イベリス・ロークス 2
前書きに何書くか忘れました。てへぺrrrろ
「この絵本に出てきた、アルテミスが連れ帰った狼のフェンリル。この子は俺の娘だ」
「え?......どういう事ですか?」
「そのまんまの意味だ。俺の娘はフェンリルなんだよ。アルトム森林で出会い、戦って勝ち、テイムして仲良くなった......それで何故か娘になった子だ」
全部ぶちまけちゃった。
「ルナさん、言っちゃっていいんですか?」
フーが小声で聞いてきた。答えはもちろん決まっている。
「ヤバいに決まってんだろ。ついポロッとぶちまけたけど、これで国から狙われたら終わりだ」
「何やらかしてんですか!」
「いや、だってさぁ......ってかフーはアルテミスと友達なんだろ? ならアルテミスがフェンリルを育てたの、知らなかったのか?」
知っていたなら事前に教えてくれることも可能なはず。
リルの実親(?)的なアルテミスの事を、 さ。
「知りませんよ。アルテミスさんとは仲良しですけど、流石に個人でやっていた事を......それも数百年前の事なんて覚える気もありませんよ!」
「え〜マジか。まぁでも、狙われたら逃げるとしよう。皆で逃避行するぞ」
「そうですね......国は面倒ですからね......」
あ、もしかしてフーさん、過去に国関係で何かやらかしたな? だから王女にもビビってたんだろう。
するとイベリス王女が口を開いた。
「あの......妄想ですか?」
おっとぉ? 精神異常者扱い受けちゃった?
「そう思いたきゃ思ってくれていいよ。信じるも信じないも、アンタ次第だ」
俺の中では、このフェンリルの話はリルだと確信している。
まぁ、この絵本がフィクションで、話の中のフェンリルも空想上の物なら......俺の勘違いってだけだ。
「まぁ......半分は冗談だと信じます。ですが、もし本当なら......」
「なら? 本当ならなんだ?」
捕まる? 殺される? 実験台にされる? さぁ、どうする?
「本当なら、是非とも私の騎士になって欲しいです」
「「なんでやねん」」
フーと一緒にツッコんだわ。なんで騎士やねん。
「王女、お前には騎士がいないのか?」
「はい、いません。話は戻りますが、私の騎士については依頼にも含まれているのですよ」
「へ〜そうなのか〜」
イベントのタイトル的に、やっぱりプレイヤーが王女の騎士になるのかな?
「......」
「......」
「......」
「何この無言タイム!? 何か喋ろうよ!?」
急に皆黙っちゃったよ。こういう時、どうすればいいんだ?
「あの......依頼、受けますか?」
「偉く下手に出たな。王女なんだし、命令とかしないのか?」
「しません。そんな事をしても、相手への印象が悪くなるだけですから」
いや、『妄想ですか?』の時点でかなり印象が......まぁいいや。こんなの話せば、話がめんどくさくなるだけだわ。
「道理だな。で? 依頼は? 内容によっちゃ受けるぞ?」
超上から目線で言っちゃった。俺、うぜぇ〜
「では、最初の依頼です。『自己紹介をしてください』」
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『イベントクエスト:自己紹介をしよう!』
概要:王女イベリス・ロークスに自分の事を紹介しよう!
相手に自分のことを知ってもらい、円滑にクエストを受けよう!
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「だってよフー。自己紹介してあげな」
「えっ! ?私ですか!? 今の、どう聞いてもルナさんに......」
「ほら。わっちゅあねーむ?」
もうここまで来たらノリと勢いで進めていく。結果がどうなろうと、楽しませてもらうぞ。
「え、えっと......フーです。ルナさんのメイドをさせて頂いてます。元女神です」
「フーさん、ですね。宜し......くぉ元女神!?」
あ、食いついた。アルテミスのファンらしいし、女神には興味あるのかな。
「はい、そうですよ。今はルナさんのメイド兼、付喪神ですね」
「え? ど、どういうことですか? 付喪神?」
おぉ、なんか面白い事になりそう。傍観していよう。
「えっとですね、まず付喪神が何かは分かりますか?」
「も、もちろんです。父上である、陛下の武器も付喪神が宿っていますから」
「なら、それと同じようなものです」
「で、でも! あの方はフーさんのように、人として現れては......」
「あ〜......それは武器の質が悪いのでしょうね......私が宿ったのはルナさんのお作りになられた刀です。この世界に存在する刀で、2番目に高性能と言える程の刀でしたので、こうして降臨しているんですよ」
全部言っちゃうのね。でも、2番目? じゃあ1番目は? ってか布都御魂剣ってそんなに強いの?
