神なる龍は、龍を嫌う 6
ほのぼのと
答え合わせと
雑談と
次の予定は
神界捜査
ゆずあめ
家のベッドでリスポーンした。
「あ〜負けた! 初めて死んだ!デスペナが辛い!」
現在のレベルが32、限界突破前を含めて合計132。そしてデスペナルティが『レベル×2分』のせいで、264分。
つまり、4時間24分もの間、全ステータス1のペナルティだ。
「はぁ。リルは......無事だな。念話は......出ないな」
念話を掛けてみたが出なかった。.....おかしい、普段ならすぐに出るのに。
「あ〜あ。嫌われたかなぁ」
神龍を撃退したと思ったら、急に殺し合いを始めたもんなぁ。多分......いや、絶対に嫌われてるよな。
「......寝よう。また明日考えよう。うん、それがいい」
明日の事は明日に考えよう。レイドイベントお疲れ様パーティを抜け出したのは申し訳ないが......多分許されるだろう。知らんけど。
そして朝起きると、隣にリルとソルも寝ていた。
「え......? まぁ、嫌われてないってこと......かな?」
「んぅ......」
リルが寝返り打ち、こちらに顔を向けてきた。
「ごめんな......つらいことをさせたよな......本当にごめん」
俺は謝りながらリルの頭を撫でた。
リルに俺を殺させる......とても精神にダメージが入ることをさせてしまった。
後悔とはまた違うが、申し訳ない気持ちが湧いてきた。このお詫びは絶対にしよう。
それでリルが許してくれるとは思わないけどな。
「ん......うぅ......? とう......さま?」
リルの目が覚めたようだ。
「あぁ。おはよう、リル」
「おはようございます。父様、どうして泣いているのですか?」
「え?」
そう思って自分の頬を触ってみると、確かに涙が流れていた。
「......何でだろうな。俺にも分からない」
泣くのはストレスを発散させる効果もあるって聞いた事があるし、昨日の事に関して、反射的に流したんだろうな。
「泣かないでください......私がついてますから」
そう言ってギューッと抱き締めてくれた。
とても、とても暖かい。
「......ありがとう。リル」
「はい! それで父様、どうして昨日はあんな事を?」
「あれは......まぁ、一種の確認だ。リル、エレボスが神龍を操っていたのは知ってるな?」
「はい。それでお城を......というより、龍を狙ったんですよね?」
「後半は神龍の意思らしいがな。それはともかく、温厚だった神龍を暴れさせたのはエレボスで、エレボスは生物を操ることが出来るということだ」
イベントだから......という訳じゃないと信じてる。
「そうですね。それは理解しています」
これを理解していないと、どうしてリルと戦ったのか、理解できないからな。
とりあえず今は、体の操作権限を奪われる時が来るかもしれないという前提で話を進めよう。
「そこで、だ。もし『俺かリルが操られた時』に、仲間内で戦いになったら、リルは躊躇なく俺を殺せるのか、その確認の為に戦ったんだよ、昨日は」
「何故殺し合いを? 別に離れるだけで良いのでは?」
「それで操られた側が街や人を襲っても、か? いいか? 俺達の肉体は時間さえあれば完全に復活する。何故なら俺は語り人で、リルはテイムモンスターだから。
だが、街の人や街の建物はどうだ?」
「......戻りませんし、死んでしまえば復活なんて......」
「そうだ。だから、そうなる前にどちらかが操られた側を殺し、復活させられるかどうか......その為の確認だった」
キアラさん、もう現地人は復活させないって言ってたからな。
死んだら完全な状態で復活する俺達が、現地人を守らないとならない。
それに......操られる云々の前に、その覚悟があればこれからのリルの戦闘訓練に使える。ただでさえステータスがバカ高いリルに、高度な作戦構築技術が備わったら?
