ソルの魔女っ子計画〜衣装編〜(2)
ただいま衣装編。おかえりばばばば番外編。
「依頼完了ですね。お疲れ様でした」
「ありがとうございます」
石ころ495個をギルドに納品し、報酬の1,000Lを受け取った。
そしてギルドを出て家に向かう。
「ごっはん〜ごっはん〜お〜ひっる〜ごっはん〜」
残ってるかな? 残ってないかな? 無かったら作ることになるし、材料を買っておこうかな。
「う〜ん、お野菜を育てたい。手持ちが肉しかねぇぞ」
野菜の種とか売ってるのか? ってか野菜って、フィールドで採取できるのか? 買うしかないのかな。
いや、種はあるはず。じゃないと城の裏に農場がある意味がないからな。
「お? 今日は人がいる」
ウチの城の門の前に、数人が突っ立っていた。
「今の俺はエンカウントせずに通れる。ごめんよプレイヤー達。『フラカン』」
真ギュゲの気配隠蔽を使ってから空を飛び、敷地に入った。
「フー、シリカ。ただいま〜」
「おかえりなさい! どちらに行かれてたんですか?」
「おかえり、お兄さん! なんかすっごい音がしてたけど、あれお兄さん?」
「そうだな。ドゥルム鉱山まで行ってて、帰りにワイバーンと出会ったから、フー達無しのフルパワーで雷撃ったらあんな音が出た」
「「おぉ〜」」
いや、戦神の効果を舐めてただけなんだがな。
『3倍? 言うてそこまでっしょ』って気持ちがあったから、あんなに音が出るとは思わなかった。
「あれ、音的に雷神の方が使う雷に匹敵してましたよね」
「うんうん。過去のフー姉ちゃんでもあれは無理でしょ?」
「はい。あの音が出る威力は無理ですね。もう少し弱かったら......できるかも」
神、すげぇ。あんなのポンポン使えるのか?
俺は戦神使ってようやくあの威力だったのに、やっぱり神は強いな。
「あ、お昼ご飯ある? お腹空いた」
「あるよ! 狐ちゃんが『ルナ君が帰って来た時用に』って、取ってたね」
「おっけ、ありがとう。じゃあ2人とも、適度に休憩と遊びを交えて、頑張ってな」
「「は〜い!!」」
そうして2人と別れた俺は玄関の扉を開けた。
「はい、ただいま。と」
「おかえりなさい、父様」
リルが玄関で出待ちをしており、俺が入るや否や、飛びついてきた。
「あぁ、ただいま。ソルの方はどうだ?」
「かなり悩んでましたね。オリハルコンのみでやると、やはり難しいみたいです」
「ふっ、そんな気はしてた......1割ほど」
「殆どしてないじゃないですか!」
「いや、上手くやるかな? って信じてたからな。まぁ大丈夫だ。俺も一応、手助けできるはずだから」
「はい。裁縫のお部屋にいますので、そちらに行ってあげてください」
「うん......ん? リルは?」
「フーさん達のお手伝いをしに行きます」
「そっか。頑張ってな」
「はい!」
トテトテと庭に歩いて行きリルを見送ったら、俺は裁縫室......裁縫室? 呼び方が分かんないが、取り敢えずソルの居る部屋の前に来た。
コンコンコン、と3回ノックする。
「は〜い!」
「私だ」
「ルナ君? ど〜ぞ〜」
「邪魔をする......ただいま」
「おかえり! なんか凄い音してたけど、あれルナ君?」
シリカと同じ事を言われた。思考回路が似てるのかな?
「そうだぞ。ワイバーンにちょっとな。お陰で『雷神』なる称号を手に入れた」
「おぉ! おめでとう!......あ、お昼ご飯出すね!」
「ありがとう。2重の意味で、ありがとう」
今日のお昼ご飯はサンドイッチだったようだ。
「で、悩んでるだって? リルから聞いた......言ってみ?」
サンドイッチを食べながら聞きますよ。
「えっとね、オリハルコンだけだと、布感と言うか、衣服として成り立たない気がするの」
ハムサンドを咀嚼していた俺は、ちゃんと飲み込んでから答える。
「......まぁ、金属オンリーだったら鎧と変わらんからな」
「あ! それだ!!......でも私、布とか持ってないよ」
「そう言うと思ってな。はいコレとコレ」
俺は『岩石の蛇革』と『ワイバーンの皮』を出した。
「あぁ、ワイバーン。っとこれは何?」
「それは『ララ・バジリスク』っていう、レベル120のモンスターの皮」
「え?」
まぁ、驚くよな。俺も驚いたもん。
「だ、だからコレ......レア度が12も......」
「ん? そんなにあるのか? 知らなかった」
「倒した本人さん? 大丈夫ですか?」
「大丈夫であります。既存の攻撃方法の全てが防がれて、ちょっと焦ったくらいであります」
「防がれたの!? って事は、イグニスアローとかも全部?」
「あぁ。クロノスクラビスは効いたけど、他はほぼ無効化された。チャージしたサンダーですら歯が立たなかったよ」
「えぇ......よく倒したね?」
本当、よく倒したよ......あ、サンドイッチ無くなった。
「ごちそうさまでした。まぁ、倒したってより、急激な温度変化で破壊したってのが正しいんじゃないか? その皮を見ての通り、体が石やら宝石やらで出来てたからな。冷やして温めたんだ」