「ル、ルナ様がお作りになられた......あの、つかぬ事をお聞きしますが、1番の刀はどのような刀なのか、ご存知ですか?」
ナイス王女。俺もそれは気になってた。
「そうですね、そちらの刀もルナさんが製作した『クトネシリカ』という刀です。付喪神的に言えば、私の妹にあたりますね」
「え!? そちらもルナ様が!?」
え!? そちらもワタクシが!?
シリカ......お前、刀で1番らしいぞ。良かったな。
まぁでも、言われて見ればクトネシリカの方が『形状変化』や『魔纏』なんかも使えるし、高性能ではあるな。
「フー、そろそろ話を自己紹介に戻そう」
「そうですね、分かりました。え〜っとですね......どこまで話しましたっけ?」
あ〜あるある。つい数十秒前の会話を忘れるの、分かるわ〜
「フーがメイド兼、付喪神のところだな」
「そうでした!......でも、それぐらいしか話すことがありませんね。強いて言うなら、もっと構って欲しいとか、それぐらいですかね?」
「ん? 時々遊びに行ってんじゃん。もっと遊びたいのか?」
構って欲しいって自分から言う人ってあんまりいないよな。
客観的に自分を見て、周りからの評価として『構って欲しい』と言えるのは良いと思うけど。
「そうじゃないんですよ! 最近のルナさん、1人で遊びに行ったり、ソルさんやリルさんを連れて行ってるじゃないですか!」
「せやな」
「わ・た・し・も! 2人で遊びに行きたいですぅ!」
「そうか。ソルに浮気と言われたくないから、シリカも連れてくけどな」
「うぐぐ............はぁ......」
ソルの謎の浮気センサー、恐ろしいからな。
2%でも引っかかるような言動をすれば、即プッチンしちゃう。
だから、例え相手がフーでも気を付けなければならない。
「ふふふっ、仲良しなのですね」
「「そうか? / そうですか?」」
「ほら。同じ事を言っていますし、以心伝心しているのでしょう」
まぁ、帯刀するならフーだからな。一緒に何処かに連れて行くとしても、神度剣を持っているフーを連れて行くだろう。
そこそこ一緒にいれば、相手の考える事は分か............らねぇわ。俺にはそこまで相手の心を考えるのは難しい。
「で、フーの自己紹介は以上でいいか?」
「はい。フーさん、ありがとうございました。ではルナ様。ルナ様の自己紹介をお願いします」
あ〜ダメか。身代わりで回避する事は不可能か......
「はいはい。じゃあ.....俺はルナだ」
以上。
「「え?」」
「ルナさん! 他に言うこと沢山あるでしょう!?」
「何言ってんだ。大会優勝者とか、そこらへんはもう知ってんだからいいだろ?そうなりゃ言う事なんて無いんだよ」
部屋の出待ち魔法の時、『流石ですね、総合部門優勝者様』と言ってたからな。
「え〜でも、種族とかはいいんですか?」
「王女さんよぉ。俺は見ての通り、人間だ。彗星と間違われたりするが、人間だ。あいむひゅーまん」
天使だけどね。
ってかフー、そんな『しょっぱいと思ってた物が激甘だった時』見たいな顔をするなよ。笑うだろ?
「そう......なんですね。彗星は気になりますが、ひとまず飲み込むとしましょう」
「あそうだ。あと冒険者やってるわ。Cランクだけど」
忘れてた忘れてた。身分証でギルドカードが使えるんだから、この情報は必要だろう。
「おぉ、冒険者! いいですね。私も王族でなければ、冒険者をしてみたかったものです」
「あっ......そう」
知ってるぞ、これ。『国に隠れて冒険者になろう大作戦』のフラグだろ?
残念だったなぁ! そのフラグ、バキバキに粉砕してやるわぁ!!
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『イベントクエスト:自己紹介をしよう!』をクリアしました。
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あ〜これ、マジでフラグ立った? 折れ。折るんだ!
