神なる龍は、龍を嫌う 1
第7章です。最初からクライマックスです(^・ェ・^)
「嘘......だろ?」
王城が破壊された。上から押し潰すように、神龍が突っ込んで行った。
「は......ははっ、プリ○スミサイルじゃなくて神龍ミサイルってか? ブレーキとアクセル間違えんなよ......」
『何言ってるんですか! 早くリルさんのところへ行きますよ!』
『そうだよお兄さん! 呆けてる場合じゃないよ!』
「あ......あぁ」
王女......死んだんじゃないか? あれだけ豪快に破壊されてたら、流石に死んでそうなんだが......
『よし、観察に戻るとす......ん? 君は!』
破壊された城に近付いたら、飛び上がろうとした神竜に見つかってしまった。
「やぁ、神龍さん。元気そうで何よりです」
『君はあの時の......確か......ルナだったか?』
「そうです。お久しぶりですね」
『そうだな! いや〜ルナと出会う事を楽しみにしてたよ! 君の龍魔法、どれ程に鍛え上げられたのか、凄く気になってたんだ!』
「ッ!......そ、そうですか。その前にひとついいですか?」
『なんだ? 君とは話がしたいんだ。何でも言ってくれ』
神龍と話していたら、何故かウィンドウが出てきた。
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テイムモンスター『リル』の『不滅の愛』が発動しました。
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............この世で1番見たくないウィンドウが出てしまった。
リルが......1度死んだ。
「とりあえず、そこ退いてくれません?」
『ん? どうしてだ?』
「神龍さんの下に、俺の娘がいるんですよ」
『む? 本当か!? すまない、直ぐに飛ぼう』
そう言って神龍は翼を広げて、空に飛ぼうとした。
「あぁ、飛んでくれ......天国に。『不死鳥化』『イグニスアロー』『アウラ』『戦神』『サンダーチャージ』『サンダー』」
バチィィィィ!!!!!!
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『守護者の加護』が発動しました。
『最弱無敗』が発動しました。
『死を恐れぬ者』が発動しました。
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チャージしたサンダーを『俺に』落とし、『守護者の加護』で即死を耐えてHPを1にした。
するとHPが50パーセント以下になるので『最弱無敗』で全ステ2倍に。
この時点で、もうヤバい。だが.....さらにもう1発!
さらにHPが1なので『死を恐れぬ者』で2倍に。
その上『不死鳥化』で2倍にし、『戦神』を使ったイグニスアローを神龍に飛ばした。
2発。たった2本の真っ白なイグニスアローが、神龍の腹を貫いた。
『ギャァァァァ!! 貴様ァ!!! 消してやる!!!』
「殺したいのはこっちだクソ野郎!!!!」
リルを殺しやがって。絶対に許さない。
最初は神龍もテイムしようと思っていた。仲良くなれそうな雰囲気もあったし、何よりも実力のぶつかり合いが楽しそうだったからだ。
だけど、リルを殺されちゃあ気が変わるってもの。絶対にポリゴンに変えてやる。
『ガァ!!!』
神竜が白と黒の混じった、いかにも即死しそうなブレスを吐いてきた。
が、不死鳥化中なので、痛みさえ我慢すれば死ぬ事は無い。だから俺は、ブレスに向かって突っ込んでいく。
こうすることで不死鳥化のHP回復速度を超えるダメージを受け、『死を恐れぬ者』を常時発動できる。
