神なる龍は、龍を嫌う 9
男の娘の次は、あの方です。(^・ェ・^)←ヒント
「こんにちは〜! ソルちゃんいますか〜?」
山頂にある神社に来た。いや、神社と言うより、日本家屋と言った感じか。それも結構大きな屋敷のようだ。
『ちょっと待ってな〜!......ほら、行くで?』
推定、お稲荷さんの声が聞こえた。行くで? って事は、やっぱりソルがいるのかな?
『ほら、早う早う!』
「ちょ、ちょっと待ってください! 流石に恥ずかしいです!」
『何言うとんの? せっかく迎えに来てくれたのに、見せんでええんか?』
なんか声が聞こえる。片方は確実にソルの声だ。
「声的に安全面は大丈夫そうだな。フー、シリカ。降臨」
安全というか......多分、結構仲良くなってるだろうな。
だったら皆で挨拶しておきたい。もしかしたら、今後も関係が続くかもしれないし。
『ルナはんよなぁ? もうちょっと待ってな〜?』
「は〜い!」
なんと言うか......アレだ。友達を呼びに家に行ったら、その友達の用意が終わってなくて、友達のお母さんに『ちょっと待ってね』って言われてる気分だ。
俺、陽菜の家しか行ったことない上に『ちょっと待って』とか言われたことないけど。
「母様、何をしてらっしゃるんでしょうかね?」
「さぁな。ってかあの声はお稲荷さんで合ってるよな?」
「「合ってます / 合ってるよ!」」
「なら良かった。適当に待っとくか」
「そうしましょう! それに父様、ここの景色、とても綺麗ですよ!」
リルに手を引かれて山の麓の方を見ると、綺麗に紅葉した紅葉に小川といった、和を感じる景色が広がっていた。
「めっちゃ綺麗だな。テレビで見たような光景より綺麗だ」
テレビで見た『紅葉特集!』みたいなやつより、数段と美しく見えた。
「ルナさん。実はここ、神界で最も空気が綺麗な場所だったりするんですよ?」
「そうそう! 落ち着きたい時とか、よく稲荷ちゃんとこに来るんだよね!」
「へぇ。だから景色も綺麗に見えるわけか」
本当に綺麗だ。思わずスクショを忘れるくらいに。
この写真は後でマサキ達やアテナ達に送り付けよう。『神界、ヤバい』と、語彙力の欠けらも無い文字を添えて。
『ルナは〜ん! ちょっと来て〜!』
「は〜い」
景色を眺めていたら、お稲荷さんに呼ばれてしまった。
「行こうか。ソルに会いに行こう」
「はい!」
「結構長い時間用意してたみたいですし、楽しみですね!」
「狐ちゃんが何かされてたのは確実だよね〜」
そして玄関前まで行くと、引き戸が開けられた。
「いらっしゃい。待ってたで?......ソルはんが」
「初めまして。ルナです」
玄関には、まるでソルを大きくしたような、金髪に紅い眼をした狐獣人の人が出迎えてくれた。
「礼儀正しい子やなぁ。ウチ、結構お気に入りやわ〜」
「初めまして、リルです。父様と母様の娘です!」
リルが小さく背伸びをしながら挨拶した。
「可愛いぃ! ルナはんにそっくりやぁ〜!」
お稲荷さんはそう言いながら、リルを抱っこしてギューッと抱きしめた。
「むぐっ......苦しい......です......助け......て」
「ちょちょちょ! 緩めて! 優しくお願いします!」
俺がそう言うと、すぐに力を抜いて優しく抱きしめた。
「あっ、ごめんな? あまりにも可愛いもんやからつい......」
「い、いえ。大丈夫です」
「ほんま可愛ええなぁ。で、2人はイシスはんとアレスはんか? 久しぶりやねぇ?」
「えぇ、お久しぶりです稲荷さん。今はフーですよ」
「シリカもだよ! 久しぶりだね! 稲荷ちゃん!」
「元気そうで何よりやわぁ。さ、皆入って〜な。奥でソルはんが待っとるで?」
「「「「お邪魔します」」」」
屋敷の中は、よくアニメや漫画で見るような、如何にもって感じの屋敷だった。
将来、こんな所に住んでみたいものだ。
「何もあらへん所でごめんなぁ?」
「いえ。寧ろこういう、『普通』といった感じが1番落ち着きます」
「それ、ソルはんも同じこと言ってはったわぁ。『ここは凄く落ち着く〜』『将来はこんなとこに住みたい〜』って」
