友達がやって来た!
次回予告?ナニソレオイシイノ?
「お兄さ〜ん! お客さんが来たよ〜!」
ご飯を食べ、リビングでゴロゴロしながら王女育成計画を立てていたらシリカが伝えてきた。
「ありがとう。今行く」
「一応門の前で待たせてるよ!」
「はいは〜い。せんきゅ」
そうして門の前まで行くと、マサキと愉快な仲間たちが待っていた。
「おや? 3人も来たのか」
「「「こんにちは〜!」」」
「一緒に行きたいってうるさくてな。いいか?」
「いいぞ。但し、狭くても文句言うなよ?」
「「「やった〜!」」」
「すまん。ありがとうルナ」
「気にすんな。マイベストフレンド」
「へへっ」
そして4人を中に入れ、庭を歩く。
「近くで見てもデケェ城だなぁ! ってかプレイヤーでこの城に来たの、俺達が最初か?」
「そこまで大きくないぞ? 1階は生産所しかないし、2階はリビングと寝室くらいしかない。それとプレイヤーがここに来たのは2回目だ」
1回目はニヒルのメンバーだな。
「ルナさん、本当にそれだけなんですか? 犬子さんのギルドホームは小さな畑が付いてましたよ?」
「それなら城の裏にある。畑っていうか、農場?」
「「「「農場?」」」」
「ってかなんで疑問符付いてんだ? 見てないのか?」
マサキ、鋭い!
「あぁ。農場には頭を突っ込んで死にかけた以来、あそこは見てないな」
「え? お前、死にかけたのか?」
「意外ですね。俺、ルナさんが死にかけるとこを想像できませんよ」
「「うんうん」」
そう思ってくれてるのは嬉しいけど、普通に死ぬからな。
「魔法で庭を全速力で飛んだら、ズドーンとな」
「あ〜あれか。あの魔法ってどんなのなんだ?」
え、もう鍛冶小屋の前なんだけど......しょうがない。見せようか。ついでにマサキ達にも掛けて、体験してもらおう。
「ほら、『フラカン』」
「「「「わっ!」」」」
皆同じリアクションで宙に浮いた。面白い。
「ちょ! ちょちょちょ、これ、動けんのか!?」
「いや? 俺が動かしてる。ってか4人も一気に浮かすの、結構集中力使うわ。降ろしていい?」
「「「「待って! もう少しだけ!」」」」
え〜......まぁいいか。楽しんでもらおう。
「じゃあ上に飛ばすぞ。心の準備はいいか?」
「おう!」
「「「はい!」」」
「はい。では、天国へ行ってらっしゃ〜い『ウィンドボム』」
フラカンの操作に集中し、ウィンドボムで4人を真上にぶっ飛ばした。
「「「「ピッ......」」」」
庭に強力な風の爆発が起こり、機械音のような声を出してマサキ達は空の星となった。
というか、ウィンドボムが全方位に飛ぶのを忘れてた。そのお陰で俺は吹っ飛びかけたし、芝生が飛んで口に入った。
「ぺっぺっ! おぉ、高いな。ワイバーンの時より高い。俺も行こうかな」
魔法で4人が無事なのは確認してるが、ちょっと怖い。
「やめとこ......じゃあ、地獄へおかえり」
フラカンでの操作を辞め、4人を自由落下させる。
ただ単に操作を辞めてるだけで、誰か一人でも落下地点からズレたら直ぐに修正する。
「「ぁぁぁああああ!!!」」
「「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」
4人が落ちてきたので、フラカンでそっと浮かし、着地させる。
「ほい、おかえり」
「し、死ぬかと思った......」
「俺も......地獄を見た......」
「チビらなかった私を褒めてあげたいです......」
「イリス。貴女はよく耐えたわ......私は半分、気を失ってたわ......」
4人が口々に感想を言う。
「楽しかったようで何よりだ。さ、そろそろ本題に入るぞ」
「「「「悪魔だ......」」」」
「失礼な! 俺は天使だ!」
そう言って翼を広げてみた。どうだこの翼! どこからどう見ても天使だろ!