「クソ痛てぇ!!『サーチ』『クロノスクラビス』『サンダーチャージ』『サンダー』『戦神』!!」
ブレスで前が見えないのでサーチで神龍の位置を特定し、クロノスクラビスで動きを阻害しながらサンダーを当てた。
『ぐぅ......効かん!』
「『イグニスアロー』」
ブレスが止んでしまったので『死を恐れぬ者』が発動しないが、とりあえずの攻撃としてイグニスアローを150本出し、神龍に飛ばした。
感情強化や『最弱無敗』の効果でMPが1万を軽く超えているからこそ出来る芸当だ。
『うぐぅぅぅ!!!』
「はぁ......はぁ......『フレイムブレス』」
我慢って凄く疲れる。もうしたくない。
『ッ!? 人間がぁぁ!! その魔法を使うなぁぁ!!!』
神龍は偉くブチ切れた様子でフレイムブレスを避けた。
「『クロノスクラビス』」
『ぐっ!......『龍神魔法:滅光』』
今度は真っ黒なブレスを俺に放ち、神竜は飛んで距離を取った。
「......なんだよこのデバフ」
神竜の魔法を食らったら、デバフで全ステが1になった。
『さらばだ、人間。『龍魔法:インフェルノブレス』』
俺がステータスを確認してる内に、神竜はブレスを放ってきた。
でも、死なない。
「熱い......ステラ、『癒しの光』」
ブレスが止んだタイミングでステラを出し、デバフを解除した。
『何っ!? 何故魔法が!』
「黙れよクソドラゴン」
『散れ!『龍神魔法:グレイシア』』
神竜が魔法を使うと、俺を中心に半径50m程が一瞬で凍りつき、俺の足も凍らされてしまった。
『ガァァァ!!!』
そして俺は、もろにブレスをくらい、膝から下を地面に残してぶっ飛ばされた。
「......部位欠損とか、初めてだな」
『ル、ルナさん......』
「なんだ? フー」
ブリーシンガメンによる回復を待っていたら、フーが恐る恐ると言った感じで聞いてきた。
『あの、さっきからどうしたんですか?』
「どうって、何が?」
何を言ってるんだ?
『神龍に攻撃した理由が分からないんですよ! いつものルナさんなら、そのまま見送るでしょう!? どうして攻撃したんですか!!』
「......リルが1度死んでるからだよ」
『『え?』』
それに、普通なら俺の中に光になって戻ってくると思うんだが......それをしないってことは城の下で王女を守っているのだろう。
となれば、また龍魔法が使われて王女達が狙われるより、ここで戦闘を起こして注意を引くのが1番だ。
絶対に、絶対にリルを死なせてはならない。例えリスポーンするとしても、死なせない。
「フー、神度剣を出してくれ。全開で行きたい」
『......分かりました。補助は「無くていい」......ですよね』
そうしてフーは1度降臨し、神度剣を出してから布都御魂剣に戻った。
『お兄さん。リルちゃんは生きてるんだよね?』
「あぁ。生きてるよ」
『なら神龍はほっといてリルちゃんのとこに行けないの? 戦う意味、無いよね?』
違う。
「ダメだ。俺がリルのところに行って、そのまま神龍に攻撃されてみろ。俺は生き残ってもリル達の方は全員死ぬ」
『......そっか。囮になってるんだね』
「そういう事だ。俺の目的はリルが無事に帰ってくること。それだけだ」
神龍討伐は二の次だ。こんな奴よりリルの方が大事だからな。
「よし。足も治ったし、行くとしよう。フー、使ってやれなくてすまないな」
『いえ、そちらの方が補正が大きいですからね。それで役に立てるなら、本望です』
「ありがとう」
良い相棒を持ってしまったものだ。感謝しかない。
そうして俺は立ち上がり、神龍の前まで飛んだ。
「神龍、なんでお前は龍魔法を狙うんだ?」
これはただ気になっただけだ。どうしてコイツは龍魔法に敏感なんだ?