「あの〜......ルナ様、もし「ダメに決まってんだろ。仕事しとけ」......えぇ!?」
「ルナさん? いいんですか? 何も聞かずに答えちゃって」
「当たり前だ。どうせ『私、冒険者になりたいんです! どうか一緒に登録させてくれませんか?』的なやつだ。で、それが王に見つかって面倒な事になる。テンプレだからな」
「へ〜そうなんですね。王女様、冒険者登録をしたかったのですか?」
お、その確認は助かる。勢いで言っちゃったから、合ってるかどうか分からなかったんだよな。
「はい。私も外で戦いたいのです」
「ほらみろ。大体な、王女よ。ちゃんと『次の依頼です』って最初に言わねぇと面倒だろ? まず結論から言ってくれ。自分が何をしたいか、それを最初に言うといいぞ」
俺が出来てないのに何言ってんだ? 勢いで話すの、危険が危ない。
「そ、そうですね。すみませんでした」
「ルナさん......遂に頭が......」
やめてよ。自分でも思ってるんだからさ。死にたくなる。
そうして王女の次の発言を待っていると、部屋の扉が開いた。
「失礼します。イベリス様、訓練のお時か......そちらの方は?」
「セバス! あ、この方は「アルと申します」......え?」
秘技! 話めちゃくちゃ大作戦!!!
説明しよう! 話めちゃくちゃ大作戦とは、1人目の人物に本名を、2人目の人物に偽名を教え、話す人ごとに口調を変えて、お話をめちゃくちゃする作戦だ!
これで王女も混乱することだろう!......すまん。
「お客様でしたか。これはすみません。私はイベリス様の執事をしています、『セバス』と申します」
そう言って俺達の机の近くでお辞儀をしたのは、いかにも執事っぽい、白い髪に丸い眼鏡をかけた、60歳くらいのおじいさんだった。
「アルです。弓術が得意なCランク冒険者です。今回は、イベリス様から依頼を受けに来ていまして、ご迷惑をかけると思いますが、宜しくお願い致します」
「いえ、イベリス様のお願いなら、是非とも叶えてあげてください。宜しくお願い致します......それで、イベリス様。魔法の稽古のお時間ですので、お呼びに来ました」
俺の自己紹介が終わってセバスさんが王女の方を見たので、俺もフーの方を見てみると、フーの顔は死んでいた。
なので、小声で聞いてみた。
「大丈夫か? 体調でも悪くなったか?」
「私の頭がおかしくなりました......なんで偽名を......? 捕まりますよ......?」
「大丈夫大丈夫。何とかなるから」
「根拠もない自信......凄いですね......」
もう引くに引けないとこまで遊んでしまったんだ。今更本名を伝えたところで、信用が一気に地に落ちるだけなんだよ。
「あの、少し宜しいですか?」
フーとコソコソ話していたら、王女に話しかけられた。
「何でしょう?」
「これは『依頼です』私に魔法の稽古をつけて頂けませんか?」
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『イベントクエスト:王女に魔法を教えよう!』
概要:王女は基本属性を『雷以外』習得しています。そんな王女が使える魔法を増やしてあげよう!
どんな属性でも問われないので、自分だけの魔法も教えられるよ!
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育成ゲームかよ、これ。
「いいでしょう。お受けします。属性は何が良いですか?」
「私は『火』『水』『風』『土』『氷』『聖』『闇』の7属性が使えますので、その中から新しい魔法を作りたいのです」
「そうですか......分かりました。では、お時間を頂いてもいいですか?」
「時間、ですか? どれくらいでしょうか?」
「そうですね......明日のお昼まででお願いします」
「お昼ですか!? な、何故それほどの時間を?」
「王女様にお教えする魔法の為ですよ。王女様には、より良い魔法をお使いになって頂きたいので、その準備の為です。ダメですか?」
いやまぁ、これが『王女育成イベント』なら、面白そうな事が出来そうだと思ったから時間が欲しいんだけどな。
王女からの依頼をこなすだけのイベントじゃ、つまらないだろう?
