初めての......///
初めての.....!?
大丈夫です。全年齢対象ですからね!(^・ェ・^)
パチン!
振り返ると水色のワイバーンがこちらを見ていた。
でもなんかコイツ、はぐれワイバーンとは形が違うな。
咄嗟の判断でクロノスクラビスを発動できたが、結構危なかった。
『グォォ!?!?』
「君、アイスワイバーンじゃね?」
こいつ、確かはぐれワイバーンの1.3倍強いんだっけ?
「う〜ん、君、死んだね」
クロノスクラビスはあのララ・バジリスクでさえ封じ込めた最強(自称)の魔法だ。アイスワイバーンもただのサンドバッグと化すだろう。
『グォォォ!!!』
「嘘っ!?」
敵を前に舌なめずりをしていたら、アイスワイバーンは普通に動き出した。
『ガァァァ!!!!』
「フラグ回収ぅぅぅ!!!」
ズバァァァン!!
パチン!
ワイバーンの口から真っ白なブレスが吐き出された。
「うぅ......ギリ間に合わなかった......」
足が凍結して動かない。多分、これがアイスワイバーンのブレスによる状態異常なんだろう。
『ガァァァ!!!!』
パチン!
ブレスは全部消させて貰う。死にたくないんでな。
「腕が動くからまだ良いけど、腕までやられてたら終わってたな......」
やばいよ、動けないよ。どうしよう。アイスワイバーン、正直舐めてた。
「『フラカン』......ダメだ」
凍結してるせいか、空を飛べない。これでは逃げることもできない。
「フー、シリカ。顕現」
大人しく増援を呼ぼう。2人がいれば、なんとかなるかな?
『どうしました? って......あちゃ〜』
『お兄さん、大ピンチじゃん』
「すまんな。リルと念話した後に倒そうと思ったら、ブレス喰らっちゃった」
『もう、ルナさんは仕方のねぇご主人様でやがります』
『そうだそうだ〜! もっと自分を大切にしろ〜!』
「気を付ける。んじゃあ仕留めるわ」
2人を装備してたらステータス爆上がりだからな。
「『戦神』『イグニスアロー』『アウラ』」
『『うわぁ......死んだわあのトカゲ』』
本気も本気。全力で倒しにいく。流石にこんなところで死にたくないんでな。
『ガァァァ!!!』
パチン!
「じゃあな、水色トカゲ」
『グォ!!』
そして俺はイグニスアローを飛ばした......が、
『ガァァァァァァ!!!』
「んなっ!」
『『あっ!!!!』』
イグニスアローが当たる直前、コイツは足元に自分のブレスを放ち、イグニスアローを避けた。
ドッバァァァァァン!!!!!!
ブレスの余波を思いっきり喰らった。
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『守護者の加護』が発動しました。
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不味い不味い不味い!! 微ダメでも喰らうと死ぬ!
『ガァァァ!!!』
現実は......理不尽だった。
アイスワイバーンは間髪入れず、俺にブレスを撃ってきた。
「ぐっ......」
『『ルナさん!! / お兄さん!!』』
あっさり死んだ。
今、HPが0になったのを確認した。
こうして俺の体はポリゴンとなって......
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『不滅の愛』が発動しました。
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散らなかった。
そのウィンドウが出た瞬間、俺のHPが全快した。
「......おいおい。俺、初めての死を経験したぜぇ?」
『ルナさん!! 大丈夫ですか!?』
『お兄さん、死んでないの!?』
『ガァァァ!!!!』
パチン!
「『フラカン』『イグニスアロー』『アウラ』『サーキュレーション』『戦神』『不死鳥化』」
あぁ......最初から不死鳥化しとけば良かった。俺のミスじゃねぇか。ちくしょう。
「......」
無言でイグニスアローを飛ばした。
ジュン!!
