慣れない指揮とジョーカー
朝起きて
まだ寝ていたい
そう思い
二度寝決行
起きたら八時
ゆずあめ
あ、今回はピギー視点です。
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ピギー(ピグレット)side
『ワォォォーン!!』
来た。フェンリルだ。今日こそぶちのめしてやる。
「盾持ち! 正面6、左右2で挟んで! 弓持ちは魔法使いの合図で一斉に攻撃を!! 近接は後ろ足から狙って!!!」
「「「おう!!!!」」」
私、あんまり指示を出して戦うのは得意じゃないんだけど、今回は私が言い出したこと。責任を持って指示を出そう。
「弓部隊! 魔法部隊! 5秒後です!」
「「「はい!!!」」」
良かった。私の指示の裏で魔法使いの子が動いてくれた。
「......殺るぞ」
今回は私も弓で戦うので一緒に撃つ。
FSでのスナイパーの経験からか、遠距離戦が得意だからね。
この二百数人の中で、誰よりも遠距離戦の経験があると自負している。
「今ッ!!!」
盾役が一瞬引いた隙に、弓部隊と魔法部隊が一斉に攻撃する。
「目を......狙って......ここ」
精密射撃は得意だもん。弱点を狙うしかない。
『ぐぬぅあぁ! 右眼がァ!!!』
「ほ、本当に喋るんだ......あっ、盾持ちは復帰して! 近接は片方の足を集中!!」
「「はい!!」」
今回は前衛が約50人ほど、後衛は約150人で構成させれている。
前衛がヘイトを買い、足を切って隙を作り、その隙に後衛の火力を叩き込む。
さぁ、こっからは私が魔法部隊にも指示を出そう。
「魔法部隊! ポーション無かったら私に言って! 結構買い込んでるからね!!」
「「「はい!!!」」」
私は指揮も出しす関係上、攻撃の手数が減る。だから補給兵としての役割もする。
全員が攻撃できなくても、せめて半分は攻撃させて、その間にMPが切れかけのプレイヤーにポーションを渡したい。
『ワォォォォォォォン!!!』
「「「!?」」」
急にフェンリルが大きな声で鳴き出した。
「みんな注意! 何か来るよ!! 近接は引いて、盾は構えて!!」
「「「おう!!!」」」
するとフェンリルは、白いオーラを纏い始めた。
「バフ......かな。魔法部隊! バフが使える子は盾持ちに掛けてあげて! VIT優先で、次点でAGIね! 回復が出来るなら全力で!」
「「「了解!!!」」」
どうやらバッファーは男性が多いようだ。意外。
「手の空いたバフを使える子は魔法部隊のバフを! INTのバフね! 使えなかったら攻撃に回って!!」
「「「はい!!」」」
これで魔法部隊は纏まるだろう。あとは弓と近接だ。
「弓は継続的に撃って! 矢が切れたら魔法にチェンジ! 魔法が無理なら近接で! 全体のダメージに少しでも貢献して!!」
「「「はい!!!」」」
一応、私もある程度魔法と剣と槍は使える。
槍は別ゲーで培った技術があるし、剣はリアルで剣道を習っていたからそこそこ出来る。
そして30分程、フェンリルとの攻防が繰り広げられた。
『うぅ.....貴様らァァァ!!!』
血のポリゴンを流しながらフェンリルがそう言うと、攻撃が激化した。
「弱ってる! ここで畳みかけるよ!!!」
「「「「「おう!!!!!」」」」」
全員がそう判断し、一気に攻撃を叩き込んだ。が──
「判断ミスだね」
「ッ!?」
急に誰かに耳元で話しかけれた。誰!?
あっでも、こういう時って大体知ってる.....人.....
「えっ、マジで誰?」
「僕だよ。ジョーカーさ」
あ、分かった。翔か......確か海外では『ジョーカー』って呼ばれてたもんね。
「どっちで呼べば? それと判断ミス?」
「できればジョーカーでお願い。判断ミスは......見ての通りかな」
ジョーカーの指の指す方向を見た。
そこには、フェンリルの前に立っていた最後の盾持ちのプレイヤーがポリゴンに変わる瞬間だった。
「嘘......」
「こういうゲームのボスってさ、弱ったと思わせて攻撃は激化するでしょ? そこでプレイヤーは一旦引くべきだよ」
そうか、攻撃が落ち着くまで耐久すれば良かったのか。
「ど、どうしよ......これはヤバい」
「まぁまぁ。僕がここにいるから大丈夫さ! 僕が君を勝利に導こう!!」
急に何を言い出してんだか......ホントに翔なの?