「「「「天使だ!!」」」」
「ほら行くぞ。着いてこ〜い」
そうして4人を連れて鍛冶小屋に来た。
「なぁ、城の中じゃねぇのか?」
「城の中で鍛冶をしたら、城が火事になって家事をしているソル達も燃えるよな」
「うるせぇ! でも意味は分かった」
分かってくれたようで何よりだ。そろそろ鍛冶を始めたい。
「はい。という事でマサキ君にはレア度10以上の武器を作ってもらいます」
「「「おぉ〜」」」
「まぁ、無理なんだがな......ルナ、やり方を教えてくれ」
「ほいほい。じゃあまず、インゴットの作り方は分かるな?」
前提条件だ。そもそもインゴットが作れないと鍛冶はできん。
「それは分かる。鉄鉱石を炉にぶち込んだら出来るな」
「......まぁ正解だな。では次、オリハルコンなどの鉄よりも融点が高い金属を溶かす時、どうやって溶かす?」
答えは『魔法で溶かす』だ。今のところ、燃料を使ってオリハルコンを溶かすのは、かなり難しいだろう。
「......魔法、か?」
「正解だ。では魔法でどうやって溶かす? 普通のファイアボールとかじゃ、温度が足りんぞ?」
「う〜ん......分からん。魔力を多く流しても、出力は変わらんしなぁ......」
「はい! 私、言ってみてもいいですか?」
マサキが悩んでいると、ルヴィさんが手を挙げた。
「どうぞ、ルヴィさん」
「では。手加減スキルを使って出力を上げる、ですか?」
「半分正解、半分不正解。この場合の完全回答としては、『手加減スキルで出力を上げ、もう1つの魔法で更に火力を上げる』だ。どちらか片方だけじゃ、いずれ限界が来る」
「「なるほど」」
「でもさ、普通の風魔法でそんなん出来んのか?」
「分からん。だが自作の風魔法ではできたぞ? ゴーレム戦でも使ったし、武術大会でも使いまくったぞ」
「という事は、『イグニスアロー』でしたっけ?あれでやってるんですか?」
「そうだ。それにもう1つの魔法を掛けて火力を上げている。まずは見せるから、マサキは別の魔法で代用してやってみろ」
「お、おう!」
安定の『やってみせ、言って聞かせてさせてみせ』作戦だ。
俺は2つの魔法を使い、オリハルコンの鉱石を炉にぶち込んだ。
「これで後は金属の音を聞いて完成だ。ほれ、やってみ」
魔法を解除し、マサキにやらせる。
「『フレイムピラー』『ウィンドアロー』」
おぉ、2つとも知らない魔法だ。名前的に『炎の柱』と『風の矢』と言ったところか?
そしてマサキはオリハルコンを溶かし、鋳型に流した。
「うんうん、上出来だ。後は魔力打ちだな」
「「「「魔力打ち?」」」」
「うん? 知らないのか? ってか言ってなかったか?」
「さぁ、俺は聞いてても忘れてるな」
「俺もですね」
「「私も」」
マジか。なら最初からか。
「魔力打ちってのは──」
マサキ達に魔力打ちのやり方から実践をさせた。
「な、なんだよこれ......こんなのどこの情報にも無かったぞ?」
「あれですかね? フェルさんの弟子になったってやつ......」
「ってことは超重要テクニック?」
「ル、ルナさん! 教えてよかったんですか!?」
イリスさんが切羽詰まった様子で聞いてくる。
確かにこれは言ったらマズイ気がするが、フェルさんは前に『盗まれまくった技術』とも言っていたし、問題ないかな?
何かあったら、腹を切って詫びるとしよう。
「別にいいよ。掲示板に流したきゃ流せばいい。これで次の武術大会でまともに戦えるなら本望だ」
「お前......懐が広いのか自分の為だから許容してるのか、全く分からんな」
「どっちでもいい。刀持ちも増えるみたいだし、マサキも次は刀術部門に出るか? 全力で斬るぞ?」
「わお、ぶち殺宣言ありがとうございます! 是非辞退させて頂きますっ!」
「チッ......とりあえず、それで剣でも作って王女に渡したらいい。俺は少し行ってくる」
「え? どこに行くんです?」
ガーディ君、私は少し用事があるのだよ。
「王女に稽古付けてくる。どうせマサキは時間がかるだろうし、先に済ませようかなって」
「「「「王女に稽古?」」」」
「あぁ、王女がやりたいって言ってな。教える事になった」
「そんなクエストあるのか......知らなかったぜ」
「俺もです。お使い系ばっかだと思ったんですけど、そんなのもあるんですね!」
「え?逆に皆は何を受けたんだ?俺、自己紹介と稽古だぞ」
気になる。今のマサキも、言ってしまえば武器のお使いだし、他の皆は何を受けたんだろう。
「俺は今の武器制作を除いたら、モンスターのドロップ品のお使いとか、弓が欲しいとかで買いに行かされたり、ご飯買ってきたりだな」
「俺も。リンゴとか魔力の実とか、魔力水とかです」
「私は銅の矢を持ってこいと言われましたね。凄く怖かったです」
「私は魔法の杖ですね。『強い杖がいい!』ってうるさかったです」
やべぇ、ツッコミどころ満載なんだが。
「皆......面白い経験してるんだな......ところで魔力の実とか魔力水ってなんぞ?」
ガーディ君の言っていた言葉の気になった事を聞いてみた。
「魔力の実はアルトム森林に生えている木の実ですね。さくらんぼぐらいの大きさの紫色の実でして、これを食べるとMPが1上がるんですよ」
「は? って事はなんだ? 必死こいてMP切れにならなくてもMPは増やせるのか?」
俺の努力......嘘だろ?
