1人で猛特訓
久しぶりのルナ君オンリー
「なぁ、誰か糸術使える人っている?」
朝ご飯を食べた後、皆に聞いてみた。
「私は使えな〜い」
「「「私も」」」
「はい、開発しま〜す」
惨ッ!!! 敗ッ!!!!!!
「鍛冶小屋で糸作ったら、そのまんま開発してくる。じゃあの」
「行ってらっしゃ〜い」
あまりに早くリビングを出たので、返事が出来たのはソルだけだった。悲しい。
――鍛冶小屋にて
「氷龍核......使えるかな?」
今から戦闘用の糸を作る訳だが、色々な素材を糸にして、その性能をチェックしたいと思った。
そして氷龍核はブリザードドラゴンからドロップしたアイテムだ。両手で持てるサイズの、藍色のガラス玉だな。
「......よし、持ってるもんは大体糸にしてみるか」
もし属性付きの武器とかできたら、ロマンあるからな。
「じゃあまず氷龍核に『金属糸形成』!」
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『氷龍核の糸』Rare:18 製作者:ルナ
攻撃力:820
耐久値:5,000/5,000
付与効果『属性付与:氷』『魔纏』『糸術補正:中』
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「にゃ〜ん。氷龍核が半分無駄になった......」
大失敗でござる。属性付与というロマンはありますが、これで満足していい物か、かなり悩むでござる。
「次、オリハルコン」
バンバン試していこう。どこかで成功する事を祈って......
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『金属糸:オリハルコン』Rare:10 製作者:ルナ
攻撃力:710
耐久値:2,500/2,500
付与効果『魔纏』『全魔法補正:小』
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「ダメ」
苔象の牙とかどうだろう。なんとか強い武器にならないかな?
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『ゴミ』Rare:1 製作者:ルナ
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「俺はゴミ製造機か? もっと頭を回せ!」
このままじゃ持ってるアイテムの大半がゴミになる。流石にそれだけは避けたい。
「合金......でやるしかないか。神鍮鉄と氷龍核を合わせたら良いかな」
合金でパッと思いつくのは神鍮鉄だ。オリハルコンとアダマントを使っているから性能は良いし、氷龍核のお陰で属性も付くだろう。
「ストックあったっけ............あるやん。ラッキー」
多分リルの箒を作る時の予備だな。リルの箒はあと魔石を入れたら完成なので、この神鍮鉄は完全フリーの神鍮鉄だ。
「2つとも......頼むぞ......」
まずは合金化からだ。その後に糸にしよう。
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『氷龍金属』Rare:23を作成しました。
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空色に光る、ロマンたっぷりなインゴットができた。
「良さげだな。よし、頼むぞ......せめてまともに使える性能に......!!!」
氷龍金属に金属糸形成を使った。結果は──
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『聖魔糸:アイオライトブレス』Rare:24 製作者:ルナ
攻撃力:1,100
耐久値:100,000/100,000
付与効果『属性付与:氷』『超耐久』『耐久値回復:氷点下』『冷気吸収』『魔纏』『糸術補正:大』『顕現』
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『耐久値回復:氷点下』
・気温が氷点下の時、1秒で1、耐久値が回復する。
『冷気吸収』
・氷属性の魔法を吸収する。吸収した冷気は魔力として使用できる。
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「あ〜......使いづらい」
寒冷地専用の武器かな?水色の糸ってのはカッコイイが、中々に使い所を選ぶ武器だ。
「まぁいいや。恩恵なくとも何とかなるだろ」
ぶっちゃけ死ぬのは耐久値回復だけだ。『冷気吸収』は敵次第で使えるからな。頑張れ。
「ん〜! オークで実験しよ」
軽く伸びをしてから今回の犠牲者を選んだ。
「はい、ではオーク20体の討伐ですね。お気を付けて行ってらっしゃいませ」
「は〜い」
ギルドでオーク討伐の依頼を受けてきたので、早速アルトム森林へ向けて出発する。
「今日は1日、糸術の練習かな」
久しぶりの猛特訓だ。気合いを入れよう。
アルトム森林にて――
『ブモォ......』
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『オーク』×25討伐しました。
『糸術』スキルレベルが35上がりました。
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無事に糸術スキルを開発できたので、オークを狩ってレベリングをしていた。
「アイテムを取得しない設定......いいかも」
ここらへんのモンスターの素材って、ストックが大量にあるから別にいらない。
それに、余計な物でインベントリを圧迫されるの、超困るのだ。最近は整理整頓を意識し始めてるから、特にな。
「そうだ。ワイヤートラップ、試すか」
FSと同じように仕掛けても大丈夫かな?相手の足の位置に一本、その先の首の位置に一本。
足さえ掛かれば確定でお陀仏する配置だ。
「お......おぉ! この糸、どんだけ伸びるんだ!?」
木から木にかけてアイオライトブレスを掛けていたら、糸がどんどん伸びる事に気付いた。
「これは......悪用できるぞ......?」
自然と口がニヤついちゃう。これ、人が来ないところに設置しておけば、放置で敵が狩れるシステムの出来上がりだ。
でも、運営がそんなに優s......甘いとは限らない。
罠を設置したら、一旦アルトム森林から出よてみよう。これで手元にアイオライトブレスが移動してれば、悪用作戦は失敗だ。
「......よし、これで糸は......?」
1度森林から出て、再入場した。結果は――
「あ、あれ? 俺の糸は?」
罠を掛けた木を見ると、アイオライトブレスが消滅していた。
「顕現、アイオライトブレス............オワタ」
運営さん、嘘ですよね? 俺のアイオライトブレス......どこにやったんですか?
