神なる龍は、龍を嫌う 13
最後の休息とも言える回です。神龍はもう、すぐそこに.....
ガチャ、と音を立てて扉が開けられた。
「お、いるな。ルナよ、こっちに来い」
下準備が終わり、皆と雑談していたらヘルメス達が帰ってきた。
「了解。じゃあちょっと待ってて」
「うん! 行ってらっしゃい」
ソルに一声かけてからヘルメスの元へ来た。
「着いて来い」
そう言われて着いて行くと、城の外まで来た。
「これ、どこに向かってるんだ? マグノリアから出るのか?」
「出ない。黙って来い。お前にとって得になる事だ」
「はぁ......」
嫌な予感はしないけど、伝令神がちゃんと伝達しない事に違和感がある。
お仕事......辞めちゃったの? 大丈夫? イグニスアロー飲む?
「お前、僕には心の声が聞こえてるんだぞ?」
「え?」
「お前があの狐少女の事がどれだけ好きとか、将来は一緒に暮らしたいとか、あんな料理が食べ「辞めろ!」......たいとかな!!!」
こ、こいつ! 強引に喋っただとッ!?
「故に、だ。お前が僕に炎の矢を飲ませるイメージをしている事も分かるぞ」
「すんまへん」
「まぁいい......ほれ、目的地だ」
ヘルメスと話しながら歩いていると、フレイヤさんのいる農園に来た。
「あ、ルナさん! いらっしゃいませ」
「フレイヤさん? ん? どゆこと?」
なんでここに連れてこられたんだ?
「僕とフレイヤから、ルナにプレゼントだ」
「はい? プレゼント?」
「あぁ。お前、フレイヤの料理を見た時に『米や味噌が欲しい』と思っただろ?」
「そりゃ思ったけど......まさか」
「あぁ。お前のために、僕とフレイヤで米と大豆、後は適当な野菜の種を見繕っといた。持ってけ」
「是非、下界で育ててください!」
そう言われてフレイヤさんから種を受け取った。
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『神米の種籾』を受け取りました。
『力の大豆』を受け取りました。
『マナキャベツの種』を受け取りました。
『不可視芋』を受け取りました。
『星光トマトの種』を受け取りました。
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マジで? マジでいいの? 俺、剣士から農家になっちゃうよ?
「ありがとう......ありがとうございます!!」
「ふんっ......お前には一応、期待している。これからも励むといい」
「お友達の方にも、食べさせてあげてください!」
2人には感謝しかない。それとヘルメスよ、男のツンデレはいらないぞ。
「ありがとう」
改めて、感謝をね。
「じゃあ戻るぞ。お前達、もう行くんだろ?」
「あぁ。神龍にカチコミカチコミ申す」
「え、もうですか? 私、もっとお話したいことが......」
「次の機会にしろ、フレイヤ。どうせブリーシンガメンの事だろう?」
「それもありますが、グラジオラスの事など......」
うわぁ......めっちゃ気になる! 正直、急いでいるわけじゃないからゆっくりしてもいいんだが......もう予定を立てちゃったからな。
「大丈夫です、フレイヤさん。また来ますから」
「本当ですか!? では、その時を楽しみにしていますね!」
「はい。ブリーシンガメンも凄く役に立ってますし、色々と話したいですよ」
それから3人で話しながらリビングに戻った。
話してる最中に神龍戦の事を話したら、ヘルメスは来るようだ。
フレイヤさんはお仕事の為、来れないらしい。
「ただいま〜」
「おっかえり〜!! もう行く?」
「あぁ。早めに行かないと、ここでずっと雑談してそうだからな」
「私もそう思います。皆さんのお話を聞いていると、あっという間に時間が過ぎます」
神トーク、結構面白いの多いから時間が溶けるんだよな。
オケアノスの『ウミヘビに噛まれたから噛み返した話』とか、アグニの『まだ熱いフライパンを触って火傷したら、つい炎を出しちゃって食材ごとフライパンを溶かした話』とかな。
こういう、くだらねぇ話がでぇ好きなんだ。
「そういえばルナさん。帰りにアルテミスさんの所に行きますか? きっと、ルナさんの付喪神になる為の準備をしていると思うのですが......」
フーがアルテミスについて聞いてきた。
「行かない。付喪神になるのって、結構な覚悟がいるんだろ? なら、それを邪魔したくないしな」
フーが前に権能に関しての話を聞いて、付喪神になるのは結構な覚悟がいることを知ったからな。
俺達で例えるなら、学生辞めて起業するくらいの覚悟じゃないかな? 知らんけど。
「ふふっ、やっぱり優しいですね。そういう所が好かれんじゃないですか?」
「そうか? 俺は基本、嫌われてきた人間だからな。ソルくらいだろ? 好きでいてくれたのは」
「うん!」
見ろ! この可愛い生き物を!! 尻尾が扇風機の如く回転しているぞ!!!