「そうですけど、そもそも魔力の実が全然見つからない上に、普通に食べるだけじゃダメなんです」
ん? 見つかりにくいってのは分かるが、そのままじゃダメ? なんだろう、料理にするとか?
「実にMPを1000込めないとダメなんですよ......ですから、皆面倒くさがってSPを振ったり、マナポがぶ飲みで上げてるんです」
「へぇ、面白いな......今度採ってこようかな」
「本気ですか!? やめといた方が......まぁ、そういう事です。それと魔力水はポーションの元ですね。回復ポーションなら、薬草を入れる前のやつです」
「あ〜アレか。なるほどね、ありがとう。それとマサキ、そこで手を止めるな。失敗するぞ」
「おう!」
それにしても、あの水は魔力水って名前だったんだな。調薬にも手を出したいし、勉強になった。
「じゃあそろそろ行こうかな......って思ったけど明日にしよう」
「「「え?」」」
「だってもう夕方だ。それに王女には数日遅れるって言ってあるから大丈夫だ。とりあえずマサキが終わるまで待っとこうぜ」
「「「なるほど」」」
そうしてマサキに鍛冶を教えながら、俺は隣で王女の刀を作り始めた。
「何作ってんだ? それ。剣と言うより、板?」
「刀だ。王女のやつ」
現在、真鍮とオリハルコンと高純度ルビーに魔力を宿し、玉鋼と合金化して出来た、『赤い玉鋼』を叩いている。
「えぇ......そんなのも作れんのか、お前」
「まぁな。一応、さっきマサキに教えた技術と錬金術と雷属性の魔法と砂鉄があれば作れる」
「多いわ! ってかなんで魔法を?」
「玉鋼の為の砂鉄を取るためだ。磁力は雷属性の範疇だからな、磁力を持つ魔法を作ったんだよ」
マグナパイセン、お疲れっす! サンダー先生とチャージ先生とのトリオ、最強っす! 憧れっす!
「ルナさん、採取のために魔法を作ったんですか?」
後ろからルヴィさんが聞いてきた。
「そうだよ。完全に採取用の魔法は1つしかないけど、雷属性の方は砂鉄採取にもサンダーのポインターとしても使えるやつだ。
武術大会の総合部門のラスト、今日犬子君にその魔法で照準を合わせて、あのバカ火力の雷を落としたんだよ」
「「「「あぁ〜、アレ」」」」
皆思い出したようだ。そして答えている内に刀が完成した。
「っし、完成。思ったより綺麗な赤になったな。見た目よし、反りよし、切れ味よし。これで使えるだろ」
「マブダチが隣でクッソ綺麗な刀を完成させた件」
赤と言うより、真紅と行った方が適切な色の刀が出来た。
「凄く綺麗ですね! その刀、名前はなんですか?」
「『スカーレッ刀』だ」
「「「「え?」」」」
「だから、『スカーレッ刀』だ。正式名称は『紅葉刀:スカーレッ刀』」
俺はそう言ってウィンドウを出した。
━━━━━━━━━━━━━━━
『紅葉刀:スカーレッ刀』Rare:15 製作者:ルナ
攻撃力:1300
耐久値:8500/8500
付与効果『属性付与:火』『魔力刃』『魔力増強:900』『魔纏』『刀術補正:大』
━━━━━━━━━━━━━━━
「あれ? 微妙な性能になっちゃった」
「「「「どこが!?」」」」
「いや、全体的に?『斬』も無いし、補正が特大じゃなく大だし、回復系の効果がないから王女も刀も死ぬ」
せめて『耐久値回復』系は付いて欲しかったな。
「お前......どんだけ欲張りなんだよ」
「そうですよ! この刀でも、普通に売ったら1000万はしますよ!?」
「私もそう思います。5つの効果ってだけで高性能ですよ。それも超高性能」
「ホントにね。売ってくれるなら買いますよ?」
そ、そこまでするか? 素材は高純度ルビー以外は簡単に取れるやつだし、頑張っても200万くらいだと思うが......
