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Your story 〜最弱最強のプレイヤー〜  作者: ゆずあめ
第6章 姫を守る騎士
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王女育成ゲーム

王女を育てよう!

 



 俺は王女の前で、手加減スキルを使ってワイバーンをほぼ真っ二つにしたり、魔法でボコボコにして見せた。

 あ、ちゃんとワイバーンが死ぬ前にステラの『癒しの光』で回復させてあるぞ。だからワイバーンからしたら、死にたいのに死ねないという、最悪のコンボが決まっている。



「王女、見たか? ワイバーンは鱗が硬い。だから狙えるならワイバーンの鱗と鱗の隙間を狙え」


「分かりました」


「次、魔法を撃つ時は相手の動きに合わせて、先読みして撃て。これは『偏差撃ち』という技術なんだが、弓矢にも応用が利く。必須技術だ」


「分かりました」


「最後に......相手に臆するな。例えどんなに醜い見た目でも、どんなにえげつない攻撃手段を持っていようと、自分の心を折る事だけはしてはいけない」


「それは『逃げてはいけない』という事ですか?」


「違う。『戦意を失うな』という事だ。戦う意思があり、相手と自分の力量差を知った上で逃げる事は大切だ。恥でもなんでもない。勇気ある行動だ。

 だがな、心を折った人間というのは、簡単に諦めるんだよ。それこそ『死んでもいいや』と思い、逃げることすらしない程に。だから戦意を、生きる心を折るな」


「分かりました」



 モンスターと戦う上で大切な事は粗方教え終わっただろうか。

 名言に沿うなら、『やってみせ、言って聞かせて』が終わったところだ。


 次は『させてみて』だな。



「とういうことで王女。コイツを殺れ」


「せ、せめて武器は何とかなりませんか? 訓練用の物では傷を付けることすら......」


「ならコイツを貸す。折ったら割とマジでこの国滅ぼすからな」


「は、はい」



 そう言って俺はステラを渡した。これはソルと一緒に作った聖魔剣だ。

 太陽光を浴びるだけで耐久値が回復するが、もし折れたら俺の心ごと折れちゃう。


 それこそ、このゲームを辞めるくらいに。


 いや、それは盛ったわ。多分すぐに諦めがつくだろうな。



「では、参ります」


「頑張れ。ちゃんと見ているから安心しろ」


「はい!」



 もしワイバーンが動き出したら即座に魔法を使わないといけないからな。ちゃんと見ないと。



『今のセリフ、ソルさんにも行ってあげてくださいね』



 急にフーが話しかけてきた。ってか今の、ソルに言う必要があるか?



「いつも目に穴が空くほど見てるぞ?」


『それはキモイですよ? そうじゃなく、『ちゃんと見ている』ことを伝えてあげてください。そうすればソルさんは喜びますよ?』


「分かった。なら言う。喜んでもらう」


『単純ですね』



 そうして王女の戦闘を見守り、ワイバーンが動き出したら魔法で封じ、王女に攻撃をさせた。

 動きの悪い所は修正点を頭の中で出し、見本として俺がやって見せてから王女に言って聞かせた。



 するとみるみるうちに王女の戦闘能力が上がっていった。



『ガ......グァ......』



 ワイバーンがポリゴンとなって散った。



「ほ、本当に出ました......『スキル書:龍魔法』」


「よく頑張ったな。今日の経験はより王女を強くするだろう。これからも頑張れ」


「はい! ルナさん、ありがとうございました!」



 王女がスッキリした笑顔で言う......が、



「まだ魔法の稽古、始まってすらいないからな。これからフー大先生の魔法講座だ。心して聞け」


「そ、そうでした! というよりルナさんがしないのですか?」


「俺は人に教えるのは苦手だからな。それも魔法とかの、論理的な物は殊更無理だ。こういう時は適材適所、元魔法の女神の知恵を借りるんだ」




 そうして、フー先生による、ありがた~い魔法講座が始まった。




「――という原理で、魔力が『不安定な状態』で『安定』するんです」



 講座が始まって3時間。俺も王女と一緒に聞いていたのだが、俺も雷属性魔法の理論を理解してしまった。

 ついでに、習得していなかった『土属性魔法』と『聖属性魔法』、更には『闇属性魔法』も習得してしまった。



「ありがとうございました。丁寧なのに分かりやすく、テンポよく進めて頂いたのですぐに理解出来ました」


「それは良かったです。ルナさん、これで基本属性はコンプリートですか?」


「あぁ。お陰様でな。ありがとう、フー」


「いえいえ。これからも頼ってくださいね?」


「もちろんだ」



 フーは俺の第2の相棒であり、メイドであり、魔法の先生だ。頼り甲斐しかないぞ......ポンコツだけど。



「それで王女、龍魔法を使った新しい魔法、思いついたか?」



 一応、王女には2つの選択肢を出した。

『龍魔法を使った新しい魔法』か、『既存魔法(雷含め)を使った新しい魔法』の2択だ。


 王女は前者を取り、龍魔法の理論を覚えたのだ。



「それが......中々アイデアが出なくて、結構悩んでるんです」


「そうか。ならまずは『カテゴリ分け』からだな。王女、お前は『殺す』魔法を作りたいのか? それとも『守る』魔法を作りたいのか? 或いは、『補助する』魔法を作りたいのか? どれだ?」