「全くお前は......さっさと行け! 僕達と話していなくても、その少女と居れば無限に話しているだろ!」
まぁね。へへっ
「じゃあ行くか。心の準備......の前に、神龍ってどこにいるんだ?」
「「「「「「「「え?」」」」」」」」
『神界に来たら分かる』って声だけママンが言ってたけど、分かんなかったんだよな。
「ルナ君......嘘でしょ?」
「父様......」
「凄いねルナ君。あれだけ準備していて、居場所を知らないなんてね!」
「思い切りが良すぎたな」
「お姉ちゃんはそんな子に育てた覚えはありません!」
「お茶目だね〜」
「......呆れたぞ」
「ふふふっ、面白いお方ですね! オケアノス、案内してあげてください」
「オッケー!」
ええやん別に。特にリル、お前は俺と一緒に居たんだから、神龍の居場所が分からないのを知ってるだろ?
お兄さん、8人からの総攻撃を受けて、危うく轟沈するところだったぞ?
そうして全員で城を出た。
それに見送りにはピンセルさんも来てくれた。
「じゃあ行ってくるね〜!」
『『「「「行ってきます!」」」』』
「行ってらっしゃいませ。ご武運を」
「お気をつけて行ってらっしゃいませ」
4人でマグノリアを出て、オケアノスに着いて行った。
俺はリルを抱っこして天使の翼で飛び、ソルは箒に乗って飛んでいる。そしてオケアノスは、雲海から水の竜を出して、それに乗って移動している。
「あれ? リルちゃんは箒に乗らないの?」
「はい、母様。父様が抱っこしてくれるので」
「んなっ! 狡い、狡いよリルちゃん! ズルちゃんだよ!」
「いいえ。何もずるくありません。これは立派な作戦なのです」
「ってかさ、箒って使えたっけ? フラカンが使え無いから飛べないと思うんだけど」
サーチとフラカンが使えないのは確認済みだ。
「あ〜それなら2人とも使えるよ? ルナ君は因子を貰ってるし、ソルちゃんとリルちゃんは神に触れたよね? なら、魔法は好きなだけ使えるよ」
オケアノスから声が掛かった。
「神界は文字通り、神の世界だからね。神に触れられる......つまりは『神に認めてもらう』事で、人間が掛かる制限が無くなるんだよ」
「それって『神匠』スキルはダメなのか?」
あれも神に認めてもらうとか、そんな感じだったろ?
「ダメだね。あれは神界から下界への一方通行の認識だよ。それに対して神に触れられる、っていうのは『神界から神界』へのパスなのさ」
「なるほど。何となく分かった」
神匠は上から下への認識で、神タッチは横同士での認識って事だな。知らんけど。
「じゃあリル、飛ぶか?」
「嫌です。絶対に離れません!」
リルがギュッと、強く抱き締めてきた。痛い。
「っていうかさ、ルナ君」
「どうした? お姫様」
「えへへ......じゃなくて! その翼、称号の影響?」
「うん? あぁ、多分な。厨二感凄いよな」
俺の天使の翼......両方白い翼だったのが、右側の翼が白銀に輝き、左側の翼が真っ黒かつ、黒いオーラを出すようになったのだ。
「背理の天使......凄いよね」
「そうだな。効果も大きいし、かなり強い......んだけどさ......」
「うん......」
「「前の翼の方が良かった / 前の翼の方が良かったね」」
だよなぁ。ちょっと恥ずかしいんだ、これ。
「良いじゃないか! 凄くカッコイイよ?」
「そうです! 綺麗でカッコイイですよ? 父様」
「くぅ......まぁ仕方ないか。受け入れよう」
あの称号を取ってしまったんだ。受け入れた方が心へのダメージは少ないだろう。
「さ! そろそろ着くよ! あそこが本来、人間が神界に来た時に最初に出る場所だよ!......そして、神龍の居場所さ!」
オケアノスにそう言われ、指をさしている方を見ると──
「「「街?」」」
そこには、ロークスのような街がある島だった。
背理の天使の称号を獲得したルナ君は、厨二感満載の天使です。
それこそ、ちょっとした病にかかった少年少女が見たら、ひと目で憧れるくらいに.....フヒ
っとと、違いました。フラカンの謎は解けてるので、ルナ君は『サーチ』も使えます。.....何故か使わないけど。
では次回も楽しんでくれると嬉ピッピです。では!