......もうダメだ、諦めよう。
「氷龍核......グッバイ! 来世は俺みたいな奴の所には来るなよ!」
完全にロストした。アイオライトブレス、2時間でお亡くなりになった。
「喪失感はさほど無いな。心、強くなったか?」
なってない。何も考えずに作った物だから、何も思い入れが無いだけだ。
「よし、これからはオリハルコンの金属糸で頑張ろう。セコい事は実行せずに、考えるだけにしていこう」
「あそうだ。魔糸術とっとこ」
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『魔糸術』を習得しました。
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持てる手札は増やしておこう。この先、どんなモンスターと戦うことになるか分かったもんじゃない。
『ブモォ!!』
「おや、オーク君。首を切られに来たのかい?」
『ブモォォォ!!!』
俺に近付いてきたオークは、その手に持つ大きな棍棒を振り上げた。
そしてドシーン! と鈍い音を立てながら、俺の前に小さなクレーターを作った。
「『蔦よ』」
『ブモ!?』
INTが上がった今なら、蔦ちゃん1人でもオークを縛れる。
「はい、失礼しますね〜♪」
オークの首に素早く糸をかけ、一気に引っ張る。
スパッ!
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『オーク』を討伐しました。
『糸術』スキルレベルが2上がりました。
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「今までワイヤーはトラップとしてしか使わなかったからか、向上心が薄いな」
お陰で貰える経験値が激減だ。悲しい。
「またFSで練習しよっかな〜」
あそこなら人間相手に戦えるから、より糸の扱い方を学べるだろう。
「ま、そこまで困ってないし、別にいいや」
今はオーク達相手に練習しよう。
それからたっぷり12時間、森林のモンスターを相手にして『糸術』と『魔糸術』のレベリングをした。
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『フォレストゴブリン』×315討伐しました。
『オーク』×124討伐しました。
『フォレストウルフ』×2討伐しました。
レベルが2上がりました。20SP入手しました。
『糸術』スキルレベルが62上がりました。
『魔糸術』スキルレベルが34上がりました。
『糸術』が『操王』スキルに進化しました。
称号『四王の威光』を獲得しました。
『三王の覇気』は『四王の威光』に統合されます。
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「効率悪いなぁ。人が増えたのか?」
12時間では魔糸術も100にする事は出来なかった。
「いや、糸でトレントを倒せないことを知らなかった俺が悪い。人のせいにしちゃダメだ」
何故かは知らないが、どんなに糸を絡めようと、トレントを倒すことが出来なかったのだ。
きっと武器相性が絶望的に悪かったのだろう。
それを人が増えたせいにするのは、お門違いだ。
「......帰るか。そろそろ晩御飯だろうし」
ゲーム内時間20時40分、そろ真っ暗になる。ご飯時だ。
「いや待てよ? 確かフェンリルって今日じゃね?満月だし......やべぇ、戦いてぇ」
空を見ると、真ん丸なお月様が輝いていた。
「今日は満月だからモンスターが少なかったりしたのか?......いや、そんな事よりフェンリルだ。どうしよう」
フェンリルが出てくるなら戦いたい。今日の特訓の仕上げにしたい。
「まずは報連相だ。報告報告〜!」
ソルに報告だ。
『ちょっとフェンリル狩ってくる』
「これでよし。池に向かおう」
そう思い、池に向かって進むこと5分。
ピロン! と着信音が鳴り、ソルから返信が来た。
「お、何だね?」
『気を付けてね。ご飯いる?』
「遊びに行った子どもに対する母親のメールだな」
おっと、これは妄想が膨らむでござんす。
キッチンに立ち、お玉を手に鍋料理を作るソルが俺の帰りを待ち、『まだかなぁ』なんて呟きながら携帯でメールを送る姿が容易に思い浮かぶ。
『いる。残しといて』
『おっけー』
「ん〜! こういう何気ない会話が心に染みるぜ......!」
今すぐにでも帰りたいが、フェンリルとの戦闘を優先する。
今回のフェンリル戦ではアレを縛って戦いたいから、流石にそれをすっ飛ばして帰る訳にもいかない。