 龍魔法というカテゴリが決まっているなら、そこから更に細かく分けるだけだ。

 俺ならこの3つに分ける。そうすることで、よりイメージを正確に固め、魔法の質を高めることが出来るからな。



「私は......私は、『殺す』魔法を作りたいです。ですが、できれば『無力化』がいいです」


「何故だ? 言ってしまえば、殺すことも無力化に入るぞ?」


「これは私のわがままです。相手を死なせずに、気絶程度にしたいのです。私は生き物を殺すのが苦手なのです......昔、戦闘訓練としてインフィル草原に行った時、インフィルボアを倒す事が......殺す事が出来ませんでした」



 あ〜あれか。血が苦手とか、グロいのが無理なタイプか。



「そかそか。なら2つほど案があるぞ」


「本当ですか!? 出来れば教えて頂けませんか?」


「それは別にいいんだけどさ、片方は手足がぶっ飛ぶから、グロい光景を作ってしまう上に、ちゃんと処置をしないと死ぬぞ?」



 俺の考えている2つの案は、『ウィンドブレス』と言う名前にして、送風機の超強力バージョンにして攻撃する案と、『スモークブレス』と言う名前で相手の目を闇属性魔法で潰す案だ。


 王女がこれを呑むかは分からない。だけど、これでさえ呑めないのなら『殺す』魔法は無理だろう。



「構いません。教えてください」



 王女はハッキリと言った。なら俺も応えよう。



「分かった。俺の案は――」




 俺は2つの案を王女に言った。そして王女の出した回答は――




「『ウィンドブレス』を採用したいです」




 マジか......1番血が流れる方なんだがな。訳を聞くか。



「どうしてそっちを?」


「いざと言う時、相手の首も飛ばせるからです。本当に戦わざるを得ない状況で、相手の無力化に拘っていたら私は死ぬ気がするのです。ですから、自分の身を守るためにも『ウィンドブレス』を採用しました」



『採用したい』から『採用しました』になったな。

 それ程までに決意が固まったのだろう。



「そうか。お前がそう決めたんなら後は突っ走るだけだ。愚直に進み続けろ。何度失敗しても、お前なら出来るよ」



 こんな短時間であれだけの答えを出したんだ。きっと出来るだろう。



「はい! 見ていてください。私の新しい魔法を!」


「へ〜い」



 そうして王女は新しい魔法、『ウィンドブレス』を習得した。



「......出来ました。これで私も、強くなれましたかね?」


「さぁな。フーから見たらどうだ? 王女は強くなったか?」



 するとフーは驚いた目で俺に言ってきた。



「る、ルナさんが王女様を強くしたんじゃないですか!! 訓練前の王女様を一般人とすると、今は軍人のトップクラスの戦闘力ですよ!?」


「「え?」」



 どうしたんだろう。ずっと魔法を教えていたから、疲れたのかな?



「おいおい。冗談はよせ。こいつがそんなに強い訳ないだろ?」


「そうですよ! 私がそんなに強くなる訳ありません!」


「なら聞きますけど、へっぴり腰で剣をプルプル震わせて攻撃してた人間が、動けないとはいえ、ワイバーンを自力で倒せますか!? えぇ? 無理ですよねぇ!!」


「分かった。分かったから落ち着け!」


「落ち着いてられますか! あんな弱い人間を育てた人は無自覚だし、育てられた本人も無自覚。どこの主人公ですか、えぇ?

 無双ですか? モンスター相手に無双するんですか? 本にします? 王女様、今回の経験は本にしますか? タイトルは? え?『語り人最強の人に稽古を付けてもらったら国で最強の王女になりました』ですか? 良かったですね! 語り人の方はそういう本は大好きですので、きっと沢山売れますよ?」



 やばいやばいやばい! フーが壊れた!