「痛いね.....可哀想に.....」
「黙って。首切るよ?......とりあえず見てなよ。『魔糸術:糸氷』」
ジョーカーがそう唱えると、フェンリルが凍りついた。
「え!? 何それ!! 最高じゃん!!!」
「ダメ......アイツは僕のレベルで抑えられるほど弱くない。持って10秒、その間に立て直して」
何だコイツ、天才か? 厨二と思わせて完璧なサポートしたり、やっぱり翔は頭が回るな〜
「う、うん。ありがと!......魔法部隊! マナポーションは私の後ろに置いとくから勝手に持ってって!! 弓部隊! フェンリルを囲むように広がってから射撃して!」
「「はい!!!」」
「次! 残った近接は一旦引いて回復を!!」
「「了解!!」」
『ぐぬぬぬ......ガァァァ!!!』
フェンリルを拘束していた氷が砕けた。
「僕の役目はこれで終わりたいんだけど......いい?」
「ダメに決まってんでしょ? ここでどっか行ったら頭ぶち抜くよ?」
「は〜い......豚め」
「殺す」
コイツ......許さない。毎回毎回、豚って呼びやがってぇ......!!!
「きゃ〜怖い! 今はそんな場合じゃないでしょ?」
「うっざ!! ジョーカーってよりピエロかな?」
「それは嫌だね。僕、ピエロ恐怖症だし。それにジョーカーの方がカッコよくて好きだし」
「知らないよ! ピエロ、やるよ!!」
「首、切り落とすぞ?......はぁ、ニヒル相手にはロールプレイ難しいなぁ」
こっわ。ってかロールプレイしてたの? タダの情緒不安定な厨二病だったけど。
「あ、矢が切れた。『フレイムアロー』『ファイアアロー』!」
ジョーカーと話しながら矢を撃ってたら弾切れになった。ここからは魔法で攻撃しないと。
「そんな魔法あるんだね『魔糸術:糸炎』」
「友達から教えてもらった。大会の魔法で2位の子だよ」
「誰? 最後以外見てなかったから知らない」
「なんで!? って事は総合部門以外見てないの!?」
「うん」
アホかな?......全く、数少ない私のリア友であるルヴィちゃんの戦いを見ないとは、悲しいね。
「まぁ、今度紹介するよ。いい子だからね?」
「強い? 上手い?」
「強い」
「じゃあそこまで仲良くなれないかも。ルナレベルでカモン」
「アホ!」
何で頭のキレるプレイヤーとしか仲良くなれないのか、意味がわからない。何? インテリぶってんの? ぶちのめすよ?
「大体ね、アル......ルナくらい強くて上手いプレイヤーってそんなにいないよ?」
「自分であのレベルを言ったけど、正直アレはバケモン。一緒に戦ってて思うけど、毎回引いてる。ちょっと前に作戦の立て方とか教えてもらったけどさ、理解出来たの4割だけだった」
「あ〜......これは4割『も』理解出来た君を褒めるべきか、4割『しか』理解出来ないような作戦を立てるルナを褒めるべきか、悩むね」
「僕を褒めて。僕はまだ、人間だからさ」
な〜に言ってんの。
「ニヒルのメンバー、皆人間辞めてるよ?『フレアボム』」
「やだぁぁぁ!!!『魔糸術:糸雷』」
私達の攻撃がフェンリルにどんどん当たっていく。
『ぐぅ......まだだぁ!!『月魔法:月華』』
「「えっ! 魔法!?」」
これには私もジョーカーもビックリだ。フェンリルが魔法を使うなんて、噂にも聞いたことが無い。
「......何か起きた? 私分かんない」
「う〜ん?......あ、あれだね。前衛のところ」
そう言われて前衛の方をよく見ると、桜の花びらの様な物が舞っていた。
――ぐわぁぁ!! 痛てぇ!!!
――避けろ! この花びら、攻撃だ!!
――うわぁぁ!!!!
前衛プレイヤーの叫び声が聞こえた。
「「嘘でしょ......」」
風に舞う花びら全てに攻撃判定があるなんて、ヤバすぎでしょ。
「前衛部隊、全員引いて!!!」
「......ダメだよ。もうアレは無理」
「うっそでしょ!? 魔法部隊! MPある!?」
「無いです!! 攻撃手段もありません!!!」
「マジかぁ......詰み?」
「詰みだね。僕はまだ糸も剣もあるけど、ピギーは?」
「私も剣と槍かな......2人で殺れる?」
「そう思ってるのなら君、勇者だよ? 奉りあげようか?」
「やめて?......はぁ、勝ちたかったなぁ」
「......今回は通りすがりの僕だけど、それは同感かな。折角ここまで削れたのに、全部パーになるのは見てて悲しい」
はぁ......ため息しか出ない。こんな時、アテナやアルがいればなぁ......
