神なる龍は、龍を嫌う 4
「お、キタキタ! って......えぇ?ル、ルナ?」
「どうしたマサキ。来たぞ」
「いや、いやいやいや! なんでそんなグロい状態で来てんだよ!」
ソルにおんぶされて皆の元へ来たが、マサキは予想通りの反応だった。
「まぁ、その......なんだ。俺から俺への罰だ」
「罰? ってかそれ見えてんのか?」
「ばっちり。視覚情報0のデバフは掛かってるが、魔法で視認している。というか半径300メートル以内の生物は全て見えるぞ?」
「えぇ?......性能アップしてね?」
そんな事はない『サーチ』を使っての視認はいつもしているからな。
その上で、目からの情報も取り入れて過ごしていたんだから、これは完全に弱体化だ。
「ねぇルナ君、そろそろ治そうよ。見てるこっちが苦しいよ」
「そうですよ父様。いつもの元気な父様に戻ってください!」
「断る。寧ろ死んでないだけ褒めて欲しいくらいだ」
「褒めたら治す?」
「治しません。......でも抱き着くかもな」
「よ〜しよし。ルナ君はいい子だね〜」
現金だな。そんなに抱きしめられたいか。
『やっぱり時と場合なんて見てないじゃないですか! いつでもどこでもイチャつきやがりまして!』
『そうだよ! お陰でご飯が進むよ!』
付喪神ズからツッコミ......ツッコミか? まぁ、お言葉が飛んできた。
「何言ってんだ2人とも......お米なんて無いのに」
神界にはお米があるのかな? なら行ってみたいものだが......
「ねぇ、お目目治さないの?」
「うっ......嫌だ! 今皆の顔を見たら、不死鳥化を解いてサンダーを俺に撃つ!」
「何その新手の脅しは。......はぁ、困ったなぁ。ピーちゃん、何か案は無い?」
俺が頑なに目を回復させないでいると、ソルは近くにいたピギーに助けを求めた。
「あ〜......無理だね。ルナは妙に頑固というか、突っ走るところがあるから......」
「だね。僕もそれは同意見かな。というか早くリルちゃんについて教えてくれない?」
「そうだぞルナ。俺達にも教えてくれよ」
ピギーだけでなく、翔もアテナも会話に参加してきた。
「ルナ、俺にも教えてくれ。お前が娘と言ってた子は、フェンリルなのか?」
「マサキもか......はぁ、分かったよ。ステラ、『癒しの光』」
仕方がない。ここでリルについて、皆に言っておこう。
街の明かりが目に刺さるが、我慢して話そう。
「リル、おいで」
「はい!」
俺はリルを抱っこし、皆に向けて口を開く。
「この子はリル。対外的には俺の娘と伝えているが、実際はテイムモンスターだ。種族は皆知っての通り、『フェンリル』だ」
「「「「「マジか......」」」」」
「ちなみに。皆が1度は見たであろう、公式生放送にも使われたフェンリル戦......あれはリルとの戦闘だ」
「「「「「嘘っ!?」」」」」
「本当だ」
「本当ですね。あの時から私は父様の娘です」
そ〜れは話がややこし〜くなるぞ?
「ルナ、娘ってどういう事だ?」
「......さぁ? 気付いたら父様と呼ばれていた。なぁリル、リルとしては俺を父親呼びすることに何か意味があるのか?」
丁度いい機会だし、知っておこう。
「何を仰っているんですか? 意味しかありませんよ?......父様は私をテイムしました。テイムとは、それ即ち『心の共有』です。心を通わせ、共に戦い、共に生きる。私から見れば、それは家族と何ら変わりありません。ですから、私は父様を父様と呼ぶのです」
あ〜、昔に言っていたな。『テイムとは家族になること』って。
「あ〜可愛い......まぁ、そう言う訳だ」
おっと、本音がチラリしてしまった。
「今本音が......ではルナさん。ソルさんを母様と呼ぶ理由は?」
コキュートス君、それは俺の口からは言えないんだ。
「ソル、答えてあげな。俺は知らないからな」
察しは付くぞ。
「え? 決まってるじゃん。ルナ君がお父さんなら、私はお母さんになりたいもん。そうしたら対外的には夫婦になれるんだよ!? それって最高じゃん!」
あ〜やっぱり......でも、ハッキリ言われると嬉しいな。好き。
「あの時はまだ付き合っていなかったけど、完全に外堀を埋めれたよね。リルちゃんがウチに来た時から、ルナ君は私と付き合うことが確定していたのである!!」
「そこまでぶっちゃけなくていいわ!!!」
「な、なるほど。恋人から夫婦に、延いては家族になる為に、リルちゃんに母様と呼ぶように、と」
「そうなの!」
「おぉ............」
おいおい。コキュートス君が引いてるじゃないか。
「んじゃあ何か質問ある人いる? 答えられる範囲なら答えるけど」
折角なんだ。プレイヤーとの交流も深めていこう......少しだけ。
「はいはい! 茜、聞きたいっす!」
「はいどうぞ」
「どこでそんなに戦闘できるように鍛えたんすか?」
「昔通っていた道場のお陰かな。化け物みたいな人間に、陽......なんでもない」
「え〜? つまりは道場での経験、という事ですか?」
「いぇす」
危ない。陽菜の名前がポロリするとこだった。こういう事があるから、掲示板とか怖くて出来ないんだよな。
「次、聞きたいことある人いる?」
「はい! 黒の巣です! 聞きたいことあります!」
「はい黒の巣君。どうぞ」
黒の巣君が挙手したので、当ててみた。
「ソルさんとの馴れ初めは?」
「「「「「確かに気になる!!」」」」」
近くにいた全員がハモった。怖いよ。
「え? う〜ん......道場で、かな? 明確に好きと意識したのはユアスト初めてからだけど」
「私がルナ君を知った時はまだ道場に通う前だったけどね」
「え? マジ? そん時出会ってるか?」
道場に通い始めたのは小学校1年生の時だから......もしかして5歳の時から知っていたりしたのか?
