(未覚醒)
種族:神龍人族
テイム主:ルナ
HP:30,000
MP:25,000
STR:15,000
INT:7,500
VIT:20,000
DEX:130
AGI:3,000
LUC:5
CRT:80
『取得スキル』
魔法
『獄炎魔法』Lv10
『海魔法』Lv15
『暴風魔法』Lv10
『大地魔法』Lv5
『電磁魔法』Lv5
『極氷魔法』Lv5
『暗黒魔法』Lv50
『龍神魔法』Lv100
『音魔法』Lv30
その他
『龍核覚醒』Lv0
『超速再生』Lv0
『魔食み』Lv1
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これにて神龍編は完結です。
まだリザルトやソルとリルへの説明、さらには下界への帰還など、やる事はまだありますが、一旦神龍編は終わりです。
ここまでかなり長かったですが、楽しんで頂けましたでしょうか?
.....楽しんでくれていたら、とても嬉しいです。
一応次回からは『夏休み編』として動きます。
夏い暑をお楽しみください!では!