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Your story 〜最弱最強のプレイヤー〜  作者: ゆずあめ
第6章 姫を守る騎士
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氷漬けの、記憶とワイバーン

夜寝て朝起きる生活に幸せを感じています(^・ェ・^)


 




「ざ、ざむ゛い゛でず、ルナざん......」



 ニクス山に着いて早々、フーが泣きついて来た。



「自前の魔法は無いのか?」


「無いのでばやぐまぼうを......」



 もはや何を言っているか分からないが、寒いと言いたいという事は分かった。

 だって、もう日が沈みかけてる雪山だ。昼間とは圧倒的に気温が低いだろう。



「『サーキュレーション』ついでに『イグニスアロー』」



 フーの周囲に風を纏わせ、外気温をシャットアウトした。そしてついでに、弱くしたイグニスアローをカイロ代わりに近くに飛ばした。



「ありがとうございます! 優しいですね!」


「お前なぁ、本当に優しいやつは最初からこうしてるぞ?」


「そうですね! なら、この鬼畜! 鬼! 悪魔! 堕天使!」


「そうかそうか。サーキュレーション、解除」


「びゃぁぁぁぁ!!! すみません! それだけは辞めてぇぇ!! 寒いですぅぅ!!!」


「『サーキュレーション』」



 なんでフーはこうも極端なのか......俺もか?