素早く高度な作戦を立て、1人でそれをこなせる、とても頼りになる存在になるだろう。
逆に敵になれば、恐ろしく強力で、とてつもなく厄介な相手になるだろうな。戦いたくねぇ。
「......理解できました。私の考えは外れていて良かったです」
「そう言えば答え合わせをするって言ってたな。どんな答えだったんだ?」
お兄さん、気になるぞ。是非教えてくれ。
「父様が私を嫌いになったのかと」
「......何言ってんだ。そんな訳ないだろ? 全く......そんな心配しないでくれ。逆に悲しくなる」
リルをギューッと抱き締めながらそう言った。
「......はい......本当に、本当に良かったです......!」
「あぁ。リルを嫌うことなんて絶対にないから安心しろ」
「はい!」
リルも俺も、お互いに嫌われたのかと思ってたんだな。
「ん......あれ?......ルナ君?」
「おはよう。よく眠れたか?」
「おはようございます、母様」
「寝れたは寝れたけど......ルナ君、昨日はどこに行ってたの? 2人が全然帰って来ないから、行けるエリア全部探したんだよ?」
マジかよ。それは申し訳ない、全部話そう。
「探させてごめん。昨日はリルと殺し合いをして負けた後、ここにリスポーンして寝た」
「へぇ〜......へ? 殺し合い? 負けた? えぇ!?」
ソルがゆっくりと俺が言った事を理解し、驚いた。
「え? 何? ってことはルナ君、負けたの?」
「あぁ、負けた。それも完敗だ。録画していないのを悔やまれるくらい、綺麗な負け方をしたぞ」
「そ、そんな事はありません!」
「あるんだよ。あれは完全にリルが上だった」
俺の魔刀術を使った、フェイントからの回し蹴りをその身で喰らいながら魔法撃ったその判断速度、反射神経、実行までの躊躇の無さ。完璧だった。
「す、凄いよリルちゃん! あのルナ君を倒したんだね!」
「へ?......ま、まぁ。まぐれと言っても過言ではありませんけど、それでも勝利はしました」
「うんうん! それでも凄いよ!」
「でも......父様を殺してしまったのは......凄くつらくて、私............」
「なるほど、だから泣いていたんだね。ようやく解ったよ。昨日のリルちゃん、ずっと泣いてて答えてくれなかったからね!」
「そうなのか?」
「はい。凄くつらくて、苦しくて.....母様が来た辺りから記憶がありません」
凄く暗い顔をしながら答えてくれた。
「そうか......すまんなぁ」
ヤバいよ、申し訳ない気持ちがエベレストより高くなったよ。というかカーマンラインを超えて宇宙まで行ったわ。
「ごめんよぉぉリルぅぅぅ!」
謝罪のハグだ。許しておくれ......!
「はい。二度と私にあんなことをさせないで下さいね」
「操られてたらそれは無理かな......でもさ、リルも良い経験が積めただろ?」
「まぁ、そうですね。でも次からは不死鳥の状態でやってください。それだけは約束して頂けませんか?」
まぁ、そうだよな。これ以上リルにつらい思いをさせる前に、対策は立てないとな。
「分かった。約束するよ」
「それならいいです。これからもご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いします」
「もちろんだ。ヴェルテクスに相応しい、フェンリル最強にしてやる」
フェンリルの頂点に立つリル......良きかな。
「じゃあ話は終わったみたいだし、ご飯にしよっか!」
「はいよ」
「分かりました!」
そうして付喪神ズも出し、一緒に朝ごはんを食べた。
そしてソファでリルをモフモフしていたら、ちょっと気になったことを思い出した。
「リル、王女はどうしたんだ? 具体的に、どこに避難させた?」
「冒険者ギルドに避難させました。ランザさんが保護しているかと」
「そうか。なら軽く挨拶をしたら今後の王家の住居とか聞かないとな」
「住居、ですか?」
「あぁ。王城のあった場所は更地になってるし、その上神界への柱があるだろ? だからこれからどこに住むんだろな〜って」
何があってもこの城には住まわせんがな。うちの家族以外、住むことは許しません。
ん? 家族?