アイスワイバーンとその周辺の雪が蒸発し、周囲が緑に溢れる地面と化した。
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『ブリザードドラゴンLv105』を討伐しました。
『氷龍の甲殻』×80入手しました。
『氷龍の皮』×70入手しました。
『氷龍の肉』×250入手しました。
『氷龍核』×1入手しました。
称号『龍殺し』を獲得しました。
『竜殺し』は『龍殺し』に統合されます。
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え......?
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『ニクス山』の超レアモンスター『ブリザードドラゴンLv91』がプレイヤー『ルナ』によって討伐されました。
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「ドラゴンだった......」
『あれ? 気付いてなかったんですか?』
『お茶目なとこもあるんだね!』
「あぁ。本気でアイスワイバーンだと思ってた」
『『えぇ......どう見てもワイバーンじゃないのに......』』
「いや、ちゃうねん。確かに『あれ? なんか違う?』とは思ったけど、ワイバーンやと思っててん」
しゃ〜ないやん。ワイバーンだって数回しか戦った事無いんだし、分かるわけないやん。
神龍なら分かるよ? あのデカさ、色、威圧感、その全ての格が違うからさ。でもワイバーンは分かんねぇよ。
『まぁ、ドラゴンの単独討伐、おめでとうございます』
『おめでと〜!』
「あ、ありがとう?......それ、凄いのか?」
『凄いですね』
『凄いよ〜偉業だよ〜』
はぇ〜。確かに強かったよな。ララバジさんより強かったもん。それにあんなに賢いとは思わなかったし、クロノスクラビスを抜け出すとも思わなかった。
「どれくらい凄い?」
『そうですね......ドラゴンの単独討伐者って、この世界で十数人しかいませんからね』
『そして語り人じゃお兄さんが初めてだろうね』
「おぉ......それは凄いな」
嬉しい。誰よりも早くドラゴンを倒したぞ。いぇい!
「んじゃあ......家に帰ろうか。ソル達が待ってるだろ?」
『そうですね。ソルさんも直ぐに帰ってきてましたし、待ってると思います』
『でもお兄さん、今回の事って狐ちゃん達に言っちゃうの?』
どういう事だ? ドラゴン討伐はワールドアナウンスされてるし、言ってもいいと思うんだが......
「言っちゃダメなのか?」
『だってお兄さん、狐ちゃんと出かける前に言ってたじゃん。『死なないから』って。あのブレスを受けた時、お兄さんは死んだよね?』
「あっ............うん。死んだ」
『それ、狐ちゃんに言うの?』
「言うぞ。俺のミスで死んだことも、ちゃんと考えて動けば死ななかったことも、全部話す」
こんなミスもあるんだよ、って2人にも知って欲しいし、何より俺への戒めになる。
もう二度と、死なないようにしたい。
ってか次死んだら割とマジで家のベッド送りだからな。
今回はソルから貰った指輪で生き返ったが、もう残機は0だ。
『お兄さん、馬鹿正直だね!』
『ですね。こういう時って、普通は隠すもんじゃないですか?』
「ん? 好きな人に正直に話したくなるのは、よくあることじゃないのか? それに俺、1つしか隠し事してないし、他は全部知られてもいいからな」
『なるほど......で、その隠し事とは?』
『気になるね!』
「とある称号だ。自称してはいるが、これは伝える気になれんからな。周りからのイメージを保つためにも、教えない」
『最弱無敗』......今回の件で、俺的に無敗では無くなった訳だが、この称号はソルに見せたくない。
せめてソルの前くらい、強いところだけを見せたい。
『『ケチ〜』』
「ケチで結構コケコッコー。じゃ、帰るぞ。帰りは普通に飛ぶからな」
『当たり前ですよ。どこかの誰かみたく、彗星の様になってはダメですよ』