『それを貴様が知って何になる? 黙って散れ!』
そして神龍は、その長い尻尾を尋常ではない速度で振り下ろし、俺を地面に叩きつけた。
「ぼはぁっ!」
痛い。不死鳥化しているせいで、死なずに痛みだけを感じる。
「痛い。レベル700とか、ぶっ壊れだろあの赤黒トカゲ」
バカでかい図体の癖して、Gさんレベルの速度で動きやがる。
「そうだ。念話で安否確認しておこう」
神竜のヘイトが外れた今のうちに確認しておこう。
『リル。大丈夫か?』
できる限り、優しい口調で。
『だい......じょうぶと言えば、大丈夫ではありません。現在、城の地下通路が神龍に破壊されたので、皆さんで瓦礫をどかして進んでるんです』
『ん? それってどこに向かって伸びてる通路だ? それと地下何メートルくらい?』
閃いたぞ。戦闘を装って、瓦礫をどかせるかもしれない案が思いついた。
『えっと、地下15メートルくらい......ですかね? それで、ドゥルム鉱山の方へ伸びています』
「『サーチ』」
今、丁度城の庭にいるから、ここからサーチを使えば見つかるかもしれない。
『......見付けた。リル、稽古中に渡したメテオラス、持ってるか?』
リル達を発見した。今は大体、城から鉱山のまでの、3分の1くらいの地点にいた。
『はい、持っています』
『ならその中に『サーキュレーション』の魔法があるはずだ。それと『アクアスフィア』を使って、強引に水の中に空気を入れろ』
『分かりました』
『そして水の中にそこにいる人間全員を入れて待機しておけ。そこの天井をぶち抜くから、リルの手持ちの魔法も使って防御してくれ』
『天井を、ですか?......分かりました』
『数分後にしかけるから、その時になったら念話する。それまで準備しておいてくれ。あと、王女によろしく頼む』
『はい。命に変えても守ります』
『それは許さん。俺にとってはリルが1番だ。死んだら怒るからな。じゃあ、気を付けて』
『はい!』
「よし......クソエイムのルナ、ビギナーズラックを装って神エイムを見せるぞ」
作戦はこうだ。
まず神龍のヘイトを買い、アルテによる『魔弓術』を飛ばす。そしてその中に数本、超強化したイグニスアローを混ぜる。
そうして神龍に当たらないイグニスアローをリル達の天井にぶっ刺し、地下から脱出してもらう。
それから、俺が神龍と戦ってるうちに王都の方へ逃げてもらい、リルの安全を確保する。
これでリルと王女達も無事に逃げ、俺は神龍と地獄のダンスを踊る訳だ。
1つ懸念してるのは、リルがこちらへ来る事だ。
きっと言っても聞かないだろうから、その時はその時だな。
「ま、その後はソル達に任せよう。タイムリミットは不死鳥化が切れるまで。それまでにソル達の雑魚処理が終わって援護にくるか......俺が死ぬかで今後が変わる」
こんなクソイベント、さっさと終わらせよう。
「行動詠唱を変更して......よし。やるぞ」
矢を放った後に取りやすい行動に詠唱をセットした。
そして神龍の前まで飛んで、ヘイトを買った。
『まだ生きてるか、しぶとい奴だな』
「そりゃどうも。でも俺はお前みたいに、G並にHPがある訳じゃないんでな。お前の方こそ、早く殺虫されてくれ」
『ほざくか。やはり貴様は面白いな』
「だろ? これでも友達少ないんだぜ?」
『そうか。まぁ、もうじき貴様も死ぬ。友人など必要ないだろう』
「ウザイな、お前。テイムなんて考えなくて正解だわ」
『はっ、だから言っておろうに。貴様はもう死ぬのだから、何も必要ない』
なんやコイツ。めっちゃ煽るやん。自虐ネタをスコップで抉るのは良くないよ。
......よし、作戦を始めよう。
『リル。上から穴を開けるぞ。地下から出たら、フェンリルになってもいいから王女達を王都へ避難させろ』
『!?......分かりました。避難した後は父様の元へ行きます。それだけは絶対です』
『来なくていい......けど助かる。一緒に戦うぞ』
『はい!』
やっぱり来ちゃうか......しょうがない。命を懸けて守ればいいか。
「神竜、これは避けられるか?『戦神』『魔弓術:炎槍』」
そう言って俺はアルテを取り出し、魔弓術を放ちながら、イグニスアローも飛ばした。
それに対し神龍は、魔法の矢を翼で叩き落としながら言ってきた。
『貴様の攻撃は弱いぞ! 私に効かん!』
それはやめてくれる? 心に刺さるから。
推定レベル700vsレベル132の弱ステプレイヤー。
差が大きすぎます.....。多分、最初の一撃で2%くらいしか削れてないのでは? 恐ろしい。
では次回も、楽しんで頂けたら嬉しいです。では!