ソルの魔女っ子計画〜完〜
Q、これは恋愛小説ですか?
A、はい。
Q、これはVRモノ小説ですか?
A、はい。
Q、強いて言うなら、どちらですか?
A、ちょっと待って私にも分からなくなるほどルナ君がソルさんを溺愛しt(ry
『母上。大変申し上げにくいのですが、そのミッションはこなせそうにありません』
俺が俺に父さんに会わせる?......俺、ゲームで父さんに会うの、クッソ恥ずかしいから嫌だし、その上配信者だと? 余計に嫌だ。
『え〜どうして? お父さん、頑張って強くなろうとしてるんだよ? 強い人に会わせるのって、そんなに難しい?』
『ハッキリ言う。無理だ。強いプレイヤーって基本的にギルドメンバーとやってたりするから、そもそも話すこと自体難しい』
ギルドメンバー(ソル)と一緒にやってます。
『そっか......無理言ってごめん』
『いいよ。それとさ、何個か聞いていい?』
『なに?』
『父さん、何て名前で活動してんの?』
『ラッキーハッピー』
『は?』
何言ってんだ? 母さんは。俺の母親、遂におかしくなった?
『視聴者から『ラキハピさん』って呼ばれてるね』
『あ、そう言う名前なんだな。把握した。で、どんな外見?』
『ん? 気になる? えっと、髪がピンク色で〜』
『うん』
『目が金色で〜』
『うん』
『身長が150cmくらいしかなくて〜』
『うん?』
『ツインテールの女の子!』
『はぁ?』
父親がネカマになっていた件。
『月斗、もし見かけたらよろしくね? 母さんは配信見て、父さんの応援してるから』
『その外見の奴を見つけたら全力で逃げるわ。じゃあ、またね』
『は〜い。体に気をつけてね。あと、陽菜ちゃんとはどうなった?』
んひぃぃい!? 急にその話題を出すなよ! ドキッとしたわ!!
『な、何ともない。時々遊んでるくらい』
『そっか。でもちゃんと見てあげてね? そっちで唯一、月斗の事をちゃんと知ってる人なんだからね? 大切にね』
『うん。大切にしてるよ』
彼女として、な。
『じゃ、また今度行く時は連絡するから。おやすみ!』
『おやすみ』
こうして母さんからの電話が終了した。
「......はぁ。ピンクの髪に金色の眼。身長150cmのツインテール。見かけたら逃げよう。絶対に見つかってはいけないミッションだ」
母よ。ソルの魔女っ子計画中になんて話題を持ち出してくるんだ。俺、安心してユアストできないよ。
「とりあえず......ログインしよ」
陽菜もログアウトしてご飯を食べたかな?
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「おはよう、リル」
「おはようございます。もう朝ですよ」
中庭側の窓から太陽光が入ってきている。
「ホンマや」
あら、関西弁がこんにちはしちゃった。
「ホンマ? なんですか? それは」
それにリルが食い付いちゃった。説明しておこう。
「『ホンマ』ってのは『本当に?』って意味の方言だよ。イニティの食品店のオバチャンとかが使う方言だ」
「関西弁、でしたか」
「そうそう......じゃ、朝ごはんにしよう」
「はい!」
ユアストで食べて寝て、リアルで食べて、またユアストで食べる。
このままじゃ食べ過ぎで太りそうだ。
「「「「「ごちそうさまでした!」」」」」
朝ごはんはウィンナーとチーズトーストでした。
「ルナ君......ちょっと来て」
「ん? 分かった」
ご飯を食べ終わったらソルに呼び出された。
どうしたんだろうか。また何か必要な材料が出てきたとかかな?
そうして連れてこられた場所はソルの寝室だった。
俺、緊張してドアの前から動けないんだけど。
「ちょっと後ろ向いてて」
「......はい」
待って。何が起きるの? 怖いんだけど。ちょっとそういうのは早いよ? ってかできないよ? システムの壁があるよ?