「ワイバーン、探すぞ」


「あの~、探してどうするんですか? 下見って言ってましたけど、倒さないんですよね? それに、見つけた所で他の人に倒されたら意味が無いですよ?」


「でぇじょうぶだ。氷漬けにして家に持って帰る」


「うわぁ......それって、ワイバーン死にません? っというか王都がパニックになりません?」


「大丈夫だろ、多分」


「また適当なこと言って......私は一緒に怒られませんからね?」


「別にいい。王都で暴れたらフーで真っ二つにするだけだ」


「うへへ......真っ二つに出来るという信頼......いいっすねぇグへへ」


「うわキモ」


「酷いです!」



 ソルが時々する、外でしちゃいけない表情をしていた。怖い。



「ほら、フー。こっち来い。空飛んで探すぞ」


「は〜い......ってお姫様抱っこですか!?」


「あっ......なら手だけ掴んで「いや! そのままで!」......面倒くせぇ〜もう魔法だけでいいんじゃ」


「いやぁぁ!! 夢がぁぁぁ!!!」



 今度はリルみたいな事を言い始めた。

 俺はフーを抱っこして、そのまんま真上に飛んだ。.....全力で。



「なぁ、ワイバーン見えるか?『サーチ』」


「見えるわけ無いでしょう! バカなんですか? 高く飛びすぎですよ! 雲より高いところから見えたら変態ですよ!?」



 そう、ちょっとした遊び心で雲より上に飛んだのだ。



「ん?......おい、雲の上飛んでんじゃん、ワイバーン。ここまで来て正解だったな」


「嘘でしょ!?」



 サーチを使って下の方を見てたが、景色に違和感を感じて顔を上げると、雲の上をワイバーンが飛んでいた。

 これからワイバーンを狙う時、ここぐらいまで飛ぶのが良さそうだな。



「じゃ、行くぞ。『ウィンドボム』」



 俺はワイバーンの方に体を向け、足の裏にウィンドボムを炸裂させた。



「きゃぁぁぁぁ!! 早いぃぃぃ!!!」



 何時ぞやのニクス山激突事件を彷彿とさせるが、俺も学ぶ男だ。ボムに注ぐ魔力を調節して、狙ったところまでしか飛ばないようにしている。



『ガァ!? ガァァァァァ!!!』



 ワイバーンは一瞬驚いていたが、俺達の存在に気付くとブレスを吐いてきた。



「『クロノスクラビス』」



 ブレスは魔法によって消え去ったが、問題がある。




「フー、邪魔だわ」



「えぇぇぇ!? 嘘ですよねぇ!?」



 という訳でフーを刀に戻した。



『何で......何でこんな事に......』


「いや、指パッチンが出来ないと行動詠唱に設定してる意味が無いし、フー重いし」


『嘘だ。貴様は嘘をついている!! 私は断じて重くない!!!』


「そうか? 何キロあるんだ?」



 話してる間もワイバーンがブレスを吐いてくるが、クロノスクラビスで消滅させる。



『私はよんじゅ......何言わせようとしてんですか!』


「そういや体重計ってあったっけ? ってか言おうとしたのはお前だ。聞いたのは俺だが」


『体重計はキッチンにありますよ......計りと同じ所に』


「はぇ〜知らなんだ。でさ、そろそろアイツ氷漬けにしていい?」


『勝手にしてくださいよ。そろそろご飯の時間ですよ? 怒られても知りませんからね!』



 もう21時に近いらしい。早く帰らないと、ソル達を待たせてしまう。



「ふぅ......『アクアスフィア』『クロノスクラビス』」


『ガグァ!?......ガ、ガ......』



 ワイバーンを覆い尽くす程のアクアスフィアを出し、その『魔法自体を凍らせた』こうすることでワイバーンの氷漬けができる訳だ。



「あ、『フラカン』......あっぶねぇ、落とす所だった」


『落としても良かったですけどね!......で? それ、どうやって持って帰るんですか?』


「ん? インベントリに......入らないわな。知ってた。とりあえずウチの庭まで浮かして持ってく」


『そうですか。がんばれ〜。ふぁいとぉ〜』


「クソほど適当な応援、ありがとう」




 そうして氷漬けのワイバーンを城の庭まで持ってきた。




「――よし、これでいいだろう。念の為に......『アクアスフィア』『クロノスクラビス』『アイスウォール』『アイスエリア』」



 二重のアクアスフィアとそれを入れる箱の様なアイスウォール。仕上げに庭を凍らして完成だ。



「あ〜あ、お庭が凍っちゃってまぁ......」


「すまん。マジですまん。でもこうしないと溶けそうじゃん?」


「ルナさんが解除しなければ、丸一日は持ちますけどね......その辺、勉強不足ですよ?」


「すんません」



 今知ったわ。魔法ってそんな長い時間持つのか。



「とりあえず家に入るぞ。寒い」


「自業自得なんですけどねぇ?」




 そうして晩御飯を食べ、庭に置いてあるワイバーンの氷像(生きてる)を皆で見ていた。




「ルナ君......掲示板でとんでもない事になってるよ?」


「知らん。別に王都を荒らす気で持って帰った訳じゃないし、溶けたら責任は全部俺持ちだし、いい」


「いやね? そういう危惧をされてる訳じゃなくて、『何かあの人、一段とヤベぇことしてる』って感じの意見が大半だね」


「へぇ〜......皆、楽観的に見すぎでは?」


「違うよ。ルナ君なら大丈夫って、信頼されてるんだよ」


「信頼、ねぇ......?」



 そうして皆でリビングに戻り、いつも通りゴロゴロしていた。



「そうだ。リル、おいで」


「はい、何でしょう?......んにゃっ」



 俺はソファに座っていたのでリルを呼び、近付いてきたリルを抱きしめた。



「どうしたんですか? 父様」


「そうだよルナ君! どうしたの!?」


「ん〜? いやな、リルの生い立ちを知ったからな。感謝の気持ちだ」


「「生い立ち??」」


「そう。リルがフェンリルになる前の、『普通の狼』の時の事を知ったんだよ」



 リルは俺にテイムされた時、『普通の狼として死ぬ運命から救ってくれた』と言っていたが、きっとアルテミスが何かしたんだと、俺は思う。

 多分、神の権能的な力で、アルテミス自身の事を忘れさせたんじゃないかな......