「......降臨、収納」



 フーを刀に戻し、インベントリにないないした。



「......」


「......」


「......」


「......」



 無言がつらい。クエストクリアの通知も来ねぇし、どうすればいいんだコレ。



「あの、とりあえずありがとうございました。今回の依頼は以上とさせていただきます」



 ━━━━━━━━━━━━━━━

『イベントクエスト:王女に魔法を教えよう!』をクリアしました。

 ━━━━━━━━━━━━━━━




「おう。お疲れ様。王女はよく頑張ったよ」


「いえいえ! ルナさんの教え方が上手だからですよ。まず手本を見せてくださいますし、そこから言葉で教えてくれました。そして私にさせてみせ、改善点を教える......完璧でした」


「そうか? なら今後も、俺が出来る稽古なら付けようか?」


「い、良いのですか!? それなら私、あれをしてみたいです!『刀術』を!」



 おやおや。まさか俺の1番の得意分野で来るか。良かろう、貴様を最強の王女にして見せよう。



「いいぞ。なら次の依頼はそれにするか?」


「はい! また明日、是非とも宜しくお願いします!」



 ━━━━━━━━━━━━━━━

『特殊イベントクエスト:王女に刀術を教えよう!』


 概要:王女は刀を持っていないので、プレイヤーが用意してあげてください。

 もし王女の刀術スキルが進化した場合、特別な報酬があります。頑張ろう!

 ━━━━━━━━━━━━━━━



 ほう、特殊か。報酬アップのチャンスだが......100もレベルを上げるの、無理じゃね?『最弱無敗』無しで上げ切るのは至難の業だぞ。



「そうだ王女。明日から勝手に城に入っていいか? いちいち衛兵に身分証を見せるの、面倒臭い」


「はい、構いません。これからもいらっしゃってください」


「あいよ。なら明日から無断で入るから、よろしく〜」


「はい! お疲れ様でした!」



 そうして俺は王城の敷地内の訓練所から、直接空を飛んで帰った。


 んでもって、飛んでる時に思った。今ね、深夜だわ。フーのテンションがおかしかったのって、深夜テンションが入ってたんじゃないかな?



「ただいま〜......疲れた〜」


「お疲れ様、ルナ君。ご飯にする? モフモフにする? そ・れ・と・も――」



 おいおいおい。玄関を開けたらソルがエプロン姿でスタンバってた上に、とんでもないこと言いそうだぞ!?





「――9本のモフモフにする?」





「まずはご飯で。その後にモフります」


「はいは〜い! なら行こ! リルちゃんとシリカちゃんは先にご飯食べて寝てるから、後は私とルナ君とフーちゃんだけなの!」


「ん? ソルは一緒に食べなかったのか?」


「うん! ルナ君と一緒に食べたかったから!」



 ぐふっ......うちの彼女が可愛すぎる件。



「なら一緒に食べよう。フーはちょっとやらかしたから、インベントリに収容した。だから2人で食べよう」


「うん! フーちゃんが何をやらかしたか、教えてね?」


「あぁ、勿論だ」



 そうしてソルと一緒にご飯を食べ、尻尾と髪をモフり、サラサラのツヤツヤにしてから寝た。

 モフってる時にフーの事を話したが、ソルは苦笑いしていた。



「あ、もう現実でも夜か......王女に訓練が遅れること言わないとなぁ」



 という訳で、ログアウトする前に全速力で王城へ飛び、真ギュゲの力で気配を隠蔽して机の上に手紙を置いておいた。



「忍び込んですまん。急用だ、許してくれ」



 他意は無いので、問題ないだろう。

 そして帰りも全速力で飛び、部屋に戻ってくるとソルがいた。



「王女と密会? ルナ君」


「違うぞ。ログアウトして現実でも寝るから、訓練が何日も遅れるって内容の手紙を置いてきただけだ」


「本当に? 信じてもいいの?」


「逆に俺、何を信じられてないんだ?」


「ううん。全部信じてる」


「なら信じてくれ。ほら、部屋に戻りな。リルが暴れるぞ」


「暴れないよ!......それと今日はここで寝る」



 えぇ......起きたら隣にいたパティーンでは無く、そもそも最初から一緒に寝るパァティーン?



「あの......それは恥ずかしいっす」


「だめ。今日はルナ君成分が少ないもん。ここで補給する」


「な〜んか危ない感じにも聞こえるが......はぁ。分かったよ。奥に寄ってくれ、狭い」


「うん! 3人で川の字で寝るの、夢だったんだ〜!」


「リアルで? それともここ(ゲーム)で?」



 やべぇ、結構ハードル高いこと聞いちゃった。俺のアホ。



「う......り、りありゅで」


「そ、そうですか......と、とりあえず、おやすみ」


「お、おやすみ」



 嬉しいね。俺達が成長したら、それも出来るかもしれないな。

 1人の人間として、俺も成長しよう。

怒られたら即、中身変更です.....ゆるちて(´;ω;`)


次回はリアルでの月斗君をちょろっとやりたいですね! ではでは、お楽しみに〜!

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