神龍戦 中編
『では行くぞ。『龍神魔法:終焉開始』』
「何それカッコイイ！！！」
神龍の魔法により、夜が来たのかと錯覚するくらい辺りが暗くなったが、名前のカッコ良さの方が前に出ちゃった。
『そうだろう？ 私のお気に入りの魔法だ』
「うんうん、それも分かるよ。『フラカン』『サーキュレーション』......それに、花火と言えば夜だよなぁ？」
両手に──が大量に入った袋を持ち、魔法で浮かせて、神龍に振り撒いた。
『またそれか......これは何なのだ？『龍神魔法:テンペスト』』
神龍の周りに巨大な竜巻が発生し、袋の中の粉を神龍から剥がそうとした。
「無理無理、そんなんじゃ取れんよ。俺がくっ付けてるんだし。まぁその中身は......俺達が勝ったら教えてやるよ」
『む！ それは狡いなぁ。『龍神魔法:グレイシア』』
「狡くないも〜ん。アルテ『魔弓術:炎槍』『戦神』......ぶべっ！」
空を飛んで魔法を避け、粉に着火させようとしたら、謎の壁に激突した。
そして激突した瞬間に、クロノスクラビスを喰らった時と同じデバフが掛かり、一切体が動かせなくなった。
『さらばだ、ルナ。ここでお前には散ってもらおう』
「ははっ......『戦神』......んぎゃっ」
おいおい。お前と戦ってるの、俺だけじゃないんだぞ？
この戦いにはよ頼れる相棒が2人もいるんだぜ？
『『龍神魔法:めっ......なんだこれは！？』
「ふぅ！ 危ないところだったね、ルナ君？」
「信じてたよ。『魔刀術:雷纏』『魔纏』」
流石にソルも間に合わないと判断したのか、俺は床ペロしちゃった。だけどいいんだ。あの魔法をキャンセルしてくれただけで十分だ。
「リル、全力で飛ばせよ？......『斬』『雷』」
「勿論です！『サンダー』」
バリバリバリバリ！！！ ジュン！ バァァァン！！！
雷の轟音が響いたかと思えば、何かが溶けるような音がして、最後には大爆発した。
『ぎゃぁぁぁぁ！！！』
神龍が大きく後ろにぶっ飛んだ。
ってかやばい、アレを振り撒いたの忘れてた。俺の耳もぶっ壊れたし、結構不味い状況だ。
ステラで回復させるか？いや、そんな暇はない。
回復するくらいなら追撃を入れるべきだ。
だが2人との連携が取れない状況で、勝手に動いていいものか？
......違う、2人を信じて俺が動こう。
「......『戦神』『イグニスアロー』『アウ......」
『ッ！ 不味い！『ロストボイス』』
何かの魔法が使われたのか、アウラの詠唱が出来なくなった。
あぁもう！ ステラで回復するべきか？......いや、やれるはずだ。
リルとの戦いでもやった、『擬似無詠唱戦法』を！
俺は左手の布都御魂剣を納刀し、行動詠唱のウィンドウを出した。
━━━━━━━━━━━━━━━
行動詠唱に『イグニスアロー』を設定しますか？
行動詠唱に『アウラ』を設定しますか？
行動詠唱に『アクアスフィア』を設定しますか？
行動詠唱に『イグニスアロー』を設定しますか？
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
━━━━━━━━━━━━━━━
鍛えに鍛えまくったインベントリ操作技術で、行動詠唱を一瞬で切り替え、その動作を行うことで、実質無詠唱でいつもの魔法コンボを繰り出した。
『な、何故魔法が！？』
一瞬、神龍が怯んだのが見えた......が、耳が聞こえないので真偽は不明だ。
そしてイグニスアローとアウラのコンボを10回ほど繰り返していると、ソルから回復魔法が飛んできて聴力が戻った。
だが、まだ声は封じられている。なら念話一択だ。
『リル、聞こえるか？』
『はい！ それより父様、どうやって魔法を？』
『左手に注目。それと今から神龍の足を斬る。だから──』
『分かってます。シリカさんに仕込まれた闘術でぶっ飛ばせばいいんですね！』
『あぁ。頼む』
ぶっ飛ばすだなんて......リルちゃん変わったね。お兄さん、驚いたよ。
そしてクトネシリカを構え、気付いた。声が聞こえないと、付喪神ズとの連携も取れないではないか。
これでは愛用の魔刀術も魔纏も、斬すら使えない。
文字通り力尽く......か。やるしかない！神龍が怯んでいる今のうちだ。
魔法を使うのを辞め、抜刀の構えを取った。
『させん！『龍神魔法......またこれか！！』
ん？神龍の動きが止まった？......クロノスクラビスか？
チラッと後ろを見ると、ソルが箒を構えていた。
そうだった。メテオラスに仕込んでいる魔法は威力は固定だが無詠唱で使えるんだ。忘れてた。
あ〜あ、俺もポンコツの仲間入りだなぁ。フー、仲良くしてくれよ？
