体育祭の選手決め
ちょっと王女から離れます。それどころかユアストから離れます。
でもVRからは離れないので、OKです。
でも幸s(ry
ログアウトしたら晩ご飯を食べ、風呂に入って寝た。
そして朝──
「おはよう地獄。今日から学校だ......行きたくねぇ」
ゴールデンウィークが終わってしまい、普通の学校生活が戻ってきてしまった。
「やだぁ......行きたない。永遠にゲームして生きていきたい......」
そんな出来もしないことを口にしながら、朝の用意を終わらせ、普通に登校した。
「おはよう陽菜三郎」
「おはようお月ちゃん」
「なぁ、今日って何かあったっけ? ゴールデンウィーク前の記憶がないわ。教えてくんろ?」
「えっと今日はね──」
そうして陽菜と雑談し、後から正樹も入って会話を楽しんでいた。
俺、朝に皆で話すのって結構楽しいと思ったよ。
「なぁ月斗。イベントクエストやったか? 王女のやつ」
「あぁ、やったぞ? まだ2つくらいしか終わってないけど」
「おぉ、思ったより全然やってなかった。俺は13個くらいやったんだけどさ、王女の要求がハンパねぇんだよ」
「え? そうなのか?」
そんなに難しいのがあるのか......ネタバレが含まれてるだろうが、王女の要求については結構気になる。
これから先、イベントクエストで躓いた時のヒントにしたい。
「田中君、どんな要求されたの?」
すると陽菜が正樹に聞いていた。
「聞いて驚け。『武器を作ってくれ』って言われたんだ......レア度10以上でな」
「「ふ〜ん」」
「なんで驚かねぇんだよ! こんなの常人に出来るわけねぇだろ!?」
「正樹、オリハルコンとアダマントの合金を使えば、レア度10なんて簡単に超えるぞ?」
「え? 何それ?......って思ったけどアレか。ダイヤモンドゴーレムのヤツか......全然確認してなかったわ」
「で? 田中君はそれ、クリアしたの?」
「いや、まだだ。だから月斗にアドバイスを貰おうと思ったんだけど......もう貰っちまったな」
「いやいや。ただ鍛冶スキルでカンカンしても良いのは出来ないぞ? ちゃんとやり方があるんだから、それを教えるよ」
「マジで!? 今日教えて貰ってもいいか?」
「いいぞ? 時間はそっちに任せる。適当に城に来い......あ、場所は知ってるか?」
「当たり前だ。知らない人間の方が少ないぞ?」
え?
「「怖っ!」」
「って思ったけどアレだけ空飛んで、氷漬けのワイバーン持って帰ってたら分かるか。
......まぁ、不法侵入とかされてないし、別にいいや」
「まぁ、プレイヤーギルドのホームだもんね。リアルの家じゃないし、そこまでかな?」
今度、信頼出来る人なら招待してみようかな。特に何か出せる訳でもないけど、適当に遊ぶ感じで。
「じゃあ学校終わったら城行くわ。よろしくな、月斗」
「ほいほい」
鍛冶の弟子が出来るのかな?フェルさん、マサキらあなたの又弟子になるよ。やりましたね。
そしてチャイムが鳴り、ホームルームが始まった。
「今日のホームルームはお知らせだ。6月にある体育祭の種目が決まったから、選手になりたいやつは6限の時に手ぇ挙げろよ〜? 以上だ。1限目の用意して待ってろ〜」
担任から発せられた言葉で思い出した。
「......体育祭、忘れてた」
「月斗君は何に出たいとかある? 私は無いんだけど」
去年は何をしたか思い出そうとしてたら陽菜に聞かれた。
「俺も無いな。それに今年は何の種目があるか分かんないけど、リレーは確定だろ?」
「そうだね。体育祭だし、あると思うよ?」
「ならリレー以外だ。あの競技は『疲れる』『転けるの怖い』『周りからのプレッシャー』という3つの精神負荷がかかる。だからリレーだけは出ない」
俺からしたら、リレーの時の周りからの『頑張れ!』は『追い抜かねぇとぶっ飛ばす!』って言われてるの同義だ。
「確固たる意思だね! なら私もリレー以外にしよっかな」
「え? どして? 陽菜は足速いし、いいんじゃないのか?」
「え〜? だって、月斗君と同じのに出たいもん」
「エ゜」
そんな可愛いこと言うなよ! 俺の心臓が止まったぞ!?