だからちょっと、他の人より斜め上の行動を取りたいだけだ......もう取ってると思うけど。
「分かりました。今日はセバスに教えてもらいますが、明日はル......アルさんが教えてください」
「はい。もちろんです。ではイベリス様、セバスさん。失礼します......布都御魂剣、降臨」
俺は立ち上がり、部屋から出ていこうとしたが、フーが全然動く気配が無かったので刀に戻した。
「「!?」」
『えぇ!? いいんですかぁ!?』
「良くない。でもいいんだよ。どうせ王女は話せないだろうからな」
『何故です?......あの執事さんになら、先程までの会話を話すと思いますけど......』
俺は部屋を出て廊下を歩く。
「あのな、ホープダイヤモンドやフーの話をあれだけしておいて、王女からの信用が無いと思うか?」
『え? 無いんじゃないですか?』
「ならなんで、最後に俺を『アル』と呼んだ? ならどうして、明日の昼まで待ってくれると言った?」
『......どこまで考えていたんですか?』
はははっ! FSでも良く言われる『何手先まで読んでんだ?』と同じ事を言われるとはな。
正直に答えよう。
「何も考えていない。だけどな、あの王女は面白いぞ。絵に例えることができる」
『何も考えてないんですか!?......まぁ。で、絵とは? また頭がおかしい事を言うのでしょう?』
うるせぇ。それはいつもの事だ。
「あの王女はな、真っ白なキャンバスと言える。俺達......正確には俺の裁量しだいで、ゴミにも傑作にもなるんだよ」
『はぁ〜頭おかし』
「だからな。ちょっと遊び心を爆発させまして......あの王女に『龍魔法』を覚えてもらおうかな〜って」
『はぁぁぁ!? 龍魔法!?!?』
とんでもねぇ驚き様だな。こっちがビックリしたわ。
『な、なんで龍魔法を?』
「だってアイツ、雷以外使えるんだぞ? つまりは魔法の土台がある訳だ」
『そ、そうとも捉えられますね』
「そんで、普通の奴ならその土台の上に、知識や経験と言ったものを積み上げていくだろう?」
『そうですね。他にも努力などがありますね』
「あぁ。だがな、アイツは基本属性分の土台しかないとも言えるだろ? 俺、長所をもっと伸ばすより、短所を無くしていく方が大事だと思うんだ」
『読めましたね。つまりは土台を広げるわけですか......魔法の』
「魔法だけじゃねぇ。アイツには実際にワイバーンとかとも戦ってもらう」
『はぁ......もう何が言いたいか分からなくなりました』
ここまで話したところで城を出たので、ニクス山に向かって天使の翼で空を飛んでいく。
「魔法だけ覚えても、使い方を知らなきゃダメだろ?」
『......だからってワイバーンで魔法を教える必要は無いのでは?』
「あるさ。初めてワイバーンを倒した時に、龍魔法のスキル書はドロップする。
これは前にソルに聞いたんだが、マサキやガーディ君達も同じタイミングで入手したそうだ」
初めてワイバーンを倒した時、マサキ達は4人同時にスキル書がドロップしたとの事。
だから、ワイバーン初討伐の報酬として、確定でスキル書があるのだろう。
『つまりは何ですか? 王女にワイバーンを倒させてスキル書を使わせ、それから魔法を教えるんですか?』
「いぐざくとりぃ」
その通りでございます。
『なんか、変な方向に突っ走ってます。......それと晩ご飯、どうするんですか? もう王都を過ぎてますけど』
「ご飯までには帰るさ。ソルをモフりたいからな」
『ならなんで北西に飛んでいるので?』
「アイスワイバーンがいるかどうかの下見」
『えぇ!? なんで今からなんですか! 明日でもいいじゃないですか!』
もう......いいじゃん。ちょっといい感じにワイバーンを確保したいだけなんだよ。
「フー、黙って俺に着いてこい」
『......それはソルさんに言ったらどうですか? 喜んで答えると思いますよ?』
「言える訳ねぇだろ!! そりゃあ、いつかは言いたいけどさ......」
『ならなんで私に言ったんですかねぇ......まさか、乗り換え?』
「別にそういう意味で言ったんじゃねぇっての。とりあえず見てろって事だよ」
『面倒臭い人ですね〜......今更ですけど』
本当に今更だな。でも、なんか腹立ってきた。
「折角2人で遊ぼうと思ったのに、インベントリに入っとくか? 正直、ステラでも十分なんだけど」
『すみません!! お願いですからどうかお傍に!!!』
「面倒臭い付喪神ですね〜......今更ですけど」
『むきぃ!!! ムカつくぅぅ!!!』
そんなたわいもない話をしながら飛行し、ニクス山に来た。
「『サーキュレーション』......ほら、ワイバーンで遊ぶぞ」
王女の前だと、ルナ君はふざけ倒します。
それに、実はもう既に何度も分岐ルートを突っ切ってますね。怖い。
次回も既に完成していますので、ゆる〜くお待ちを〜