「小学校から帰ってる時にたまたま見かけたのが最初かな? 一目惚れだったね」
「ほぇ〜、知らなかったわ」
「だってその後、ルナ君は虐められてて、周りを見てなかったでしょ? 私、結構近くに居たよ?」
「ストーカーか? でもまぁ、気付かなったなぁ」
俺の暗黒時代に入る前に陽菜は知っていたとは......驚きだ。
「え? ルナさん、そんなに強いのに虐められてたんですか?」
「ガーディ君、それは違う。俺は虐められていたから、強くなろうとして道場に行ったんだよ」
「私はそれをルナ君の両親に促したね」
「はぁっ!? 嘘だろ!? あれ、ウチの親が言い出したんじゃ......えぇ?」
「本当だよ? 今度聞いてみて」
俺、知らなところで陽菜に人生操られてた。
俺が陽菜と付き合うことになったのは、もしかして必然だった......?
流石だ。戦略の立て方が上手いとしか言えん。尊敬する。
「ルナ......お前、ソルに人生を......」
「マサキ、言うな。でも、それで俺は良い方向に変われたし、陽......ひひひ。ソルには感謝しかない。ヒヒっ」
だから危ないって! あと俺、誤魔化すのが下手すぎる!
「......まぁ、そんな感じらしい。他に質問ある?」
「あ!僕聞きたいです! 名前は『けん×9者』です!」
「お、初見さんか。研究者君、よろしく。で、質問は?」
「ルナさんの飛行魔法について知りたいです!」
「あ〜......言っても誰も使えんからな。言う意味がない」
「誰も使えないとは? どういう事です?」
「そのままの意味だ。必要な魔法そのものがないから使えないし、作れない。『フラカン』......これはタダの風属性の魔法ではないからな」
実演して見せた。リルと一緒にふわ〜っと空中へ。
「で、では何の属性を?」
「属性じゃない。ヒントは『マネーレトレント』だ。後は自力で探しな、研究者君。人に聞いてばかりではなく、もっと自分で足を運ぶといい」
「......分かりました」
マネーレトレントの超レアドロップの『木魔法』、これを進化させた上で、風属性魔法のスキルレベルが限界まで必要だ。
並の難易度ではないが、頑張ってくれ。
「ねぇルナ。それはソルちゃんも使えるの?」
ピギーが聞いてきた。
「某ランプの魔神っぽく言うなら、『部分的に、はい』ってやつだな。俺がこの魔法を仕込んだ箒で、ソルは空を飛んでいる」
「え? あの箒ってその魔法なの!?」
「せやで〜。ってかソルの為に作った魔法やで〜」
「凄いねルナ」
せやろ? 凄いやろ? 俺、頑張ったんやで?
「ってかルナ、お前ってどんな魔法が使えるんだ?」
アテナが質問してきたので、地上に降り、リルを降ろしてから答えた。
「どうしたアテナ。藪から棒に」
「いや、お前って魔法士ギルドの公開魔法陣とか見てなさそうだな〜って思ってな」
ん?
「公開魔法陣? 何それ?」
「「「「「え?」」」」」
「私も知らない」
「「「「「え?」」」」」
やばい、俺とソルだけ世間知らずのようだ。
「......マジか。じゃあお前、他人が自分で作った魔法陣を専用の紙に書いて、それを公開できるって知ってるか?」
「知らん......でも言葉から察するに、『自分で作った魔法を紙に書いたよ! これを見て、皆も使ってみてね!』みたいな感じか?」
「その通りだ。流石だな」
「さんきゅ」
なるほど。だからピギーがルヴィさんの魔法を使ってたりしてたのか。
「ってことは何だ? 俺の飛行魔法を魔法陣に書けって言ってくる奴がいるのか?」
「いるだろうな。気を付けろよ?」
「金には困ってないし、人質に取られるほどウチらは弱くないし、ウチの城から盗む物もないし......大丈夫だな。完全に秘匿しよう」
俺だって、情報の価値は分かる人間だ。そう簡単には飛行魔法は教えない。
例え自然魔法を習得しようと、俺は公開しないぞ。
というか、飛行より転移の方がいいだろ。そっちを覚えようぜ?