「はい、ルナ君。こっち見て」
「............はいぃ」
ソルに言われたので体を反対に向ける。
するとそこには、魔女っ子のローブを着て、いかにも魔女っ子っぽいトンガリ帽子を被り、『ルナちゃん特製☆メテオラス』を持ったソルがいた。
「お、お、おおぉぉ!!!」
俺、ちょっと危ない考えをしていたけど、現実は大丈夫だった。
......良かったぁ。
「ふっふっふ。ちょっと本気出しちゃった! 見て、このローブの刺繍を!」
そう言われ、ローブの刺繍を見てみる。
「......凄く綺麗だ。この金の糸は神鍮鉄か? あ、この青いのはサファイアか。おぉ! この赤と緑はルビーとエメラルド!? それに太陽の上に付いてるのって......」
「そう! ルナ君から貰った魔石! そのまんま付けてるの!」
胸の位置に太陽の刺繍がされており、その下に虹がかかるように宝石達の糸で刺繍が施されていた。
そして太陽の上に、大きな魔石が使われていた。それにローブ全体に神真鍮の糸で模様が入っており、見ていて飽きない仕上がりとなっている。
どれもキラキラと輝いていて、凄く綺麗だ。
「ふっふっふ。凄いでしょ!!」
「あぁ。凄く似合ってるし、可愛いよ」
「やったぁ! 喜んでくれて嬉しい!!」
ピョンピョンと跳ねてるソル、可愛い。
「あ、でねでね! この帽子なんだけど、もうワンパターンあるの......これ!」
そう言ってソルが被ったのは、狐耳がついてるトンガリ帽子だった。
「おぉ......可愛い。狐獣人のソルにピッタリだな!」
「でしょ!! こっちとこっち、効果は同じだから、その日の気分で変えようかな〜って思ってるの!」
「それがいい。どっちのソルも可愛いよ」
「し、強いて言うならどっち!?」
ソルが帽子を外して聞いてくる。
......やばいな。帽子を外した状態が1番可愛いなんて、言ってもいいものか?
「ほ、本音がいいよな?」
「うん」
許可、頂きました。
「......今の状態」
「今?」
「あぁ。帽子を外した、ありのままのソルが1番可愛い」
言っちゃった。ごめん、トンガリ帽子君。君はソルの魅力に負けてしまうんだ......
「え、えへへ......ありがと」
そう言ってソルが頭をグリグリと俺の胸に擦り付けて来た。
あぁ......これが夢か......モフモフがグリグリ......最高!
「う〜ん、可愛い」
「えへへへへ」
そのまま5分ほど、頭グリグリが続けられました。
「そうだソル。箒で空は飛んだか?」
「ううん。まだだよ」
「なら庭でテストしよう。一応浮くかどうか、魔法自体を俺に使った場合のテストはしたが、箒はまだなんだ」
「そうなんだね! じゃあ、行こう!」
ソルに手を引かれ、庭まで来た。
「改めてみるとこの庭、最初の時よりめちゃくちゃ綺麗に見えるな」
「うん。フーちゃんやシリカちゃん、リルちゃんもお手入れしてくれてるからね」
「あの3人には感謝だな」
庭の芝生、前までは『緑色!』って感じだったが、今は『元気な黄緑色!』って感じだ。
「じゃあ、テストするね」
「あぁ。最初は1メートルくらいでいいからな。『サーチ』」
「うん!」
そうしてソルは箒をに跨り、魔力を流す。
俺は安全のため、サーチで魔法反応を調べておく。
「おぉ......おぉぉ! 飛んでる!」
「飛んでるな。安定してるし、大丈夫そうか?」
「うん! バッチリ!」
「なら次、移動のテストだ。発動中の魔法のイメージで、後ろから風が出て、前に進むイメージだ」
「飛行機のエンジンみたいなものだね!」
「せやな」
そうイメージしたからな。正解だよ、ソル。体重移動から入った俺の方が間違いだ。
そしてソルはゆっくりと、人間が歩くくらいのペースで進み始めた。
「おぉ〜ゆっくりだね」
「それはソルのイメージ次第だ。理論上、MPを注げば注ぐほど、どんなスピードでも出せるぞ」
「なるほど。ちょっとやってみる」
すると自転車と同じくらいの速度で進み始めた。
「凄い! 凄いよルナ君!! これ、凄く気持ちいい!!」
「だろ〜?『フラカン』」
俺も飛んで並走しよう。
「わぁお。上位互換を見せられてる感じ」
「同じ魔法だけどな。ソル、手加減スキルは持ってるか?」
「ううん。持ってないよ」
「なら習得することをオススメする。コイツ1つで魔法の幅が1万倍は広がるぞ......誇張なしで」
「......マジ?」
「マジ」
本当だ。ルヴィさんが出来なかった、『出力の調整』の鍵が手加減スキルだからな。
あっ......結局ルヴィさんにお礼言えてないや。
「ど、どうやったら取れるかな?」
「さぁ? 俺が取った時は、インフィルボア相手に、ボアが死なないように剣で浅く斬ってたぞ。それで取れた」
「じゃあ......このまま行ってもいいかな?」
「......良いんじゃないか? 俺も付き合うよ」
「うん! 一緒に来て!」
「分かった。リル達に出かけることを言ってくるから、先に向かってくれ」
「いや! 待つよ!」
可愛いな。
それに、待ってくれるのは嬉しい。一緒に行けるのは楽しみだ。
「分かった。なら少し待っててくれ。直ぐに聞いてくる」
そう言って俺は庭を全速力で飛んでみた。あっこれヤb──
ビュン!!