『そうだそうだ〜! どこかの誰か〜!』
「うっざ! ってかそんな称号貰ったな。帰ったら確認しよう。ブ......『フラカン』」
どうでもいい事だが、『フラカン』と唱える時、間違えて『ブラコン』と言いかけるのはなんでだろう。
いつか間違えて言って、魔法が発動しなくて死んだら嫌だからな。気を付けよう。
そして空を飛び、王都に向かっている最中――
「お、草原治ってる。良かった〜」
『彗星の痕跡ですか』
「俺の事彗星って呼ぶなよ? ってか何で知ってんだ?」
『リルさんが言ってましたもん。『さっきの流れ星、父様なんですって! 凄いです!』と』
「可愛いなぁ」
『そうじゃないでしょ......お兄さん......』
だって、それ伝える時に絶対ピョンピョン跳ねてただろ。俺には分かるぞ。
「ふわぁぁ......空を飛んでるとのんびりできるな......」
『寝て落下しても知りませんよ?』
「それは困るな。ってかそうだ、『サーチ』」
もしモンスターが近付いて来ても分かるようにしておこう。
「ふぃ〜......こうやって空中散歩するのもいいな」
『それ出来るの、今のとこルナさんとソルさんだけですけどね』
『うんうん。本来人間は魔法で空を飛べないからね』
『いえ、飛べますよ? ただその理論が難解なだけです』
『そうなんだ! フー姉ちゃん、今度色々教えてよ!』
『いいですよ。元魔法の女神、元戦神に教えてあげます』
「仲良きことは美しきかな」
2人が仲良さそうで良かった。いがみ合うより、こうやってワイワイとしてくれてる方が見ているこっちも楽しい。
「あ、ワイバーンの反応あり」
『『あ』』
ワイバーンの魔力反応がサーチに引っかかった。
「空を飛んでるから、ワイバーンの反応は分かりやすいな。でも今回はスルーだ。俺は空中散歩を楽しむ」
真ギュゲの気配隠蔽を使い、ワイバーンをやり過ごす。
『その指輪、ずっと付けてますよね』
「お気に入りだからな。これ、可愛いだろ?」
『何でハートのデザインなのかは分かりませんが、確かに可愛いです』
「あ、ハートのデザインの指輪はもう一種類あるんだ。俺を弱体化する時の指輪がな」
『なんでそんな物が......』
「諸事情」
あの指輪、フォレストウルフの動画の為に使ったが、それっきりだな。俺の初めての呪いの道具だ。
「インベントリ整理もしないと。レベルのお陰で容量は増えても、どんどん物が増えていったらダメだよな」
『持ち物整理は基本ですよ』
「鉄鉱石が数千個あるんだけど、これ、どうしたらいい?」
『売ったらいいじゃん。お兄さん、最近はアダマントしか使わないでしょ?』
「そうなんだよな。それも鉄を使っても、慣れてるって理由からゴブリンのヤツしか使わないし」
錆び付いた剣、有能。
普通のプレイヤーかすれば、かなり品質が落ちるそうだが、別にこれでも魔剣や聖剣、神器だって作れるんだから構わない。
「売るか。もしかしたら1億L超えるかな?......超えて欲しいな」
『『お金、使わないのに?』』
「あぁ。何かがあった時の為に、貯金は必要だ」
何も無い事を祈ってるけどな。寧ろ、結婚式みたいなパーッとしたこともやりたいな......なんて。
「お、そろそろ王都だ。上からダイレクトに帰るか」
そしてお城の庭にホールインワン。
「「「ただいま〜」」」
「「おかえり! / おかえりなさい!」」
玄関のドアを開けると、いきなりソルが抱きついてきた。
「おぅ......どした?」
「ルナ君......死んだよね?」
「あぁ。よく知ってるな」
「指輪......通知来たもん」
「まぁ、それについてはゆっくり話そう。『ルナちゃんのドキドキ☆音速(?)飛行冒険譚』を」
そうして帰ってきた俺達は、ブリザードドラゴンとの戦いを話したのだった。
初めての『死』でしたね。そして、初めての『ドラゴン討伐』でもありました。
最初、イグニスアローの所で水蒸気爆発が起きるのかと思ったんですけど、雪だと起きにくいみたいですね。
私、雪でも爆発するもんだと思ってました。
では次回!『人間、辞めるわ』です!お楽しみに!
(これは信じてはいけない)