「............」
呼吸を整え、一気に神龍に近づき、一太刀で斬った。
『ぐっ......『ウィンドブフゥ！！』
神龍が魔法を使おうとした瞬間、リルが神龍の顔面を思いっ切り蹴り飛ばした。
『父様、お次は？』
『回復だ。流石にソルの助けが欲しい。ただ、出来ないかもしれない』
『分かりました』
口に出さず、思いだけで癒しの光が使えるか......賭けだな。
(ステラ、顕現。それと『癒しの光』を！)
心の中でステラを呼び、左手に顕現させた。そしてステラは輝き、癒しの光が発動した。
「おかえりマイボイス。ただいまマイボイス」
デバフを解除したのでステラを仕舞い、改めて魔刀術を使おう。
『......くぅ、流石はフェンリルだ。それによく鍛えられている』
リルを褒めてくれてありがとう。俺も嬉しいよ。
「『魔刀術:雷纏』『戦じ「ルナ君待って！」......」
クトネシリカに魔刀術を使うと、ソルから待つように言われたのでそのまま待つ。
『ふっ！ 仲間に止めらガァァァァ！！！！』
じっと神龍を見つめていると、神龍に何十本もの矢が『一気に』刺さった。それも全て首に。
なんだ？ どうやってあの数を射った？ 分からない。
「今だよ！」
「『戦神』『アクアスフィア』......『斬』『雷』」
━━━━━━━━━━━━━━━
『最弱無敗』が発動しました。
『死を恐れぬ物』が発動しました。
━━━━━━━━━━━━━━━
バチィィ！！！！
『ガッ............』
神龍の首が落ちた。これで2度目だ。王手だな。
さぁ、次の準備を──「父様！ 離れてください！！！！」
リルがそう叫ばながら俺に近付き、思いっ切り俺を後ろへぶん投げた。
「えっちょ待っ」
『......『龍神魔法:終焉終了』』
神龍から何かが聞こえたと思ったら、最初に使っていた魔法の効果が及ぶ範囲全てが、真っ黒に塗りつぶされた。
━━━━━━━━━━━━━━━
『守護者の加護』が発動しました。
『最弱無敗』が発動しました。
『死を恐れぬ者』が発動しました。
━━━━━━━━━━━━━━━
んなっ！？ 即死攻撃か！！ 2人が不味い！
━━━━━━━━━━━━━━━
『守護者の加護』が発動しました。
『守護者の加護』が発動しました。
『守護者の加護』が発動しました。
『守護者の加護』が発動しました。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
━━━━━━━━━━━━━━━
まさかの多段ヒットの即死攻撃だった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
同パーティメンバー『ソル』が死亡しました。
テイムモンスター『リル』が死亡しました。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
あぁ......2人が............ちくしょう。
-----------------------------------------------
神龍side
『ふぅ......まさかこれを使う羽目になるとは。やはりルナとその仲間は強いな』
まさか私の首が2回も落とされるとは思ってなかった。
やはり龍魔法を最初に会得した人間というのは、強かった。
だが、これで奴も散った。
『龍神魔法:終焉』......一歩間違えれば、世界すらも滅ぶ魔法。
私が『神龍』と呼ばれる所以になった魔法だ。
全てを滅ぼし、無に帰す力。強くもあり、恐ろしくもある。
いくら不死身と感じるルナでも、これを前にすれば流石に散るという、絶対の自信がある。
これは神龍として、命を賭けてでも言えることだ。
にしても、父上によって操られていた時も思ったが、ルナだけは何か、別格に強く感じる。
何故だ？......人間で唯一、フェンリルを連れているからか？
違うな。
この私を前にして、一切の怯み無く立ち向かうならか？
これも違うな。
何だ？ 何があそこまで強く見える？ 全く分からない。
私が見てきた、数々の戦神よりも恐ろしく感じるぞ、ルナは。
『まぁ、勝利は勝利だ。さて、この時間をどうし「なに勝った気でいるんだ？」......ッ！』
スパン！！
『ぐっ！！』
斬られた......私の足が。
いや違う、どうやって斬った？
違う。何故生きている？何故滅んでいない？何故消えていない？
分からない。神ですら死ぬ魔法で......何故生きている？
『お前は......化け物か？』
始まったら終わる魔法でした。
それでは神龍戦ラストをお楽しに。
では！
