あぁ!お前は!!
エンジェルナ君。翼でビューん
「レベル上げに行くので、リル様お借りします」
天使になり、新しいステータスでの戦闘を試したい。
「おぉ! 父様、遂に連れてってくれるのですね!」
「あぁ。一緒に遊びに行こう」
朝帰り云々の時の約束だな。一緒に狩りに行こう、という内容だ。
「ん? そういやルナ君って、どこでレベル上げしてるの?」
「固定の狩場はないぞ。ワイバーンやララバジの経験値で爆上げして、後は雑魚でちまちまと上げてた」
「へぇ〜、じゃあ今日は雑魚ちま?」
「せやな。雑魚ちまだな」
略語を生み出すのが早いな。雑魚ちま......ええやん。
そういう『言いやすい、分かりやすい』略語は好きだ。
「父様父様! 私もお空を飛びたいです!」
「いいぞ。俺が抱っこして飛ばしてあげよう」
「やったぁ! ありがとうございます!!」
すげ〜ピョンピョンして喜んでる。そんなに楽しみにしてたのか?......まぁ、空を飛ぶのって楽しいし気持ちいいから分かるんだけどさ。
「私が教えたからだよ」
「思考を読むな。怖いわ」
何で考えてることが分かるんだ......戦闘時に使われたら終わりじゃん。
「ふふっ、ルナ君って考えてる時に顔がキリッとするんだよ? それとルナ君の視線の先にあるものから、考えてる時を予想するの」
「理論的な説明で助かる。その『人を見る技術』は羨ましいよ」
「えへへ、ルナ君も私をよく見ると分かるかもよ?」
「それは難しい。ソルの思考よりソル本人を見てしまうからな」
「きゃ〜! う〜れし〜!」
「なんで漫才してるんですか? 父様。行きますよ?」
あ、リル様が冷めた目で俺を見てる。すみません。
「あ、はい。今行きます」
「行ってらっしゃい」
「「行ってきます」」
そうしてリルと庭に来た。今回も庭から飛んでいこう。
よし、天使の翼を出して、と。
「そう言えば父様、その翼って消せるんですね」
「あぁ。自分の意思で出したり引っ込めたり出来るんだよ」
正確に言えば、ステータスウィンドウから操作から可能だ。
「じゃあ、リル。お姫様抱っこと普通の抱っこ、どっちがいい?」
「お姫様抱っこで」
「あいよ」
リルをお姫様抱っこし、翼に魔力を流す。
「おぉ、おぉぉぉ!!! 飛んです、飛んでますよ父様!」
「可愛いなぁおい。でも暴れたらダメだぞ? 落っこちたら大変な事にな......らないけど、怖いからな」
「はい!」
リルのステータスなら、20メートル上空から落ちても問題無いだろうからな。
そうして徐々に高度を上げ、王都に建っている家より高く飛んだので、水平方向に飛行する。
「ふんふん。MPは継続消費で飛ぶのか......大体、10秒で1MPってところか」
かなり低燃費な飛行だ。ブリーシンガメンがあれば永遠に飛んでいられる。
「父様、草原が見えてきましたよ!」
「うん。あそこに降りようか」
ペリクロ草原に出たので、リルに負担がかからないように慎重に着地する。
「ありがとうございました、父様」
「帰りも飛ぼうな」
「はい!」
「じゃあ狩りを始めるか。今回はスライム狙いで行こうぜ」
「どうしてスライムなんですか? ワイバーンを狙うかと思ってました」
「ワイバーンは一応レアモンスターだからな。そう簡単に出会えん。それでスライムを狙う理由だが、理由は簡単だ。『ポーションを作るため』だな」
「ポーション、ですか?」
「そう。ポーション。それを売って金を稼ぐんだ」
自分で使う意味は無いからな。HPもMPも、アホみたいな速度で回復する。
だからポーションを飲む時間があれば、その分攻撃した方がダメージ効率がいい。
「お金が必要なんですか? なら、素材を売れば......」
「あ〜、別にそこまで金稼ぎに集中する訳じゃない。小遣い稼ぎだ」
俺、8000万もお金があるが、全然使わないんだよな。食材はソルが買うし、馬車などの移動費って基本100Lだから、全然お金が減らないんだ。
「そうなんですね......お小遣いも必要ですか?」
「いらない。けどまぁ、ポーション作って調薬スキルを上げたいんだ」
「そっちが本命ですか。分かりました、スライムを狙いましょう」
「お願いしま〜す。じゃあどんな風に狩る? のんびり? ガッツリ?」
「のんびりで行きましょう!」
「はいよ〜」
のんびりコース、入りましたァ!!