「ふふっ、カエルが車に轢かれる直前みたいな声だね!」
「何その的確なツッコミ。怖いわ!」
「で、何か他に出たいのはある? 出たくないやつは言わなくていいよ」
「なら無いな。基本的にどの種目もしんどいし」
「体力あるのに勿体ないねぇ? きっとリレーでも活躍できるよ?」
「ええねん。自分が楽しめる競技なら進んで出るけど、リレーは追い込まれるから、苦手なんや」
どうせ、前には運動部の化け物が走ってるし、後ろからは少しずつ距離を詰められる。
そんな状況になったら緊張で足がもつれ、転けるだろう。
「道場時代の月斗君はどこに......真っ直ぐで可愛かったのに......」
「真っ直ぐじゃないし可愛くない。とりあえず6限までは放置だ。もし面白そうなのがあったら出ることにする」
「うん、そうしよ! 新しいのがあるといいね!」
そうして何事もなく、6限目の時間を迎えた。
「はい、授業という名の選手決めだ。まずは種目書いてくから、適当に心の中で決めとけよ?」
担任が黒板にどんどん種目を書いていく。
リレー、徒競走、玉入れに綱引き、騎馬戦や借り物競争何かもある。
「で、今回は理事長が見てみたいって言うので、こんなヤツも追加された」
そう言って先生が書いたのは『VRアスレチック』だ。
「「「VRアスレチック?」」」
教室の皆がハモった。
「そうだ。一応全員知ってると思うが、VR技術については理解してるな?知らない奴は手を挙げてくれ。この競技に出るにあたって、その辺の知識が必要になる」
そして誰も手を挙げないのを確認してから続きを言う。
「この競技はVR空間で行う競技だ。実物でやっても良かったんだが、安全面を考慮してVRでな。それで、内容はアスレチックを踏破する速度を競うというものだ」
そこまで先生が言うと、正樹が手を挙げた。
「先生、いいですか?」
「おう、いいぞ」
「それはリレーみたいに複数人で出るんですか?」
「いや、違う。各クラスから男女1人ずつ選手を選び、クリアしていくんだ」
「ありがとうございます!」
へぇ〜、1人ずつか。VRなら慣れてるし、出てみようかな。
「とまぁ、ここまで聞いて、軽くゲーム感覚でやる奴もいると思うが、俺は正直オススメしない」
「「「え?」」」
「いやな、教師陣は競技のテストとして1度やってみたんだが......めちゃくちゃ難しかったんだよ。物理演算がしっかり働いているから正確に力を入れないといけなくてな......転けまくりだった。それもめっちゃ痛いぞ」
ん? それは先生方がVRに慣れてないだけでは?
ユアストやFSは物理演算が嫌なくらい完璧に働いているし、FSなんかは特に、痛覚まで結構再現されている。
そういう環境に慣れれば、問題なく動けると思うんだけどなぁ。
──痛いのか......なら俺やめとこ。
──私も〜
──だな。VRなのに痛かったら意味ねぇだろ。
おや? これはチャンスでは? 行くしかないだろ!
「はい! 俺、やってみたいです」
「わ、私も!」
「俺も!......って、え?」
俺と陽菜、それに正樹が手を挙げた。
「ん? 月見里と田中、それと鈴原か。女子はもういないか? このままでいいなら鈴原が女子代表になるけど」
女子は誰も手を挙げなかった。
「なら女子は鈴原だな。で、男子だが......2人だけだな。じゃあどうやって決める? ジャンケンか? 話し合いか?」
どうしようか。ジャンケンとかいう究極的に平等で不公平な試合に持ち込むか、少ない語彙力で正樹をゆさぶるか......
すると正樹が手を挙げて言った。
「そのVRアスレで決めれません? 早かった方が選手って事で」
「ほぅ......面白そうだな。ちょっと待ってろ、校長に聞く」
そう言って先生は携帯デバイスを取り出し、校長に連絡を取っていた。
「月斗、勝負しようぜ!」
「......マジ? 筋肉量まで再現されてたら俺、負ける未来しか見えないんだけど」
「大丈夫だって! どうせ同じくらいだ!」
「えぇ......?」
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まさき に しょうぶをいどまれた!
◇にげる ◆たたかう ◇はなしあう
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戦うしかねぇよなぁ!? やってやんよぉ!!
「──2人とも、許可が出た。他の競技の選手が決まったら体育館行くぞ。そこに準備してある」
「「はい」」
「ついでに他の奴らも強制で観るぞ。どんな感じか1度、頭に入れとけ。他のクラスにも配信されるから、そこら辺の心配はしなくていいぞ」
え? 配信されるの? めっちゃ怖いんやが......
そうして俺が恐怖でプルプル震えていると、陽菜が話しかけてきた。
「月斗君、絶対勝ってね! 一緒に出よ?」
「分かった。全力でやる。今までのゲーム経験、全部注ぎ込むわ」
あぁ、俺って単純。陽菜に言われたら何でもやっちゃいそう。
そうして他の種目の選手決めが終わり、俺達は体育館に来た。
ちょっと戦闘に近い何かを感じながら描いていけたらな、と思います!
それでは次回は正樹とのアスレ勝負です。お楽しみに!