「......付喪神によるアシスト無しでどれだけ戦えるか、楽しみだ」
神器はブリーシンガメンだけで、武器はステラ、アルテ、オリハルコンの糸だけで戦う。刀術が使えないので、ちょっと悲しいな。
「ふんふんふ〜ん♪ ふふふんふ~ん♪」
そうして歩くこと数分。満月の反射する池に着いた。
「お? プレイヤーめっちゃ居るじゃん......死ぬの待っとこ」
池の周りに200人ほどのプレイヤーが集まっていた。
きっとフェンリル討伐のために集まったのだろうな。
「ん〜? あれ、よく見たらピギーじゃん」
沢山いるプレイヤーの中に、見慣れた人物を発見した。
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ピギー(ピグレット)side
「そろそろだよ!皆、準備を!!」
「「「おう!」」」
私は今回、フェンリル討伐の為に生配信でプレイヤーを集めた。
「ルナでも倒せたんだから、私達でもやるよ!!」
「「「おぉぉ!!!!」」」
皆、ルナの話題を出せば盛り上がる。鼓舞するのに便利だな〜アイツ。
私は先週、アル......じゃなくてルナがやった『フェンリルの単独討伐』の難しさを身をもって知った。
あの時はフェンリルと戦って6秒で死んだ......いや、戦いにすらなってない。
出会った瞬間に足を食われ、動けなくなった所をそのまんまパクリと食べられた。
「今回は誰か1人でも生き残って勝つよ! 例え隣にいる人が死んでも、意思は強く持つんだよ!」
「「「おぉぉぉ!!!!」」」
フェンリル......アレは紛れもなく『レイドボス』だ。アレは1人で戦うもんじゃないし、勝てる相手でもない。
ルナってホントに人間? FSでも化け物じみてたけど、ユアストでもそうなの?
「あと、今回は視聴者参加企画に参加してくれてありがとね! 私は嬉しいよ!!」
「「「おおおおぉぉぉぉぉ!!!!!」」」
配信で『フェンリル行くけど皆来る?』って言ったらすぐに集まってくれた。本当に有難い。
そろそろ配信を初めて5年になるけど、ずっと見続けてくれてる人もいるし、幸せだ。
『ワォォォーン!!』
「来た! やるぞ〜!!!!」
「「「おぉぉぉ!!!!!」」」
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『幻獣狼:フェンリル』との戦闘を開始します。
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今、ユアストで戦える中でモンスターで最強のモンスターだ。気合いを入れていこう。
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ルナside
「お、来た来た。やっぱデケェなぁ」
池の周りの草地にフェンリルが出現したが、その大きさに改めて驚いた。
「ピギー、ファイト~」
陰ながら応援させて貰おう。友人の勝利は俺も嬉しいからな。
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名前:ルナ Lv2→4
所持金:80,815,590L
種族:天使
職業:『剣士』『ヴェルテクス:ギルドマスター』
称号:『スライムキラー』
所属ギルド:魔法士・Cランク冒険者(94/200)
Pギルド:『ヴェルテクス』
HP:3,010→3,030<1,000>
MP:3,512→3,532<1,500>
STR:4,010→4,030
INT: 2,010 →2,030
VIT: 2,510→2,530
DEX:3,510→3,530
AGI:2,210→2,230
LUC:1,005→1,015
CRT:51→52
残りSP:560→580
『取得スキル』
戦闘系
『剣王』Lv100
『魔剣術』Lv62
『王弓』Lv100
『魔弓術』Lv67
『武闘術』Lv100
『魔闘術』Lv1
『刀王』Lv100
『魔刀術』Lv100
new『操王』Lv1
new『魔糸術』Lv35
『走法』Lv0
『手加減』Lv0
『戦神』Lv75
魔法:省略
生産系:省略
その他
『テイム』Lv2
『不死鳥化』Lv28
『マナ効率化』Lv0
『天使の翼』Lv0
<>内アクセサリーの固定増加値
SP増加値:非表示
種族補正:非表示
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フェンリル戦、どうなるか楽しみです。
第5章もあと数話、楽しんでいただけると幸いです!
次回、『経験の差』お楽しみに!