「いや〜アテナ。ありがとな。今度ギルドに行ったら見てみるわ」
「いや、お前の場合は自分で作った方がいい」
「は? なんで?」
まさかオススメされないとは。何か理由があるんだろうな。
「お前の使ってる魔法、殆どオリジナルだろ? ならその感性をフルに使って、新しく自分用に作るのがお前に合ってるはずだ」
......嬉しい事を言ってくれるじゃねぇか、アテナ。
「なるほどな、分かった。重ねてありがとう」
「おうよ!」
よし、今度は土属性と聖、闇属性のレベリングと魔法の製作しよ〜っと。
「でさ、今更だけどこの集まりは何なの? お疲れパーティ?」
「「「「「あっ、忘れてた」」」」」
はい。まさかの全員忘却してました。流石にこれには笑うしかない。
「よし、なら皆! バーベキューをしよう! このまま朝まで語り明かそう!」
ソルがそう言うと、皆立ち上がった。
「俺、調理器具用意する」
「俺は薪を」
「私はお肉を〜!」
「僕......間違えて野菜を数千個買ったからここで出すんだ......!!」
「ははっ! どんなミスしてんだよ!......俺もだけど」
「奇遇だな、俺もだ」
「「マサキさんも!?」」
なんか、それぞれ皆で盛り上がっていった。
「はい、できる事がありません。リル、抜け出すか?」
「いえ、手伝いましょうよ」
「え〜......ダメ?」
リルを抱っこして、目線を合わせて言ってみた。
「......分かりました。でも確実にバレますよ?」
「いい。アルトム森林まで行こう」
「はい!」
俺は真ギュゲの効果を発動してから翼を広げ、リルを抱っこしまま夜空を飛んだ。
「ふふふっ、風が気持ちいいですね!」
「あぁ、凄く気持ちがいい。夜間飛行も、中々乙なものだ」
頭の真上で俺達を照らす月の光を浴びながら、森林までゆっくりと飛ぶ。
「リル、俺がどうしてリルを連れ出してきたか、分かるか?」
「......何となく、ですけどね」
「そうか。ならなんだと思う?」
「う〜ん......愛の確かめ合い、ですか?」
「語弊先生!? でもまぁ、そうとも言えるな」
「では何をするので? 教えてくれますか?」
あぁ、教えるとも。
「リル、もう一度俺と戦おう。娘として成長したところを見せてくれ」
「え? それなら「違う」......はい?」
「これからやるのは命をかけた戦い......即ち、『殺し合い』だ」
そう、殺し合いだ。血のポリゴンが流れる戦いだ。
「........................え?」
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名前:ルナ Lv32
所持金:80,815,590L→80,845,590L
種族:天使
職業:『剣士』『ヴェルテクス:ギルドマスター』
称号:『スライムキラー』
所属ギルド:魔法士・Cランク冒険者(94/200)
Pギルド:『ヴェルテクス』
HP:3,310<1,000>
MP:3,812<1,500>
STR:4,310
INT: 2,310
VIT: 2,810
DEX:3,810
AGI:2,510
LUC:1,155
CRT:60(限界値)
残りSP:860
『取得スキル』
戦闘系
『剣王』Lv100
『魔剣術』Lv62
『王弓』Lv100
『魔弓術』Lv67
『武闘術』Lv100
『魔闘術』Lv1
『刀王』Lv100
『魔刀術』Lv100
『操王』Lv1
『魔糸術』Lv35
『走法』Lv0
『手加減』Lv0
『戦神』Lv100
魔法
『火属性魔法』Lv100
『水属性魔法』Lv100
『風属性魔法』Lv100
new『土属性魔法』Lv1
『雷属性魔法』Lv100
『氷属性魔法』Lv100
new『聖属性魔法』Lv1
new『闇属性魔法』Lv1
『自然魔法』Lv100
『龍魔法』Lv94
『古代魔法』Lv1
生産系
『神匠:鍛冶』Lv100
『神匠:金細工』Lv100
『裁縫』Lv99
『調薬』Lv82
『神匠:付与』Lv100
『木工』Lv1
『料理』Lv15
『神匠:錬金術』Lv1
その他
『テイム』Lv2
『不死鳥化』Lv90
『マナ効率化』Lv0
『天使の翼』Lv0
<>内アクセサリーの固定増加値
SP増加値:非表示
種族補正:非表示
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おっとぉ?雲行きが怪しいですよ〜?
けど、きっとルナ君にも考えがあるのでしょう。
それとステータスについてですが、まだリザルトを見てないので現状を載せた感じです。一応、『基本属性全部覚えてるよ〜』という感じで。
では次回、『神なる龍は、龍を嫌う 5』お楽しみに!