「ま、王女の練習用の刀だし別にいい。折られたら悲しいが、折らないように俺が教えればいいだけだしな。それと、売らないわ」
「え〜! ルナさん、お金出したら刀作ってくれません?」
急にルヴィさんがそんなことを言ってきた。
「素材を持ってきたらそれで作ってやれるぞ? 金は困ってないから要らん」
「ほ、本当ですか!? なら作ってください! 素材はこれでいいですか?」
そう言って直ぐに『ワイバーンの牙』や『竜核』、『ルビー』に『オリハルコンのインゴット』を出てきた。
「初見の素材もあるが......分かった。期限はどうする?」
「い、いつでもいいです! 出来れば赤い刀でお願いします!」
「はいはい。なら明日か明後日かな? それぐらいにマサキ「父様、ご飯です」......おん」
ルヴィさんに説明していたらリルが入ってきた。
「あれ? 皆さんいらっしゃったんですか。なら皆さんもご飯、ご一緒します?」
「「「「是非!」」」」
「......はぁ、ならご飯の時に話そうか。マサキ、剣は出来たか?」
今日の本題だ。これで出来てなかったらマサキは居残りだぞ。
「おう! バッチリだ! レア度11の剣だ!」
「そうか。なら行くか。リル! シリカ達は?」
「もう揃ってます」
「はいよ〜」
そうしてマサキ達は城に入り、リビングへ連れてきた。
「ただいま」
「おかえり〜! ルナ君! うへ............へ?」
リビングの扉を開けたらソルが抱きついてきた。
だが今は近くにマサキ達がいる。近くにマサキ達がいる。大事な事だ、何回でも言える。近くにマサキ達がいる!!!
「「「「あ〜......ごめんなさい」」」」
「ル、ルナ君......」
「どうした? そろそろ離れてくれないと恥ずかしいんだけど」
「私の方が恥ずかしいよ! だからこうして抱きついてんでしょ!」
顔が見せられないだけか。まぁ、気持ちは分かる。それに、俺だったら死にたくなるかもしれん。
「大丈夫だよ。皆知ってるから。な?」
「「「「う、うんうん! 知ってる!」」」」
凄い棒読みだが、大丈夫だろうか。
「で、でもだよ! 友達の前で抱きつくのは恥ずかしいでしょ?」
恥ずいです。でもここは隠さないと。
「......そうでも無いんじゃないか? それに周りも『あ〜好きなんだな』ってなるだけじゃ?」
「嘘だよね? 恥ずかしいと思ったよね? 一瞬詰まったし、心拍数上がってるよ?」
「聞くな!!」
ってか心音まで聞こえるのかよこのゲーム!!
「ではルナ君。このまま私を椅子まで運んでください。ルヴィちゃん達に顔を見られないように運んでください」
どんな運搬ミッションだよ。ドラゴンの卵か?
「嫌だ。それに食べる時はどうすんだ?」
「後ろを向いてるからルナ君が食べさせて?」
「そっちの方が恥ずかしくないか? ってか今の状況と今の言葉の方が恥ずかしくないか?」
頼む、吹っ切れてくれ。俺もそろそろ限界だ。
「うぅ......む、無理!」
「えぇ......困った」
するとリルが近づいてきてソルに耳打ちしている。
「母様、これならどうですか?」
「う、うん! それならいける! ありがとうリルちゃん!」
そう言ってソルは俺から離れた。何を言ったんだ? リルは。
「それじゃあ改めて。いらっしゃい、皆!」
「「「「お、お邪魔します」」」」
凄くスッキリした笑顔でソルは4人を出迎えた。
「......嫌な予感がする」
リビングに入っていく4人を見ていたら、悪寒が走った。
何も無いことを祈ろう。今はそれしか出来ない。
イベンツッ!キュエストッ!ハジマラナイッ!
次回、『王女、コスプレをする』お楽しみに!