「んにゃぁ!!!」
ズドォォォン!!!!
「ルナ君!?」
「父様!?」
「大丈夫ですか!?」
「お兄さん!?」
リル達のいる方に頭から突っ込んでしまった。
あ、危ねぇ。今一瞬、HPが3になってたぞ。
「『サーキュレーション』ごめん......引き抜いて」
空中でバランスを崩し、思いっきり頭から農場にぶっ刺さった。
とりあえずサーキュレーションで空気を確保して助けを求める。
「はははは!! お兄さん、おもしろ!!!!」
「ルナさん......現代アートですね」
「父様! 今助けます!」
「ルナ君、写真撮っていい?」
「何でもいいから助けてくんない? この状態、1個しか魔法が使えねぇから出れないんだ」
逆さまだからなのか、元は窒息しているからなのか、魔法が1つしか使えない。
「......父様、すみません。私の身長だと引き抜くのは......」
「私に任せて!」
今何が起きてるのか知らんが、ソルが箒に乗って上から助けようとしてるのは想像がつくぞ。
「ん〜〜〜!!!」
足を掴まれ、引っ張られる感覚がした。
「んん〜〜〜〜!!!!」
お、ちょっと浮いた。
「んんんんん〜〜〜〜〜!!! よいしょぉぉぉ!!!」
スポっと抜けたが、ソルの引き抜く力が強すぎて空中にぶっ飛ばされた。
「「「「あ......」」」」
現在、自由落下中。
「『フラカン』」
自由落下、終了。
「「「「おぉ!!」」」」
無事生還しました。
それと俺、身をもって知ったよ......庭を全速力で飛んじゃダメだって。
「ふぅ......ありがとう、皆。っと」
そっと庭に着地する。
「もう、気を付けてね? いきなりあんなスピードを出しちゃ制御出来ないでしょ?」
「あぁ。死にかけたから誰よりも理解している」
「「「「死にかけた?」」」」
「だって俺の生命力、3まで減ったから」
フー達がいるからな。敢えてHPではなく、生命力と言おう。
「「「「バカ!!!!」」」」
「えぇ?」
何故か4人に罵倒された。悲C、つらE。
「こんな所で死んだらどうするの!? 自分の魔法で事故って死ぬとか、ありえないよ!?」
「そうです! 目の前で父様が亡くなられたら、私も死にます!」
「私もですね。ご主人様が死んでるのにメイドが生きるのは......それに武器としても、使用者がいないのは辛いです」
「私もお兄さんの為に付喪神になったからなぁ。ちょっとしんどい」
あれ? これ、普段から俺が死んでないせいで、皆大事なこと忘れてない?
「俺、語り人だから復活するぞ?」
「「「「あっ......」」」」
デスペナとして200分の間、全ステータスが1になるけどな。
ってかソルまで忘れてんの、ダメだろ。これはデスゲームじゃないんだぞ?
「心配性だなぁ、皆。愛を感じるよ、うん」
家族愛......かな。知らんけど。
「はぁぁぁぁ............でもね、ルナ君。ここまで死んでないんだから、これからも死なずにいこ?」
溜め息が大きいよ、ソル。幸せが逃げていくぞ?......まぁ、その逃げた分の幸せを、俺が作ってあげたいんだけど。
いや、ダメか。俺が原因で溜め息ついてんのか。
「......もちろんだ。某狩りゲーでも無乙で狩るのは基本だったからな」
死んだら攻撃力がアップするスキルを付けてない限り、死ぬことは全力で避けてたわ。
「とりあえず、ソルと一緒に出掛けてくる。デートだな」
「そうそう。フーちゃん、シリカちゃん、リルちゃん。行ってくるね!」
「「「行ってらっしゃい」」」
「母様、父様をよろしくお願いします」
「うん! 絶対に死なせないよ!」
「死んだら殺しますからね、ルナさん」
「そうだそうだ〜!」
「いや、死なないから。今回は遊び心が出ちゃっただけだから」
「「「......はぁ」」」
「んふふ〜じゃ、ルナ君。行こ?」
「あぁ。『フラカン』」
こうして2人で空を飛びながら、ペリクロ草原まで行った。
ラキハピさん、出会う前から避けられてて可哀想。
さて、これにてソルの魔女っ子計画、完了です。
次回からは第5章の名前のアレについて、進めて行く.....と思います。