「どうしましたか? お顔を赤くして......母様が変な衣装でも着ていましたか?」
「違うわ! ってか変な衣装ってなんだよ!?」
「ダメー!!! リルちゃん、それだけはダメ!!」
ソルが急に叫び出した。
「り、リルちゃん? それだけは絶対に言っちゃダメだからね?」
変な衣装......ねぇ? お兄さん、気になるぞ。
「リル、今度教えてくれ」
俺は小声でリルに言ってみた。
「ダメ! 聞こえてるからね!? 絶対に言っちゃダメだから!」
おや、地獄耳でいらっしゃったか。ちくせう。
「分かりました。母様が胸だけ開いてる服とか、ほぼ裸のような服を着ていたのは黙っておきます」
「あああああああぁぁぁ!!! いやぁぁぁあ!!!!!」
全部言ってくれた。リル、有能である。
「ってかそんなのも作れたんだな。このゲーム、エロに寛容なのか?」
「ちちち、違うもん!! 肌色の素材を使ってるだけだもん!!」
「へぇ、そうなのか......よくそんなアイデアが出るもんだ」
ソルの答えに満足していると、リルが小声で話しかけてきた。
「父様、違います。危ない部分こそ、肌色の素材を使っていましたが、大半は母様の地肌です」
「ほぇ〜......見たいな」
「それなら母様も本望でしょう。『いつかルナ君に見てもらうんだ〜』って呟いてましたから」
おやおや。お兄さん、嬉しいぞ。だがそれ以上にお兄さん、その姿のソルを見てみたいぞ?
「もうダメ......ルナ君を殺して私も死ぬ......!! ミストルティン!!」
「おいおいおい待て待て待て!!! それはマジでシャレにならんて!!!」
ソルがミストルティンを顕現させ、矢を番えた。
そしてソルは満面の笑みで言った。
「ルナ君、来世でも一緒だよ!」
ドバン!!!!
「ちょばっ......」
至近距離でソルの全力ショットを喰らった。
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『守護者の加護』が発動しました。
『最弱無敗』が発動しました。
『死を恐れぬ者』が発動しました。
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あ、3点セットさん、こんにちは。
「父様!!!」
「......いってぇ。ソル、マジで撃つこと無いだろ?」
「んなっ!? どうして生きてるの!?」
そんな劇画調の顔で言わんでも......
「即死判定だからだよ......全く」
家の中でミストルティンを撃つなよ。家具や壁が壊れたらどうするんだ!
「じゃ、じゃあ私が先に死ぬ!!!」
「いやお前、不滅の愛が大量にあるだろ?」
「あっ......なら何度でも!!」
こんな所でガッツを見せるな! もっと別の所で見せろ!!
「ほら、大丈夫だから。な?」
ソルにヌルッと近づき、両手を掴んでから言った。
「大丈夫じゃない......私の秘密が......!」
「秘密にしたかったら、確実に1人の時にするべきだったな。それにソル、別に変な衣装でも、家の中なら着てくれていいんだぞ? 見たいぞ? 俺は」
でぃす、いず、欲。あい、あむ、欲。我が名はヨクマミレ・ルナなり。
「無理無理無理! 恥ずかしいもん!」
「なら何故作ったし......まぁともかく、そこら辺は自由じゃん。ソルの好きにしたらいい。それにな、俺達は何があっても、ソルの味方だぞ?」
するとソルは、頬を赤らめながら目を合わせてくれた。
「......うん」
「よしよし。ならソルも俺にモフられるといい。気持ちいいぞ〜? 消したい記憶も消えるだろう。知らんけど」
「うん! お願い! 是非とも消して!」
そうしてお昼まで、ソルとリルをモフった。
「そうそう、今日は神界に行くぞ。心の準備しとけよ〜」
前書きが今回の話を物語っているって本当ですか?
という訳で、ルナ君の意図としては操られた時の為の、殺す覚悟があるかどうかを調べるためだったみたいですね。
口では聞かず、いきなり実戦とは.....操られた時の再現なのでしょうか?
では次回から神界の捜査となります。新しいエリアでのお話ですね!楽しみです!
それでは!お楽しみに〜!