同じ事考えてた〜! やっぱり、こういう落ち着いた日本家屋って憧れるよなぁ。
「ほれ、あそこを曲がったところの縁側にソルはんがおるはずから、抱きしめたって?」
どうやら今歩いている廊下を曲がった先にソルがいるようだ。
「分かりました」
もう、人前で抱きしめることに抵抗はない。心の中にある、謎のラインを既に超えている。
そして縁側に出ると、ソルが綺麗な和服を着て座っていた。
ソルは笑ってこちらに手を振ってきた。
「ルナ君、久しぶり? 伝えるの遅「誰だ? お前」く......」
「「「え?」」」
こいつ、ソルの見た目をした別人だ。見た目は完璧にソルだが、仕草が変だ。
「父様? この方は母様じゃ......」
「何言ってんだ? こんなやつがソルな訳ないだろ? 見た目こそ本人にそっくりだが、体の動かし方に目の動き、仕草や言葉選びがソルじゃないだろ?」
違和感が物凄く大きい。いくらソルがあまり着ない服だからといって、ここまで変わるものでは無いだろう。
それに、10年近く一緒にいたんだ。何となく、雰囲気も違うのが分かるぞ。
「ステラ。......おい、お前は誰だ?」
万が一戦闘になった時ようにステラを出した。
「......凄いなぁ、ルナはん。ちょっとした遊びやと思うててんけど......とんでもないなぁ」
喋り方的に、この人はお稲荷さんだな。
すると、ソルモドキの体が光り、玄関で俺達を出迎えた狐獣人の人に姿が変わった。
「ごめんなぁ? ウチは『稲荷』言う、狐の神や」
多分......本物だろう。いや、やっぱり信用ならん。
「......ソルはどこに? 確認するまで信用できんぞ」
「安心し。今厨房で料理しとるよ? もうじき出来るやろうし、こっち来ぃな」
お稲荷さんに手を招かれ、着いて来るように言われたが............はぁ、いいや。着いて行くか。
「はいはい」
ステラを仕舞い、お稲荷さんに着いて行く事にした。
「いやぁ、ほんまにごめんなぁ?」
どこかへ向かっている途中、歩みを止めて謝られた。
「もういいですよ。ちょっとしたイタズラ心でしょう?」
「うん......ウチ、狐やからさぁ。ほら、『狐に化かされる』って言うたりするやろ? だから、ちょっと遊んでみてんけど......見破られた上に信用も失ってしもて......ほんまにごめん」
誠心誠意、謝られた。
「気にしてませんよ。あなたのことはよくシリカが言ってましたし、悪い神じゃないんでしょう?」
「うん。ウチは善神や。運の神でもあるんよ」
「なら大丈夫です。信用は......まぁ、ソルが元気なのを確認できたら大丈夫ですから」
こっちの目的はソルに会うことだからな。
神界に一緒に来たかと思えば、ソルだけが別の場所に飛ばされていた。そんな事が起きたら心配して探......あぁ、きっとあの時のソルはこんな気持ちだったのかな。
何も言わずにどっか行かれて、必死に探すこの感じ......
ソルの時はリルというヒントが。俺の時はフーやシリカというヒントがあった。
だけど、もし完全なノーヒントだったら?
再会する確率は、極めて低くなるだろう。
これからはちゃんと、どこに行くか、何をするか、伝えるようにしよう。
この、何かを失いそうな気持ちはもうしたくない。
「ほな、ここで待っててな? ウチはソルはん呼んでくるから」
そう言ってお稲荷さんに連れてこられたのは茶の間だった。大きな机と座布団がある、綺麗なお部屋だ。
「分かりました」
そしてお稲荷さんはソルを呼びに行った。
「ふぅ......焦ったわ〜」
「父様、本当によく分かりましたね?私から見れば、あれはいつもの母様でした」
「私も騙されちゃいましたね〜」
「シリカも。悔しいね」
「まぁな......あれで本当のソルだったら俺、後で殺されてたかもな」
「「ですね〜」」
「うんうん」
結構な賭けだったが、無事に勝利だ。
「愛のなせる技、でしたね。ルナさん」
「......そ、そうだな。それと真っ直ぐそういう事を言うのはやめてくれ。恥ずかしくなってくる」
嬉しいけどやめてくれ! 顔からイグニスアローが出るぞ!
