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Your story 〜最弱最強のプレイヤー〜  作者: ゆずあめ
第6章 姫を守る騎士
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選手決定と抜け出せないお布団

花粉の季節が来るようですね!皆様お気を付けください!

 



 体育館中心には、2台のベッドとVRヘッドセットが置いてある。

 正直言って、めちゃくちゃシュールだ。



「よし、それじゃあ月見里と田中、これの使い方は分かるか?」


「「はい」」


「なら始めてくれ。他の皆はこっち来い、見学だ」


「「「は〜い」」」



 という訳でベッドに横になり、ヘッドセットを付けた。



「なぁ月斗。ユアスト以外で戦うの、初めてだよな?」


「ん? そうだな。でも今回は割とマジで負けたくないからな。本気でやるぞ?」


「当たり前だ。常に本気でやれ」



 今回は陽菜と同じ種目に出るという事だけでなく、これで負けたら他の種目にぶち込まれる恐怖がある。


 だから負けられないのだ。



「「ゲームスタート!」」



 俺達はヘッドセットに入っているソフトを起動し、VR空間へダイブする。



『お〜い、2人とも。聞こえるか〜?』



 まだ視界が真っ暗な状態だが、先生の声が聞こえてきた。



「「はい、聞こえます」」


『よし。ならこれからアスレチックをやって貰うんだが......見えてないよな?』


「見えてないですね」


「見えないっす」


『OKだ。なら1分後に見えるようになるから、適当に準備運動をして待っとけ』


「「はい!」」



 って言っても、VR空間で準備運動って意味無いんだがな。でも物理演算がどうのこうの言ってたし、一応ちゃんとしとこう。


 そして準備運動が終わると、先生から合図が来た。



『じゃあ始めるぞ。位置について、よ〜い!』



 いやあの、真っ暗なんですが。位置もクソも──



『始め!!』



 無慈悲にも始まった。始めの合図が聞こえると視界が戻り、アスレチック......という名の断崖絶壁が現れた。


 もうね、マジモンの岩ですよ。ゴッツゴツのデッコボコな岩の壁だ。



「「ん〜??」」



「おい月斗、これどうすんだ?」


「俺が聞きたい。まぁでも、登るしかねぇだろ」


「だ、だよなぁ......」



 そう言えば服がしっかりとしており、靴をもきちんと引っかかる靴になっている。

 岩登りには適してないと思うんですが、どうなんでしょう?



「──っよ、ほっ! っそい!......ここからどうすれば?」



 正樹が1メートル程登り、次の足場に困っていた。

 俺は一旦岩壁から離れ、後ろを見てみると......



「あっ......ははっ!」



 笑いが込み上げてきた。だって、後ろに普通のアスレチックがあるんだもん。細い足場やロープでできた橋など、ごく普通のアスレチックだ。


  いやさ、普通、後ろ向きで始まるか? こんなの気付けないだろ。



「正樹、スマン!!!」


「え?......あ、あぁぁぁ!!! お前ぇぇ!!!」


「ごめん! 許せ!! 俺達がバカだったんだ!!」



 そう言って俺は細い足場や、揺れるロープの橋を駆け抜けていく。



「お、おま! 早えぇ! なんでそんなに早いんだよぉ!! 待ってくれぇぇ!!」


「これくらいなら昔やった! それと俺は待たんぞぉ!」



 体幹トレーニングと称し、これくらい細い足場を走るのは師匠にやらされた。

 あの人、俺達が少しでもバランス崩すと走り直させる鬼畜っぷりだからな。


 稽古の時間内で、どれだけ綺麗に走りきるかを陽菜と研究したものだ。



「──ん? こんな普通のアスレチックでいいのか?」


「い、いいに......決まってんだろ......はぁ、はぁ」



 正樹が息を切らしながら走ってきた。そのペースだと普通に脱落しそうだけど、大丈夫か?



「そうか。じゃあ行くわ」


「う、嘘だろ? お前、どんだけ体力あるんだよ!?」


「いっぱいあります!」



 多分な。この時点でサッカー部の正樹より体力があるってことは、道場時代にどれほど体力が付いたかが分かるんだが......怖いな。


 俺達、アスリートにさせられそうだったのかな。



 そうしてボルダリング的な壁登りや、狭い足場から足場への2メートルジャンプとか、色々なステージをクリアして──



『勝者、月見里!』



「ふぅ......楽しかった。先生! ここで正樹を待ってても良いですか?」


『いいぞ。労ってやれ』


「はい!」



 なんて優しい先生なんだ。普通に『帰ってこい』って言われるかと思ったぞ。

 そして待つこと10分。ようやく正樹がゴールした。



「ひぃ......ひぃ......もう、無理。吐きそう......」


「お疲れ様。正樹と競えて楽しかったよ」


「お前は......どんな......経験、を......積んだんだ? 」


「そうだな、このアスレチックのコース3周分くらいの自作コースを全力疾走?」



 師匠は自分の山で遊びまくってるからな。化け物やで。



「化け物じゃねぇか!」


「ちなみに陽菜もできる......と思う」


「えぇ......? お前ら、人間辞めてる?」


「失礼な! これも過去の経験だ。今も出来ると思ったら大間違いだ!」


「出来るやつに言われたくねぇ! トレーニング方法とかあるなら教えてくれ!」



 とれぇにんぐ? そんな大層なこと、したことがない......