「ルナでも助けに来てくんないかな〜。それならワンチャ「いいぞ?」......ン......って」
「「え?」」
「俺も参加していいか? 楽しみにしてたんだよ、フェンリルと戦うの」
「「ルナ!?」」
私達の後ろには、見慣れた顔の、全身真っ白な服を着た翼の生えた天使がいた。
「皆のアイドル、ルナちゃんだぞ☆ ところで、そっちのピンクはピギーなのは分かる。分かるんだが......そっちの君は分からない」
「あ、コイツは「待って」ん?」
ジョーカーが私の言葉を遮ってきた。
「僕が誰だが、当ててみてよ!! 最強くん?」
何コイツ。頭イカれてる?
「おっけ。でもちょっと待って。『クロノスクラビス』」
『なにっ!?』
ルナが謎の魔法を唱えると、フェンリルの動きが止まった。
「よし、ちょっと考える......」
「えぇ......?」
今、何したの? 何で普通に考えようとしてるの?
「君は......魔糸術を使ってたよな?」
「あぁそうさ!! 良く見てるね?」
「ふむ......でもこのテンションで話す人物は知らん。だけど、最初にフェンリルを凍らせた時、君は『事前に仕組んでいた』よな?」
事前に? どういうこと? あの場でスキルを使って凍らせたんじゃ?
「......よく見てるね」
「ま、その用意周到な感じというか、ピギーと仲良さそうなのを見る限り、お前、翔だろ?」
わお、正解。でも普通、それだけで分かる? 正直言って気持ち悪いんだけど。
「バレた。ロールプレイはもうしないでいいかな」
「え? ロールプレイだったのか?......なんか、ごめん」
「謝らないでくれる? 死にたくなるからさ......」
おぉ、大ダメージだ。
『ワォォォーン!!』
「あ、解けた。やっぱ幻獣つえ〜」
「それ、何してたの? 何の魔法?」
「対魔法用魔法。正確には魔力の動きを止める魔法。だから魔法や普通のモンスターの動きなら止められるんだけど......強いモンスターにはあんま効かねぇんだよな」
「そんな魔法あっていいの?」
「知らん『クロノスクラビス』」
『んなぁっ!!』
無責任だなコイツ。ソルちゃん大丈夫かな。
「じゃあどうする? 残った人達を離して、3人で殺るか?」
「賛成〜」
「う〜ん......ポーションとか無い? 出来ればあの子達も参加させてあげたい」
私の呼び掛けで集まってくれたんだ。せめて最後まで一緒に戦いたい。
「ポーションは無い。でもまぁ、バフくらいなら。ステラ、『鼓舞の光』」
ルナが剣を掲げて唱えると、私達にバフがかかった。
「何これ......これ何秒持つ?」
ジョーカーがルナに聞いていた。私も気になる。
「この戦闘が終わるまで全ステ1.1倍だ。それも全員な」
「「えぐぅ......」」
MMOで1.1倍は強いよ......それも全員に永続付与って、もっとヤバいよ......
「とりあえずピギーは魔法部隊に指示出しな。俺が動き止めとくからさ。サポートに回るわ」
「分かった」
「僕は適当にや「ピギーのサポートしてやれ」......了解」
有難い。ここで私より賢いプレイヤーがサポートしてくれるのは本当に有難い。
「『クロノスクラビス』......じゃ、タンク(笑)をさせてもらおう」
フェンリル戦が終われば第5章は終わる予定です。
第6章は今までとはガラリと変わった作風になるので、お楽しみに(^・ェ・^)
次回、『ニヒル、集結』お楽しみに!
さて、2体目以降のフェンリルについて少しお話を。
リルの知識欲によっておしゃべり化したフェンリルですが、運営による修正で知識欲はほぼありません。
故に戦闘における行動パターンが単調になりやすいです。
リルが戦っていた時は『命を懸けた戦い』だったのが、『プログラム化された型のある戦い』にグレードダウンしています。
運営の意図としては『1度は皆に幻獣と戦って欲しい』という気持ちが込められている為、このようになっています。
ミニ解説は以上です。
次回の戦闘でどうなるのか、作者も楽しみです!