「はは〜ん? いいでしょう。もっと言ってやりましょう。このラブラブカップル〜!」
「神の魔法をも見破る愛の持ち主〜!」
「え、えと......母様が羨ましい〜!」
「「確かに」」
「何言うとんねん......全く」
騒がしい奴らだよ、本当に。毎日飽きさせずに楽しませてくれやがる。
そんな事を思っていたら、障子の奥から声がかかった。
「ルナく〜ん、入るよ〜!」
「呼んできたえ?」
そして障子が開けられると、ソルが入ってきた。
雰囲気、声、小さな仕草。紛れまもなく本物のソルだ。
「久しぶり、ルナ君!......おっと」
思わずソルに抱きついてしまった。
「ごめん......この前は何も言わずに抜け出して。俺、ソルを探すの......つらかった」
「もう......分かってくれたかな? あの時の私の焦り様も」
「分かる。というか体感した」
「うん。私もごめんね? 連絡返さなくって。ちょっとルナ君を困らせようと思ったの」
「それはもうやめてくれ。これからは何処に行くか、ちゃんと伝えてから出るよ」
「うん。大好きだよ、ルナ君」
「俺もだ」
「もういいかえ? 話が進まなるから、後でしてもろうてええか?」
たっぷり5分抱き合ってるとお稲荷さんにそう言われた。
「お稲荷さんが『抱きしめたって?』って言ったのに......」
「そうだそうだ〜! 稲荷ちゃん、ずるいぞ〜!」
「えぇ? 反撃飛んできてもうた」
そしてソルから離れ、俺は座布団に据わった。
「まぁ冗談ですよ。で、どうしてソルを連れて行ったか、ですか?」
「冗談かいな......で、その事やね。理由は単純なんよ? ウチがソルはんを気に入ってるって理由やから」
まぁ、その予想はしていた。
「そうですか」
「あ、別に敬語やなくていいんよ? あんな事してなんやけど......ウチはルナはんの事、少しは知った気になっとるからなぁ」
フレンドリータイプか。助かるラスカル。
「じゃあ敬語は辞めようかな。で、ソル。今まで何して時間潰してたんだ?」
ただ料理をして待ってた......なんて事はないだろう。
「えっとね、稲荷ちゃんから貰ったスキルの練習と料理だね」
「あ、せやせや。ルナはんにもはい、これ」
「ありがとう。これは......なるほど」
ソルが答えると、お稲荷さんが本を渡してきた。
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『スキル書:妖術』を受け取りました。
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ソルが『魔法』とは言わずに『スキル』と言った意味が分かった。確かにこれは、魔法に近くても魔法じゃないもんな。
「ありがとう、お稲荷さん」
「ええんよ。お詫びの意味と、これからもよろしゅう、という意味もあるからの」
これで神界に来てから2つ目のスキル書だ。いや、レイドイベの報酬を入れたら6種類目のスキル書か。
「そんな感じだね。それじゃあそろそろご飯食べる? お腹、空いてるでしょ?」
「そうだな。何時間も飛びっぱなしだったし、結構お腹空いてる」
「私もです!」
「ふふふっ、皆の分もあるからね。じゃあ食べよ!」
そうしてお稲荷さん含め、皆でご飯を食べた。
「「「「「「ごちそうさまでした」」」」」」
結構本格的な和食が出てきた驚いた。このゲームの食べ物に、まともな色の野菜があるとは思わなかったからな。
とても美味しかった。今度はリアルで食べたいと思ったよ。
「じゃあ今後の方針でも話すか」
「もう行ってしまうんかえ?......寂しなるなぁ」
「「大丈夫、また来る / 大丈夫、また来るよ!」」
ソルとハモって答えてしまった。
「息ぴったりやなぁ。で? どこに行くん?」
「次は神龍......と言いたいところだが、フレイヤさんの所だな」
「あ〜、そう言えば手紙貰ってたね」
「ですね。母様の髪飾りの時に......」
「今、フレイヤ言うたか!?」
リルがまだ何かを言っていたが、それを遮るようにお稲荷さんが大声を上げた。
「あぁ。『神界に来たら、是非遊びに来てね〜』って手紙を貰ったからな。......ほら、証拠」
あの時に読んだ手紙を出した。
「うわ......ほんまや。本物や、これ......」
「稲荷ちゃんは何をそんなに驚いてるの?」