「......まぁ、頑張れ! トレーニングっていうか死ぬ気で鍛え上げたら正樹もできる!」


「筋肉お兄さん!?」


「何その地味に不名誉な呼び方。大体さ、正樹はサッカー部なんだから持久力はあるんじゃないのか?」


「すんませんした。俺、サッカー部なのに持久力ありません」


「ははっ、まぁこれからの努力次第だろ。とりあえず、お疲れ」


「おう! お疲れ!」



 そうしてアスレチックからログアウトし、体育館に戻ってきた。



「という訳で月見里がVRアスレチックの選手だな。正直俺は月見里がここまで出来ることを知らなかったら驚いている。期待してるぞ」


「ありがとうございます。でも期待はしないでください。プレッシャーになるので」


「それはすまん......という訳で選手決めは終わったし、チャイムが鳴ったら解散だ。教室に戻れ〜」


「「「は〜い」」」




 そして教室に戻る最中──




「月斗君、やったね! 一緒に出れるね!」


「そうだな。男女一緒ではないだろうけど、同じ種目だな」


「うん! 頑張ろうね!」


「あぁ、一緒に頑張ろう」




 陽菜と一緒にこの種目を優勝したい。そう強く思った。


 そして家に帰り、ユアストの世界に戻ってきた。




「おはようリル......今日もモフモフだな」



 目を開けると、視界が真っ白だった。



「おはようございます、父様」



 目の前の真っ白な物体が動き、リルのお顔がこんにちはした。



「......近いな」


「えへへ」



 あら可愛い。

 そして可愛い頭をぽふぽふしてみたら、もっと可愛くなった。



「う〜ん......えへへ〜」


「あ、そうそう。近いうちにマサキが来るからよろしくな」


「?......あぁ、あの人ですか。分かりました。と言っても、具体的に何をすれば?」


「特に何かする訳でも無いな。鍛冶のやり方を教えたり、素材を渡すくらいか? あと、王女の所にも行かなきゃな」


「マサキさんと行くのですか?」


「いや? 今のは順番ミスだ。マサキと別れたあと、俺は王女のとこで稽古を付ける」


「なるほど。今日も父様と一緒の時間は短いのですね......」



 そんなこと言うなよ......悲しくなるだろ?



「まぁ、すぐに終わる依頼でもないし、ゆっくり時間をかけてやるから、そこそこ早く帰れるはずだ」


「本当ですか?......ならお留守番しておきます」


「うん、いい子だ。それと外に行きたかったら、ソルに伝えて一緒に狩りに行ってもいいし、そこら辺は考えて動くといい」


「はい!」



 いや、王女と一緒にリルも刀術のレベル上げをするか?

 う〜ん......どうしようか。王女とリルの両方を鍛えられるし、丁度良いと思ったが......リルの身分証が無いんだよなぁ。


 そう悩んでいたら、ソルがログインしてきた。



「ル、ルナ君!? どうしてここに!?」



 あ、自分から俺の部屋に来たの忘れてるな?......ちょっとからかってみるか。



「ソルに会いたくて来たよ」


「え!?......そ、そうなの? で、でも! お布団に入るのは、その......不味いんじゃないかな?」


「あら? 母様がこちらに来たのでは? 私はいつも父様と寝てますし、ここに母様がいるなら母様がこちらに来るしかないと思ったのですが......」



 Oh......からかい計画はリルによって粉砕された。



「あっ! お、思い出した......うぅ、恥ずかしい」


「「何を今更」」


「ルナ君は恥ずかしくないの!? 女の子と一緒に寝て!」


「語弊のある言い方をするな! それにな、昔は時々泊まりに来てたろ? ウチに。別にそこまで恥ずかしくは......あるかもしれん」



 陽菜はよく家に遊びに来てたし、お泊まりもした事がある。

 でも今考えると、結構恥ずかしいかもしれん。



「で、でしょ〜? ほら、私達は仲良し恥ずかしなんだよ!」


「落ち着け。とりあえず布団から出ろ。それからご飯作ろう」



 現在、ゲーム内時間11時。昼ごはん時だ。



「う、うん......もう少しいちゃダメ?」


「いいけどダメだ。俺が恥ずかしい」


「え〜いいじゃ〜ん! おねが〜い!」


「ダメだ。早く退かないとご飯無しだぞ?」


「それは嫌。直ちに動きます」


「よろしい。リル、先にフーとシリカを呼んでくれ」



 どうせだし、皆でご飯を作ろう。その方が楽しいだろ。



「シリカさんは呼べますが......フーさんは父様の中では?」



 そうだ、フーがぶっ壊れたからインベントリに仕舞ったんだった。



「忘れてた。じゃあシリカを呼んできてくれ」


「は〜い!」



 そうしてフーは庭の方へ走っていった。



「......で? 結局動いてないソルさんはいつ動くので?」


「も、もう少し......もう少しルナ君のお布団に......」



 頑固なやつだ。俺の布団にくるまっているソルは可愛いが、恥ずかしさが勝ってしまう。



「はぁ。もうそろそろいいだろ? 朝......じゃない。昼ごはんを作るぞ」


「......ふぅ。もう満足した! ご飯作る!」



 ようやく動いてくれるようだ。長かった。長く(精神的に)苦しい戦いだった。



「早く行こう。マサキも来るし、今日は楽しくなるだろうな」


「うん! 楽しもう!」



次回、『弟子の弟子と娘と弟子』

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