俺はリルを抱っこし、再度翼を広げて空を飛んだ。
「飛ぶのですか?」
「あぁ。上から見つけて、ソルが魔法を使った方がいい」
「私は母様ではありませんよ?」
「ごめん言い間違えた」
すんません。1文字しか違わないから、結構間違えそうになるんだ。リル、ごめん。
「あ、父様。あそこにスライム5体です!」
「おっけ〜! びゅ〜ん!」
リルが指を指した方向にスライムが沢山いたので、そちらに向かう。
そんでもって、少し多く魔力を翼に流すことで、より加速できるようだ。
......悪用はまた今度。
「では撃ちますね!『ファイアアロー』です!」
何気にリルの魔法って、初めて見る。どんな威力何だろうか。
リルが作ったファイアアローを見てみると、『炎の矢』と言うより、『赤い矢』と言えるような、炎の塊で矢が作られていた。
ボシュッ!!
スライムの群れに着弾すると、炎の塊から欠片が飛び散り、それに触れたスライム達がポリゴンとなっていく。
「わぁお」
「どうですか? 父様。あれが『私の』ファイアアローです!」
「あぁ。凄くカッコイイし、凄く強いよ。リルは凄い子だよ」
両手でリルを抱っこしているので、顔をリルに付けて褒める。
「えへへ〜」
「『サーチ』。次のスライムのところに、ゆっくり飛んで行こう」
「はい!」
そうしてサーチで探しながら飛んでると、スライムの大群が見つかった。
「お、あれはウマウマフィーバーできそうだな。俺がやってもいいか?」
「はい! 父様の魔法、見せてください!」
「なら......『フラカン』。ちょっと待っててな」
フラカンでリルを浮かし、俺は両手をフリーにして、少し前に出る。
「さぁ行くぜぇ? スライム20体ちゃん達ぃ?」
今回は純粋なイグニスアローを20本出そう。このINT2,000の力があれば、それくらい容易だろう。
「『イグニスアロー』」
俺の背後に赤く光る魔法陣が20個出現し、その魔法陣から炎の矢が生成されていく。
「凄い......綺麗......」
リルに褒められた。嬉しいね。
「じゃ、殲滅」
ビュン! と音を立て、20本全てのイグニスアローがスライムの大群目掛けて飛んで行った。
その灼熱の矢を受けたスライム達は、一匹残らずポリゴンへと姿を変えた。
「よし、撃ち漏らし無し。完璧だ」
「凄いです父様! 前より威力が倍以上になってますよ!」
「INTが倍くらいになってるからな。でも、こいつァすげぇぜ。今の俺、多分40個は同時に魔法を撃てるぞ」
「兵器ですね!」
「せやな」
モンスター討伐イベントとか来たら、活躍できるかな?
「あ! やらかした!」
「どうされましたか?」
リルを回収しようとした時、自分のやらかしに気が付いた。
「ギルドで依頼、受けてなかった......」
「あ〜......なら一旦戻りますか?」
「そうしよう」
スライム討伐の依頼、受けといて損はないだろうし、ランクを上げたいからな。戻ろう!
そうしてギルドまで飛んで、無事に依頼を受けて来た。
「じゃ、草原に帰ろう」
「はい!」
そうしてスライム狩りに戻ろうとしたら、声がかけられた。
「あの〜......ルナさん、ですよね?」
「ん?」
声をかけてきた人物を見てみた。
ピンクの髪に、金色の眼、そして髪型はツインテールで身長150センチくらいの女の子の......2人組。
「すみません人違いです。では」
安定の人違い作戦だ。ここは何としても切り抜けなければ!!
「違うでしょ?『アル』」
「ん?」
なんでFSの時の名前を?......いや、聞き間違いだろう。
大丈夫、ここに俺を知る人はまだいないはずだ。
「「アル?」」
喋った方のピンクとは、違う方のピンクとリルが同時に聞き返した。
「そうだよ。アル......いえ、チーム『ニヒル』の『アルテミス』だよ、ラキハピちゃん。私のチームメイト」
「あ、あぁ! お前は!!!」
聞き慣れた声、嫌という程見たピンクの髪、よく見れば赤い目をしているその顔! そして何より俺を呼ぶ時の名前......こいつ、Piggyだ!
「ピギー!?」
「そうだよ! しばらくぶりだね、アル?」
「会いたくなかったわぁ......」
「ひっど!! 一応言っとくけど、アテナや翔はイニティで躓いてるよ」
「あ、マジ? 助ける? 煽る?」
「やめといた方がいいよ? 翔もいるからさ。ハイドからのザクッ! だよ」
「ほ〜ん。それなら逆に、こっちから殺るか?」
「今は無関係が1番だね」
「おk」
「「あの〜お2人は何を言ってるのですか?」」
「「旧友に挨拶に行こうかと、ね?」」
ラキハピさん.....
さぁ、憧れてる人が自分の息子だと知らない父(女)と、自分に憧れてる父(女)の存在と出会ってしまった息子。どうなるのやら.....
次回、『私は知っている』お楽しみに!