それ、めっちゃ気になってた。
「2人ともなぁ、フレイヤ言うたら『次の最高神』とまで言われてる神やで?そんな神が下界の人間に、わざわざ直筆の手紙を書くなんて......正直言って、有り得へんのや」
「なんで有り得ないんだ?」
「最高神候補ってのはな? 下界で言うところの『王女』とか『王子』やで? そんな人物が個人的に手紙を書く時間と、それを忍ばせる時間があると思うてる?」
「......ないかもな」
いやね? 王女の忙しさとか、正直知らん。俺の知ってる王女って、ワイバーンをちまちまと刀で殺したり、刀術を教えてくれ〜って言ってくるやつだったからな。
「ルナはん、これは絶対に行きや? 多分、最高級のおもてなしされんで」
「分かった......ってか次の目的地だからな」
言われなくとも、ってやつだ。
「ルナ君、フレイヤさんの居場所は分かるの?」
「いや? 知らん。だからここで、お稲荷さんとかフーに聞こうかなって思ってたんだ」
「なるほど。稲荷ちゃん、フレイヤさんはどこに居るの?」
「ここから北西に行ったところの、空中庭園におるはず。亜麻色の髪に、右目が青、左目が緑色をしとるんがフレイヤはんやで」
「北西か......ありがとう」
フレイヤ、オッドアイなんだな。カッコよさそうだ。
「ええんよ。せっかく神界に来たんやし、楽しんでな?」
「あぁ。そうさせてもらうよ。それじゃあ、そろそろ行くか?」
「うん!」
「「はい!」」
「おっけ〜」
皆、準備万端だ。
そうして玄関まで行き、最後にお稲荷さんに挨拶をする。
「あ、これあげる。下界からのお土産だ」
どうせだし、ホープダイヤモンドをあげた。
「っ!?......これはまた、貴重な物を渡してきたなぁ。ルナはん、これがどれだけの価値があるか分かっとる?」
「価値というか、強さならな。それ、量産し易いから沢山あるんだよ」
「量産やて!? これ、神器と同等以上の性能の宝石やで!? それを量産!?」
え? そんな価値なの? これ。やばいんだけど。王女とか衛兵さんとか、受付嬢やランザにまで渡しちゃったんだけど。
「......はぁ。人間、それも語り人は凄いなぁ? ほれ、ルナはん、お返し......って言うたら変やけど、そんなもんや。受けとりぃ?」
「どうも」
お稲荷さんから小さな玉を貰ったが......受け取った瞬間に消えた。
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『神の因子:稲荷』を受け取りました。
称号『神の因子を持つ者』を獲得しました。
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「「あ! 神の因子!!!」」
受け取ったらすぐにフーとシリカが反応した。
「稲荷さん......はぁ、まぁいいです」
「お兄さん、多分大丈夫だよ」
「ルナ君、今のは何?」
「私も気になります。とても強い魔力......魔力? のような力を感じました」
そうなのか。何で出来てるかは知らんから魔力とか分からん。サーチも使えないし。
「今のは旅の安全を祈るお守りや。だから安心しぃな? お二人さん。それとフーはんとシリカはん、後で説明したりなや?」
「もちろんですよ......」
「爪痕残すね〜、稲荷ちゃん」
「ええんよ。ほな皆、元気でな〜?」
『『「「「行ってきます!」」」』』
「行ってらっしゃい」
お稲荷さんに見送られながら、俺達は北西へ飛んだ。
「さぁ、フレイヤの後は神龍だぞ〜!」
「楽しみだね!」
「再戦です!次は勝ちます!」
そうして飛ぶこと1時間。空に浮かぶ、島サイズの鳥籠のような物を発見した。
「デカ過ぎんだろ......」
ようやく登場、お稲荷さん!京都弁なのか関西弁なのか.....分からぬ。不思議な方です。
それと、最初のソルの「恥ずかしいです!」もお稲荷さんの分身体ちゃんの声です。
ルナ君達を出迎えたのが分身体ちゃんで、その分身体ちゃんを外に出そうとしていたのが本体さんです。
分かりにくくて、申し訳のぉござる。(´;ω;`)
そして次回はまさかの神龍編10話な訳ですが、まだ神竜は待機です。フレイヤさんが出番をむしり取りましたね!
あ、神龍の前にスキルと称号チェックしますよ〜(^・ェ・^)
では次回も楽しんでください!以上です!