「父様......それは本当ですか?......どこまで知っていますか?」


「『狼の厄災』の時、だな」



 俺がそう答えると、リルはこちらをじっと見てから聞いてきた。



「その事を知った時......父様はどう思いましたか?」



 リルの目には涙が浮かんでいた。

 きっと怖いのだろう。既に人を食っている事が。

 それに俺がどう反応するかが、もっと怖いと思ってるはずだ。



「そうだな......感謝、かな?」


「感......謝?」


「そう。リルが生まれた事に感謝したよ。アルテミスに殺されず、フェンリルとして育てられた事に感謝したし、あの時アルトム森林で出会ったことに感謝した」


「うっ......うぅ......」



 リルが泣いて抱きついてくるのを、優しく受け止めた。



「あの時にお喋りした事にも、戦ったことに感謝した。そしてテイムされてくれた事にも感謝したさ。......それとな、もっと感謝した事があるぞ」


「うぅ......なん、ですか?......」



 んなもん決まってる。このゲーム内で、俺の中での1番大きな物だ。



「リルが娘として、一緒に居てくれる事に感謝した」


「うわぁぁぁん......父様ぁぁ!!......」



 リルが大泣きして抱きしめてくる。それに優しく力を入れて返した。



「ルナ君......リルちゃんの何を知ったの?」


「後で教えるさ。リルがどんな風にしてフェンリルになったのか、少しだけな」



 少しだ。本当に、本当に少しだけだ。あの絵本にリルの全てが描かれているなんて思ってはいけない。

 きっと、あれ以上につらい経験や苦しい経験をしたはずだ。

 それをあの絵本で全て知った気になって話したら、俺は終わりだろう。



 そうして15分程リルは泣いたら、泣き疲れてそのまま眠ってしまった。



「ソル、このゲームのストーリー......というか、歴史について知ってるか?」


「ううん。何にも知らない」


「だよな。でさ、歴史といえば本が思い付くだろ?」


「そうだね」


「王都に本屋......あったか?」


「え?......確かに無いね。どうしてだろう?」


「ゲーム的に言えば、それはこの世界の歴史を知るに相応しくないからだろう。俺達が読んだ本って、魔導書くらいだろ? それも、魔法の理論が書いてある本だ」


「うん。じゃあ何処で歴史を知るんだろ?」


「さぁな。でも今回のイベントで知れたぞ......フェンリルが生まれた経緯の絵本をな」



 それから絵本の内容について、細かく話して言った。



「......なるほどね......だからリルちゃんはこんなに泣いて......」


「あぁ......フーに聞いたが、それも何百年も前らしいし、そもそもそこまで覚えてないらしい」


「そっか......」



 するとソルは俺の隣に座り、尻尾を9本出した。

 そして尻尾をリルの上に乗せ、手でリルの頭を撫で始めた。



「可愛いリルちゃんの壮絶な過去......私達に受け止められるかな......」


「さぁな。でも、リルが本当に聞いて欲しくなった時は逃げずに聞くさ」


「うん。私も一緒に聞く。リルちゃんは私達の子だよ」


「(仮)......なんだがなぁ......一応」


「ゲーム内くらい、いいじゃん。家族の練習だよ」


「......そう......だな......」




 ソルの尻尾が暖かくて、俺もそのままソファで眠ってしまった。




 そして朝――




「ふわぁ......おはよう」


「......お、はよぉ......ございま......」



 目を開けると俺の上にリルが乗っており、その上にはソルの尻尾が乗っていた。



「暖けぇ......2度寝したい............ってそうじゃなかった! 王女の稽古!」



 俺がギリギリで2度寝を自制して叫ぶと、ソルが起き始めた。



「んむぅ......ケイコ? だぁれ?」


「人の名前じゃないぞ。クエスト内容だ」


「ん〜......ちゅ〜「しないわ!」」



 なんで寝ぼけたソルとキスするんだ! 恥ずいわ!



「ほら、起きろ! 朝ごはんにするぞ!」


「「は〜い」」



 そうして2人を起こし、皆で朝ごはんを食べた。



「「「「「ごちそうさまでした!」」」」」



「フー、王城行くぞ。俺も龍魔法で新しいの作りたいから、知識をくれ」


「は〜い、分かりました〜!」


「えぇ〜! フー姉ちゃんばっかりズルい〜!」



 フーを連れて行こうとすると、シリカが駄々を捏ねてきた。



「じゃあシリカ、お前は人に魔法を『分かりやすく』教えられるか?」


「んぐっ......む、無理だね......はぁ、諦めるよ」


「すまんな。ってかシリカは何が出来るんだ?」


「戦闘だね! これでも元戦神だし、戦闘なら得意だよ!」



 戦闘か......そういえばシリカの武器はまだ作ってなかったな。



「そうか。ならリルに体術を教えてやってくれ。きっと今後の戦闘に役立つだろうからな」


「何かそれ、前にも言われたような気がするけど......うん、分かった! リルちゃんにみっちり仕込んどくよ!」


「あぁ、ほどほどに頼むよ。それじゃあ行ってくる」


「「「行ってらっしゃい」」」



 3人に見送られ、俺達は城を出た。そして氷漬けのワイバーンの前でフーに言った。



「フー、刀で。賄賂作戦はもうやらないからな......『フラカン』」


『は〜い......その魔法、好きですねぇ』


「飛行と浮遊ができる魔法だぞ?好きにならない理由がない。これは全魔法使いの夢が詰まってるんだ」

 

『さいですか。まぁ、そのワイバーンを落とさなければ何でもいいでしょう』



 最後は適当になったな、フー。




 そして城門前まで来ると、衛兵さんがきちんと警備していたので軽く会釈してから言った。




「すみません、ワイバーン持ち込んでいいですか?」

ルナ君、衛兵さんに対するロールプレイモドキは辞めちゃったんでしょうか.....

それにリルの記憶のズレやアルテミスとの関係.....うむむ.....


さてさて、次回から本格的にイベントクエストを進めるようです。楽しみ!


次回、『王女魔強化計画』です!お楽しみに!.....ふふ。

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