「なるほど。ビー玉みたいな感じかな?」
「......まぁそうだ」
確かビー玉をフライパンで熱してから水に入れると、熱膨張したビー玉が急激に冷やされてヒビが入り、そのヒビが綺麗に見える! 的なやつだっけ。
「で、でですよ。その2つの皮。その2つにオリハルコンを合わせて、何とかローブに出来ないか?」
「出来る......これなら確実にできるね......どうして思いつかなかったんだろう」
う〜ん、分かる。
結構簡単なことを、自分なりの解釈のせいで難しく考えてしまい、結果的に上手くいかないこと、あるよなぁ。
「蛇革の方は合計10枚。ワイバーンは数百枚あるから、とりあえず置いとこうか?」
「うん、お願い」
「はいよ〜」
俺は机の上に蛇革を9枚、ワイバーンの皮を50枚程机の上に出した。
「あぁ、ゲームとかである『ドラゴンローブ』とかって、これで作れるのかな」
ドラゴンやワイバーンの素材を使った、いかにも強そうな装備。アレ、着てみたいな。
「む......むむむ!」
ソルが可愛らしい唸り声を上げている。
「どした〜?」
「この皮、切れない......」
どうやら蛇革に苦戦しているようだ。
「ちょっとハサミ貸しな。どう切るんだ?」
「ここからここ。この線の通りに切って」
「任せなさい。STR爆上がりした、このルナ之助が切ってやる」
「おぉ。頑張って!」
ソルからハサミを受け取ったので、まずは普通に切る。
「うん。硬すぎやな。でも......」
魔力を纏わせたら、どうかな?
「ん......んんん!......き、切れるけど、硬い」
まぁ、ダメでした。物理と魔法、両方に強すぎだろコイツ。
「やっぱりダメかぁ......どうしよ」
「まぁソルよ。落ち着きたまえ。私達にはあの存在がいるだろう?」
「あの存在?」
「そう......シリカ!」
シリカを顕現させた。
「どうしたの? お兄さん」
「シリカ、ハサミになれるか?」
「あ、それは無理。双剣ならなれるからそれで良い?」
「おk」
「は〜い」
俺の両手に双剣となったクトネシリカが装備される。
「『魔纏』からの『斬』」
スパッ!
「おぉ! 切れてる! 凄いよルナ君!!」
『何これ、結構硬いね。幻獣未満ではあるけど、かなり強い生物の皮?』
「正解。それはララ・バジリスクの皮だ」
『あ〜あれね! それは硬いよ。ってかこれ、服にする気?』
「そうだな」
『ははは!! 面白いね、お兄さん達。この皮ってね、家の壁だったり、城の外壁とかに使ったりする皮だよ? こんなの服に使ったら、歩く要塞だよ』
「「えぇ......?」」
何それ知らないんだけど。ってかこれが完成したら、ソルが空飛ぶ要塞になるのか?
『この皮、持ったんだから分かるでしょ? 見た目に反してとても軽く、だけど見た目通りにとても硬い』
「「うん」」
『だから、これは加工されず......いや、加工できず、外壁とかに使われるんだよ』
「「へぇ〜」」
『ま、とりあえず切りなよ』
「あいよ。『斬』」
それから時間をかけ、言われた通り丁寧に切っていった。
「これで......よし!!」
「ありがとう! ルナ君、シリカちゃん!」
「『気にするな / 気にしないで!』」
ソルの魔女っ子計画の為だ。出来ることなら何でもするぞ。
「にしてもこれ、外側はゴツゴツした見た目だけど、大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ! この上にオリハルコンの布を乗せて、さらにその上からワイバーンの皮で挟むの!」
「なるほど。強度に強度と強度を合わせるのか」
「ふふっ、そうだね! それにオリハルコンはルナ君が魔力を込めたからね。付与される効果は大きいよ?」
「ん? そんなに変わらないだろ?」
そりゃあプラシーボ効果って奴ですよソルさん。でもそう言ってくれるのは嬉しい。
「え? ルナ君は見てないの? あのオリハルコンの糸の名前、『愛情の金糸』ってなってたよ?」
え?
「ま、マジか。ならアレ、相当強く?」
「なってるね。でもこれでルナ君の愛に包まれるじぇ......ぐへへ」
あ、ソルの表情がやばい事になった。これは外ではしてはいけないお顔だ。
「お兄さん、狐ちゃん止めなくていいの?」
「大丈夫だろ。これが衣装作りの休憩になればいい」
「あ〜......なるほどね。じゃあシリカは戻るね?」
「あぁ。ありがとう」
「うん! まったね〜」
そうしてシリカは庭の方に行った。
「ソル〜、ワイバーンの方もやるぞ〜? 戻ってこ〜い」
「っは! うん、分かった〜! へへへ」
まだ完全には戻らないようだ。
岩石の蛇革は、見た目はゴツゴツ、触るとスベスベな変な皮です。変な革です。大事なk(ry
次回でローブ完成までいける.....かな?ソルの技量次第ですね。お楽しみに!
ルナ君、ちゃんとサポートしてあげてね!